シベリアンジンセング/エゾウコギ
ハーブティーと期待される効果効能紹介

ストレス社会をサポートするアダプトゲンハーブとして注目

シベリアジンセンは和名をエゾウコギというウコギ科植物。強壮剤として古くから用いられてきたハーブで、ロシアのオリンピック選手や宇宙飛行士が利用したことで注目されるようになりました。脳内麻薬と呼ばれる“β-エンドルフィン”の分泌促進作用が期待されるエレウテロサイドなどを含むためストレス抵抗力向上や集中力アップなどの効果が期待され、日本でも疲労回復やストレス対策としてサプリメントなどに使われています。

 

シベリアンジンセングについて

植物紹介:エゾウコギ

エゾウコギは別名シベリアジンセン(シベリア人参)とも呼ばれ、朝鮮人参もしくは高麗人参と呼ばれる“オタネニンジン”の仲間として紹介されることの多い存在。植物分類上はオタネニンジンやアメリカンジンセングはトチバニンジン(Panax)属のため、エゾウコギはウコギ(Eleutherococcus)属と少し離れています。アダプトゲン(ストレス適応力向上)作用や滋養強壮などオタネニンジンと似た働きが期待できるハーブとして注目されていますが、種も近くないですし有効成分も異なっているそう。

日本ではかつて蝦夷地と呼ばれていた北海道に自生していた事から“エゾウコギ”と呼ばれていますが、北海道だけではなくロシアや中国ほかアジア北部などユーラシア大陸の北東、冷涼な地域に自生しています。エゾウコギの分布域に近い地域では古くから民間医薬として利用されていたと考えられており、ロシアでの呼び名「エレウテコロック」は命の根を意味していると言われています。また中国では「刺五加(しごか)」として生薬の一つに数えられ、中医学の薬学書である『本草綱目』にも心身の強壮に役立つこと・長く服用すると長寿に導いてくれる可能性があることが記述されているそうです。

日本でも古くから北海道で暮らしてきたアイヌの人々は民間医薬としてエゾウコギを活用してきたと伝えられています。しかし本州から開拓のために来た移民はその働きを知らず、農業や畜産に邪魔な雑草として駆除してしまいます。江戸時代に米沢藩が救荒植物としてエゾウコギの栽培を推奨した事があるとも言われていますから全く知られていなかったという訳でもないのでしょうが、日本ではあまり重要視はされていなかったハーブと言えます。

ロシアでは1960年代からエゾウコギの成分や作用についての研究が進められ、1966年には「朝鮮人参よりも優れた作用を持つ」という報告がなされています。1980年のモスクワオリンピックで好成績を残した旧ソ連の選手達がエゾウコギのエキス剤を使って疲労を抑制していたことが話題になり、1980年以降エゾウコギ(シベリアジンセン)は世界的に注目される薬用植物となっていきます。ちなみに日本でも研究は1973年から行われていたそうですが、本格的な利用は1990年以降と言われています。アスリートや宇宙飛行士など過酷な環境でのパフォーマンスが求められる人々が取り入れていると紹介されたこと・サプリメントやドリンク剤などの流通が増えたことで知名度が高まっていったようです。

基本データ

通称
シベリアンジンセング(Siberian Ginseng)
別名
エゾウコギ(蝦夷五加)、シベリア人参、刺五加(シゴカ)、五加皮(ゴカヒ)、へビノボラズ
学名
Eleutherococcus senticosus
(Acanthopanax senticosus Harms)
科名/種類
ウコギ科ウコギ属/落葉低木
花言葉
 -
誕生花
 -
使用部位
代表成分
リグナン化合物(エレウテロサイドE類、セサミン、ピノレジノール・ジグルコサイド)、フェノール配糖体(エレウテロサイドB)、クマリン誘導体(イソフラキシジン、エレウテロサイドB1)、トリテルペノイドサポニン(エレウテロシドA)、クロロゲン酸、タンニン、ビタミン類、ミネラル類
代表効果
鎮静、アダプトゲン、脳機能向上、疲労回復、免疫賦活、血行改善、抗酸化、代謝促進、ホルモンバランス調整
こんな時に
ストレス、情緒不安定、不眠、集中力低下、疲労・疲労感、自律神経の乱れ、風邪などの感染症予防、血行不良、冷え性、高血圧・動脈硬化予防、肥満予防、更年期障害ほか女性特有の不調
おすすめ利用法
ハーブテイー、チンキ、料理
ハーブティーの味
ほぼ無味無臭だが、微かに木の根の香りと苦さを感じる場合も
カフェインの有無
ノンカフェイン

シベリアンジンセングの栄養・成分・期待できる効果

シベリアンジンセングティー

心身のコンディションを整える

ストレス・不眠対策に

シベリアジンセング(エゾウコギ)の有効成分とされているエレウテロサイドEは、脳下垂体に働きかけることで神経伝達物質“β-エンドルフィン”の分泌を促進する働きがあると言われています。β-エンドルフィンは脳内モルヒネとも呼ばれており、モルヒネの6.5倍とも言われるほど強い鎮静作用を持っています。β-エンドルフィンはストレスを軽減して多幸感や安心感をもたらす働きがありますから、その分泌を促す働きが期待されるシベリアジンセングがアダプトゲンハーブとされているのも納得ですね。

こうしたエレウテロサイドEはの働きはストレスや神経疲労・イライラなどの軽減に役立つと考えられていますし、副交感神経を優位にしてリラックス状態に導くことで寝付きを良くする働きも期待されており、生薬としても不眠の軽減に用いられているそう。ストレス性の不眠が気になる時は、気持ちを落ち着ける働きがあるレモンバームややオレンジピールなどとブレンドしたり、ハチミツを加えて飲むのもおすすめです。


集中力・記憶力アップに

脳内モルヒネとも呼ばれるβ-エンドルフィンですが、モルヒネが鎮痛・鎮静方面にのみ働くのに対して、β-エンドルフィンは元々が神経伝達物質であり、脳の神経機能をサポートすることで脳活動を高める働きもあります。結果としてβ-エンドルフィンの分泌が高まることは、記憶力や集中力・思考力など脳機能の向上にも繋がると考えられています。

このためβ-エンドルフィン分泌促進作用があるとされるエゾウコギは、鎮静作用によって気持ちを落ち着かせるだけではなく集中力や記憶力を高める働きも期待されています。薬物との大きな違いであるとも言えるでしょう。ストレス軽減・抵抗力アップと合わせて、プレッシャーの中で勉強や仕事をしっかりこなしたい方にも支持されています。


疲労回復・強壮に

β-エンドルフィンは精神的なストレスの軽減だけではなく、意欲を高めることで疲労感を感じにくくする働きもあります。ちなみに長時間走り続けると気分が高揚する「ランナーズ・ハイ」を引き起こす原因物質ではないかとも言われています。

このβ-エンドルフィンの働きとしては、疲労を無くすのではなく“感じにくくする(疲労感を無くす)”ものですが、精神や肉体へのストレス抵抗性を高めることで自然治癒力を高め、実際の肉体疲労の回復促進にも繋がるのではないかと考えられています。また疲労感を引きずりにくくすることで、身体の強化のサポートにもやうだってくれるでしょう。ロシアではアスリートや宇宙飛行士の体作りに取り入れられているのも、疲労の早期回復に役立つ・集中力を高める働きが期待できるためだと言われています。


健康維持のサポートに

自律神経を整える

自律神経は交感神経と副交感神経がバランスよく切り替わることで機能していますが、生活リズムが乱れたりストレスが多いと切り替えが上手く行われずバランスを崩してしまいます。シベリアジンセングはアダプトゲンと呼ばれるようにストレスに対する適応力を高める働きが期待されているハーブであり、エレウテロサイドEによる分泌促進効果が期待されているβエンドルフィンは副交感神経を優位に働かせる働きもあります。

このことからシベリアジンセングは自律神経失調症、もしくは自律神経の乱れによる慢性疲労感・だるさ・めまい・胃腸機能の不調などの諸症状の予防や改善効果が期待されています。副交感神経は胃腸の働きとも関係が深いため、消化促進や便通促進などにも繋がると考えられます。


免疫力向上に

神経伝達物質の一種であるβ-エンドルフィンは、免疫機能をつかさどるT細胞・B細胞・NK細胞などの免疫細胞を活発化させる働きを持っている可能性が報告されています。このことからβ-エンドルフィンは免疫機能の保持と関わりが深いと考えられており、風邪やインフルエンザなどの感染症予防に良いとされています。またNK細胞(ナチュラルキラー細胞)はガン細胞などの異常細胞を攻撃することから、感染症の悪化防止だけではなく様々な病気の予防にも効果が期待されています。

シベリアジンセング(エゾウコギ)のエレウテロサイドEはこのβ-エンドルフィンの分泌促進作用が期待されていますから、シベリアジンセングの摂取は免疫力の保持・向上に役立つと考えられています。ロシアではチェルノブイリの原発事故の際の放射線治療にも用いられたのだとか。もっと身近なところでは栄養価や強壮効果が期待できることもあり、民間医薬として風邪のケアにも取り入れられてきた存在でもあります。シベリアジンセングは味がほとんど無いのでエキナセアジンジャーリコリスなどとブレンドして飲むと良いでしょう。


血行不良・冷え性に

シベリアジンセングに含まれているイソフラキシジンやエレウテロサイドB1などのクマリン誘導体は、血液凝固を抑制することで血液やリンパ液の循環を促す働きがあると考えられています。シベリアジンセングには過酸化脂質の生成を防ぐことでスムーズな血液循環をサポートしてくれる抗酸化物質も多く含まれていますから、相乗して血行不良による肩こりや頭痛・冷え性の軽減に有効とされています。また体液循環が良くなることからむくみの改善にも効果が期待できるでしょう。


老化・生活習慣病予防

エレウテロサイドBやイソフラキシジンなどの高血液凝固作用は、メディアで“血液サラサラ効果”と言われているものと同等のため高血圧や動脈硬化などの生活習慣病予防にも繋がると考えられます。またシベリアジンセングにはクロロゲン酸やタンニンなどの抗酸化物質、血中コレステロール値低下効果が期待されるサポニン類なども含まれていますから、過酸化脂質の生成を抑制することからも生活習慣病予防に役立ってくれるでしょう。エゾウコギ抽出物を使った実験ではα-グルコシダーゼ活性阻害作用が報告されていることから、糖尿病予防への有効性も期待されているようです。


そのほか期待される作用

肥満予防

シベリアジンセングには肝機能や脂肪代謝を高める働きも期待されています。またクマリン類による血行促進作用や自律神経のバランスが整うことからも代謝を高め、脂肪の蓄積予防に繋がるでしょう。ダイエットティーとして飲まれているようなものではありませんが、疲労感を軽減することなどと合わせて肥満予防のサポートにも役立ってくれるかもしれません。


女性特有の不調に

シベリアジンセングに含まれているリグナン配糖体のピノレジノール・ジグルコサイドという成分は、腸内細菌によって分解されることでエンテロラクトンなど植物性エストロゲンに代謝されることが報告されています。エンテロラクトンは女性ホルモンのエストロゲンと似た分子構造をしており、疑似ホルモンとしてエストロゲンをサポートすることで更年期障害の軽減に役立つと考えられています。

また植物性エストロゲンはヒト本来のエストロゲンよりも作用が弱いという性質から、エストロゲン過剰の場合はホルモンバランスを整える方向に働くと考えられています。加えてシベリアジンセングに含まれているエレウテロサイドEなどの働きから精神状態を落ち着かせたり、自律神経のバランスを整える働きも期待できるでしょう。このため更年期障害やPMS(月経前症候群)など女性ホルモンの変動による諸症状の軽減にも取り入れられています。精神的不調だけではなくのぼせ・ホットフラッシュなどがある方にも適しています。


男性の生殖機能強壮に

シベリアジンセング(エゾウコギ)は強壮に優れたハーブとされてきたこともあり、男性の生殖器トラブルや精力増強剤としても用いられてきました。現在でも生薬成分として精力剤に配合されています。アダプトゲン作用によってストレス抵抗性を高めることや、血流を良くすることが男性機能の向上にも繋がるのではないかと考えられています。

シベリアジンセングの利用について

シベリアジンセンはサプリ・栄養ドリンクなどの加工品にもよく使われています。茶葉として売られているものもありますので取り入れやすいものを選ぶと良いでしょう。茶葉の場合は煮出しではなく“蒸らし”て使うことが出来ますが、ほとんど味も匂いもありませんので他のハーブ類とブレンドして用いられることが多いようです。
またほとんど無味無臭なので浸出したものをスープにつかうなど料理・お菓子作りなどに活用することも出来ます。薬膳ではゼリーなどにして使うこともあるのだとか。そのほかハーブチンキや薬酒作りなどにも用いられています。


摂取量・副作用について

シベリアジンセングは食品扱いであるため摂取量の規定などはありませんが、お茶として飲む場合は一日に大さじ1杯程度、多くても10g以内にすると良いと言われています。「シベリア人参は朝鮮人参よりも副作用が少ない」という説もありますが、イライラ・不安感・抑うつ感・筋痙攣などの症状が出ることも指摘されていますので多量摂取は避けるようにしましょう。

また長期間の継続も心臓への負担がかかることや副作用を起こす可能性がありますし、耐性ができて効きが悪くなるとする説もあります。継続して飲む場合は最長2ヶ月まで、間に2週間~1ヶ月間のお休みの期間を入れるようにしてください。休みを挟んで再び摂取した際に、以前よりも効果が実感できないと感じた場合は“休み”期間を延長すると良いそうです。

シベリアンジンセングの注意事項

  • 高血圧の方、医薬品を服用中の方は使用を避けましょう。
  • 妊娠中・授乳中の方は使用を控えるか、医師に相談の上利用して下さい。
  • 長期間の継続利用は避け、間にお休み期間を挟むようにしましょう。