【甘茶蔓(アマチャヅル)】
原料植物、健康茶として期待される効果効能

高麗人参と似たジンセノサイドを含むことから注目

日本全国に自生している野草であるアマチャヅルは、甘茶蔓という呼び名の通り葉に甘みがることが特徵のウリ科植物。20世紀までは中国の一部地域で民間療法に用いられる程度でしたが、1977年にサポニン類が70種類以上含まれてており薬用人参(高麗人参)と似ていることが報告され注目されるようになりました。ジンセノサイドを含むことからアタプトゲンとして様々な働きが期待されているほか、抗アレルギー作用や肥満予防効果を持つ可能性も報告されています。たたし有効性や安全性は分かっていない、未だ研究途中のハーブです。

甘茶蔓(アマチャヅル)とは

植物紹介:アマチャヅル

ほんのりと甘く、どこか懐かしい味わいの甘茶蔓茶。甘茶蔓という言葉には聞き覚えはあるものの、どんな植物かは曖昧でという方もいらっしゃるのではないでしょうか。甘茶蔓(アマチャヅル)はウリ科アマチャヅル属に属すツル性多年草で、日本全国で野草として自生しています。日本だけではなく中国~東南アジア周辺まで東アジアに広く自生しており、中国では“絞股藍(こうこらん)”という呼び名で生薬としても利用されています。日本でも甘茶蔓茶ではなく絞股藍茶と書かれた商品が健康茶コーナーなどに並んでいることもありますね。

甘茶蔓という和名は文字通り「甘みがある蔓性植物」であることが由来で、英語でもその甘さから「Sweet tea vene」と呼ばれることがあります。お釈迦さまのお誕生をお祝いする花祭りの時に使われる“甘茶”の原料のようにも感じられますが、甘茶は学名をHydrangea macrophylla var. thunbergiiとされるユキノシタ科の落葉低木が原料。甘茶蔓は瓜の仲間、甘茶はアジサイの仲間と表現されます。同じく甘みを持つハーブである甘草(リコリス)はマメ科植物なので、甘みを持つという特徵が呼称が似ていても植物としては全く別物なんですね。

甘茶蔓は中国で生薬として利用されてきた植物として紹介されることもありますが、実は生薬としての歴史は浅い部類。記録としても1406年に朱暁という医師が記した、飢饉の時に救荒食物として利用できる植物をまとめた『救荒本草』に登場したことが初と言われています。しかしこの時も甘茶蔓は生薬として記載されたわけではなく、入手しやすい栄養補助食品という扱い。薬用植物としての記載は更に100年以上経った李時珍の『本草綱目』で、切り傷やむくみに役立つことが述べられているものの李時珍は別の生薬と混同して記述したとの見解が有力となっています。中国南部の一部地域でのみ、甘茶蔓は”不滅のハーブ”として強壮剤や風邪薬感覚で飲まれていたそうです。しかし1970年代に中国全体の人口調査が行われると中国南部には長寿の方が多いこと、その村では甘茶蔓茶が飲まれていることが注目されるようになりました。

古い時代は日本でも中国から伝わった漢方が医療として取り入れられており、生薬の知識も多くは中国から学んでいました。時代と共に日本に自生する植物を加え独自の進化を果たした部分はありますが、長らく甘茶蔓は生薬利用されることなく野草・雑草の類としての扱いであったようです。しかし1977年に日本生薬学会で竹本博士が「薬用人参(高麗人参)の有効成分とされているサポニン類が70種類以上含まれている」と発表したことから薬草としての注目度が高まり、健康茶として一時期ブームになったこともあります。1991年には北京で開かれたInternatinal Conference on Traditional Medicine(伝統薬世界会議)では“10種類の最も重要な強壮ハーブ”の一つにも選ばれたことで、世界的にも注目される植物の一つとなりました。

甘茶蔓は英語で“Jiaogulan(ジオグラン)”と呼ばれることが多いものの、その語源については分かっていません。別名であるゴスペルハーブやプアーマンズ・ジンセンなどの呼び名は朝鮮人参様の働きが期待できること、ハーブとして優れた働きが期待できることが由来ではないかと考えられています。その他にも仰々しい名前が多く付けられていますが、欧米でハーブティーや健康食品として売り出すために販売者サイドが煽った可能性も高そうですね。日本ではブーム終焉から一部の人が野草茶として飲んでいた程度でしたが、近年は花粉症やアトピーなどのアレルギー症状軽減やストレス緩和に役立つ可能性があるとして再び注目されつつあります。ただし現時点では期待される作用についても医学的根拠が無いことが指摘されていますから、今度の研究に期待が寄せられているハーブの一つというのが正確なところです。

基本データ

通称
甘茶蔓(アマチャヅル)
別名
ジアオグラン(Jiaogulan)、絞股藍(コウコラン)、ファイブリーフ・ジンセン(five-leaf ginseng)、プアーマンズ・ジンセン(poor man’s ginseng)、miracle grass(ミラクルグラス)、ゴスペルハーブ(Gospel herb)など
学名
Gynostemma pentaphyllum
科名/種類
ウリ科アマチャヅル属/つる性多年草
花言葉
誕生花
使用部位
葉・茎
代表成分
サポニン類(ジンセノサイド類、ジペノシド、プロトパナキサジオールなど)、フラボノイド、フィトステロール、クロロフィル
代表効果
アダプトゲン、鎮静、抗酸化、神経強壮、免疫機能正常化、血圧降下、抗コレステロール、抗血液凝固、抗血糖、抗肥満、鎮痙、循環器系機能向上
こんな時に
ストレス抵抗力アップ、緊張、ストレス、不安、不眠、頭痛、肩こり、生活習慣病(高血圧、動脈硬化、糖尿病など)予防、アレルギー軽減(花粉症、アトピーなど)、肥満予防、美肌作り、気管支炎、疲労回復
おすすめ利用法
健康茶
お茶の味
草っぽい香り、味は甘みがあるが濃く淹れると苦味の方が強くなる
カフェインの有無
ノンカフェイン

アマチャヅルの成分と作用

甘茶蔓茶に期待される効果

健康を維持する手助けとして

甘茶蔓のジンセノサイドについて

甘茶蔓は70種類以上ものサポニン類を含み、その中にはジンセノサイド(Ginsenoside/ギンセノシドとも)と呼ばれる薬用植物として東アジアで重宝されてきた高麗人参(朝鮮人参)と同じ成分も含まれていることが認められています。ジンセノシドはトリテルペノイドサポニンで、現在同定されているだけでも約40の種類があります。化学構造の違いによって異なる薬理作用を保つ事も報告されていますよ。

甘茶蔓に含まれているジンセノシドは成分の含有組成が高麗人参と異なっているため高麗人参と全く同じ効果があるという訳ではありませんが、類似の化合物を含むことから高麗人参に近い働きを持つ可能性があると注目されています。ただしアマチャヅルの有効性や毒性など、人体への影響については臨床試験のデータが少ないこともあり不明瞭です。下記ではいくつか期待されている健康メリットを紹介しますが、あくまでも“可能性がある”段階の話であることをご了承下さい。食品として自己責任で摂取するものですから、自分の体と相談して取り入れるようにしましょう。


ストレス抵抗力アップに

高麗人参は「アダプトゲン」と呼ばれるハーブの一つに数えられる存在。アダプトゲンというのは1947年にNikolai Lazarev 博士により“体に悪影響を与える物理的、化学的、または生物学的なストレッサーを、非特異性の抵抗力を高めることによって撃退するもの”と定義されています。大まかに言うと精神的緊張・不安・肉体疲労などのストレスに対する抵抗力をアップさせ心身のバランスを整える働きを持つもの、という感じでしょうか。

こうしたアダプトゲンハーブとしての働きを高麗人参が持つのは、ジンセノサイド(ギンセノシド)と呼ばれるサポニン類の働きである可能性が高いことが認められています。高麗人参と全く同じものとは言えませんが、甘茶蔓もジンセノサイド類を含んでいることから同様にアダプトゲンとして免疫系・神経系・内分泌のバランスを整える手助けをしてくれるのではないかと考えられています。


心のサポートにも期待

アタプトゲンとしての働きによって甘茶蔓は神経系のバランスを整え、ストレス耐性を高める・ストレスを緩和する働きが期待されています。ジンセノサイドと呼ばれるサポニン類の中には神経の興奮を落ち着ける働き=鎮静作用が見られたことが報告されている成分もあることから、気持ちを落ち着ける働きを持つ可能性もあります。高麗人参に含まれているジンセノサイドには中枢神経に対して抑制的に働くものと興奮に働くものが含まれており、興奮・鎮静両方の働きかけによって神経・精神面のバランスを整える働きが期待されています。

対して甘茶蔓は鎮静系と考えられる成分が多く「緊張や頻脈・不整脈を引き起こすリスクが少なく高麗人参よりも優れている」という見解もあります。このためストレス・イライラ・神経過敏・緊張の緩和改善など精神面のサポートを始め、ストレスや緊張に起因する不眠や頭痛・肩こりなど肉体面の不評軽減にも効果が期待されていますよ。ストレスの影響を受けやすい消化器系の不調(腹痛・胃痛・胃潰瘍・便秘・下痢など)の緩和に役立つのではないかという説あります。有効性については断定されていませんが、ドーパミンおよびセロトニンレベルの回復を助けることを示唆した報告などもあり、ストレス誘発性不安の抑制やうつ病の治療に対して研究が進められています。


抗酸化・生活習慣病予防に

ジンセノサイド類などのサポニンには、新陳代謝を活発化させることで老化予防もしくは若返りに役立つ可能性があることも報告されています。甘茶蔓にはサポニン以外にもフラボノイドなど抗酸化作用のある成分が含まれていることも認められており、細胞の酸化を抑えることからも健康をサポートしてくれると考えられています。抗酸化物質の補給源としてだけではなく、体内で細胞内に発生した活性酸素を分解する酵素SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)の生産を促進する可能性があるという説もありますよ。

またサポニン類の中には抗酸化作用だけではなく血小板抗凝集作用や血管運動神経調節作用、肝機能を改善し善玉(HDL)コレステロールを増加させて悪玉(LDL)コレステロールを減少させる働きを持つことが報告されている成分もあります。2008年に『Journal of Medicinal Food』に掲載された研究では甘茶蔓が肝酵素に働きかけ血糖コントロールを助ける可能性があることが示唆されているほか、2012年『Hormone and Metabolic Research』では臨床試験で糖尿病患者に血糖値とインスリン感受性の改善が見られたという研究報告も掲載されています。

フラボノイドにもLDLコレスレトール低減や正常な血液循環をサポートする働きがあることから、甘茶蔓は抗酸化作用+αの形で高血圧や動脈硬化・生活習慣病の予防にも効果が期待されています。有効性は認められていないため現時点で何らかの診断を受けている方であれば医師の指導に従うべきではありますが、若々しく健康な体を維持するサポーをとしてくれる健康茶として取り入れてみても良いかも知れません。


免疫力サポート・アレルギー対策に

近年、甘茶蔓茶は花粉症などのアレルギー症状を和らげてくれる健康茶として日本で取り入れられつつあります。アレルギー対策に役立つかも知れないと考えられている理由としても、サポニンやフラボノイドに期待されている働きによるものが主。花粉症をはじめとするアレルギー症状は不規則な生活(睡眠不足など)や暴飲暴食・精神状態など、心身にかかるストレスが増えると悪化することが指摘されています。ジンセノサイド類によるアタプトゲン作用によってストレス抵抗力を高めることで、こうした悪化要因を軽減する働きが期待されているわけです。

加えてサポニン類の一部にはステロイドホルモンの一つで、強い抗炎症作用および免疫抑制作用を持つグルココルチコイドの生成を促進する働きも報告されています。このため様々なサポニン類を含む甘茶蔓にも抗アレルギー効果が期待されています。抗酸化作用もしくはSOD生産促進による抗酸化力の向上も、免疫システムを正常に回復させることに繋がると考えられますね。伝統的に甘茶蔓は風邪薬のような感覚で利用されてきた歴史もあり、実験でも抗ウイルス作用が見られたことが報告されています。免疫機能を整える働きと合わせて、風邪やインフルエンザの予防にも効果が期待できるでしょう。

そのほか期待される作用

肥満予防・ダイエットサポートに

ジンセノサイドに期待されている血糖値上昇を抑える働きは肥満予防としても注目されています。インスリンは食事後などで血糖値が上昇すると分泌され高血糖状態を防ぐよう働きますが、血糖値を一定に保つために血液中のブドウ糖を脂肪細胞に蓄積させる・脂肪分解を抑制するなどの働きを持っています。このため血糖値の急激な上昇を抑えてインスリンの分泌量を抑えることは肥満予防にも繋がると考えられています。

またジンセノサイドには内臓機能の活発化や新陳代謝向上効果があるとも言われているため、基礎代謝を上げることで太りにくい体質作りに繋がるのではないかとする説もあります。2013年に韓国で肥満と判断された80人の参加者を対象に行った実験では、12週間プラセボを摂取した人たちには変化がなかったのに対し、同期間アマチャズル抽出物を摂取した人たちには総腹部脂肪面積・体重およびBMI・体脂肪量・体脂肪率に有意な減少が見られたことも報告されています。

甘茶蔓が抗肥満効果を持つかについては十分な検証が行われていないのが現状ですが、抗酸化作用が期待できることなどと合わせてダイエットのサポートに取り入れてみても良いでしょう。呼び名の通り甘茶蔓茶もほんのりと甘みがありますから、ダイエット中には嬉しい存在と言えるかも知れません。


アンチエイジング・美肌保持に

甘茶蔓に含まれているサポニンやフラボノイドなどが持つ抗酸化作用は、肌細胞が酸化されるのを抑制することにも繋がります。肌細胞の酸化はシワやしみ・肌の弾力低下やたるみなどお肌の老化現象の原因ともなります。抗酸化作用が期待できる甘茶蔓茶は内側からお肌のアンチエイジングをサポートしてくれるお茶とも言えるでしょう。またサポニン類には血管を拡張させる働きがあるもの、コレステロールを減らして正常な血液循環を保持してくれる働きを持つものもあります。このため血行促進によって酸素や栄養がしっかりとお肌に届けることで、肌の新陳代謝代謝やターンオーバー促進・くすみ解消などにも期待できます、


呼吸器系のケアにも

甘茶蔓に含まれるサポニン(ジンセノサイド)類には鎮静作用だけではなく、鎮痙作用を有するという見解もあります。現在のように医療が発達していない時代、甘茶蔓を民間薬として使用していた中国南部では気管支炎の時に甘茶蔓を飲むこともあったと伝えられています。慢性気管支炎を有する86人の患者を対象に行われた実験などでも、アマチャヅル抽出物の投与で改善が見られたことが報告されています。咳や喘息の軽減に役立つことを示唆した実験報告もあることから、呼吸器系トラブルのケアにも効果が期待されています。


滋養強壮・疲労回復

高麗人参は古くから滋養強壮薬として利用されてきました。現在こうした効果はジンセノサイド(ギンセノシド)によって自律神経のバランスを整えたり、血行を促して低血圧や貧血改善・胃腸機能などを手助けすることが大きいと考えられています。栄養吸収や新陳代謝が良くなることにも繋がるので、結果として滋養強壮や疲労回復をサポートしてくれる可能性があるでしょう。高麗人参と同じ様な成分を含む甘茶蔓についても同様の作用が期待されています。ストレス耐性向上や抗酸化作用も疲労感の軽減に繋がる可能性があります。


脳機能向上・認知症予防にも期待

サポニン配糖体の一種ジンノセサイド(ギンセノシド)には、脳内の受容体を刺激することで脳機能を活発化させ、加齢に伴って起こる認知機能の低下を予防する効果が期待されています。それ以外に血液循環を促す働きからも脳機能の保持・向上に、抗酸化作用・抗血液凝固作用と合わせて脳血栓や脳血管性認知症に繋がる可能性もあると考えられます。

甘茶蔓(アマチャヅル)の注意事項

  • 妊娠中・授乳中の方、小さい子さんへの使用は控えましょう。
  • 疾患や病歴がある方は使用を避けるか、医師に確認するようにしてください。
  • 医薬品と相互作用を起こす可能性があります。投薬治療を受けている方は医師・薬剤師に相談しましょう。
  • 短期間の適切な経口摂取での可能性は高いハーブとされていますが、アマチャヅルの粉末によるアレルギー発症や、吐き気・腸の蠕動運動が激しくなり下痢を起こすなどの副作用が稀にあると報告されています。体調に異変を感じた場合は即使用を中止してください。

参考元