【クレソンティー】
植物エピソードと期待される健康メリット

むくみ軽減やビタミンC補給に役立つ可能性も…

「栄養素が高い果物と野菜のトップ41」で一位に選ばれた隠れスーパーフードとして注目されるクレソン。ビタミンやミネラル補給に役立つ食材として日本でも取り入れる方が増えていますね。古くは医薬品代わりのハーブとして利用されてきた歴史もあり、ヨーロッパや香港ではハーブティーとしても親しまれています。水分に溶け出しにくい成分も多いため栄養補給という面ではそのまま食べるよりも劣りますが、お茶としても抗酸化作用による健康・美容サポートやむくみ軽減などが期待されています。

画像:クレソン(ウォータークレス)

 

クレソン(ウォータークレス)について

植物紹介:オランダガラシ

ピリッと舌を刺激する苦み・辛味が特徴的なクレソン。肉料理の付け合せとしてもお馴染みの食材で、独特の風味はパセリと同じく少し好き嫌いが分かれる存在かもしれません。しかし近年はアメリカで17種類の必須栄養素の含有量を元に作成された「栄養素が高い果物と野菜のトップ41」で一位に選ばれた隠れスーパーフードとして紹介され、日本でもサラダなどにして“野菜”として取り入れる方が増えています。ちなみにクレソンという呼び名はフランス語で、英語であればクレスもしくはウォータークレスと呼ばれています。

独特の香りや外見からセリの仲間のよう感じますが、クレソンは和名でオランダカラシ(和蘭芥子)と呼ばれるように植物としてはアブラナ科に分類されています。原産地はヨーロッパから中央アジアにかけてのエリアで、ヨーロッパでは紀元前からハーブとしても利用されてきました。古代ギリシアの医師ピポクラテスが治療に用いていたとも言われていますし、頭痛に良いハーブとしても使われていたのだとか。こうした歴史からクレソンは「最古の薬用野菜」とも称され、学名もNasturtium officinaleと薬用として使われていたことを示す“officinale”が付けられています。

しかしクレソンは他の野菜やハーブのように古くから栽培がなされていたわけではなく、本格的な栽培が行われるようになったのは14世紀のフランスと言われています。1800年初頭にはイギリスでも商業的な栽培が行われるようになり、それを契機に世界中へと広まっていったのだとか。19世紀のイギリスではクレソンは安価で販売され、栄養も豊富だったことから労働者階級の方に重宝されていたとも言われています。このことから「貧者のパン」という蔑称でも呼ばれていたそうですが、現在の評価を考えると労働者の健康を守ってくれていた食材だったのかもしれませんね。

日本へは明治時代初期にオランダ人宣教師によって伝えられたと言われています。元々は在留外国人のための野菜として栽培されていたそうですが、外国人宣教師が日本各地へと持ち歩いたことで全国的に広まっていったそうです。かつては清流でしか育たないとも言われていたクレソンですが、実は汚水の中でも生育でき繁殖力が非常に高い植物でもあります。日本でも各地の川や溝などに野生化・雑草化して分布しており、要注意外来生物に指定され地域によっては駆除対象ともなっています。この繁殖力の高さから家庭でも水耕栽培・プランター栽培しやすい野菜としても人気を集めていますが、野生化のきっかけは料理店の厨房で捨てられた根からとも言わわれていますから在来種への悪影響が出ないよう注意して扱いたい植物でもありますね。

医薬品代わりのハーブとして利用されてきた歴史もあるクレソン。日本では野菜として使われることがほとんどですが、ヨーロッパや香港ではハーブティーとしても親しまれています。クレソンに豊富に含まれている栄養成分の中にはβ-カロテンやカルシウムなど水分には溶け出さない成分も少なくありませんから、栄養補給という面ではサラダなどに加えて生状態で食べるのが最も効率が良いと言えます。しかしクレソンティーとして利用した場合でも様々な健康メリットが期待されています。クセが強く少し食べにくい茎の再利用・家庭菜園で作りすぎてしまった時の消費手段として、お茶としても楽しんでみてはいかがでしょうか。

基本データ

通称
クレソン(Cresson)
別名
ウォータークレス(Watercress)、オランダガラシ(和蘭芥子)、ミズガラシ(水芥子)
学名
Nasturtium officinale
科名/種類
アブラナ科オランダガラシ属/多年草
花言葉
安定、着実、忍耐力、不屈の力、順調
誕生花
3月7日、3月15日
使用部位
地上部(茎・葉)
代表成分
カラシ油配糖体(シニグリン配糖体)、β-カロテン、ビタミン類、ミネラル類
代表効果
抗菌、健胃、消化促進、抗酸化、免疫力向上、利尿
こんな時に
食欲不振、胃もたれ、消化不良、疲労回復、風邪・インフルエンザ予防、むくみ、尿路感染症予防、アンチエイジング、美白、口臭予防
おすすめ利用法
食用、ハーブティー、浸出油
ハーブティーの味
やや刺激のある爽やかな風味、苦味もあるので好き嫌いは分かれる
カフェインの有無
ノンカフェイン

クレソンの栄養・成分・期待できる効果

クレソンティー

日々の健康維持に

胃腸機能のサポートに

クレソンの持つ独特の辛味・香気の元となっているのは、シニグリン配糖体と呼ばれるカラシ油配糖体(グルコシノレート)です。シニグリンは大根やワサビなどにも含まれている辛味成分で、アブラナ科野菜の健康成分として注目されているアリルイソチオシアネートの前駆物質でもあります。クレソンはアブラナ科野菜の中でもイソチオシアネートの含有量が群を抜いて多いという報告もあり、クレソンに期待されている様々な健康メリットもアリルイソチオシアネートによるものが多くあります。

シニグリンやアリルイソチオシアネートは抗菌作用が認められている他、胃腸を刺激して消化吸収機能を高める働きがあると考えられています。この働きから食欲不振や胸焼け・消化不良など胃腸の不調を和らげる働きが期待されています。肉料理の付け合わせに多く使われれるのも爽やかな風味だけではなく、食中毒や胃もたれ・消化不良を予防する意味合いもあるのだとか。好き嫌いはありますが、スッキリとした風味のお茶になりますので夏バテ気味のときなどにも役立ってくれるでしょう。

ただしシニグリンからアリルイソチオシアネートを生成する酵素(ミロシナーゼ)は熱に弱い性質があること・アリルイソチオシアネートは揮発性成分であることなどから、クレソンを乾燥させて“お茶”として摂取した場合は作用がかなり落ちるとも言われています。クレソンティーを作りたい場合は、ドライハーブではなくフレッシュハーブを利用するのがおすすめ。お茶を浸出する場合も煮出すのではなく、水出し・ハーブウォーターとして使ったほうが良いという説もあります。


疲労・疲労感の軽減に

クレソンは胃腸の働きを高める効果が期待できるハーブであることに加え、栄養価値の高い食材としても認められている存在です。お茶として飲む場合には水に溶け出さない成分もありますから、貧血予防に繋がるほどの鉄分・骨粗鬆症予防に役立つほどのカルシウムが摂取できるかな微妙な所ではありますが、不足しがちな栄養素の補給サポートに一役買ってくれる可能性は低くありません。

またストレスを受けることで発生した体内の活性酸素を除去・抑制してくれるビタミンCもクレソンには豊富に含まれています。ビタミンCは疲労回復効果が期待されているカルニチンの合成にも必要なビタミンですし、水溶性なのでお茶として摂取することでもしっかりと補給することが出来ます。同じく水溶性ビタミンで、代謝に関わることから疲労回復効果が期待されているビタミンB群も含まれています。こうしたビタミン類・ミネラル類・抗酸化物質の補給に役立つこと、胃腸機能が整うことから、クレソンティーは疲労回復促進や疲労感の軽減にも効果が期待できるでしょう。


免疫力保持・風邪予防

クレソンの代表成分と言えるシニグリン配糖体には殺菌作用が報告されており、食中毒だけではなく風邪などの感染症予防としても役立つと考えられています。ビタミンCにもインターフェロンの分泌促進・白血球の強化など免疫機能に関わる働きを持つ可能性が報告されていますし、抗酸化作用も免疫力保持に繋がります。胃腸機能が整い栄養補給がスムーズに行われることで体力アップにも繋がりますから、合わせて風邪予防や回復促進に役立ってくれるでしょう。クレソンは解熱作用を持つハーブであるという見解もあるようです。


むくみ軽減・尿路トラブル予防

クレソンに豊富に含まれているミネラルには不溶性のものも少なくありませんが、水に溶け出しやすいミネラルとしてカリウムが挙げられます。カリウムは細胞内液に多く存在し、細胞外液に多く存在するナトリウムとバランスを取り合っている存在。ナトリウム(塩分)が多すぎる場合にはその排出を促す作用があることから、浸透圧を調整して余分な水分を排出させる=利用作用を持つ成分と言われています。

クレソンティーはカリウムの補給に役立ってくれますし、他ミネラル類・ビタミンCなどの抗酸化物質の補給によって体液循環のバランスを整える働きが期待できます。このためクレソンティーは伝統的に利尿剤のような形でも用いられてきたと言われており、現在でもむくみ軽減効果が期待されています。またシニグリン配糖体による殺菌・抗菌作用が期待できることと合わせて膀胱炎や尿道炎などの尿路感染予防にも役立つとする説もありますよ。むくみ対策や泌尿器系トラブルに対してはゴールデンロッドと組み合わせて用いられることが多いようです。

そのほか期待される作用

美肌作りのサポートに

クレソンティーは美肌効果があるお茶であるとも言われています。成分的に見てもクレソンにはシニグリンやイソチオシアネートなどのグルコシノレート類には抗酸化作用があると考えられていますし、抗酸化ビタミンの一つであるビタミンCも含まれていますから美肌保持に役立ってくれると考えられます。抗酸化物質の補給は活性酸素によって細胞が傷つけられて出来るシワ・たるみなどの肌老化予防に繋がりますから、内側からのアンチエイジングをサポートしてくれるでしょう。

加えてビタミンCはメラニン色素生成抑制・コラーゲンの生成促進作用も認められています。紫外線対策としてや、肌のハリを高めたい方にも役立ってくれそうですね。緑茶ネトルティーなどとブレンドすることで効果アップが期待できるとも言われていますし、お茶としても飲みやすくあるでしょう。ちなみにクレソンティーには美髪・抜け毛防止効果があるとも言われていますが、こちらは亜鉛や鉄などの補給によるとことが大きいようですので、お茶として摂取する場合はあまり期待しないほうが良いでしょう。

美肌効果についても、クレソンに含まれているβ-カロテンやビタミンEは脂溶性ビタミンに分類されていますし、鉄分などのミネラルも水に溶け出さず茶葉部分に大半が残ってしまいます。美肌作りに役立つ栄養成分を余すところなく摂取したい場合は“お茶”として浸出させたものではなく、クレソンをそのまま食べる・グリーンスムージーにするなどして全体を摂取した方が効果的ではあるでしょう。目的に合わせて使い方を考えてみて下さい。


口臭対策としても

クレソンに含まれているシニグリン配糖体には殺菌作用や胃腸機能促進効果が期待されています。こうした働きから、クレソンを食べたりクレソンティーを飲むことは口臭予防にも良いと言われています。好き嫌いは別れますが、サッパリとした後味のティーとも言えますので体感的にも口の中がさっぱりしますよ。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

スキンケア・ケアケアに

あまり一般的とは言えませんが、クレソンの葉をミキサーなどにかけペースト状にしたものはパックのような形で使われることもあります。肌に塗るとシミやそばかす予防に、頭皮に塗り込むと抜け毛予防や発毛促進効果が期待できると言われています。

そのほか抗菌作用を持つことからニキビ予防に良い・抗炎症作用が期待できることから日焼け肌の手入れや虫刺されのかゆみ軽減に良いという説もあります。しかしこうした効能は民間療法上のものが多く医学・薬学的に認められていないこと・日本では実践者が少なく皮膚刺激性等についてのデータが少ないなどの問題もあります。特別な理由がない場合は実践しないほうが無難でしょう。

クレソンの注意事項

  • 多量に摂取すると子宮を刺激する恐れがあることが指摘されています。妊娠中や授乳中などデリケートな時期の摂取は控えたほうが良いでしょう。
  • 多量摂取・長期間の継続利用は胃腸を刺激しすぎたり、利尿効果が強く出過ぎる可能性があります。一日2杯程度の摂取に留め、胃が弱い方であれば2~3日飲んだ後はお休みの期間を設けるようにして下さい。

参考元:Natural Healing Guide