【フィーバーフュー】
原料植物、ハーブティーに期待される効果効能

偏頭痛軽減についての研究が行われている「18世紀のアスピリン」

フィーバーフューは和名をナツシロギクというキク科植物で、原産地であるヨーロッパでは古代ギリシア時代から解熱・抗炎症のために使用されてきたハーブです。フィーバーフューという呼び名も解熱作用に起因するのではないかと考えられていますよ。現在では解熱目的に使用することはありませんが、古くから伝統医療・民間療法の中で活用されてきた関係もあり様々な働きが期待されています。パルテノリドなどの成分に抗炎症作用が報告されていることから、片頭痛対策にも根強い人気があるようです。

フィーバーフューのイメージ画像

フィーバーフュ-とは

植物紹介:ナツシロギク

ハーブティーやサプリメントなどの健康補助食品で時折見かけるフィーバーフュー。日本では植物としてもハーブとしても馴染み深いと言える存在ではありませんが、ヨーロッパでは伝統的な薬用ハーブの一つであり、お庭に植える植物としても古くから親しまれてきたのだとか。フィーバーフューはマリーゴールドやパセリなどと同じく、虫除け(主にアブラムシ)のためのコンパニオンプランツとしても評価されています。葉に触れると若干薬臭いような、柑橘系っぽさの混じった独特の香りがすることも特徴。名前だけでは植物の姿が想像できませんが、フィーバーフューは和名をナツシロギク(夏白菊)というキク科植物。現在はヨモギギク属に分類するのがポピュラーとなっていますが、、以前はカモミールと同様のシカギク属(Matricaria属)に分類されていたため園芸名では「マトリカリア」とも呼ばれていますよ。

西アジアから南東ヨーロッパにかけての地域が原産と考えられており、古代ギリシアや古代ローマ時代から薬用植物として使用されてきたことが分かっています。フィーバーフューの学名はTanacetum partheniumで、属名のTanacetumは不老不死を意味するギリシャ語が、種小名parthenium(パルテニウム)は古代ギリシア時代にパルテノン神殿から転落した人の命をフィーバーフューが救ったという伝承が語源と考えられています。薬用目的でのフィーバーフューの使用について古代ギリシアの医師ペダニウス・ディオスコリデスが、解熱・抗炎症剤のような働きを持っていると記したものが確認できる記録としてもは最古とされています。そのほかにギリシアやローマでは月経促進剤や頭痛・腫れに対してのケアにもフィーバーフューを使っていたと推測されており、種小名partheniumの語源についても乙女(parthenos)の不調緩和に役立つ薬草だったからではないかという説もありますよ。

古代ギリシア時代にフィーバーフューは「パルテニウム(parthenium)」と呼ばれていた、現在使われているフィーバーフュー(feverfew)という呼び名は“発熱(febris)”と“追い払う(fugare)”を合成した後期ラテン語“febrifugia”という説が通説となっています。しかし語源については諸説あり、葉が羽の形に似ていたため「Featherfew」と呼んでいたものが変化したという説や、解熱に使っていたがあまり効果的ではなかったから「Fever-few」だという説もあります。ヨーロッパでは伝統的にフィーバーフューは熱と腫れを軽減するハーブとして頭痛・歯痛・関節炎・喘息・ヒステリー・女性の生殖障害など様々な事に用いられてきました。しかし語源説にも登場するように、現在は解熱剤としての働きはほとんどないと考えられています

ところで、ヨーロッパでは近世以降イギリスでフィーバーフューがよく使われていたようです。17世紀頃にはイギリスのハーバリスト(薬剤師)ジョン・パーキンソンがアヘンの過剰摂取からの回復を早める治療薬としてフィーバーフューを推奨したり、ニコラス・カルペパーが炎症および神経痛の軽減やマラリア治療に活用するなど、当時の一流の薬師達が挙って使用したと伝えられています。カルペパーは占星術師の顔も持っていたためか「女性の子宮を強壮するよう、ヴィーナスはこのハーブに命じた」というような意味深な評価も残しているようですが…。長く民間医薬として使用されてきたフィーバーフューは1978年に偏頭痛が治ったという女性がイギリスで報道されたことで話題となり、そこから科学的な研究が盛んになっていきましたプロスタフランジン抑制作用が報告されたことで、片頭痛に悩む方を中心に「18世紀のアスピリン」または「奇跡のアスピリン」として1980年代に人気を博しました。

基本データ

通称
フィーバーフュ-(Feverfew)
別名
夏白菊(ナツシロギク)、マトリカリア(Matricaria)
学名
Tanacetum parthenium
科名/種類
キク科ヨモギギク属/多年草
花言葉
鎮静、集う喜び、楽しむ心、深い愛情など
誕生花
5月27日、6月1日、7月2日など
使用部位
地上部(葉、茎、花)
代表成分
セスキテルペノイド類(ゲルマクラノリド/パルテノリド、オイデスマノリド、グアイアノリド、フラボノイド類(タネチン、ルテオリン、ケルセチン、アピゲニンなど)タンニン、揮発油
代表効果
抗炎症、鎮痛、血液凝固抑制、血管拡張、弛緩、消化促進、抗菌
こんな時に
偏頭痛予防、関節炎、リウマチ、アレルギー症状(喘息・花粉症)軽減、生理痛、薄毛予防、胃痛、腹痛、消化不良
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーブチンキ、ハーバルバス、手作り化粧品、ポプリ
ハーブティーの味
緑茶系の爽やかなグリーン系の香り、味は少し苦味がある
カフェインの有無
ノンカフェイン

フィーバーフュ-の成分と作用

フィーバーフューティーに期待される効果

鎮痛・抗炎症剤の

偏頭痛の予防緩和に

フィーバーフューについて最も研究されていると言えるのが、片頭痛に対しての働きかけです。フィーバーフューの特徴成分にゲルマクラノリドクラスのセスキテルペンラクトン、パルテノリド(Parthenolide/パルテノライドとも)があります。パルテノリドには様々な生物活性を持つ可能性が報告されている成分。頭痛に関連するものとしては2004年『Pharmacology Biochemistry and Behavior』に発表されたラットを使ったアメリカの研究では、パルテノリドの投与は痛覚過敏反応を有意にブロックしたことが報告されています。またin vitro試験ではフィーバーフュー抽出物に血液(血小板)凝固抑制作用やセトロニン放出抑制作用が見られたことも報告されています。

偏頭痛の原因自体についてもはっきりと断定はされていませんが、脳の血管が過度に広がって痛みを感じる神経を刺激することが原因の一つとして挙げられています。この強い痛みを引き起こすほどの血管拡張はセロトニンの分泌によるものと考えられています。セロトニンはハッピーホルモンとも呼ばれ、ストレスを感じた際などに分泌されるドーパミンやノルアドレナリンのバランスを取ることで精神安定を促す存在として取り上げられることの多い存在。しかし、精神安定以外に血管を収縮させる働きを持っており、セロトニン分泌が収まると収縮した血管が元に戻ろうと拡張しすることで偏頭痛が起こるのではないかという説があります。このためパルテノリドの持つ血小板凝集とセロトニン放出阻害作用は、血液の流れをしっかりと確保することで偏頭痛の軽減や予防に役立つのではないかと考えられています。

加えてパルテノリドには炎症促進物質であるプロスタグランジン抑制作用があることも報告されており、ロイコトリエンやトロンボキサンチンなどの生理活性物質のバランスを正常化することで偏頭痛の激しい痛みに伴う吐き気・嘔吐・光過敏症に役立つ可能性も示唆されています。しかしフィーバーフューは偏頭痛を感じた時に摂取することで鎮痛剤のように働くのではなく、数ヶ月間継続して服用することで偏頭痛の発生・強度を抑える働きが期待されているハーブ。ある研究ではフィーバーフューとホワイトウィローを組みわせ1日に2回12週間服用した人は片頭痛が少なく、痛みを感じていた時間が短かったという報告もあります。

そのほかにもフィーバーフュー抽出物を使用した研究で片頭痛の頻度と強度を減少させることが報告されている一方、プラセボの間に有意差がないという報告も多くあります。『The Cochrane Database of Systematic Reviews』に掲載されたフィーバーフューの系統的レビューでも、片頭痛に対してプラセボよりもわずかに効果的であることを示唆するに留まっています。パルテノリドの作用についても解明されているとは言い難いですし、パルテノリド含有率はフィーバーフューの遺伝系統によって大きく異なることも指摘されています。こうした事情から作用については盲信せず、自分の体調を見ながら取り入れていく必要があるでしょう。また、4ヶ月以上のフィーバーフュー継続利用についても研究されていないため、3ヶ月以内でお休み期間を挟むようにしましょう。


関節炎やリウマチに

フィーバーフューに含まれているパルテノリドには炎症促進物質であるプロスタフランジンの生成阻害、炎症誘発性サイトカインを阻害作用を示唆した研究報告があります。パルテノリドに関節炎に関連する炎症誘発性シグナル伝達経路となるNF-κBの活性化プロセスを阻害する働きが見られたという報告もあることから、関節炎の痛み軽減・進行予防に役立つのではないかと考えられています。フラボノイドなどの抗酸化作用と合わせて、関節組織をフリーラジカルによる損傷から保護する働きも期待されています。

抗炎症作用や鎮痛作用が期待できること・伝統的に使用されてきたことから、フィーバーフューは関節炎だけではなくリウマチや神経痛などの緩和にも活用されています。フィーバーフューに炎症軽減効果が見られた・強力な鎮痛剤として作用する可能性を示唆した報告もありますが、ヒトを対象とした研究では“フィーバーフュー抽出物はプラセボよりも関節リウマチの症状改善に効果がなかった”という報告もあります。こちらも偏頭痛と同じかそれ以上に研究報告にバラつきがあり、有効性については未知数です。


アレルギー軽減にも期待

フィーバーフューはアレルギー反応を抑制することにも役立つのではないかと期待されています。プロスタグランジンの産生と好中球の作用を低下させることで炎症を軽減する働きが期待できること、フィーバーフューから抽出された化合物を使った動物実験ではヒスタミン放出放出抑制が見られたと報じられたことが理由。こうした働きから喘息や花粉症などのアレルギー症状緩和に役立つ「天然の抗ヒスタミン剤」となるのではないかと注目されています。派生して鼻詰りによる酸素不足などから発症する花粉症による偏頭痛・頭のぼんやり感の緩和などにも効果が期待されていますが、アレルギー軽減についての研究はほぼ行われていません。また、パルテノライドはキク科アレルギーの主な原因の1つと考えられている成分でもありますから、アレルギー体質の方であれば注意して使用すべきハーブとも言えます。

そのほか期待される作用

フィーバーフューはヨーロッパを中心に何百年も前から伝統的に使用されてきたハーブです。民間療法の域を出ないものも含めると便秘・消化不良・歯痛・耳痛・耳鳴り・めまい・発熱・疲労などありとあらゆる不調に対して使用されてきた歴史があります。そうしたほとんどの“効能”についての研究は行われておらず、潜在的な健康上の利点があるかもしれないという非常にグレーな認識。そんな中でフィーバーフューの成分や報告されている作用から、役立つ可能性が高そうなものをピックアップしてと紹介します。


月経トラブルに

フィーバーフューの種小名partheniumは女性の不調緩和に役立つ薬草だったからという説もあるように、フィーバーフューは女性領域での不調に対しても使用されてきたハーブです。カルペパーが述べたせいか子宮の強壮に役立つと信じられてきたと伝えられていますし、生理痛や月経痙攣(月経困難症)のケアにも活用されてきました。生理痛が起こるのは経血を外へ出すためにプロスタグランジンの増加が増加し、子宮が収縮すること。フィーバーフューはプロスタグランジンの生成阻害・平滑筋を弛緩させる働きが示されていますから、生理痛の軽減や月経困難症の重症度低下に役立つ可能性があると考えられています。


薄毛予防に

フィーバーフューに含まれるパルテノライドには発毛効果が報告されており、薄毛予防や発毛効果を期待したサプリメントなどにも配合されています。発毛のメカニズムはハッキリと分かっていませんが、男性型脱毛症の原因となるジヒドロテストステロン(DHT)の生成に関わる物質(NF-kB)の働きを抑制するのではないかと考えられています。


消化器系のサポートに

フィーバーフューは「18世紀のアスピリン」と称されるように、18世紀頃には歯の痛み止めから胃痛緩和など様々な目的で使用されていたことが分かっています。鎮痛・抗炎症作用のメカニズムは現在も研究が行われており、パルテノライドの研究の中では平滑筋のけいれんを止める=抗痙攣作用が見られたというものもあります。鎮痛作用だけではなく、この抗痙攣作用によってフィーバーフューは胃痛や腹痛の緩和を手助けしている可能性もあると考えられます。そのほか苦味成分が消化器を刺激して消化を促す、食欲を高めるのではないかという見解もあります。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

スキンケアに

フィーバーフューは薬湯・入浴剤用としても利用されているハーブです。タンニン・フラボノイドなど抗菌作用や抗酸化作用が期待できる成分を多く含んでいることから、皮膚を清潔に保ち、肌の酸化を抑えることで若々しさを保つ働きが期待できるでしょう。タンニンには収斂作用もあるため脂性肌・ニキビ対策にも役立つと考えられます。そのほか抗炎症作用や血管拡張作用を持つと考えられることから、冷え性の改善や筋肉痛・疲労回復促進、関節痛・神経痛・リウマチなどの痛み軽減に繋がる可能性もあるでしょう。

ただしフィーバーフューに含まれているセスキテルペンラクトン(パルテノリド)は強力な皮膚感作物質でもあります。接触性皮膚炎などの原因となることも多いことから、パルテノリドを除去した抽出物についての研究も行われています。2009年『Inflammopharmacology』にはアメリカで行われたパルテノリドを除去したナツシロギク抽出物(PD-フィーバーフュー)についての研究が発表されおり、PD-フィーバーフューが免疫感作を誘導することなく炎症を緩和することを示唆しています。このことから抗炎症作用を持つと報じられることもありますが、通常ハーブとして入手出来るものはパルテノリドが含まれており皮膚刺激性が強いので使用には注意が必要です。

お部屋の虫除けに

フィーバーフュー(ナツシロギク)は防虫効果を持つ植物として、花壇などにコンパニオンプランツとして植えられることもある植物。虫よけに役立つのは精油成分によるものと考えられており、乾燥させたの場合も一定の防虫効果を持つのではないかと考えられています。フィーバーフューは乾燥させても変色や変形を起こしにくいことからドライフラワーとしてもよく使われる存在。室内で育てている観葉植物の近くに植えたり、虫除けを兼ねてドライフラワーを飾ったり、ドライハーブでポプリやサシェを作るなどクラフト方面でも活用されています。

フィーバーフューの注意事項

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子様への使用は出来ません。
  • 抗血栓薬と相互作用する可能性が指摘されています。
  • 生葉の摂取は口内炎・唇の腫れ・味覚喪失などを起こす可能性があります。
  • キク科植物にアレルギーのある方は使用に注意が必要です。
  • 長期間に渡る使用は控えましょう。常用している場合は離脱症状を起こす可能性があるため、突然中止せず徐々に減らしていくことが推奨されています。

参考元