麦茶(大麦茶)
健康茶と期待される効果効能紹介

妊娠中やお子さんにも安心の、穏やかでやさしいお茶

日本の国民的飲料と言えるほど身近なお茶「麦茶」。カフェインなどの刺激物を含まず誰でも飲める優しいお茶として親しまれてきた存在ですが、近年は高い抗酸化作用を持つ“Pクマル酸”や、血液サラサラ効果が報告されている“アルキルピラジン”などを含むこと、ミュータンス菌の活動を抑制し虫歯予防に役立つ可能性なども報告されており、健康維持に役立つお茶としても注目されるようになりました。

画像:麦茶(大麦茶)

 

大麦(オオムギ)について

植物紹介:大麦(オオムギ)

日本人にとっては緑茶(日本茶)と同等もしくはそれ以上に身近な存在の麦茶。ご自宅で手軽に作れるお茶として冷蔵庫に麦茶などが常備されているご家庭も多いかと思いますし、特に夏の飲み物として子ども時代・夏休みなどを思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。麦茶の原料は水溶性食物繊維が多く血糖値上昇抑制やダイエット・腸内フローラ改善などの働きで注目されている“麦ごはん(麦飯)”の麦と同じ「大麦」です。お茶としてよく比較されるハトムギとは同じイネ科でもやや離れた種となります。

大麦は栽培の歴史が非常に古く、1万年ほど前の新石器時代には既にメソポタミア文明が栄えた地域で栽培が行われていたことが分かっています。紀元前4000年代にはメソポタミアで麦芽を発酵させたビール作りが行われており、古代エジプト文明でも大麦を使ったパンやビールなどが食生活の中心だった事が分かっています。ヨーロッパでも小麦が定着するまで、大麦は主食として重要な位置を占めていました。食用以外に古代ギリシアの医師ヒポクラテスは発芽大麦を煎じた汁を利尿剤として利用したと言われています。この煎じ汁はギリシア語で脱穀を表す”ptisane”と命名され、ハーブティーを意味するフランス語”tisane(ティザーヌ)”の語源となったと言われています。

日本への大麦伝来は3世紀頃(弥生時代)で、小麦よりも1世紀くらい伝来が早かったと推測されています。奈良時代には日本各地で栽培が既に行われており、平安自体には“麦茶”としても利用されるようになります。現代では麦茶は庶民派の飲みものの代表格ですが、平安~室町時代頃までは麦茶は貴族・戦国武将などの富裕層向けの飲み物だったようです。江戸時代になると“麦茶売り”や麦茶の専門店である“麦湯店”などが登場し、初夏に収穫された採れたての麦を麦を焙煎したも麦茶が夏の風物詩の一つとして定着するようになります。

家庭で入り麦を購入して麦茶を作るようになったのは明治時代、ティーパック麦茶や水出し麦茶が販売されたのは昭和40年頃と比較的最近のことになります。身近すぎる存在である麦茶は「赤ちゃんからお年寄りまで飲める」くらいしかメリットが無いと思われがちな存在ですが、近年はミネラル補給源や内側からの紫外線対策・血液サラサラ効果・ストレス緩和・虫歯予防などに役立つオールマイティーな健康飲料として存在が見直されつつあります。カフェインなどの刺激物質も含まず、摂取量や期間などを気にせずに誰でも飲めるというのも嬉しいポイントですね。近年は種子には含まれない栄養成分を含む大麦の若い葉も、青汁などの健康食品を支える存在として親しまれています。

⇒大麦若葉についてはこちら

基本データ

通称
大麦(オオムギ)
別名
麦湯、年越草(トシコシグサ)、太麦(フトムギ)、Barley、Pearl barley
学名
Hordeum vulgare
科名/種類
イネ科オオムギ属/一年草
花言葉
思い出、裕福
誕生花
2月28日、5月17日
使用部位
種子(焙煎)
代表成分
アルキルピラジン類、Pクマル酸、GABA、ミネラル(カリウム、カルシウム、亜鉛など)、食物繊維など
代表効果
血液サラサラ、血圧降下、鎮静、胃粘膜保護、抗酸化、利尿、緩下、整腸
こんな時に
血行不良、高血圧、ストレス、不眠、胃痛、胃炎、夏バテ、老化予防、むくみ、便秘、下痢、虫歯予防
おすすめ利用法
食用、飲用(お茶)
ハーブティーの味
焙煎麦の香ばしさがある、お馴染みの麦茶の味
カフェインの有無
ノンカフェイン

大麦(オオムギ)の栄養・成分・期待できる効果

麦茶(大麦茶)

健康維持への働きかけ

血液サラサラ効果

麦茶の香ばしい香りの元である芳香成分「アルキルピラジン類」には血液流動性向上作用=血液の流れを良くする働きがあることがカゴメ株式会社総合研究所によって発表されています。この実験では水(ミネラルウォーター)を飲んだ方は血液流動性が変化しなかったのに対し、麦茶(六条麦茶)を飲用した被験者は飲用後90分後まで血液流動性の有意な向上が見られたことが報告されています。

この研究発表から血液サラサラ効果によって、血液循環の改善・血栓予防などに有効であると考えられています。また中性脂肪やコレステロール低下、血圧効果作用などがあるとされるGABA(γーアミノ酪酸)も麦茶には含まれていますから、ピラジンと相乗して高血圧や動脈硬化などの予防についても効果が期待されています。


ストレス・不眠緩和に

麦茶に含まれているGABAは降圧作用などのほかに、興奮性神経伝達物質の活動を抑え副交感神経を活発化させる働きがあります。アミノ酸の一種で様々な食材からも摂取することが出来ますが、少量ずつこまめに麦茶からも補給することでストレス緩和・ストレス耐性アップが期待できるでしょう。

またGABAは神経の興奮を抑制し副交感神経を活発化させることで、体をリラックスや眠りに適した状態へと導いてくれます。麦茶はカフェインを含んでいませんから、タイミングを気にせずに就寝前であっても摂取できるのも嬉しいですね。不眠対策としてカモミールなどのハーブとブレンドすると相乗効果が期待できます。


胃粘膜の保護・胃痛予防

健康な場合であれば胃液から胃を保護する機能が働いていますが、ストレスを受けると保護機能低下し胃が酸で溶かされることで胃痛・胃潰瘍が引き起こされます。麦茶は胃粘膜を保護する働きがあるとされていますし、ストレスの緩和に役立つGABAも含まれているため相乗して胃痛緩和や胃潰瘍予防などに役立つと考えられています。大麦抽出物はストレス性胃潰瘍の予防に対する有効性も報告されています。

ストレス性による胃のトラブルとして、特に空腹時に痛みを感じやすいと言われています。少量ずつものを食べるようにする(胃痛を感じる前に食物を胃に入れる)と良いと言われますが、学校や職場ではなにかと難しいと思いますので、水分補給がてらこまめに麦茶を飲むようにしてみると良いでしょう。


夏バテ予防に

夏バテを起こす原因は様々にありますが、汗などで水分が排出されることで血液の流れが悪くなることも原因の一つとして考えられます。水分補給も必要ですが、単に水分だけを摂るよりも血液をサラサラにする働きがあるアルキルピラジン類が含まれている麦茶を摂取したほうが夏バテの予防や回復促進により効果的であると考えられています。

また中医学(漢方)的な考え方で麦茶は“陰性”と呼ばれる体を冷やす働きがある食品に分類されており、火照った体を冷ます・体内にこもった熱を冷ます働きがありとされています。涼しさを感じることで精神的なぐったり感の緩和などにも役立ってくれそうです。

ただし麦茶に限らず水分だけを大量に摂取していると血液流のナトリウム濃度が減少し“低ナトリウム血症”を引き起こす危険性があります。症状は軽いもので倦怠感・頭痛・吐き気など、重度になると痙攣や意識障害などが挙げられており、低ナトリウム血症は熱中症の主原因の一つともされています。
汗を沢山かいたと感じる時などは血中ナトリウム濃度が下がり過ぎないように一摘み「お塩」を入れて飲むようにするしましょう。水分補給は“少しずつこまめに”行うことを心がけてください。


美容面にも嬉しい働きかけ

老化予防(抗酸化)

麦茶には強力な抗酸化作用を持つ「Pクマル酸」という成分が含まれていることが報告されています。Pクマル酸はアントシアニンに存在する酸の一つで、毒性の強く発がん性物質とされるペルオキシナイトライトに対しても高い消去作用があることが報告されています。

活性酸素の働きを抑えることで酸化による体のサビつきを抑える=老化予防や生活習慣病の予防に役立つほか、ガン予防に対しても桜花が期待されています。もちろん肌に対しても抗酸化作用が期待できますから、シワ・たるみ・肌のゴワつきなどの予防、紫外線対策やシミ予防などにも役立ってくれるでしょう。


むくみの緩和に

麦茶には利尿作用を持つカリウムが含まれています。カリウム含有量自体は際立って多くないものの、アルキルピラジンやGABAによる血液循環促進作用と複合することで、むくみの緩和にも役立つとされています。カフェインが含まれていませんので夏場に飲んでいても脱水を起こすなどの心配が少なく、自然なむくみ改善が期待できるでしょう。

ただし冷え性でむくみが悪化している方や、水分代謝が悪い方が冷たい麦茶を大量に飲むとむくみを悪化させる可能性もあります。冷え性の方や寒くなるとむくみが悪化するタイプの方であればホットで飲む・水を飲み過ぎるとむくむ方であれば少量ずつ飲む、などご自身の体に合わせた取り入れ方をしてみてください。バードックルート(ごぼう茶)ダンデライオンルート(たんぽぽ茶)などとの相性も良いので、むくみが気になる方はブレンドしての利用もオススメです。


便通の改善に

大麦は「麦ごはんダイエット」などで話題になったように、水溶性食物繊維を豊富に含む穀類です。水溶性食物繊維は水に溶け出す性質があるため食物繊維補給源としても役立つお茶であると考えられています。ちなみに砕いたものは水溶性食物繊維をほとんど含まないとされていますので、水溶性食物繊維を期待するならば麦粒そのものを利用した麦茶を選ぶようにすると良いようです。

水溶性食物繊維は便の水分量を調節する働きがあるため便秘改善だけではなく軽度の下痢(軟便)の改善にも有効とされていますし、腸内善玉菌の餌となることで腸内フローラのバランスを整える働きもあります。そのほかに血糖値の上昇を抑制する働きも期待できますから、血糖値が気になる方やダイエット中の方は食前20~30分前に麦茶を飲むようにしてみると良いでしょう。


虫歯予防に

麦茶にはバクテリアの定着を予防する働きがあり、虫歯菌として知られるミュータンス菌の菌膜形成を阻害する働きがあることが報告されています。この事から日常的に麦茶を飲むことで虫歯になりにくいのではないかと考えられています。
とは言っても麦茶で完全に虫歯を予防できるわけではありませんし、着色の可能性もあります。麦茶はあくまでもお茶として飲んで、歯磨きは歯磨きできちんとするようにしましょう。


麦茶の気になるあれこれ

麦茶は体を冷やす? 温める?

体を冷やす働きがあることから暑さ負け・夏バテなどの予防に良いとされる一方、血液サラサラ効果によって血液循環が良くなることで麦茶は冷え性に良いという説もあります。これは漢方・薬膳の麦茶には全体的に体を冷やす作用があるとされているのをメインに捉えた場合と、成分的に見るとアルキルピラジンなどの働きで抹消血管の血流が良くなる=末端冷え性の改善に役立つことに重点を置いた差と考えられます。

麦茶は熱を冷ますお茶として飲まれてきましたが、麦茶の保存・飲み方として冷蔵庫でキンキンに冷しておいたもの飲む方が多いことも、より体を冷やす原因となっています。そのため常温もしくはホットで飲めば問題ないと紹介されていることもあるようです。どちらにせよ体を温める働きは期待できませんので全身的な冷え性・低体温の方には適さず、末端冷え性やほてりなど部分的な不快感がある方に適しているでしょう。

体を冷やす作用が心配な方は常温・ホットで飲むことを前提に、ショウガカモミール月桃シナモンなどを加えてハーブ麦茶として飲むようにしてみてください。


麦茶にミネラルは含まれている?

麦茶はミネラル豊富な飲みものとして紹介されることもあるようですが、日本食品標準成分表の数値としては100gあたり数ミリグラム程度と微量の含有になっています。各メーカー・商品によってミネラル含有量は異なりますが、どちらにせよ「ミネラル補給をたっぷりと補給できる」と言えるほどの量ではありません。
ちなみにミネラル麦茶として販売されているものはミネラルウォーターで作られたもの、もしくは浸出時にミネラル石を利用しているものなどを指します。こちらも通常の麦茶よりはミネラル含有量が高いものの、際立ってミネラルが多いというわけではありません。

ただし麦茶は薬理作用などを持つとされるハーブティーやカフェイン含有量が高い緑茶などと比べ、水代わりに1日1リットル以上飲まれることもあるお茶ですから、毎日ある程度の量を飲むことでミネラル不足緩和には役立つと思われます。麦茶を飲むことでミネラルを補給できるとは考えず、栄養バランスを意識した食事を心がけた上で麦茶を飲むようにしてください。

麦茶の種類と飲み方

麦茶は大きく煮出し用として販売されている“丸粒麦”、小分けタイプ(既にティーパックに分けられて販売されているもの)・水出し用として販売されている“挽砕麦”の2タイプに分かれます。

挽砕麦タイプ

多く流通している挽砕麦タイプの物は文字通り麦を砕いたものをティーパックに詰めていますので浸出が早く、容器にお茶パックと水を注ぐだけで出来るという手軽さがメリットになります。デメリットとしては香りが劣ること、砕く・砕いたまま置いておかれる過程で成分が若干減少していること、なるべく1日以内に飲んだほうが良いとされる痛みやすさなどが挙げられています。


丸粒麦タイプ

こちらは名前の通り焙煎した麦の粒そのもの。挽砕麦と比べると流通量は多くなく、お店によっては置いていないところもあるかもしれません。手間はかかりますが丸粒の方が香りや味がよく、成分的にも優れていると考えられています。

また粒麦を使う場合は煮出す前にフライパンなどで弱火で炒めてアミノ酸と糖の反応成分である「ピラジン」を増やすことが出来ます。血液サラサラ効果が高まるだけではなく、ピラジンは香ばしい香りの元となる成分でもありますから風味アップにも繋がります。炒め過ぎると揮発して抜けてしまいますので加熱時間は1~2分程度が良いとされています。


麦茶の飲み方・保存

麦茶は刺激性のある成分などを含みませんので特に摂取量に決まりはありませんが、1日2リットル以内の摂取が適正量とされています。麦茶にかかわらず水分補給全体に言えることですが、一度に大量に摂取せず100~200mlくらいずつに分け、こまめに飲むようにしましょう。

水出しに比べると煮出しは手間がかかりますが、沸騰の工程を得ることで雑菌が殺菌され日持ちが良くなるというメリットもあります。水出し麦茶の消費期限が1日以内とされているのに対し、煮出し麦茶は2~3日程度に日持ちします。とは言え傷みやすいお茶ですので常温もしくはホットで飲みたい場合でも冷蔵庫で保存したほうが無難です。

大麦(オオムギ)の注意事項

  • イネ科植物にアレルギーのある方は注意が必要です。また麦茶は基本的にグルテンを含まない飲料とされていますが、グルテン不耐症・アレルギーがある方は医師に相談の上取り入れるようにした方が安心です。