ラズベリーリーフ
ハーブティーと期待される効果効能紹介

妊娠後期~産後サポート、月の不調軽減に期待

古くからヨーロッパの民間医療で安産をサポートしてくれるハーブとして、妊娠中の女性に利用されてきたラズベリーリーフ。現在でもポリフェノールの一種であるフラガリンに子宮・子宮周りの筋肉を整える働きがあるのではないかと言われており、分娩や産後の回復のサポートとして取り入れられています。またPMSや生理痛など女性特有の不調軽減にも効果が期待されていますし、ラズベリーケトンに脂肪燃焼効果が報じられたことから肥満予防・ダイエットサポートとしても注目されています。

画像:ラズベリーリーフ

 

ラズベリーリーフについて

植物紹介:ヨーロッパキイチゴ

甘酸っぱい風味と鮮やかな赤色から様々なジャムやお菓子類に用いられるラズベリー。日本であればチョコレートやケーキ類などに使われることが多いですが、肉や魚にかけるソースの原料としても知られています。フランス料理の中で見かける事が多いためか、フランボワーズというフランス語の呼称も定着していますね。ラズベリーやフランソワーズは直訳すると“木苺”となり、広義ではバラ科キイチゴ属(Idaeobatus亜属)に属する低木果樹・その果実全般を指します。

このラズベリーの定義に当てはまるものはブラックラズベリーやアメリカイチゴ(アメリカンレッドラズベリー)などを筆頭に数十種類あると言われていますが、一般的に単に「ラズベリー」と呼ぶ場合はヨーロッパキイチゴ(学名:Rubus idaeus)もしくはヨーロッパキイチゴを交配親とする栽培品種を指すことが多いと言われています。

ちなみに日本に自生しているエゾイチゴ(R. idaeus L. subsp. melanolasius)やミヤマウラジロイチゴ(R. idaeus L. subsp. Nipponicus)などはヨーロッパキイチゴの亜種という扱い。紛らわしいですが同じキイチゴ属には、ブラックベリー(セイヨウヤブイチゴ)系統の品種もあります。またエゾキイチゴと混同されやすいエゾヘビイチゴはオランダイチゴ属に分類されるラズベリーよりもイチゴに近い種で、別名がワイルドストロベリー。

ラズベリーの原産地は北アジアからヨーロッパにかけての冷涼地域とされています。栽培化は現存する記録では1548年にイギリスで始められたとするものが初とされています。イギリスでの栽培は修道士が滋養強壮のために植えたのがきっかけと言われており、18世紀後半にはアメリカへも持ち込まれることとなります。風土の違いからヨーロッパキイチゴは上手く育ちませんでしたが、アメリカに自生するアメリカンレッドラズベリーと交配することで現在のような栽培品種が多く作られる様になりました。

現在のラズベリー(ヨーロッパキイチゴ)と同じものであったかは定かではありませんが、キイチゴ類の果物は先史時代から各地で食されていたようです。ラズベリーについても古代ローマでは既に栽培が行われており、ローマ人がイングランドへとラズベリーの種子をもたらしたという説・ラズベリーの種子名であるidaeusも古代ギリシアの神話に登場する“イダ山”が語源という説があります。神話の中でゼウスの養母(クレタ王の娘とする説もある)が「神の白いフルーツ」を摘んでいる最中に傷を負い、その血によってラズベリーの実は赤くなったとされているのだとか。

栽培については分かっていない点もありますが、ラズベリーは古くから食料とされていただけではなく民間医薬としても用いられていたと考えられています。果実は発熱・膀胱炎・便秘などに良いとされていたそうですし、花は煎じて吹き出物や痔核などのケアに使われたそう。葉は妊娠中の女性のためのお茶“Pregnancy tea”としても用いられ、助産婦などによって出産準備用に使われていたそう。そのため安産をサポートしてくれる「マタニティハーブ」として親しまれていたと伝えられています。かつては妊婦さんが持ち歩くと良いという、安産のお守り的な伝承もあったそうですよ。近年ではフラガリンに子宮周りの筋肉を整える働きがあることが報じられ、出産前後の女性だけではなく生理痛や月経前症候群(PMS)などの女性特有の不調にも取り入れられています。

基本データ

通称
ラズベリーリーフ(Raspberry leaf)
別名
ヨーロッパキイチゴ(欧州木苺)、ヨーロピアンラズベリー(European Raspberry)、フランボワーズ(framboise)
学名
Rubus idaeus
科名/種類
バラ科キイチゴ属//低木
花言葉
深い後悔、愛情、嫉妬、謙遜
誕生花
3月4日、4月26日、5月4日
使用部位
代表成分
フラボノイド配糖体(ブラガリン、アントシアニジンなど)、タンニン類(没食子酸、エラグ酸)、ビタミン類、ミネラル類、ペクチン、精油
代表効果
子宮筋・骨盤の筋肉調整、収れん、通乳、ホルモンバランス調整、消化促進、抗酸化
こんな時に
安産サポート、出産後の子宮や骨盤調整、母乳分泌サポート、月経前症候群(PMS)、生理痛、下痢、冷え性、肥満予防、歯肉炎、口内炎
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーブチンキ
(果実は果物として食用)
ハーブティーの味
グリーンな爽やかさと苦味がある、クセのない風味<
カフェインの有無
ノンカフェイン

ラズベリーリーフの栄養・成分・期待できる効果

ラズベリーリーフティー

女性の体のサポートに

出産が近付いた妊婦さんに

ラズベリーリーフは伝統的に出産(安産)をサポートするためのハーブとして用いられてきました。これはラズベリーリーフに含まれているポリフェノールの一種であり色素成分の「フラガリン」という成分に、子宮筋や骨盤など子宮周りの筋肉収縮を調整・強壮する働きがあるためではないかと考えられています。分娩サポートのハーブと言われることから筋肉を緩める働きがあるようにも思われがちですが、作用として収斂作用になり子宮収縮を促すことで分娩時間を短縮する・分娩による出血を抑えると言われています。

このため妊娠初期~中期に飲用してしまうと流産の危険性もあるため注意が必要です。ラズベリーリーフティーを飲み始める時期については妊娠8ヶ月以降もしくは37週目以降とされています。早産の軽減がある方や帝王切開を行った方・行う予定がある方、また摂取が心配な場合は医師などに相談してから利用を決めるようにしましょう。取り入れる場合は1日1杯からスタートしてください。過剰摂取した場合は子宮痙攣を起こす危険性も指摘されていますから自己判断で取り入れる場合は一日2杯程度にしておきましょう。臨床実験などでは1日2回、1回につき1.2gのラズベリーリーフを使ったお茶を摂取するものが多いようです。栄養豊富なルイボスティーローズヒップなどと組み合わせて使うのもオススメです。

ラズベリーリーフティーは子宮周辺筋肉をサポートしてくれると考えられことから、分娩時の子宮収縮を促す以外に妊娠中の子宮筋を正常に保つ・陣痛を緩和するなどの働きがあるとする説もあります。ヨーロッパで行われた臨床実験では、妊娠8か月以降にラズベリーリーフティーを飲んだグループは分娩第二期の時間が短くなったなどの有効性を示唆する報告もありますが、ラズベリーリーフに有効性は見られない・分娩時間短縮の可能性はあるが陣痛軽減効果は無いなどの様々な見解があります。ドイツのコミッションEでもエピデンス不十分として承認されていませんし、日本では食品として扱われているものですから過度な期待は避けましょう。


産後の回復・母乳サポートに

ラズベリーリーフに含まれているフラガリンは子宮・骨盤など子宮周りにある筋肉の収縮を調整する働きあると考えられています。この働きから妊娠によって大きくなった子宮が元の大きさへと戻る(子宮復古)ことや、開いた骨盤を占めるのを手助けする働きも期待されています。このため産後の子宮・母体回復用としても用いられており、体型を戻したい方にも取り入れられているようです。加えてラズベリーリーフは母乳の分泌を促すお茶としても伝統的に利用されてきた存在です。母乳分泌を促す成分については分かっていないようですが、ビタミンやミネラルの補給から母乳の質を整えることには繋がるでしょう。

ただしフラガリンが女性ホルモンに何らかの働きかけを持つ場合には、逆に母乳分泌を抑制してしまう可能性があることも指摘されています。産後に飲む場合は自身の体調を確認しながら取り入れるようにして下さい。また鉄分の補給に良いという説もありますが、お茶(水分)に溶け出す量が少ないこと・鉄分吸収を阻害するタンニンが含まれていることなどから良い・悪いの両説があります。ラズベリーリーフそのものの栄養価はさておき、お茶から補給できる栄養成分の量というのは微量ですから、貧血対策や栄養補給については食事面でもしっかりと意識するようにした方が良いでしょう。


生理痛や月経前症候群(PMS)などにも

色素成分でポリフェノール(フラボノイド)のフラガリンによる子宮の筋肉を整え強壮する働きから、ラズベリーリーフティーはホルモンバランスを安定させる働きもあるのではないかと考えられています。子宮の正常に整えることに加え、体を温めてくれる働きも期待できるとされていることからPMS(月経前症候群)・生理痛(月経困難症)・月経過多・更年期障害など女性特有の不調や痛みの軽減に効果が期待されています。シングルで用いるよりもPMSや生理痛にはチェストツリーカモミール、月経不順や更年期であればフェンネルサフランなどとブレンドして用いられることが多いようです。

また出産後の体を整える働きが期待できることから産後に生理痛が重くなったと感じる方に、子宮強壮・ホルモンバランス安定に役立つとされることから妊活中の体質改善などにも用いされています。それ以外にノンカフェインであること・栄養補給に繋がることなどが女性のサポートに役立つ理由として挙げられています。リラックス効果が期待できるという説もありますが、根拠がハーブティーだからと言うような曖昧なものが多いので定かではありません。フラガリンの働きについても不明瞭な点が多いとされていますから、こちらも過度な期待は避けお茶の一つとして楽しんで取り入れてみて下さい。


そのほか期待される作用

下痢の軽減に

貧血改善について賛否両論ある通り、ラズベリーリーフにはタンニンが含まれています。鉄分吸収を阻害することで悪者という印象を持たれがちなタンニンですが、摂取すると腸を引き締める働き(収れん作用)を持つと考えられており、過度な蠕動運動を抑制することで下痢の改善に繋がると考えられています。タンニンの収斂作用は消化管内壁を刺激や炎症から守る働きもあると言われています。加えてペクチンなど便の水分量を調節してくれる水溶性食物繊維もラズベリーリーフティーには含まれていますから、相乗して下痢の予防・改善をサポートしてくれるでしょう。消化の促進にも役立つという説もあります。


肥満予防・冷え性軽減に

クラシエホールディングスによってラズベリーに含まれる「ラズベリーケトン」と呼ばれる香り成分に高い脂肪分解効果があることも報告されています。このラズベリーケトンはカプサイシンに似た分子構造・作用を持つとされていますが、ラズベリーケトンはカプサイシンの脂肪分解効果の3倍もの効果があるとも言われています。こうした報告からダイエット用補助食品などにラズベリーケトンはダイエット成分として配合されており、ラズベリーやラズベリーリーフなども肥満予防に効果が期待されています。

またラズベリーリーフは民間療法などで古くから体を温める作用があるハーブと考えられてきました。ラズベリーリーフティーを飲んでラズベリーケトンがどれだけ摂取できるかは不明ですのでダイエットに役立つかは定かではありませんが、ビタミンやミネラルが補給出来ること・抗酸化物質(ポリフェノール)を含むこと・体を温めてくれることと合わせて代謝向上や肥満予防に繋がるのではないかと考えられています。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

口腔ケアに

ラズベリーリーフはタンニンなどを含むことから収斂作用や粘膜の炎症を抑える働きがあると考えられています。この働きからハーブティーやチンキをマウスウォッシュとして使うと歯肉炎や口内炎、喉の痛みなどの症状緩和に役立つとされています。若干の抗菌作用も期待できますから口内を清潔に保ちたい時にも良いでしょう。ただし着色の原因になるので、歯磨きはきちんとするようにしましょう。

ラズベリーリーフの注意事項

  • 妊娠初期・中期は使用しないでください。
  • 妊娠状態に不安のある方や薬を飲んでいる方、帝王切開の経験や予定がある方などは医師に相談の上利用して下さい。
  • タンニンによって鉄分吸収が阻害される可能性があります。