【クリーバーズ】
原料植物、ハーブティーに期待される効果効能

イギリスで愛されるデトックスハーブの1つ

ヨーロッパでは紀元前から現在に至るまで“浄化のハーブ”として利用されてきたと伝えられるクリーバーズ。現在でも春に血や身体を綺麗にしてくれるハーブを摂る“春季療法(Spring Cleansing)”という伝統療法などで使用されています。リンパ巡りを整える働きや利尿作用が期待できることからむくみ改善やセルライト予防、老廃物排出促進から肌荒れ予防など美容面のサポートととしても注目されているハーブです。

クリーバーズのイメージ画像

クリーバーズとは

植物紹介:シラホシムグラ

日本ではさほどポピュラーではないものの、ヨーロッパや北米では畑などに生えている雑草の一つでもあるクリーバーズ。ガチョウがよく食べているくさであることから別名“Goosegrass(グースグラス)”とも呼ばれています。原産地であるヨーロッパでは刻んだ葉と茎をスープやシチューにして食べたり、種子を焙煎してコーヒーの代替品として利用することもあります。また紀元前からクリーバーズは“浄化のハーブ”として利用されてきたとも伝えられ、現在でも特にイギリスのハーバリストはクリーバーズを使用することが多いそう。ハーブ療法で欠かせないハーブの1つとも言われているのだとか。

そんなクリーバーズは学名をGalium aperineというアカネ科ヤエムグラ属の植物。和名については「ヤエムグラ(八重葎)」と紹介している販売者・サイトも多いのですが、植物分類ではヤエムグラの学名はGalium spurium var. echinospermonクリーバーズは和名を“シラホシムグラ”とされている外来種(帰化植物)のため、厳密には別種となります。ただしメーカーによって原材料が同じGalium aperineであってもシラホシムグラと表記しているところ・ヤエムグラと表記しているところがあるため、学名を重視して見たほうが良さそうです。ヤエムグラとシラホシムグラの2つは良く似ていますが、花が薄黄緑~クリーム色のヤエムグラに対して、シラホシムグラは花が真っ白なことが大きな違い。またシラホシムグラは葉の付け根あたりに白い毛が生えていることも特徴とされています。

そのほかヤエムグラやクリーバーズ(シラホシムグラ)と同じヤエムグラ属の植物は、世界に約400種・日本国内でも19種が自生していると言われています。ヨーロッパではクリーバーズ以外にウッドラフと呼ばれるGalium odorataや、レディースベッドスローと呼ばれるGalium verumなども民間療法の中で使われています。ちなみに属名として使われているGaliumは“乳”を意味するギリシア語が由来で、かつてチーズ作りの時に牛乳を固めるために使われていたことが由来とされています。こうしたヤエムグラ類の区別は古い時代ほどハッキリしていなかったため現在のクリーバーズを指すかについては疑問が残るようですが、クリーバーズは紀元前からヨーロッパで有用な働きを持つ薬用植物・ハーブとして利用されてきた歴史があります。

1世紀に活躍した古代ギリシャの医師・植物学者であるディオスコリデスが疲労回復に良いハーブとして処方していたとも言われています。ローマ帝国時代のギリシアの医師ガレノスは肥満治療に使った・ローマの大プリニウスはむくみによる体重増加の治療に使ったとも伝えられています。少なくとも約2000年前から現在に通じるような利用法が存在していたんですね。また、皮膚疾患や火傷・外傷のケアにも使用されてきたと伝えられており、後の16世紀に活躍し「(イギリスの)ハーブ療法の父」と称されるニコラス・カルペパーもクリバースを止血用ハーブとして用いていたそう。加えてクリーバーズの若い葉を煮込んで食べると肝臓強化に良いと紹介していたという説もあります。

ちなみに現代でも日本の「春は苦味を盛れ」と似たようなもので、ヨーロッパには春に血や身体を綺麗にしてくれるハーブを摂る“春季療法(Spring Cleansing)”と呼ばれる療法があります。イギリスではネトルと共にクリーバーズも“春季療法”で活用されるポピュラーなハーブに数えられていますよ。日本でクリーバーズは春の味覚ではありませんし、ハーブティーとしてもポピュラーとは言い難い存在。しかしヨーロッパでむくみケアに使われていることから、デトックスハーブの一種としてブレンドティーやサプリに加えられることもあります。老廃物や毒素を排出を排出させることからニキビや肌荒れ対策など美容サポート系、体質改善に良いとされることから授乳期サポートティーにブレンドされていることもあるようです。

基本データ

通称
クリーバーズ(Cleavers)
別名
シラホシムグラ(白星葎)、Goosegrass(グースグラス)、Catchweed bedstrawなど
学名
Galium aparine
科名/種類
アカネ科ヤエムグラ属/越年草
花言葉
 -
誕生花
 -
使用部位
地上部(茎・葉)
代表成分
フラボノイド、イリドイド配糖体(モノトロペイン)、フェノール酸、タンニン、クマリン、サポニンなど
代表効果
リンパ浄化、利尿、抗炎症、強壮、収斂
こんな時に
体液循環サポート、デトックス、むくみ・セルライト予防、免疫力低下・風邪予防、泌尿器トラブル予防、皮膚トラブル予防、疲労回復、PMS軽減、母乳分泌サポート
おすすめ利用法
食用、ハーブティー、ハーブチンキ、浸出油、ハーバルバス、手作り化粧品
ハーブティーの味
クセのないグリーンな風味、仄かに甘みを感じる
カフェインの有無
ノンカフェイン

クリーバーズの成分と作用

クリーバーズティーに期待される効果

デトックス・泌尿器サポートに

リンパ循環・むくみケアに

ヨーロッパを中心とするエリアでクリーバーズは伝統的に利尿薬のような形で使用され、リンパの浄化作用を持つハーブと考えられてきた歴史があります。現在でもハーブ療法や民間療法では穏やかな刺激作用によってリンパ機能の強壮・活性化を促すハーブとされ、体内の老廃物や毒素の排出促進にも繋がること・利尿作用を持つことと合わせてむくみの軽減やデトックスに利用されています。そのほかリンパの流れを良くすることで倦怠感を軽減したり、リンパ腺の腫れを抑えることで扁桃腺炎・中耳炎・乳腺炎などのリンパ節炎のケアに役立つという見解もあります。

成分的に見てもクリーバーズは静脈還流を促すことでリンパ液の循環を調整する働きが期待できるフラボノイド類とクマリン誘導体を含んでいます。伝統的用途とリンパ系への有用性が示唆されている成分を含むことからクリーバーズはリンパ循環サポートやむくみ解消に取り入れられていますが、その働き・有効性についての研究はほとんど行われていません。ヒトを対象にした臨床試験のデータもありませんから、こうした働きは伝統医療・民間療法の中での効能という位置付けになっています。有効性が認められたものではありませんし、個人差なども大きく影響すると考えられます。取り入れる場合は自身の体調を見つつ、明らかな不調や疾患がある方は医師ほか専門家の指導の元で使用してください。


デトックス・セルライト予防に

クリーバーズティーはリンパの巡りを良くする働きと利尿作用が期待できることから、老廃物や毒素の排出を促してくれるデトックスティーとしても利用されています。リンパ刺激や利尿作用によって腎臓や肝臓の働きを整える・穏やかな緩下作用を持つとする説もあり、体内を綺麗に保ってくれるハーブとしてイギリスなどでは春季療法(Spring Cleansing)に取り入れられています。デトックス用としてはネトルやダンデライオンなどとブレンドして使われることも多いようです。

デトックス効果が期待できることから、クリーバーズティーはセルライト予防用としても注目されています。セルライトは医学的な言葉ではなく美容業界の定義のため曖昧な所もありますが、脂肪細胞が老廃物が結びつき肥大化したものと考えられています。つまり血液やリンパ液の流れを整えて老廃物をスムーズに回収・排泄できればセルライト予防に繋がる可能性があるため、クリーバーズもセルライトの予防や改善のサポートにも役立つのではないかと期待されています。ただしクリーバーズのリンパ強壮や利尿作用についての有効性自体が不明、血液やリンパ液の循環を良くすることでセルライトが改善されるかも可能性の話です。過剰な期待は避けたほうが無難でしょう。


泌尿器トラブル予防に

クリーバーズは高い利尿作用に加えて、抗菌作用や抗炎症作用を持つハーブとして膀胱炎や前立腺感染症など多くの泌尿器疾患の軽減にも利用されています。成分的にもクリーバーズに含まれているタンニンやフラボノイドは抗菌・抗ウィルス作用を持つことが認められていますし、一部のフラボノイドは抗炎症活性を持つ可能性も報告されている成分でもありますから何らかのサポートは期待できるかもしれません。そのほか利尿やデトックスに有効とされることから尿道や腎臓結石の予防に良い、尿毒症の治療に役立つとする説もあります。グレゴリー・L. ティルフォードとメアリー・L・ウルフによる『Herbs for Pets: The Natural Way to Enhance Your Pet’s Life(ペットのためのハーブ大百科)』では猫の下部尿路疾患の治療に適したハーブとしても紹介されています。

ただし日本でクリーバーズは医学的に効果が認められていないハーブですし、世界的に見てに臨床データが極めて少なく有効性の評価もなされていません。どのハーブにも言えることですがあくまでも食品・健康食品ですから、予防や再発防止の一環として取り入れるようにしてください。何らかの不快感・症状がある場合は疾患や原因を自己判断せず、医療機関で専門家による診断と治療を受けましょう。

そのほか期待される作用

疲労回復・風邪予防に

クリーバーズは身体の巡り・老廃物排出促進をサポートする働きが期待できるため、間接的に新陳代謝の向上にも役立つと考えられています。食材として見るとビタミン・ミネラル・アミノ酸等も含まれていることから、合わせて疲労蓄積予防や疲労回復のサポートに繋がる可能性もあるかもしれません。イギリスでの利用に倣って、春先など季節の変わり目に疲労感や倦怠感などの“だるさ”を感じる時に取り入れてみても良いかも知れませんね。代謝を良くすることでスタミナ増強や強壮に良いとする説もあります。

また、リンパ系は“体の下水管”とも表現されるように老廃物や毒素の回収に関わる働きが注目されがちですが、免疫力とも関わりが深い器官です。リンパの中にはリンパ球と呼ばれる免疫細胞が含まれており、白血球と呼ばれる免疫細胞の約35%を占めています。T細胞・B細胞・NK細胞と呼ばれるのもリンパ球系の免疫細胞。リンパの状態が良ければ組織液に侵入した細菌や異物の除去が速やかに行われる=リンパの流れが良い人の方が風邪などの感染症にかかりにくいのではないかという説もあります。

クリーバーズはリンパ液の循環を整えてくれるハーブとして伝統医療の中で用いられてきたこと・タンニンやサポニンなど殺菌作用を保つ成分も含むことから免疫機能サポートにも役立つのではないかと期待されています。老廃物排出促進をサポートする働きが期待出来ることもあってか、ヨーロッパのハーバリストは風邪やインフルエンザからの回復期・抗生物質を服用した後などに、体を整えるためのハーブとして処方することもあるそうですよ。風邪予防や免疫力のサポートとしてはエキナセアリンデンなどとブレンドして使われることもあります。


肌トラブル予防・美肌サポート

リンパ機能を整えることから、クリーバーズは脂漏症や湿疹・乾癬などの皮膚トラブルにも効果が期待されています。こうした皮膚疾患の全てがリンパ循環が悪く老廃物・毒素が溜まっていることが原因というこわけではありませんが、自然療法では汚い血液が循環する⇒それを取り込んでしまった皮膚が炎症を起こすという考え方があります。老廃物・毒素の蓄積によって起こるとされるより身近なトラブルとしてはニキビや肌荒れ・くすみなども代表として挙げられていますから、体液循環を整えることで肌荒れ予防・美肌サポートにも役立つ可能性があります。リンパ循環の改善や利尿作用から顔のむくみ改善にも効果が期待できるでしょう。


女性のサポートにも…?

生理前に起こるむくみやイライラなどの不快症状はPMS(月経前症候群)と呼ばれています。婦人科などでも治療が行われていますが、原因・悪化要因については諸説あります。女性の多くが生涯で経験するということもあり、医学的にも様々な成分やハーブの有効性が調査されています。明確な根拠があるのかは定かではありませんが、ハーバリストとして活躍するスーザン・ウィード(Susun Weed)氏は著書の中でPMSの原因はリンパの停滞やむくみの可能性が高いとして、PMS軽減にクリーバーズのチンキを飲むことを推奨しています。日本でもPMS症状が発生する要因として“水分貯留”が挙げられていますし、胸のハリや倦怠感などを感じる方はこのタイプが多いとする説があります。生理前にむくみやすい・体が重いと感じる方はPMS軽減効果が期待されているチェストベリーラズベリーリーフなどのブレンドに加えて取り入れてみても良いかもしれません。

そのほか、近年クリーバーズティーは「母乳分泌をサポートするハーブ」として紹介される機会も増えています。クリーバーズが母乳分泌を促すハーブとして期待されているのは、老廃物や毒素の排出をサポートし巡りを整えることで母乳の詰まりを改善する働きがあると考えられているため。母乳の出を良くする働きが期待されるフェンネルやフェヌグリークなどブレンドしたミルクサポートティーを推奨する方もいらっしゃいますが、webmdでは“妊娠中または授乳中に安全に使用できるか、信頼できる十分な情報はありません”と紹介し使用を避けることを推奨しています。医師・ハーバリストなどの監修の下での使用はさておき、自己判断での使用は避けたほうが良いでしょう。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

皮膚・頭皮のケアに

クリーバーズは殺菌・抗菌作用や炎症を抑える働きが期待できることから、外用でも皮膚トラブルのケアに利用されてきました。成分的にも収斂作用や抗菌作用が期待できるタンニンなどが含まれていますから、脂性肌やニキビケアに適していると考えられます。古くは日焼けや湿疹などの皮膚トラブルに対しても生葉を湿布のようにして患部に当てていたと伝えられます。日本のヨモギのような感覚ですね。

現在でも欧米ではクリーバーズが配合された軟膏があるそうですし、チンキ使って化粧水を作る・洗顔に使うなどスキンケア方面でも使われています。またヘアトニックとして利用することで頭皮の乾燥やフケ予防に良いという説、抗酸化作用や血液・リンパ液循環を促すことで肌のシワを防ぐなどの説もあります。しかし、一部の方はクリーバーズに触れることで接触性皮膚炎を起こすことが分かっています。皮膚に対しての有効性についても科学的に認められているのもではありませんので、手作りローションなどを作る時にあえてクリーバーズを選択する必要性は低いでしょう。ラベンダーなど日本国内の利用者や研究数の多いハーブを使用することをお勧めします。

クリーバーズの注意事項

  • 疾患・病歴のある方、服用中の薬がある方は医師に相談の上利用してください。
  • 妊娠中・授乳中の使用に関しては問題も報告されていませんが、安全性も確立されていません。医師に確認してから取り入れることをお勧めします。

参考元