【カレンデュラ】
原料植物、ハーブティーに期待される効果効能

「皮膚のガードマン」とも称されるスキンケアハーブ

カレンデュラはポットマリーゴールドとも呼ばれる、ヨーロッパで古くから利用されてきたキク科植物です。別名「皮膚のガードマン」とも呼ばれるように古くから創傷・火傷・虫刺されや湿疹のケアなど皮膚トラブルのケアに利用されており、現在でも軟膏やスキンケア商品の成分として用いられています。ハーブティーとして飲んだ場合でも抗酸化作用によるアンチエイジング効果や、有害光から目を守ってくれる働きなどが期待されています。

カレンデュラ/ポットマリーゴールドのイメージ画像

カレンデュラ/ポットマリーゴールドとは

植物紹介:カレンデュラ(トウキンセンカ)

茶葉・水色ともに鮮やかな黄色が特徴的なカレンデュラ。エイティブルフラワーとしてサラダなどの彩りにも使われていますし、乾燥させても綺麗なことからポプリの材料としても人気があります。別名ポットマリーゴールドもしくは単にマリーゴールドとも呼ばれていますが、マリーゴールドというのは基本的にキク科植物のうち、コウオウソウ属(マンジュギク属)に属しており栽培される草花を指します。花壇などにも人気の、一般的に見かけるマリーゴールドがこちらですね。一方のカレンデュラはというと、同じくキク科ではあるもののキンセンカ属(Calendula)に分類されています。

つまりカレンデュラはマリーゴールドの一種というわけではなく、本来はマリーゴールドと同じく一つのグループを指す言葉。実際キンセンカ属に分類される植物は原種だけでも20種以上、栽培品種を含めるとかなり多くの品種数があります。ただしハーブとして「カレンデュラ」と言った場合は、キンセンカ属の植物全体ではなく、和名をトウキンセンカというオフィシナリス種(学名:Calendula officinalis)の事を指すのが一般的。属名でもあるCalendulaの語源はカレンダーと同じくラテン語で毎月の初日を表す「Calendae(Kalendae)」と考えられており、開花時期が長いことからそう名付けられたのだそう。和名の金盞花は「盞(さかづき)の形をした金色の花」の意味で、長春花は春に開花してから長期間咲き続けることに由来しています。

カレンデュラ(トウキンセンカ)を“ポットマリーゴールド(Pot marigold)”と呼ぶようになったのは外見が似ていたこと、聖母マリアの祝祭に咲く花だったことにかこつけた関係だそう。頭に付いている“ポット”は壺などの容器の方ではなく、食用できる野草・山菜を意味していると言われています。マリーゴールドに似ている食べられる花、という意訳が出来ますね。サプリメントなどではマリーゴールド抽出物としてアフリカン・マリーゴールド(学名:Tagetes erecta)やフレンチ・マリーゴールド(学名:Tagetes patula)由来の成分が配合されていることもありますが、植物そのものとして見るとマリーゴールド(Tagetes)類は食用には適さないと言われています。

カレンデュラはコモン・マリーゴールド(Common marigold)とも呼ばれるように、主にヨーロッパなどではよく知られた存在。これは原産地とされる南ヨーロッパ・地中海沿岸である古代ギリシアやローマをはじめ、アラビア・インドなど広い範囲で古くから食用と薬用の両方に取り入れられてきたためと考えられます。特に皮膚トラブルの治療に役立つハーブとして、創傷・火傷・虫刺されや湿疹のケアなどに広く活用されていましたが、古代エジプトでは若返り効果のある薬草として重宝されていたという説もありますよ。食用以外では黄色い着色料としても使用されており、サフランの代用品として使われたことから「貧乏人のサフラン」とも呼ばれています。中世にはカレンデュラを眺めていると視力が強化されるという考えもあったようですよ。

またギリシア神話では太陽神アポロンに恋をした者が姿を変えた植物であると伝えられています。カレンデュラにまつわる有名な話は2つあり、一つは当時アポロンの恋人であったレウトコエ王女を蹴落とそうとしたニンフ(精霊)のお話。もう一つは雲の神に恋路の邪魔をされた少年クリムノンが、8日間アポロンを待ちそのまま死んでしまうというお話。どちらもカレンデュラへと姿を変えるのは同じですが、ニンフは自分の行いを恥じて花へと姿を変え、クリムノンはその愛を受け止めたアポロンが愛の証として遺体を花に変えたと言われていますよ。こうした伝説からカレンデュラは悲哀の花とされ、花言葉も暗めの印象。ヨーロッパではお葬式やお墓に沿える花としても知られていますので、海外の方にお花を贈る時には注意が必要です。

古代から薬効のある植物と考えられてきたカレンデュラ。日本では観賞用植物という認識が一般的ですが、ヨーロッパでは現在もハーブ療法などの自然療法として使われていたり、軟膏などの成分として使われていたりと親しみのあるハーブの一つです。ドイツの薬用植物を医薬品として利用する場合の効果・安全性の評価委員会“コミッションE”でも咽頭炎や皮膚炎など皮膚および粘膜炎症への有効性が承認されており、国によって規定を満たしたものは医薬品にも活用されています。

基本データ

通称
カレンデュラ(Calendula)
別名
唐金盞花(トウキンセンカ)、金盞花(キンセンカ)、ポットマリーゴールド(Pot Marigold)、コモン・マリーゴールド(Common marigold)、ホーリーゴールド(Holygold)、長春花(チョウシュンカ)など
学名
Calendula officinalis
科名/種類
キク科キンセンカ属/一年草
花言葉
慈愛、静かな想い、初恋、別れの悲しみ、悲嘆など
誕生花
1月20日、2月8日、2月9日、2月13日など
黄色:1月12日、1月13日、8月16日
橙色:3月26日
使用部位
花弁(はなびら)
代表成分
フラボノイド類、カロテノイド類(ルテイン、ゼアキサンチンなど)、サポニン、フィトステロール(タラキサステロール)、多糖類、苦味質、精油
代表効果
抗酸化、抗菌、抗ウィルス、皮膚・粘膜の保護、抗炎症、発汗、血行促進、通経、収れん、創傷治癒
こんな時に
アンチエイジング、風邪・インフルエンザ予防、発熱、眼精疲労、ドライアイ、胃痛・胃炎、喉の痛み、口内炎、冷え性、むくみ、生理痛、PMS(生理前症候群)、更年期障害
【外用】ニキビ、湿疹、かぶれ、傷跡、乾燥、エイジングケア
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ、浸出油、湿布、スチーム吸引、手作り化粧品、料理用ハーブ
ハーブティーの味
野草系の青臭さ・苦味があるが、風味は弱めでサッパリした印象
カフェインの有無
ノンカフェイン

カレンデュラの成分と作用

カレンデュラティー/マリーゴールド茶に期待される効果

日々の健康維持のサポートに

抗酸化物質の補給に

カレンデュラにはフラボノイドやカロテノイドなどのポリフェノールが豊富に含まれています。こうしたポリフェノールには体内で過剰に発生した活性酸素を除去・抑制する抗酸化作用を持つことが認められています。活性酸素による攻撃(酸化)で正常な細胞がダメージを受けると、免疫力や内臓機能の低下、お肌であればシミやシワなどの老化現象が起こります。カレンデュラティーを飲む・エイティブルフラワーとして摂取するとこの活性酸素を抑制する抗酸化物質の補給となるため、若々しさや健康をサポートしてくれると考えられています。

活性酸素は本来私達が行きていくために必要な存在であり、ウイルスが体内に侵入したときは免疫細胞と共に撃退するなどの働きもあります。活性酸素が諸悪の根源と言われるような“問題”となるのは増えすぎた場合で、過剰に増加した働きどころのない活性酸素は健康な細胞を攻撃してしまいます。人の体には増えすぎた活性酸素を除去する抗酸化酵素がありますが年齢と共に減少してしまいますし、現在の生活は肉体・精神・環境面と様々なストレスが多くあり活性酸素が増えやすい状況にあるという指摘もあります。このためポリフェノールなど抗酸化作用を持つ食材の補給が健康維持に繋がると注目されています。


風邪・インフルエンザ予防に

カレンデュラにはタンニンやカレンデュリン、トリテルペン(サポニン)など抗菌・抗ウイルス作用のある成分が含まれていることが認められています。2003年に『Pharmacognosy Reviews』に発表されたカレンデュラに関する研究のレビューでもCalendula officinalisが抗菌性・抗ウイルス性を示すことが報告されています。そのほかトリテルペンには免疫系を刺激して白血球を活性化させる=免疫力向上効果を持つのではないかという見解もありますし、抗酸化の方面からも免疫機能を正常に保つ働きが期待できます。

お茶として飲むよりもうがい薬のような感覚で使われることの多いカレンデュラティーですが、地域によっては発汗を促すことで解熱作用を発揮してくれると民間療法でも取り入れられている存在。喉の不快感や痛みなどがある場合はうがい薬として使用しても良いですが、健康茶として飲むことでもある程度の風邪・インフルエンザ予防としては役立つと考えられます。体を温める働きがあるとされるカモミールティーや、殺菌消毒作用を持つとされるラベンダーティーとのブレンドもオススメ。味としても飲みやすくなりますし、リラックス効果も期待できますよ。

粘膜系のトラブル対策にも

目の健康維持に

カレンデュラはポリフェノール、特に視機能保持に対して効果が期待できるカロテノイドを含むことから目の健康をサポートしてくれるお茶としても注目されています。カロテノイドの中でもキサントフィル類に分類されるルテインは私達の目の水晶体や黄斑部に存在している物質であり、抗酸化作用によって目を活性酸素から守る働きもあります。実験では加齢性黄斑変性や白内障発症率の低減に対する有効性が報告されていることから、加齢により発症リスクが高まる眼病予防にも取り入れられています。

また、ルテインはレンズと網膜への光誘発損傷に対して保護効果を持つことが報告されており、紫外線やパソコンやスマートフォン・TVなどが発する青色光(ブルーライト)などの有害光から目を守ってくれる「天然のサングラス」としても注目されている存在です。この働きから加齢に伴い発祥リスクが高まる白内障などの予防だけではなく、疲れ目・眼精疲労予防として若年世代からもルテインは注目されています。ルテインを含むカレンデュラティーも目を酷使する現代人のサポーターとして、視力低下や目のかすみ・視力低下予防に取り入れられています。パソコンやスマホをよく利用する方、眼精疲労が気になる方はやブルーベリー(実)やアイブライトマロウブルーハイビスカスコーンフラワーなどとブレンドして飲んでみても良いでしょう。


胃・口腔の粘膜保護にも

カレンデュラの花が黄色~オレンジ色をしているのはカロテノイドが含まれているからですが、このカロテノイド色素の中にはプロビタミンAと呼ばれる体内でビタミンAに変換される成分が含まれています。ビタミンAは私達の皮膚や内蔵・目などの粘膜を丈夫に保ったり、損傷部分の修復に関わる働きを持つビタミン。このためカロテンを含むカレンデュラの摂取は、ビタミンA不足を解消することで口内や胃などに起こる粘膜炎症の予防・回復促進に繋がると考えられています。

加えてカレンデュラに含まれているケルセチンなどのフラボノイド類には、抗炎症作用を持つ可能性も報告されています。日本でも2001年には京都薬科大学からインドメタシンに起因する胃粘膜病変に対する阻害作用が見られたという報告がなされています。このためカレンデュラティーは体の内側の粘膜に発生する炎症・それに伴う痛みの軽減に役立つお茶としても取り入れられています。胃腸への働きかけや胃潰瘍予防などに対してはデータが不十分な部分もあり有効性は不明であるという指摘もありますが、予防や軽度の痛みを抑えたい場合には健康茶として取り入れてみても良さそうですね。

そのほか期待される作用

むくみ・冷え性軽減に

カレンデュラには血行促進作用があるという説もあります。直接的に血液循環を促す成分が含まれているかは定かではないですが、ポリフエノールによる抗酸化作用によって血流がスムーズに保たれる・血液サラサラ成分として注目されるケルセチンが含まれていることなどから、血液循環を正常に保つための手助けをしてくれる可能性は考えられます。

そのほかポリフェノールやフィトルテロールが肝臓や胆嚢を刺激することで働きを高め、解毒機能や尿の排出を高めるという説もあります。こちらについては作用秩序や成分などがハッキリしていないため懐疑的な見方も多いですが、血液・血管の状態を正常に保持して体液循環を促すことと合わせてむくみの軽減・デトックス効果も期待されていますよ。抗酸化作用や血行促進作用は代謝低下予防にも関わりますから、冷え性の軽減やダイエットサポートを主眼としたブレンドティーには移動されていることもあります。


生理痛などの女性の不調に

開花時期を月経周期と関連付けたという側面もありますが、カレンデュラティーは月経不順に対する民間薬として使われてきた歴史もあるもの。現在でもカレンデュラに含まれているフィトステロールには女性ホルモン(エストロゲン様)作用があるという見解があり、一部では月経促進・月経周期調節に役立つお茶として取り入れられています。ただし月経を誘発する働きが考えられることから、妊娠中や授乳中などデリケートな時期は避けるべきハーブの一つにも数えられてるため注意が必要。

女性ホルモンへの働きかけを持つ可能性があること、抗炎症作用によって生理痛を和らげてくれると考えられることからカレンデュラティーは女性をサポートしてくれるお茶としても親しまれています。月経不順や生理痛だけではなく、ホルモンバランスの変動によって生じるPMS(月経前症候群)や更年期障害に対するナチュラルな軽減策としても注目されています。


肌老化予防・美肌保持に

フラボノイド類・カロテノイド類・トリテルペンなど様々な抗酸化物質を含むことから、カレンデュラティーは肌を若々しく保つための美肌サポートティーとしても役立つと考えられます。肌細胞がフリーラジカルによってダメージを受けるとシミやシワ・皮膚のたるみやくすみなど肌の老化が促進されることが指摘されています。抗酸化物質の補給はこうした悪影響を抑え、若々しく美しい肌を保つ手助けになる可能性があります。

加えて、ルテインやゼアキサンチンなどが持つ抗酸化作用は、内服によっても太陽の有害な紫外線(UV)から皮膚を保護する働きがあることが報告されています。アメリカで46人を対象として行った実験では、プラセボ摂取に比べてルテインおよびゼアキサンチン異性体摂取グループは全体的な肌のトーン大幅な改善が見られたという結果が2016年の『Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology』に発表されています。皮膚細胞を早老やUVB誘発腫瘍から保護する可能性を示唆した報告もありますから、お肌の老化予防・シミ予防として取り入れてみても良さそうですね。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

お肌のサポーターとして注目

カレンデュラは「皮膚のガードマン」とも称されるように、皮膚を保護したり炎症部の修復を助ける働きが期待されているハーブ。古代ヨーロッパでも皮膚トラブルに対して有効性が高い薬草として扱われていた歴史がありますし、現在でも欧米では市販の軟膏・スキンケア化粧品の配合成分として使われています。


皮膚炎症の予防・ケアに

カレンデュラには抗菌作用や抗真菌・抗ウィルス作用があるため皮膚を清潔に保ってくれること、抗炎症作用を持つことが報告されています。まだ作用秩序については解明されていないものの、1996年『Herbal Medicines: A Guide for Healthcare Professionals』では疼痛軽減特性を有することが、『Encyclopedia of Common Natural Ingredients Used in Food, Drugs and Cosmetics』では創傷部位での糖タンパク質と核タンパク質およびコラーゲン代謝の増加が見られたことなども報じられています。

このためカレンデュラやその抽出物は皮膚の痒みや炎症の軽減、修復促進に役立つと考えられており、あせも対策や湿疹・傷跡や妊娠線のケアなどに広く利用されています。当日中であればカレンデュラから浸出したハーブティーをそのまま使うことも出来ますが、スイートアーモンドオイルやホホバ油などに漬け込んでカレンデュラオイルに、もしくはアルコールで浸出させチンキを作る方も少なくありません。手作りできるという安心感もあり、赤ちゃんのおむつかぶれなどに利用されることもあります。


肌老化予防・美肌保持に

カレンデュラは抗菌作用があることに加えて、収斂作用を持つハーブでもあります。このため脂性肌のケアやニキビ対策としても用いられていますし、カロテン類の働きで皮膚を守る・保湿する=乾燥肌対策にも繋がると考えられることから肌タイプを選ばずに利用されています。加えてルテインには肌の水分保持量・弾力性増加効果を持つ可能性が報告されていること、カレンデュラには抗酸化物質が豊富に含まれていることからシワやシミが気になるエイジング肌のお手入れとしても使われています。

抗菌・保湿・抗炎症・皮膚細胞の成長促進など様々な働きが期待できることから、カレンデュラオイルやカレンデュラ抽出物は様々な化粧品に配合されていると言えるのかもしれません。また、in Vitro評価ではクリーム製剤中のカレンデュラ油に日光保護因子(SPF)活性が見られたという報告もなされています。ただしカレンデュラの働きについては日焼け止め効果をはじめ有効性が示唆されている段階の作用や特性も多く、全てが認められたものではないため注意が必要。自己判断で使用する場合には自身の肌質と合うかを第一に考えて下さい。

入浴剤としても…

体全体の皮膚が乾燥している時や、汗疹などのトラブルが気になる場合はハーブティーの茶葉を浴槽に入れて入浴剤代わりに利用するのもオススメ。入浴剤として利用することでボディニキビの予防にも繋がりますし、、保湿湿効果が高いのでかかとなどのひび割れにも良いという説もあります。初めて使用する場合にはパッチテストを行うなど注意が必要ですが、アトピー性皮膚炎の方のかゆみ対策として使われることもありますよ。美肌効果という面でも十分に期待できますから、ティーを飲み終わった後の再利用でカレンデュラ風呂を試してみても良いのではないでしょうか。

カレンデュラの注意事項

  • 妊娠中・授乳中の方は経口摂取を避けましょう。
  • キク科植物にアレルギーのある方は使用に注意が必要です。

参考元