古くから美容や健康に良いと考えられてきた、日本でお馴染みの海藻
若い世代の昆布離れが指摘されていますが、近年再び昆布の健康効果・美容効果が注目され昆布や昆布茶を取り入れる方も増えています。アルギン酸やフコダインなどのぬめり成分(食物繊維)が豊富なため便通・腸内環境改善や血糖値上昇抑制に役立ち、ダイエットや生活習慣病予防効果が期待されています。また昆布のぬめりは天然保湿剤としても役立ちますので、外側からも乾燥や肌トラブル改善に役立ってくれますよ。
昆布茶について
原料紹介:昆布
どこか懐かしさを感じる昆布の香りと味でホッコリ感のある昆布茶。昆布大国とも言われるほど日本は昆布の食用使用量が多い国ですし、昆布茶も古くから健康茶の一つとして親しまれてきました。昆布茶というとお爺ちゃんお婆ちゃんの飲み物・温泉旅館にあるやつ…という印象を持たれている方もいるかもしれませんが、近年は昆布の健康効果・美容面にも嬉しい効果が期待できることが注目され、若い女性にも取り入れられるようになっています。
ところで昆布茶の原料である“昆布”ですが、昆布という固有の海藻があるわけではありません。昆布はコンブ科に属すいくつかの海藻の総称として使われており、真昆布・長昆布・日高昆布(三石昆布)などは獲れる地域が違うというだけではなく別種なのだとか。日本で食べられている昆布の大半はコンブ(Saccharina)属に分類されますが、そのほかにネコアシコンブ(Arthrothamnus)属なども利用されています。利尻昆布や日高昆布など北海道の地名が付いていることが多いですが、これは天然昆布生産量の95パーセント以上を北海道が占めているため。昆布という呼び名も北海道で古くから暮らしてきたアイヌの人々の呼び名「コンプ」が中国に伝わり、中国から本州に逆輸入のような形で伝わったと考えられています。
日本では利用開始が定かでないほど昆布食用の歴史は長く、一説では縄文後期に中国から渡ってきた人々が食用・交易品として利用していたのではないかと言われています。文献上では霊亀元年(715年)に朝廷への昆布献上が行われ続けてきたという件があるため、奈良時代には本州を南下し奈良県まで伝わっていた事が分かっています。室町時代には乾燥技術の発達により日持ちがするようになったこと、名前が“喜ぶ”に通じることから縁起物としても重宝されるようになります。江戸時代には「昆布ロード」と呼ばれる海上交通によって日本全国へと伝えられ、昆布を使った郷土料理などが各地で作られるようになったのだとか。
昆布茶は乾燥させた昆布を原料としていますが、2cmくらいの角切り昆布にお湯を注ぐタイプの“角切り昆布茶”、粉末状にした昆布をお湯で溶くタイプの“粉末昆布茶”の大きく2つに別れます。そのほかに梅を加えた梅昆布茶をはじめ、あられや緑茶(玉露)などで風味や食感を加えているものもありますね。一般的には粉末タイプが多く使われていますが、実はこのタイプは塩やアミノ酸類(うま味調味料)などで風味を整えているものがほとんどです。
実際は“昆布スープ(出汁)”の方が正確な存在でもありますから、和風調味料として料理に活用できます。レシピサイトでも昆布茶を使ったパスタや炊き込みご飯をはじめクッキー・ケーキなどスイーツレシピまで幅広く紹介されています。色々と使いまわせるので、あって困るものではないですね。また化学調味料や塩分などが気になる方は成分表示を確認するか、昆布茶として販売されているものではなく昆布100%の“粉末昆布”を利用するという方法もあります。
基本データ
- 通称
- 昆布(kombu)
- 別名
- こぶちゃ、sea tangle
- 学名
- Saccharina spp. 他
- 科名/種類
- コンブ科/褐藻類
- 花言葉
- –
- 誕生花
- –
- 使用部位
- 全体
- 代表成分
- アルギン酸、フコイダン、植物性ステロール(フコステロール)、ミネラル類(ヨード、カルシウム、カリウム)、ビタミンB群、グルタミン酸
- 代表効果
- 緩下、整腸、利尿、消化促進、食欲増進、胃粘膜保護、肝機能向上、疲労回復、造血、血液循環改善、鎮静、免疫力向上、抗アレルギー、抗コレステロール、血圧上昇抑制、血糖値上昇抑制、脂肪燃焼促進
- こんな時に
- 便秘、腸内フローラ改善、むくみ、胃腸機能低下、二日酔い、疲労・慢性疲労、貧血、冷え性、ストレス軽減、風邪・インフルエンザ予防、花粉症などのアレルギー軽減、生活習慣病予防(高血圧、動脈硬化、糖尿病)、肥満予防・ダイエットサポート、美肌・美髪
- おすすめ利用法
- 食用、飲用、入浴剤、手作り化粧品
- お茶の味
- 昆布の香りと味そのもの、軽いぬめりがある
- カフェインの有無
- ノンカフェイン
昆布の栄養・成分・期待できる効果
昆布茶
昆布茶は煮出す・お湯を注いで浸出する角切り昆布を使ったものと、粉末化した昆布を溶くものの大きく2種類がありますが、下記では栄養成分が丸ごと摂取できるパウダータイプのものをメインに栄養成分や期待される働きをご紹介します。
栄養補給・健康維持に
便秘・むくみの改善に
昆布の健康成分として注目されているのが粘り成分とも呼ばれる「アルギン酸」や「フコイダン」。これらは水溶性食物繊維の一種に分類されており、腸内善玉菌のエサとなって善玉菌の活性化・増加・腸内にたまった老廃物を便として排出させる働きがあります。このため昆布は便秘改善や腸内フローラを整える働きがある食材とされています。
またナトリウム排出を促すことで体内の水分バランスを調節するカリウム、カリウムの体内移動をサポートしたり体液循環を正常に保つ働きがあるマグネシウム、不足することでむくみを起こしやすくなるヨードなどむくみ改善に役立つミネラルも昆布には豊富に含まれています。お茶として飲む場合はミネラルなどの栄養素が一部溶け出す程度ですが、粉末状の昆布茶であれば余すところ無く成分を摂取できるのも嬉しいですね。
ミネラル補給・胃腸機能のサポート
昆布にはカルシウム、鉄、マグネシウム、カリウムなどのミネラルが豊富に含まれています。また昆布のミネラルは人によってバランスの良い配合をしており、吸収率が高いとする説もあります。栄養可の偏りが気になる方には天然のミネラル補給源として役立ってくれますし、成長を促進する甲状腺ホルモンの原料となるヨードや骨の形成・整腸をサポートするカルシウムなどが豊富なのでお子様の成長サポートとしても良いと言われています。
また昆布の粘り成分であるフコイダンには胃粘膜の保護作用・ピロリ菌を吸着して体外へと排出する働きが認められています。うま味成分という印象が強いアミノ酸のグルタミン酸も、脳が食事をしたと感じて唾液・胃液分泌を促すことで消化促進にも役立ちます。食欲増進にも役立つと言われていますので、フコイダンの胃腸粘膜保護作用と合わせて食事→栄養吸収をサポートしてくれるでしょう。そのほか食物繊維をしっかりと食べ続けること消化器官の細胞が増加し、タンパク質・糖質分解酵素の働きを高める働きも期待できると言われています。
二日酔い対策・疲労回復に
昆布茶には代謝を高めるビタミンB群、補酵素として働くことで代謝を助けてくれるマグネシウムや亜鉛などのミネラルが含まれています。ミネラル類とビタミンB群によって代謝が促されることで疲労物質の分解促進に役立つと考えられています。またアルギニン酸も体組織の修復や脳の疲労回復などに関わる成長ホルモンの分泌を促すことで疲労回復促進効果が期待出来る成分ですから、相乗して疲労回復効果が期待できます。
フコイダンにはアセトアルデヒドの生成抑制作用が報告されています。アセトアルデヒドはアルコールを分解する過程で発生する物質ですが、毒性が高いため二日酔いの原因物質とも呼ばれている存在です。昆布にはフコイダン以外にもアルコール分解を助けるビタミンB1やナイアシンなどのビタミンB群が含まれていますから、悪酔い・二日酔い対策に役立ってくれるでしょう。肝臓は体内の老廃物や毒素の処理を担っている臓器で、負担が多く疲弊している場合は慢性的な疲労・倦怠感などのの原因ともなります。昆布茶には肝臓の働きをサポートしてくれる成分が多く含まれていますから、間接的にも疲労・疲労感の回復を助けてくれると考えられます。
ちなみに梅昆布茶の場合は梅干しに含まれているピクリン酸は肝臓の機能活性化・クエン酸はクエン酸回路(TCAサイクル)を活発化させて疲労回復サポート効果が期待できます。昆布の栄養成分との相乗効果が期待できますから、二日酔いや疲れが抜けないと感じる朝には梅昆布茶を取り入れてみると良いかもしれません。
貧血・冷え性改善に
昆布は鉄分を豊富に含む海藻です。昆布茶の場合は一回量は少ないものの浸出ではなく素材丸ごとを使うため、水に溶けにくい鉄分も余すとこと無く補給できると考えられています。一回に摂取できる量はどれも微量ですが、造血を助ける亜鉛や銅などのミネラルも合わせて摂取することが出来ますので、不足しがちな鉄分補給にも昆布茶は一役買ってくれるでしょう。
直接的に体を温める成分は含まれていませんが、貧血改善+便通改善や腸内フローラを整える働きから代謝・血行促進作用が期待できること、ヨウ素やマグネシウムなど不足すると冷えの原因となるミネラルが含まれていることなどから冷え性改善にも効果が期待されています。
ストレス対策・リラックス用に
昆布には神経の興奮を落ち着ける作用があるとされるカルシウムが豊富に含まれています。カルシウムとバランスを取り合う形で働いているマグネシウムも含んでいますから、ストレスやイライラを和らげてリラックスさせる働きも期待されています。
免疫力向上や生活習慣病予防に
免疫力向上・アレルギー軽減に
昆布に含まれているアルギン酸やフコイダンは水溶性食物繊維として働くことで、腸内環境を改善する働きが期待されている成分です。体内で免疫細胞が最も多く集まっているのが腸管免疫系ですから、腸内フローラが良い状態になることで免疫力の向上にも繋がると考えられます。
加えてフコイダンにはNK細胞(ナチュラルキラー細胞)やマクロファージなどの免疫細胞活性化作用があることも報告されていますから、より直接的な免疫機能向上効果が期待できるでしょう。風邪やインフルエンザ予防としてはグルタミン酸の唾液分泌促進作用もウィルス侵入を防ぐことに繋がります。
腸内フローラ改善は免疫力を高めることに繋がると称されますが、正確に言うと“免疫機能を正常な状態にする”働きですから、免疫過剰で起こるアレルギー症状の軽減にも有効とされています。またフコイダンにも免疫細胞活性化だけではなくIgE抗体(免疫抗体グロブリンE)の生成を抑制する働きも期待されていますから、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギーを緩和したい方にも昆布茶は役立つのではないかと考えられています。
循環系疾患予防に
昆布茶には塩分過多などで増えすぎたナトリウムのの排出を促すカリウムやマグネシウムが豊富に含まれています。ナた同じくミネラルの銅はコレステロールの酸化を防ぐ働きがありますし、アルギン酸やフコイダンコレステロール吸収抑制・胆汁酸の排出を促進する働きが期待されています。
加えてフコステロールという植物性ステロールにも肝臓でのコレステロール合成抑制や血液凝固抑制作用があると考えられています。そのほかに血中のナトリウム:カリウムのバランスをカリウムに傾け、血圧上昇を調節するとする説もあります。
これらのフコステロール・ミネラル・食物繊維が相乗して働くことで昆布はスムーズな血液循環を保持し、高血圧や動脈硬化などの循環器疾患予防効果が期待されています。昆布茶もこれらの成分を含んでいますから、生活習慣病予防に役立つ健康茶として取り入れられています。
糖尿病予防に
水溶性食物繊維のアルギン酸やフコイダンは同時期に摂取した食材を包み込み、消化・吸収スピートをゆっくりにすることで食後血糖値の急激な上昇を抑える働きがあります。血糖値が急激に上昇しなければインスリン分泌も穏やかな形になりますから、糖尿病の予防にも役立つと考えられています。
美容面に嬉しい働きかけ
ダイエットサポート
アルギン酸やフコイダンは糖質の吸収スピードを緩やかにすることで血糖値の急激な上昇を抑える働きがあります。血糖値が高くなると分泌されるインシュリンは血中にある余剰な糖質を脂肪細胞に溜める働きもありますから、血糖値変動を抑えることで脂肪蓄積を抑える働きも期待できます。糖質制限・低炭水化物ダイエットのサポートにも役立ってくれそうですね。
またヨードから合成される甲状腺ホルモンは基礎代謝の亢進・脂肪燃焼促進作用があると考えられていますし、グルタミン酸によって分泌が促される成長ホルモンも体組織の維持・修復に脂肪を分解して利用してくれます。腸内フローラの改善からも基礎代謝向上効果が期待できますし、昆布茶はむくみや便秘などの改善にも役立ってくれるのでスタイルを気にする女性にも支持されています。
美肌・美髪維持に
ヨードから合成される甲状腺ホルモンは体内のタンパク質合成・新陳代謝を促進する働きがあり、肌を滑らかに保つ働きが期待されています。またタンパク質や髪や爪の原料でもあり、ヨードが不足すると毛髪の傷み・抜け毛・爪が割れやすくなるなどの症状も表れます。昆布には皮膚・髪・爪の再生や脂質代謝に関わるビタミンB2、髪の艶を維持するミネラルなども含まれていますから、ヨードとともに肌・髪・爪を健康な状態に保つ働きがあると考えられます。
またフコイダンやアルギン酸には肌の潤いを保持する働きが期待されています。ヨードの適切な摂取で甲状腺ホルモンの分泌がしっかりするとコラーゲンの生成やターンオーバー正常化などの効果も期待できますから、相乗してハリや潤いのある肌作りにも役立ってくれるでしょう。便秘・腸内フローラの改善からも肌荒れ改善効果が期待できます。
※昆布のヨード(ヨウ素)について
昆布に含まれているミネラルの一種「ヨード」は甲状腺ホルモンの原料として利用される成分で、不足すると様々な不調や病気の原因にもなります。しかし沢山摂取すれば良いというものでもなく、過剰摂取は状腺肥大・甲状腺機能亢進症などの甲状腺疾患のリスクを高める危険性もあります。
昆布は全食品の中でもヨード摂取量が多く、種類やメーカー等によって異なりますが乾燥1gあたり1000μg~4000μgのヨウ素を含んでいると言われています。成人1日のヨウ素上限量は3000μgとなっていますから、昆布茶だけであれば1日1杯程度にしておきましょう。健康な方で単発的な摂取であれば排出されるので、上限量を越えてもさほど問題はないと考えられていますが、長期間継続して多量に取り続けることは避けましょう。
毎日ではなく週に1~2回取り入れるだけでも十分という説もありますし、昆布出汁・煮物や佃煮などを摂取した上で昆布茶を飲むと摂取量を上回ってしまう可能性が高いので摂取量には注意するようにしましょう。また甲状腺疾患がある方の場合は摂取しても問題ないか医師に確認してください。
お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果
昆布はローションやシャンプーなどの化粧品原料としても利用されている存在で、手作りコスメにも取り入れられています。ただし調味料が入った一般的な“昆布茶”ではなく、昆布そのものを利用する必要があります。低刺激とは言われていますが肌に合わないという場合もありますので、特に敏感肌・アトピー肌の方はしっかりとパッチテストを行ってから利用してください。
スキンケアに
昆布のぬめり成分であるフコイダンやアルギン酸は天然保湿成分として、低刺激かつ高い保湿作用が期待できます。そのため肌のバリア機能が低下して起こる肌荒れや乾燥肌などの改善に良いと考えられ、乾燥性敏感肌・アトピー性皮膚炎などの軽減にも取り入れられています。
保湿効果によって肌のバリア機能が高まることで、肌の新陳代謝・修復機能の活発化も期待できます。結果として肌のハリや弾力・滑らかさ・ツヤ・透明感などの向上に繋がりますから、エイジングケアや紫外線ケアなどにも良いと考えられています。肌タイプやトラブルを選ばずに利用できる万能成分という声もあるようです。
手作りコスメとしては乾燥昆布で“昆布ローション(化粧水)”を作る方が多いようです。最もシンプルな作り方は3~4cm角に切ったローションを精製水に数日~一週間程度浸してエキスを浸出し、昆布を取り出したて濾した後にグリセリンを加えるというもの。利用する昆布はアルギン酸やフコイダンなどのヌルヌル成分が多い“かごめ昆布”が効果が高いと言われています。お好みや肌症状に合わせて精製水を日本酒・焼酎やフローラルウォーターに変えたり、精油や尿素などを追加すると良いでしょう。
昆布パウダーはクレイパック・シャンプー・クレンジングなどに利用されることが多いようです。一から作るという方もいらっしゃいますが、現在利用している手持ちの商品に混ぜて使うと手軽でしょう。マッサージ時に使うとぬめり成分が摩擦から皮膚を保護する毛穴の奥の汚れを掻き出してくれるという説もあります。
入浴剤として
手軽に昆布を肌へ外側から利用する方法としては昆布風呂が上げられます。基本的な使い方としては細かく刻んで布袋に入れた昆布を浴槽のお湯に入れるだけ。入浴剤用という昆布も販売されていますが、出汁を取った後の昆布でも十分に利用できます。お料理や昆布水を作った後の昆布を再利用すると良いでしょう。
そのままネットなどに入れてお湯に付けるだけでも利用できますが、3cm程度に角切りにして水から5分間程度煮出すとより効果的です。煮出す時はそのままですが浴槽に入れる際には昆布をネット・布袋などに入れるようにしてください。
昆布風呂に期待できる効果としては保湿効果による乾燥肌の改善、またヌルヌル成分が肌をコーティングすることで保温効果が高まりますから冷え性改善や湯冷め防止などに良いとされています。間接的な働きとしては保湿効果によって肌のバリア機能が高まることでニキビ・吹き出物などの肌トラブル予防、紫外線ダメージの軽減なども期待できるでしょう。
昆布茶の注意事項
- 過剰摂取は避け、甲状腺疾患がある方は医師に利用可否を確認してください。
- 食塩を含むものは塩分過多となる可能性がありますので注意しましょう。