栃の実茶/トチノミ茶
健康茶と期待される効果効能紹介

縄文時代から食べられてきた、高ポリフェノール食材

栃の実はそのままでは強いエグみを持つ食材です。灰汁抜きに手間がかかる事から、食料が豊かになって以来さほど重要視されていませんでした。しかし近年は苦味・エグみの成分であるタンニン(プロアントシアニジン)やサポニンに抗酸化作用などの健康メリットがあることがわかり、健康茶として見直されています。アンチエイジング・美白効果や肥満予防効果などが期待されるため、美容に気を使う女性にも注目されています。

画像:栃の実(とちのみ)

 

栃の実について

植物紹介:栃の実

北海道から九州まで、日本の広い範囲に分布している栃。古くから食料・木材として利用されてきたましたし、現在は乱伐などで数が減っていることもあり高級木材の一つにも数えられています。栃の実(種子)はコロリと丸く“栗よりも栗らしい”と言われるほど美味しそうな見た目をしていますが、生のまま食べると非常にエグみが強く不味いので、念入りなアク抜き工程を行わない限り食用には適しません。同じような実をつけるトチノキの近縁種はいくつかありますが、アクを抜いて“食べ物”として扱っているのは日本だけとも言われています。

ちなみに“horse chestnut(馬栗)”やフランス語呼びで“marronnier(マロニエ)”と呼ばれているものは近縁種であるヨーロッパ産の「セイヨウトチノキ(学名:Aesculus hippocastanum)」を指します。バッチフラワー・化粧品原料などに利用されているのもセイヨウトチノキの方です。食用にはしませんが、世界中でトチもしくはセイヨウトチノキの実は伝統医療・民間療法で生薬として利用されています。日本での“栃(トチ)”という呼び名は“十千”で、十も千も(非常に多くの)葉や実をつける樹木であることが由来と言われています。実を食用とするだけではなく柔らかく木目の美しい木部も、木材として古くから利用されてきました。

日本では縄文時代の住居遺跡からも栃の実が多く出土しており、米文化(稲作)以前には主食として食べられていた木の実類の一つと考えられています。また稲作が広がった後も米を作る耕地に恵まれない地域では稗(ヒエ)やどんぐりと共に重要な食料であり、栃の実は乾燥させておくことで何年でも保存ができるため救荒食物・非常食としても重要な存在でした。「私有地・私有林でも栃の木だけは勝手に伐採してはいけない」と定めていた藩もあるそうですから、近世に至るまで日本人の生命を支える食料であったと言っても過言ではない存在ですね。

古くから人の生活と密な存在であったためか、栃を語源とする言葉も多く残っています。慌てる様を“とちる”と言うのは、栃の実で作る麺類(栃麺)は固まるのが早いため急いで麺棒をふるう必要があったため、傍から見ている人には滑稽だということで「とちめく」という表現ができて変化したと言われています。同じく栃麺を作る忙しない様子“栃麺棒を食らう”が変化して、慌てふためくさまを“面食らう”と言う様になったとする説もあります。栃谷など栃の字が使われている地名が多いのも、栃の木が多く生えていた事を示す名残なのだとか。

複数の灰汁抜き工程が必要な栃の実は、栃餅や煎餅などの加工品は知っている・口にした事があっても、実を採集して利用しようはされない存在。一部お土産品・郷土料理として利用されている程度でしたが、近年ポリフェノールが豊富で高い抗酸化力を持つアンチエイジング食材として取り上げられ注目される存在となっています。老化予防や美白効果が期待できるため美容・美肌という点から手軽に摂取できる「栃の実茶」と取り入れる女性も増えているそうです。

基本データ

通称
栃の実(とちのみ)
別名
学名
aesculus turbinate
科名/種類
トチノキ科トチノキ属/落葉高木
花言葉
贅沢、博愛、豪奢、健康
誕生花
5月10日(7月の誕生木でもある)
使用部位
実(種子)
代表成分
サポニン、ポリフェノール(タンニン・プロアントシアニジンなど)、ミネラル類
代表効果
抗酸化、血流改善、血圧降下、血糖値効果、コレステロール低下、健胃、美白、利尿、抗肥満、視機能保持
こんな時に
老化予防、生活習慣病(高血圧・動脈硬化・糖尿病など)予防、胃痛、胃腸機能改善、肌のアンチエイジング、シミ予防・美白、むくみ、ダイエット、疲れ目・白内障予防
おすすめ利用法
食用、健康茶
お茶の味
香ばしく飲みやすいが、製法により苦味・エグみがある場合も
カフェインの有無
ノンカフェイン

栃の実の栄養・成分・期待できる効果

栃の実茶

健康維持・生活習慣病予防に

老化(酸化)予防に

栃の実茶の成分・期待される効果の代表と言えるのが、ポリフェノール類による抗酸化作用です。栃の実のポリフェノール含有量は100gあたり1000mgと非常に多く、ブルーベリーの約4倍とも言われています。この豊富な抗酸化物質によって過酸化脂質の生成を抑制し、細胞が傷ついたり破壊されるのを防いで細胞の機能低下によって起こる病気や老化症状の抑制効果が期待されています。

特に栃の実に含まれているタンニンは“総合タンニン(プロアントシアニジン)”と呼ばれる形状をしており、「ポリフェノールの王様」と呼ばれるほど高い抗酸化作用があります。ぶどう種子(グレープシード)に含まれているポリフェノールとしても知られている物質です。加えて栃の実には抗酸化作用を持つとされるサポニンも含まれています。タンニン・サポニン共に渋みやエグみ成分と言われていますから、そのままでは食べられないほど強烈なエグミを持つ栃の実に豊富に含まれているのも納得といえば納得ですね。


高血圧・動脈硬化予防に

栃の実に含まれているサポニンには悪玉(LDL)コレステロールの低下・血小板凝集を抑えて血液をサラサラに保つことで血液循環をスムーズにする働き期待されています。ポリフェノールなどによる抗酸化作用で過酸化脂質が血管に付着して血管を狭める・血液がドロドロになることで血流が滞ってしまうのを防ぐ働きもあります。栃の実にはナトリウム排出を促すことで血圧を一定に保つ働きがあるカリウムも豊富に含まれていますから、相乗して高血圧の予防に役立ってくれるでしょう。

高血圧状態は血管壁への圧力が高くなり、動脈硬化を悪化させる原因ともなります。栃の実茶は血圧を正常に保つ・血液循環を整える働きが期待できる成分が豊富に含まれており、中でもプロアントシアニジンはヨーロッパでは血管強化剤としても利用されている存在。抗酸化作用により過酸化脂質の生成・付着を抑えて血管の状態を正常に保つだけではなく、コラーゲンの再生と合成を増進させる=血管を若々しく靭やかな状態に整える働きも期待されているのだとか。これらの成分が相乗して働くことで高血圧・動脈硬化・血栓・脳梗塞・心筋梗塞など、血流に関係する様々な循環器系疾患の予防に役立つと考えられています。


糖尿病予防に

栃の実に含まれているサポニンにはアミラーゼなどの糖質分解酵素を素材する働きが報告されています。この働きによって吸収される糖質量が減る=血糖値の上昇を抑制することに繋がり、糖尿病予防に役立つのではないかと考えられています。

また糖尿病患者の場合は血中の過酸化脂質量が増加する傾向にあることが報告されており、この過酸化脂質が血管壁に付着することが糖尿病合併症の原因となると言われています。この過酸化脂質による血管侵食は糖尿病と診断される以前、やや血糖値が高いくらいの状態から徐々に悪化していると考えられていますし、抗酸化作用のある食品を摂取すると血糖値が改善するという報告もなされています。
作用や効果についてはハッキリしていない点もあり糖尿病の改善に繋がるかについては疑問も残りますが、糖尿病予防や悪化抑制・糖尿病合併症予防として取り入れてみても損はない存在と言えるでしょう。


胃の健康維持に

栃の実は漢方では腹痛や腹部膨満感などの胃腸トラブルに役立つ存在とされており、乾燥粉末は胃痛軽減に利用されているそうです。成分的に見てもタンニンには整腸作用・サポニンには血流改善により胃腸機能サポート効果が期待されています。“冷えからくる腹痛に良い”と言われるものサポニンやポリフェノールの働きによるところが大きいと考えられます。ただしタンニンやサポニンは摂取しすぎると胃腸に負担がかかるとも言われていますので、体調を確認しながら取り入れるようにしてください。


美容面への働きかけ

肌老化予防・美白に

栃の実に含まれているタンニン(プロアントシアニジン)やサポニンなどの抗酸化物質は肌の老化を予防し、若々しい外見を保持する働きも期待されています。活性酸素はコラーゲンやエラスチンを変性させて肌のハリ低下・シワ・たるみなどを引き起こしたり、DNAを損傷させて新陳代謝の低下を引き起こします。加えて皮脂と活性酸素が結合して“過酸化脂質”となることで毛穴の開き・大人ニキビなどの原因ともなります。

ポリフェノールなどの抗酸化物質はこれら活性酸素による肌ダメージを抑制してくれますから、肌を若々しく健康な状態に保つ働きが期待できます。またプロアントシアニジンはシミの原因となる“メラニン色素”を生成するチロシナーゼ酵素など体内に元々存在している酸化酵素の抑制にも有効とされていますし、コラーゲン再生・生成促進にも役立つとされていますから、既にダメージを受けてしまっている状態からの回復サポートにも効果が期待できるでしょう。内側からの紫外線対策にもなりますね。

加えてプロアントシアニジンやサポニンは血流をスムーズにして全身に行き渡らせるサポートもしてくれます。抗酸化作用と相乗して肌の新陳代謝・ターンオーバーを促し、現在出来てしまったシミや小じわなどの改善にも役立ってくれるでしょう。血行促進はくすみ軽減にも繋がりますので、シミ予防だけではなく肌の透明感アップという点からも美白効果が期待できます。


むくみ緩和

むくみを起こす原因として塩分過多や女性ホルモンの働きなど様々ですが、女性に多い“夕方の足のむくみ”など特に下半身系のむくみは血流悪化と深い関係があると考えられています。立ち仕事にしろ座り仕事にしろ長時間同じ姿勢のままでいると重力によって体液は下に溜まりやすくなりますし、長時間同じ姿勢でいるというストレスから活性酸素が発生し更に血流を悪くするとも言われています。

プロアントシアニジンなどの抗酸化物質は活性酸素の発生を抑制してくれますし、栃の実には血液循環をサポートしてくれるサポニンも含まれています。これら成分の働きで栃の実茶を継続して飲み続けることでむくみにくい体質作りに繋がると考えられていますし、サポニンには直接的な利用作用も期待できますのでむくみ改善に役立ってくれるでしょう。


肥満予防・ダイエットに

栃の実茶は血糖値上昇を抑えることで、糖尿病予防に効果が期待されている健康茶です。血糖値の急激な上昇を抑える働きは、インスリンによって血中の余剰な糖が脂肪細胞に蓄えられるのを防ぐことにも繋がりますから、肥満予防という面でも役立つと考えられます。サポニンにはリパーゼなどの脂肪消化酵素阻害作用により脂肪吸収を抑制する働きも報告されていますから、相乗して肥満予防効果が期待できるでしょう。マウスに栃の実抽出物(サポニン)を摂取させた実験では、抗肥満作用・高脂血症予防効果が見られたと報告されています。

これらのはたらきから栃の実茶を食前に摂取することで、食事に含まれている糖・脂質の吸収を抑制し肥満予防に役立つと考えられています。またプロアントシアニジンなどは活性酸素を抑制することで代謝低下を予防したり、血液循環を良くすることで代謝を高めるなどの働きも期待できます。


そのほか期待される作用

更年期障害の軽減

フラボノイド系ポリフェノールに分類されるプロアントシアニジンは更年期障害の緩和・軽減にも効果が期待されています。これは抗酸化作用によって体内のビタミンなどの栄養素消耗を防ぐ・血流などが改善されることで体全体の機能バランスが整いホルモンバランの変化によって乱れやすくなる自律神経のバランスを正常に保つことなどが関係していると考えられています。

栃の実ではありませんが、ブドウ種子抽出のプロアントシアニジンを8週間摂取するという実験では更年期障害による心身の不快症状に改善がみられたことも報告されています。更年期障害が改善すると断定できるものではありませんが、更年期障害が表れる時期は老化(酸化)が気になる時期でもありますから、体を整えるという感覚で取り入れてみると良いかもしれません。


疲れ目改善や目の健康維持に

プロアントシアニジンは目の健康維持にも役立つと考えられています。抗酸化作用によって酸化による目のダメージを軽減してくれるため、水晶体に含まれているタンパク質が酸化することで濁り発症する白内障・糖尿病性白内障などの予防にも効果が期待されています。
またアントシアニンと同じく網膜に存在する信号物質“ロドプシン”の再合成を助ける働きもあります。抗酸化作用によって毛細血管を強化し血流を良くする働きと合わせて、疲れ目・目のかすみなどの予防や回復促進にも効果が期待されています。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

コリ・皮膚トラブルに

栃の実を焼酎に漬け込んだ「栃液/とち水」は炎症を抑える作用に優れているとして、民間療法で様々な処置に利用されています。特に熱を持つようなタイプの炎症=火傷・打ち身・腫れ物などに良いと言われていますが、筋肉痛・靴ずれ・虫刺され・湿疹・水虫・しもやけなどのケアにも良いと言われています。

サポニンを多く含み、古い時代には石鹸代わりに使われていた存在でもありますから、皮膚をキレイに保つ働きも期待できるでしょう。ノミやダニなどによる寄生虫性の皮膚疾患・アレルギー性皮膚炎に良いとも言われています。

栃の実の注意事項

    お茶として通常量を摂取する場合は特に問題はないとされています。