【マテ茶/イエルバマテ】
原料植物、ハーブティーに期待される効果効能

抗酸化やダイエットにも期待が寄せられる

「飲むサラダ」とも称されるほど栄養豊富で、抗酸化作用を持つポリフェノールも豊富に含まれていることが注目されるマテ茶。原産の南米では国民的飲料として親しまれていますし、お茶・コーヒーと並べて“世界三大飲料”と呼ばれるほど世界中で愛されています。栄養補給に役立つだけではなく、マテインと呼ばれるアルカロイド類の働きによって心の身体の強壮や疲労回復にも取り入れられていますよ。近年は抗肥満作用を持つ可能性が報告されたことで、ダイエットをサポートしてくれるお茶としても注目されています。

マテ茶/イエルバマテのイメージ画像

マテ茶とは

植物紹介:イェルバ・マテ

日本でもビタミン・ミネラルが豊富な「飲むサラダ」というイメージと共に、すっかり健康茶の一つとして定着しているマテ茶。世界的に見ても茶類(※チャノキを原料とする紅茶緑茶・中国茶など)・コーヒー・マテ茶での3つを合わせて“世界三大飲料”と称されるほどにポピュラーな飲み物の一つ。マテ茶は製法によって茶葉を乾燥・熟成させたグリーンマテ(緑マテ茶)と、グリーンマテ茶をローストしたブラックマテ(黒マテ茶)に大きく分けられています。ローストした方が青臭さや苦味が消え好き嫌いのない風味になりますが、グリーンマテの方が美味しいと感じる方も多いそう。緑茶文化がある日本人にとっては割と親しみやすい風味なのかもしれません。

そんなマテ茶の原料はイェルバ・マテ(Yerba mate)と呼ばれる、モチノキ科に分類される樹木原産地はアルゼンチン・ブラジル・パラグアイなど南アメリカの中部~南部にかけてのエリアで、古くからグアラニー族やツピ族などの先住民達がお茶にして飲んでいたと伝えられています。先史時代の遺跡からも出土しているため非常に古くから原産地の人々はイェルバ・マテを摂取していたと考えられますし、インカ帝国などとの交易の際にはイェルバ・マテの葉が通貨として用いられたという説もあります。グアラニー族の伝説ではイェルバ・マテの樹木は月の女神(Yari)からの贈り物と伝えられており、彼らは活力を与えてくれる木・神の飲み物としてマテ茶を大切にしてきたそうです。

ちなみにイェルバ・マテ(Yerba mate)という呼び名の語源もグアラニー語の「Caa­mate」という言葉という説があります。Caaは植物を、mateはコップやひょうたんを意味しているのだとか。現在でも南米の方々がスペイン語圏であればマテ、ポルトガル語圏ではシマロンなどと呼ばれる瓢箪型の容器を使ってマテ茶を飲んでいる場面が紹介されることがあります。近年はティーポットで淹れられることも多いようですが、瓢箪状の容器にボンビィーリャ(Bombilla)と呼ばれる金属製のストローを入れて茶葉を漉し取りながら飲むのが伝統的な方法。イェルバ・マテという呼び名の語源説と合わせて考えると、この伝統的な飲み方はグアラニー族によって考案されたものなのかもしれません。

16世紀になりスペイン人が南米に渡ってくるようになるとマテ茶を取り巻く環境も変化しました。マテ茶は別名“Jesuit Tea(イエズス会のお茶)”とも呼ばれますが、これはイエズス会の宣教師が布教と共に、マテ茶を飲む習慣が無かった地域へもマテ茶飲用を広げたため。1600年代のうちにイエズス会はマテ茶栽培方法を確立し商業的な栽培を行っていましたが、その方法は秘匿していました。スペイン領全域からのイエズス会士の追放令が出されるとイェルバ・マテの栽培は途絶えてしまい、人々は森へと入ってイェルバ・マテを採集する生活に逆戻りしてしまいました。再び大規模な栽培が行われるようになったのは19世紀末~20世紀初頭頃とごく最近のことで、同時期に輸出も始まりマテ茶は世界中で飲まれるお茶となっていきました。

メディアで紹介されることも多いので、伝統的なマテ茶の飲み方としては瓢箪型の容器+ストローという印象がある方は多いのではないでしょうか。しかしマテ茶についての考え方は地域によっても異なっており、マテ茶に薬草やハーブを混ぜたものを「テレレ」と呼ぶ方も居れば、お湯出ししたものをマテ茶・水出しして冷たい状態で飲むものをテレレと呼び分ける方もいらっしゃるそう。また強壮剤や精力剤感覚でも使用されていたためか、マテ茶は恋愛に関連付けられることもあります。アルゼンチンではマテ茶で思いを伝える文化があり、シナモンを入れたマテ茶は「愛している」という意思表示になったりもするそうですよ。

基本データ

通称
イェルバ・マテ(Yerba mate/Erva mate)
別名
Jesuit Tea(ジェスイットティー)、Paraguay Tea(パラグアイティー)、グリーンマテ(乾燥)、ブラックマテ(焙煎)
学名
Ilex paraguariensis
科名/種類
モチノキ科モチノキ属/常緑高木
花言葉
誕生花
使用部位
代表成分
キサンチンアルカロイド類(マテイン:カフェイン・テオフィリン・テオブロミン)、ポリフェノール類(フラボノイド、クロロゲン酸、タンニンなど)、サポニン、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維
代表効果
抗酸化、抗コレステロール、覚醒・脳機能亢進、鎮静、強壮、利尿、整腸、脂肪蓄積抑制、食欲減退
こんな時に
老化予防、生活習慣病(高脂血症、動脈硬化、糖尿病など)予防、ストレス、集中力低下、倦怠感、疲労、関節痛、花粉症、むくみ、便秘、ダイエット、美肌作り
おすすめ利用法
ハーブティー
お茶の味
グリーンマテ(乾燥):緑茶を少し青臭くしたような風味、苦味は強め
ブラックマテ(焙煎):焙煎特有の香ばしさがあり、苦味は弱めで少し甘い
カフェインの有無
カフェインを含む

イェルバ・マテの成分と作用

マテ茶に期待される効果

日々の健康維持を手助けする

栄養補給のサポートに

マテ茶は日本で「飲むサラダ」という謳い文句で売り出されたように、ビタミンやミネラルなどの必須栄養素やフラボノイドなどの抗酸化物質を豊富に含んでいます。原料として使われるのは濃い緑色の葉ですからビタミンA(β-カロテン)や葉緑素も含まれていますし、ビタミンB群やビタミンCが多いことも認められています。またミネラル類も幅広く含んでおり、特に鉄分とカルシウムの含有量が多いことが分かっています。あまり野菜を摂らない南米の方々にとってはマテ茶が野菜代わり・健康の秘訣ではないか、という見解もあるほど。

このため忙しさなどでつい栄養バランスが偏りがちな私達にとっても、栄養バランスを整えることで健康維持を手助けする働きが期待されています。ただしマテ茶はコーヒーなどと比較すればカフェインが少ないものの、caffeineinformerには緑茶や紅茶など茶類よりも多くのカフェインを含んでいることが掲載されています。妊娠中や授乳中の摂取は避けるべきであるという見解が主流でもありますから、それ以外の場合でも飲み過ぎには注意しましょう。


抗酸化・抗糖化サポートに

マテ茶はビタミンやミネラルだけではなく、抗酸化物質を豊富に含むことからも注目されているお茶。クロロゲン酸・ケルセチンやルチンなどのフラボノイドほか11種類以上のポリフェノールを含むことが認められており、マテ茶のポリフェノール総量は緑茶や赤ワインよりも多いことが報告されています。ポリフェノール以外にもビタミン類などの抗酸化物質も含み、その抗酸化力については緑茶をわずかに上回ることが報告されています。

活性酸素は代謝過程の中でも発生する物質ですが、増えすぎると細胞や脂質を酸化させることで老化や劣化を促進する原因ともなります。抗酸化物質が豊富に含まれているマテ茶は酸化ストレスから体を守り、健康や若々しさの維持を手助けしてくれる食品と考えられます。マテ茶に期待されている健康メリットの多くは抗酸化作用の高さによるものだという見解もあるほど。また、マテ茶には糖化産物(AGE)の形成を抑制する働きを持つ可能性も報告されているため、抗酸化&抗糖化と2方面からの働きかけも期待されていますよ。


生活習慣病予防に

マテ茶の抗酸化作用は動脈硬化や心疾患の予防にも繋がります。増えすぎた活性酸素は悪玉(LDL)コレステロールを酸化させ血管壁に沈着しやすくし、動脈硬化を引き起こすプラークの元となります。このため抗酸化物質の補給はアテローム性動脈硬化症の予防に役立ち、心筋梗塞や脳梗塞の予防にも繋がると考えられます。2009年にはサンタカテリーナ連邦大からはイェルバ・マテ抽出物を40日間摂取した被験者の悪玉LDLコレステロールに減少が見られたことも報告され、脂質異常症の予防に役立つ可能性も示唆されています。

また2011年にはマテ茶抽出物が高脂肪食誘発性肥満マウスのインスリン抵抗性を改善したという報告もなされたことから、マテ茶は血糖コントロールに役立つのではないかという見解もあります。抗糖化作用と合わせて糖尿病予防・糖尿病による合併症予防に対する有効性についても研究が進められています。こうした働きについても可能性段階ではありますが、生活習慣病予防に取り入れられることも増えているようです。


心身の疲労回復・強壮に

南米のネイティブアメリカン達はマテ茶を強壮剤や精力剤感覚で用いていたと伝えられています。現在でもマテ茶にはカフェイン・テオフィリン・テオブロミンなどのアルカロイド類混合物が含まれていることが認められており、これらを総称してマテイン(mateine)と呼ばれています。マテインは神経系に対しての刺激作用を持つと考えられており、注意力や集中力を高めたり、気分の落ち込みや無気力状態を改善する可能性があることが示唆されています。

また、マテインは覚醒・刺激作用を有するものの作用は穏やかで、神経の過剰な興奮を鎮めストレスや緊張やイライラなどの緩和にも役立つ可能性があると考えられています。こうしたマテインの作用については科学的に証明される段階には至っていないものの、ミネラル補給と合わせて穏やかな覚醒剤・精神安定剤のような働きが期待されています。宗教儀式の中でマテ茶が供されていたのも、覚醒作用など何らかの働きかけを持っていたためではないかという説もありますよ。

加えてマテ茶は栄養補給に役立つこと、カフェインによる持久力向上や疲労の軽減、抗酸化作用による疲労軽減効果などが期待できることから肉体面の強壮や疲労回復促進にも繋がると考えられています。「100万人のローヤルゼリー」とも称されていますし、ドイツのコミッションE(薬用植物を医薬品として利用する場合の効果・安全性の評価委員会)では精神および肉体の疲労に対しての使用が承認されています。南米諸国では朝にシャッキリするために飲むお茶としても親しまれていますから、原産地に倣って疲労感が抜けないなと感じている朝に取り入れてみても良いかも知れません。


免疫機能のサポートに

マテ茶に多く含まれているビタミンCは抗酸化作用によって免疫機能低下を予防するほか、抗ウイルス作用を持つインターフェロンの生成を促進することで免疫力を高める・自身が免疫細胞のように細菌やウイルスを攻撃する働きなども報告されています。こうしたビタミンCの働きについては否定的な見解もありますが、抗酸化物質として作用することからも免疫機能の正常化をサポートしてくれる可能性はあるでしょう。そのほかマテ茶に含まれているケルセチン・サポニンには抗炎症作用を持つ可能性を示唆した報告もあり、花粉症ほか季節性アレルギーや慢性関節リウマチの軽減にも効果が期待されています。

美容面のサポートにも期待

便秘・むくみ対策に

マテ茶はむくみや便秘対策にも取り入れられています。カリウムはナトリウムを排出させることによって、身体に蓄えられていた水分の排出を助ける=利尿作用を持つミネラル。マテインと呼ばれているアルカロイドの一つであるテオブロミンにも利尿作用を持つ可能性があると考えられていることから、両成分を含むマテ茶にもむくみの軽減効果が期待されています。

食物繊維を含んでいること・便を柔らかくする働きが期待できるビタミンCやマグネシウムを含んでいることから、マテ茶は便秘予防にも役立つと考えられます。南米では伝統的に便秘や下痢の緩和に対しても用いられてきたそうですし、マテインは平滑筋の弛緩を促進することで便秘や腹部膨満感・胃腸の痙攣を和らげてくれるという説もあります。利尿薬や便秘薬のような効果は期待しないほうが良いですが、予防を兼ねて取り入れてみても良いでしょう。


血行促進・貧血予防に

マテ茶の特徴成分であるアルカロイド類(マテイン)は神経刺激作用や弛緩作用によって、血管の拡張を促して血液循環を良くする働きも期待されています。抗酸化物質の補給も血液や血管をきれいに保ち、正常な血液循環を保持することに繋がりますね。血液循環が良くなることからもむくみ軽減、エネルギー代謝を高めることで疲労回復促進や肥満・糖尿病予防をサポートしている可能性があります。加えてマテ茶は緑茶の約5倍の鉄分を含んでいることも認められており、葉緑素(クロロフィル)にも血液循環や酸素供給を高める働きが期待されています。血液循環を整える働きと合わせて貧血予防にも役立つのでは無いかと考えられています。


肥満予防・食欲抑制

マテ茶は肥満予防・ダイエットを手助けしてくれるお茶としても取り入れられています。アメリカの健康番組『The Dr. Oz Show』でマホメット・オズ医師が紹介したことでダイエットティーとしても人気になったのだとか。肥満患者にマテやガラナなどの抽出エキスを投与したところ体重減少が見られたなど肥満予防に役立つ可能性を示唆した報告もあり、脂肪吸収に重要な働きをする膵リパーゼ活性を阻害する働きを持つのではないかという見解もあります。2012年に韓国で行われた実験では脂肪細胞の分化を減少させることで脂肪蓄積を抑え、肥満や糖尿病の治療に役立つ可能性があるという報告もなされていますよ。

また、マテインは中枢神経に働きかけることで満腹感を早く感じさせる・空腹感を緩和することで食欲を抑える働きを持つのではないかという説もあります。デンマークで行われた実験でも胃内容排出を遅らせることで食欲抑制や満腹感を維持する可能性があることが報告されています。作用秩序や有効性については断定されていませんし、マテ茶を飲むだけで痩せるとは考えない方が無難ではあります。が、ダイエット中に不足しやすい栄養素の補給にも繋がりますから、食欲や脂肪吸収を抑え体重減少を助けてくれる可能性があるお茶として、肥満予防やダイエットのサポートに取り入れてみても良いでしょう。


美肌作りにも

ポリフェノールやビタミンCなどの抗酸化物質を豊富に含み、高い抗酸化力を持つマテ茶。活性酸素によって肌細胞が酸化することは、肌の弾力低下によるシワ・タルミ、シミなどの肌の老化現象を引き起こす原因にもなります。マテ茶を飲んで抗酸化物質を補給することで、肌細胞の酸化を抑制してお肌を若々しく保つことにも繋がるでしょう。ビタミンCにはコラーゲンの生成促進作用、シミ・そばかすの原因となるメラニン色素の生成に関わる酵素チロシナーゼの働きを阻害することでメラニン色素の沈着を予防する美白効果もあります。

また、ビタミンAやビタミンEは肌の健康維持や新陳代謝を高める働きも期待できます。マテインやポリフェノールによる血行促進作用と合わせてお肌のくすみ解消やターンオーバー促進、ミネラルの補給と合わせて健やかなお肌作りの手助けをしてくれる可能性もあります。そのほか便秘解消による肌荒れ解消・ビタミンBによる脂質抑制(ニキビ予防)など、幅広い栄養素を含んでいるからこそ肌トラブルの予防・改善に対しても様々な改善効果が期待されていると言えるかも知れません。

マテ茶の注意事項

  • 授乳中の方・お子さんの飲用は避けましょう。妊娠中の摂取も控えたほうが無難です。
  • 持病や疾患がある方、カフェイン過敏症の方は摂取を避けましょう。
  • 様々な医薬品との相互作用が指摘されています。投薬治療を受けている方は医師・薬剤師に相談してくだい。
  • 過剰摂取、長期間に渡る継続摂取は控えてください。

参考元