アンジェリカルート
ハーブティーと期待される効果効能紹介

血行不良や女性ホルモンの乱れなど女性の不調に優しい「天使の草」

ヨーロッパでは薬用ハーブ・食材・香料と広く利用されているアンジェリカ。漢方で婦人科系の不調に用いられる当帰の近縁種にあたり、当帰同様に体を温める・ホルモンバランスを整えるなど女性の体を整える働きに優れたハーブとされています。月経トラブルや冷え性の緩和のほか風邪予防・滋養強壮などにも役立ちますし、精油は「不安と力の精油」とも呼ばれるように精神面のサポートととしても利用されています。

画像:アンジェリカ(西洋当帰)

 

アンジェリカについて

基本データ

通称
アンジェリカ(Angelica)
別名
アンゼリカ、西洋当帰(セイヨウトウキ)、ガーデンアンジェリカ(Garden Angelica)
学名
Angelica archangelica
科名/種類
セリ科シシウド属/二年草
花言葉
インスピレーション、思いつき、霊感、優しい憂鬱
誕生花
9月30日、12月21日
使用部位
根(※茎・葉を利用する場合も有)
代表成分
フィトステロール、アンゲリカ酸類、エグザルトリド、クマリン(フロクマリン)、リモネン、リナロール、ベルガプテン、ビタミンB群、糖類、苦味質など
代表効果
血行促進、内分泌系調整、子宮強壮、ホルモン様、鎮痙、鎮痛、強壮、健胃、駆風、利胆、去痰、免疫賦活、発汗・利尿
こんな時に
冷え性、肩こり、腰痛、腹痛、生理痛、月経不順、更年期障害、PMS(月経前症候群)、妊活、食欲不振、消化不調、体力低下、風邪予防、気管支炎、不眠、アルコール依存
おすすめ利用法
食用、ハーブティー、ハーブチンキ、浸出油、精油
ハーブティーの味
香り・味共に苦味とスパイシーさがやや強いため、飲みにくい場合も
カフェインの有無
ノンカフェイン

植物紹介:アンジェリカ(西洋当帰)

日本ではハーブもしくは食材としてよりもアロマテラピーなどで利用される精油(エッセンシャルオイル)原料の一つとして知られているアンジェリカ。ヨーロッパでは葉や茎を香味野菜野菜感覚で食すほか、砂糖漬けにしておやつ感覚で食べる・お菓子の風味付けなどにも利用されていますし、種子はシャルトルーズ酒、ベネディクティーヌ酒などのリキュール類の香り付けにも用いられています。

属名であり通称としてもそのまま使われているアンジェリカ(Angelica)はラテン語で天使を意味しており、種子名のarchangelicaは大天使を意味しています。この名前は疫病が流行った時に大天使ミカエルが薬として利用するように告げた植物であるという伝説が由来になっているそうです。こうした伝説があるように、宗教的な面からもヨーロッパでは古くから悪霊を退ける力を持つ神聖なハーブと考えられていました。薬用・儀礼用として教会など神聖な場所で栽培が行われていたことも伝えられていますし、“Angel glass(天使の草)”や“Holy Spirit Root(精霊の根)”などの別名も付けられています。ちなみに中世では効能の高さから“魔女の霊薬”と呼ばれていたこともあるそうです。

アンジェリカは漢方の生薬として利用される当帰と同列で「女性のための朝鮮ニンジン」と紹介されることもありますが、厳密には当帰は学名Angelica acutilobaで、成分や作用は近いものの別の植物です。アンジェリカの別名を鎧草(ヨロイグサ)としている文献もありますが生薬“白芷(ビャクシ)”の原料として知られるヨロイグサ(Angelica dahurica)は同じセリ科シシウド属ですが別種のため注意が必要です。ちなみに健康野菜や青汁の原料として知られる明日葉(Angelica keiskei)も同属植物です。

ハーブティーとしてアンジェリカルートはやや飲みにくい部類に属します。香りにも独特のスパイシーさがありますし、味もどこか薬臭いような苦味があり「体に良いと思って買ったけど口に合わなくて…」と断念される方もいらっしゃるようです。初めての場合は試飲してからの購入がおすすめですが、専門店以外ではあまり流通していないハーブでもあります。買ってしまったものの飲みにくい場合にはハチミツや黒砂糖など甘みを加える、他のハーブティーを入れる時の隠し味程度に少量ずつブレンドするなどの方法を試してみてください。

アンジェリカルートの栄養・成分・期待できる効果

アンジェリカルートティー

月経トラブルや女性に多い不調に

冷え性・むくみ緩和に

アンジェリカに含まれているクマリン(フロクマリン)には血液・リンパ液などの体液循環を促進する働きがあります。このためアンジェリカルートティーは体を温める働きがあるお茶として冷え性の緩和に有効とされていますし、血行不良から起こる肩こり・腰痛などの緩和に対しても効果が期待されています。

血液だけではなくリンパ液の循環にも役立つためむくみ緩和にも利用できます。血行不良による冷えが気になる場合はカモミールエゾウコギ、むくみが気になるときはダンデライオン(タンポポ茶)バードック(ごぼう茶)とブレンドして利用するのもオススメです。


ホルモンバランスの乱れに

アンジェリカや当帰などシシウド属の幾つかの植物はフィトエストロゲン(植物性ホルモン)成分を含み、女性ホルモンの一つ「エストロゲン」の分泌を調節しホルモンバランスを整えるとされています。東西ともに古くから女性特有の症状緩和に利用されていたのはこのエストロゲン様作用と、血行を促し体を温める働きに優れていたためと考えられています。

フィトエストロゲンは体の中で合成・分泌される本来のエストロゲンをサポートしてくれますが、人本来のエストロゲンよりも作用が弱いためエストロゲン過剰の場合には全体的なエストロゲンの影響を弱めるという働きも持ち合わせています。そのためエストロゲン分泌が低下することで起こる更年期障害の緩和を始め、原因がエストロゲン過多・不足どちらとも考えられる月経不順やPMS(月経前症候群)などの改善にも有効とされています。

ホルモンバランスを整えると同時に血行促進作用などもあるため、アンジェリカを継続して摂取し続けることで子宮強壮にも役立つとされています。無月経や月経困難症などの月経トラブルをはじめ、女性ホルモンバランスの乱れによって起こる様々な不調の根本改善としても期待されています。また女性の体を整える妊活サポート用としても取り入れられています。


生理痛やPMSによる痛みに

血液・リンパ液など体内の“巡り”を整える働きがあることから、アンジェリカルートティーは骨盤周りの血行不良や冷えから起こる生理痛の緩和にも利用されています。骨盤内の血行がよくなることで月経期間が長引いてしまう場合などにも良いと言われています。鎮痙作用や鎮痛作用などもあるとされていますので、より直接的な「痛み」の緩和にも効果が期待できるでしょう。

PMS(月経前症候群)の代表症状にも数えられる、生理前の腰痛・下腹部痛や肩こりなどもホルモンバランスや自律神経系の乱れによって血行が滞ることが主な原因とされています。血行を促す働きとホルモンバランスを整える働きのあるアンジェリカは、生理前に起こる子宮周り以外の痛みや重苦しさの緩和にも役立ってくれるでしょう。PMSや生理痛緩和用としてはよくチェストツリーと組み合わせて利用されています。


そのほか期待される作用

胃腸トラブル緩和・強壮に

アンジェリカに含まれる苦味質や精油成分には胃液・胆汁分泌促進作用を持つものが含まれています。そのため食欲不振や吐き気・消化不良などの胃腸トラブルに対しても役立つと考えられており、血行促進作用も内蔵までしっかりと血液を行き渡らせることで内臓機能の向上、冷えによって起こる腹痛や下痢などの緩和に役立ちます。

消化吸収を高めること・体を温めて体本来の機能を取り戻すサポートをすると考えられることから、強壮・体力低下時の回復用としても利用されています。ヨーロッパの民間療法やハーブ療法では、アンジェリカのチンキ剤は滋養強壮用として利用されています。


呼吸器系の不調・風邪予防に

体を温める作用が強いアンジェリカは風邪の初期症状ケアや発熱時などにも利用することが出来ます。体を温める働きも基礎体温低下を防いで免疫力向上に役立つと考えられますし、含まれている精油成分のいつくかにも免疫化粒作用が期待されています。また発汗・利尿作用があるとする説もあり、解熱や毒素排出促進に対しても役立つと言われています。

そのほか鎮痙作用と去痰作用があることから、喘息や気管支炎などの緩和や痰が絡むときにも良いとされています。気管支炎など呼吸器系の不調にはリコリス(甘草)、抗炎症・抗アレルギー作用が期待できるエキナセアなどとのブレンドがよく利用されています。


不眠の緩和に

アンジェリカルートの香りは鎮静作用があるとされています。血行促進作用によって体を温める働きと相乗して副交感神経の活性化に役立ち、不眠の緩和などにも有効と考えられています。ヨーロッパではお茶を飲む以外に安眠をサポートする存在としてハーブピローやベットサイドポプリなどにも活用されているようです。


アルコールを控えたい方に

アンジェリカの茶剤(ハーブティー)を飲むとアルコールを飲みたくなくなる・受け付けなくなると言われておりり、アルコール依存症の治療に取り入れられているようです。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

肌・目への使用について

アンジェリカは入浴剤や化粧水として利用することで肌を清潔に保ちニキビの予防改善に良い、肌荒れや痒みの緩和に役立つ、皮膚の新陳代謝を促す働きなどがあると言われています。しかし浸剤(ハーブティー)であっても精油であっても皮膚刺激が高いため、スキンケア用としてはあまり利用されません。

かた古い時代には目薬(点眼液)として疲れ目などの緩和に利用されていましたが、経験や資格がない方がアンジェリカを浸出したものを目に入れると刺激や雑菌などによって症状を悪化させる危険性があります。我流での使用は避けたほうが良いでしょう。


アンジェリカルート精油に期待される作用

アンジェリカルートの精油はは皮膚刺激が強いため、マッサージやスキンケアなど皮膚へ直接付けることは控えたほうが無難です。精油の経口摂取(飲用など)は出来ません。

心への作用

アンジェリカは“不安と力の精油”とも呼ばれている存在で、不安に苛まれた時や、打たれ強さが欲しい時などに適した精油とされています。スパイシー系の香りですが鎮静作用が高くストレスや神経疲労の緩和に効果が期待されています。真面目な方や理想が高い方などが頑張りすぎて疲れてしまった時などにも役立ってくれます。

副交感神経の活性化作用もあるため、自律神経の乱れや不眠気味の時にも有効とされています。また過去の嫌な思い出の影響を抑える・マイナス思考に陥った時などにも良いとされていますので、過去の失敗や将来への不安などがグルグルと渦巻いて寝付けないような場合にも力を貸してくれるでしょう。

体への作用

基本的には精油もハーブティーと同様に、体を温める働きや発汗・利用作用、抗ウィルス作用による風邪やインフルエンザ予防、去痰作用などからアレルギー性の呼吸器不調の緩和などに役立つとされています。エストロゲン様・ホルモンバランス調整作用から女性特有の不調緩和にも有効とされています。

アンジェリカルートの注意事項

  • 妊娠中の方・糖尿病・急性胃炎・消化性腫瘍のある方は使用できません。小さいお子さんへの使用も避けましょう。
  • 光過敏症を起こす可能性があります。飲用もしくは芳香用としての利用であっても、使用後は直射日光など紫外線を避けましょう。