イブニングプリムローズ/月見草
ハーブティー・オイルと期待される効果効能紹介

アレルギー軽減や女性領域の不調軽減のサポートに

γ-リノレン酸を含むことからイブニングプリムローズ(月見草/待宵草)は月経前症候群や更年期障害など女性領域の不調や、アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状軽減効果などが期待されているハーブの一つです。γ-リノレン酸の関係からハーブティーとしてよりもオイルサプリメント・キャリアオイルとして取り入れられることが多く、近年は乾燥肌対策などにも役立つと考えられることから美容オイルとしても人気が高まっています。

画像:イブニングプリムローズ(月見草)

 

イブニングプリムローズについて

植物紹介:月見草/待宵草

イブニングプリムローズはアカバナ科マツヨイグサ属に分類される植物で、ハーブとしても用いられていますがオイル(月見草油)の原料として見かけることのほうが多いかもしれません。原産地はメキシコ周辺と考えられ、北米に暮していたネイティブ・アメリカンの人々は古くからイブニングプリムローズを薬草として用いていたと言われています。咳止めや痛み止めには内服薬として、皮膚病・傷の治療などはすり潰すしたものを患部に塗っていたのだとか。17世紀にはイギリスに伝えられると高い薬効を持つ「cure-all king(王の万能薬/万能薬の王様)」として珍重され、ヨーロッパ中に広まっていきました。貴族達の間でダイエットティーとして愛飲された時期もあるようです。

一度聞いたら忘れないような“Evening primrose(イブニングプリムローズ)”や“月見草(ツキミソウ)”というロマンチックな名前。由来は「日が沈む頃に花を咲かせ、朝になると萎んでいく」という話もよく知られていますが、実は同属種の中で名前の混同が多くゴチャついた存在でもあります。
標準和名で「月見草」という名前がつけられているのはマツヨイグサ属の中でOenothera tetrapteraという種だけ。こちらは咲き始めは白っぽく、朝方にはピンクがかった色をしています。対してイブニングプリムローズとしてハーブや月見草オイルの原料としては、メマツヨイグサ(雌待宵草)と呼ばれるO. biennisや、待宵草(マツヨイグサ)と呼ばれるO. strictaなど黄色い花を咲かせるものが主に利用されています。多少例外はあるようですが、概ねマツヨイグサ属の植物の和名は黄色系統を待宵草(マツヨイグサ)・白系~ピンク統を月見草(ツキミソウ)・赤系統を夕化粧(ユウゲショウ)と系統立てて付けられていたそうです。

ちなみに「宵待草(ヨイマチグサ)」という呼び方は竹久夢二が詩の中で誤って書いたと言われていますが、後にこの詩に曲が付けられ流行歌となったことで呼び方の一つとして定着してしまったのだとか。こちらは顕著な話ですが、文芸作品などで見られる月見草・待宵草などの表記は別のマツヨイグサ属を指していると考えられるものが多いという背景もあり、現在はマツヨイグサ・メマツヨイグサ・オオマツヨイグサなど黄色系の花を咲かせる同属種も「月見草」と呼ばれることが多くなっています。イブニングプリムローズオイルが待宵草油ではなく月見草油とされているのも、こうした事情からでしょう。英名としてはメマツヨイグサ(O. biennis)を“Common Evening-primrose”と呼び分けることで区分することもあるそうです。

17~19世紀にかけてヨーロッパで流行したと言われるイブニングプリムローズですが、20世紀に入ると合成医薬品の登場などから薬用としての利用は一部の自然療法のみとなります。しかし1930年代に生理活性物質(プロスタグランジン)が発見されると材料物質であるγ-リノレン酸が含まれる植物として再び脚光を浴びるようになります。γ-リノレン酸への世界の注目が集まり様々な作用を持つ可能性が報告されたことで、日本でもアトピー性皮膚炎や更年期障害・PMSなど女性ホルモンの変動による不調に悩む方に注目される植物となっています。

基本データ

通称
イブニングプリムローズ(Evening primrose)
別名
月見草(ツキミソウ)、待宵草(マツヨイグサ)、雌待宵草(メマツヨイグサ)
学名
Oenothera biennis
(※Oenothera strictaなども使われる)
科名/種類
アカバナ科マツヨイグサ属/多年草または1年草
花言葉
無言の愛情、物言わぬ恋、移り気、自由な心、協調
誕生花
6月19・21日、8月30日
使用部位
ハーブティの場合は葉・茎・根
代表成分
脂肪酸(リノール酸、γ-リノレン酸)、プロアントシアニジン、ビタミンE
代表効果
ホルモンバランス調整、血圧降下、抗コレステロール、抗血栓、肝機能向上、肥満予防、血流改善、抗アレルギー、抗炎症
こんな時に
月経前症候群(PMS)、更年期障害、生理痛、生活習慣病(高血圧・動脈硬化・糖尿病など)予防、アトピー性皮膚炎軽減、老化予防、美肌、アレルギー緩和
おすすめ利用法
ハーブティー、オイル、手作り化粧品、キャリアオイル
ハーブティーの味
香りは草系で爽やだが、アク・苦味を感じる味で好き嫌いが別れる
カフェインの有無
ノンカフェイン

イブニングプリムローズの栄養・成分・期待できる効果

イブニングプリムローズティー(月見草茶)

女性の身体のサポートに

月経前症候群(PMS)軽減に

イブニングプリムローズの代表成分と言えるのが、γ-リノレン酸(ガンマリノレン酸/GLA)と呼ばれる不飽和脂肪酸です。γ-リノレン酸は別名「ビタミンF」とも呼ばれるn-6系の多価不飽和脂肪酸で、人間の体に必要不可欠な脂質=必須脂肪酸でもあります。γ-リノレン酸は皮膚・髪・爪などの形成に関係するほか、体内でジホモ-γ-リノレン酸へと代謝されることでプロスタグランジンE1という生理活性物質の材料としても活用されます。

プロスタグランジンE1は私達の身体にとって様々な働きを持つことから「善玉ホルモン」とも称されており、ホルモン分泌を正常に整える・細胞組織の機能を正常化するなどの働きも期待されています。また、かつてはホルモンバランスの乱れやプロスタグランジンの過剰増加が原因と考えられていた月経前症候群(PMS)ですが、近年の研究ではイライラ・憂鬱・胸の張り・むくみ・頭痛などのPMSの症状を訴える女性は血中γ-リノレン酸濃度が低い割合が高いことも示唆されています。このため血液中のγ-リノレン濃度を一定に保つことがPMS症状軽減に繋がるのではないかと考えられています。またプロスタグランジンE1の働きによってホルモンバランスを整える可能性からも、PMS改善が期待できるでしょう

イブニングプリムローズ(月見草)はヨーロッパで以前から更年期障害やPMSなどの女性に特有の症状の改善するハーブとして親しまれてきたのも、γ-リノレンの補給に役立つことが大きいと考えられています。加えてイブニングプリムローズにはγ-リノレンだけではなく、ホルモンバランスの維持や性ホルモンの代謝に関わるビタミンEも含まれています。ビタミンEもまた月経前のイライラ軽減などに有効と考えられている成分のため、複合してPMS軽減サポートが期待できるという説もあります。


更年期障害の軽減に

更年期障害は閉経に伴う女性ホルモンの減少によって、自律神経のバランスが乱れることで様々な不調・不快症状を起こすと考えられています。γ-リノレン酸から変換されるプロスタグランジンE1は体が備えているバランス調整機能を活発にすることで、様々な体機能のバランスを整えてくれるのではないかとする説もあります。この働きからイブニングプリムローズには更年期障害の症状軽減に役立つ可能性もあるのではないかと考えられいます。ビタミンEも更年期障害の改善に有効とされているビタミンですね。

2011年に発表された更年期障害の女性120人を対象にした実験では、月見草油・ダミアナ・オタネニンジン・ローヤルゼリーの4つの天然成分を組み合わせたカプセル剤を4週間摂取することで症状の改善が見られたという報告もなされています。ただし更年期障害やPMSに対する有効性が報告されている実験では月見草油が使用されているものがほとんどであり、お茶にして飲む場合は水分に溶け出す成分は少ないと考えられます。また有効性に対してもデータが不十分であることが指摘されていたり、否定的な見解もありますので、ご自身の体質・体調に合っているかを確認しながら取り入れるようにしましょう。


生理痛・月経不順対策にも期待

イブニングプリムローズに含まれるγ-リノレン酸から合成されるプロスタグランジンE1はホルモン分泌を整える以外に、生理痛などを引き起こすプロスタグランジンE2の働きを抑制する働きがあります。このためイブニングプリムローズ・月見草油は生理痛の軽減にも取り入れられています。また体内のγリノレン酸量が不足すると子宮内膜が正常に機能しなくなる可能性があると言われていることから、ホルモン分泌を整える働きと合わせて月経不順の改善をサポートしてくれるのではないかという説もあります。


健康維持のサポートにも

肥満・生活習慣病予防

γ-リノレン酸から変換されるプロスタグランジンE1は「善玉ホルモン」と称されるのは、血圧や悪玉(LDL)コレステロール・血糖値などを低下させる働きがあると考えられることが大きいと言われています。実験では中性脂肪の上昇を抑えつつも善玉(HDL)コレステロールは低下させない働きを持つことも示唆されているため、γ-リノレン酸を含むイブニングプリムローズは善玉コレステロール増加・悪玉コレステロール減少を目指す方のサポートにも役立つのではないかと期待されています。

血中の悪玉コレステロール(LDL)は血液をドロドロの状態にする・血管壁を傷つけると称されている存在で、血管に蓄積したものが酸化されることで高血圧・血栓や動脈硬化の原因ともなります。このためγ-リノレン酸は生活習慣病予防としても注目されており、中性脂肪抑制や代謝促進などの働きが期待できることからメタボリックシンドロームの予防にも繋がると考えられています。血糖値低下と合わせて糖尿病予防に良いという説や、月見草油が肝臓機能の回復に役立つという報告もあります。


血行促進・冷え性軽減

イブニングプリムローズに含まれているビタミンEは末梢血管を拡張させることで末端部への血流を促す働きがあります。抗酸化作用によって血中脂質などの酸化を防ぐ働きもあるため、血流改善に役立つビタミンと考えられています。γ-リノレン酸にも悪玉コレステロールを減少させる働きや血液循環を整える働きが期待されていますから、ビタミンEと共に血液循環を整えて血行不良による冷え性・肩こり・頭痛などの軽減をサポートしてくれるでしょう。

また血液循環の改善や抗酸化は代謝機能向上にも繋がります。γ-リノレン酸にはより直接的な代謝機能の活発化が期待できることもあり、代謝が良くなることからも冷え性軽減をサポートしてくれると考えられます。肥満・メタボリックシンドローム予防に役立つとされていることもあり、イブニングプリムローズティーはダイエットサポート用として取り入れられることもあるそうですよ。


アトピー性皮膚炎の軽減

月見草に含まれているγ-リノレン酸は皮膚細胞の防御機能・水分調整機能を高めることで皮膚を守る働きがあると考えられています。母乳にも含まれている成分であり赤ちゃんの皮膚の正常な形成・バリア機能向上にも欠かせないと言われています。肌を健康に丈夫に保つ成分と言える栄養素ですから、γ-リノレン酸が不足した場合は皮膚の乾燥や炎症を起こしやすくなる事が指摘されています。デイヴィッド・ホロビン博士の研究では、アトピー性皮膚炎患者はγ-リノレン酸の血中濃度が健常者の50%しかないことも報告されています。

またγ-リノレン酸から生成されるプロスタグランジンE1は抗炎症物質とされており、γ-リノレン酸はアトピー性皮膚炎の症状「かゆみ」を抑制に有効であるという報告もなされています。こうした研究結果からγ-リノレン酸はイギリス・フランス・ドイツなどヨーロッパの一部では医薬品として扱われています。

ただしヨーロッパで医薬品として使われている・臨床実験で用いられているのはγ-リノレン酸そのもの、もしくはγ-リノレン酸の含有量が多い月見草オイルなどですから、ハーブティーとして摂取した場合の有効性については分かっていません。女性領域での働きと同様にアトピーに対する有効性にとしてもデータが不十分であることが指摘されており、否定的な見解もあります。日本では食品として扱われているものですから軽減をサポートしてくれる可能性がある程度に考え、過度な期待・過信は避けましょう。


そのほか期待される作用

美肌保持・アンチエイジング

イブニングプリムローズティー(月見草茶)にはビタミンEが含まれています。ビタミンEは若返りのビタミンとも呼ばれる抗酸化作用を持つビタミンであり、細胞を活性酸素などによる酸化ダメージから守ることで老化を防いでくれる働きがあります。肌細胞の酸化はシワ・たるみなどの肌老化の原因となる可能性がありますから、内側からのアンチエイジングに役立ってくれるでしょう。

またγ-リノレン酸は皮膚細胞の防御機能・水分調整機能を高めることで皮膚を守る働きがあると考えられています。ビタミンEが血行を促すことで肌にしっかりと栄養を行き渡らせることと相乗して、新陳代謝向上にも効果が期待できるでしょう。そのほかγ-リノレン酸はホルモンバランスを整える働きも期待されていますので、生理前の肌トラブル予防に役立つとする説もあります。


アレルギー・リウマチ軽減

γ-リノレン酸から生成されるプロスタグランジンE1は抗炎症物質として働くことから、アトピー性皮膚炎だけではなく花粉症など他のアレルギー軽減にも役立つのではないかという説があります。同様の理由から関節リウマチの予防や治療に対する研究も行われており、有効性が示唆された報告もなされています。

イブニングプリムローズオイルについて

植物としては珍しいγ-リノレン酸(ガンマ-リノレン酸)という不飽和脂肪酸を含むオイルとして知られているイブニングプリムローズオイル。イブニングプリムローズ(月見草)はγ-リノレン酸を多く含む植物として知られていますが、中でも種子に多く含まれているため種子から採油されたオイルには高い効果が期待出来るでしょう。

オイル基本データ
名称
イブニングプリムローズオイル/月見草油
学名
Oenothera biennis
抽出部位
種子
抽出方法
低温圧搾法
黄色
香り
若干クセのある強めの香り
粘度
やや高め
適応肌質
乾燥・成熟・アレルギー肌
こんな時に
荒れた肌の修復・炎症緩和・ホルモンバランスの調整
注意事項
γ-リノレン酸は光・熱・湿気・酸素によってすぐに変化してしまうため、開封後は冷暗所に保管し早く使い切る(1ヶ月以内がベスト)。割高感があっても少量ずつ購入する方が良いでしょう。
お肌のケアに

イブニングプリムローズオイルはやや粘度が高いものの伸びが良く、植物性のオイルには珍しいγ-リノレン酸が約10%前後含まれています。γ-リノレン酸は保護膜のように皮膚を守る役割があることから、保湿・乾燥肌対策として役立ってくれるでしょう。新陳代謝の活発化や、荒れた肌を滑らかな状態に戻すなどの働きもあると言われています。角質化したゴワゴワ肌や老化が気になる方のケアにも役立ってくれるでしょう。

リノール酸の含有も多い(60~70%)ことから肌を柔らかくなめらかな状態に整えるエモリエント効果や保湿効果も期待出来ます。このため美容・トリートメントオイルとしても人気があり、WELEDAなどの有名メーカーのボディオイルにも配合されていますね。そのほかセルライトケアのマッサージオイルとしても利用されています。


アレルギー肌のお手入れにも

イブニングプリムローズオイルに含まれているγ-リノレン酸は保護膜のように皮膚を守る役割があることから、保湿・乾燥肌対策として役立つと言われています。このため乾燥性敏感肌や、乾燥によって痒みが増すアトピー性皮膚炎の方のお手入れにも取り入れられています。また皮膚のバリア機能を高めることで免疫力向上・アトピー性皮膚炎の軽減効果も期待されています。

ヨーロッパではイブニングプリムローズオイルをアトピー性皮膚炎患者に経口摂取させるなどの臨床実験も行われており、かゆみなどの症状改善がみられたとの報告もなされています。内服と外用両方からイブニングプリムローズオイルを取り入れるという方もいらっしゃるそう。より高い効果を期待する場合はγ-リノレン酸含有量の高いボラージオイルを使用してみても良いでしょう。

イブニングプリムローズの注意事項

  • 妊娠中の方・てんかん患者の方は使用を避けましょう。
  • 稀にアレルギーを起こす場合があるとされていますので。使用には注意が必要です。
  • 頭痛、吹き出物、吐き気、胃腸障害などの副作用を起こす場合があります。