ミルクシスル/マリアアザミ
-ハーブティーと期待される効果効能紹介

お酒好きな方・肝臓が気になる方に注目されているハーブ

ミルクシスルは牛乳をこぼした跡のような白いまだら模様の葉が特徴で、和名をオオアザミもしくはマリアアザミという植物です。古代ギリシア・ローマ時代から肝臓のハーブとして伝統的に利用されてきた存在で、近年でも種子に多く含まれている“シリマリン(フラボノリグナン類)”に肝臓の保護・傷んだ肝細胞の修復・肝臓機能の向上効果が見られたことが報告されており、肝臓が気になる方を中心に取り入れられています。肝臓は有毒物質を分解・無毒化する臓器でもあるためデトックス用としてや、抗酸化ハーブとしても注目されています。

画像:ミルクシスル(マリアアザミ)

 

ミルクシスルについて

植物紹介:マリアアザミ

授乳期のサポートを売りにしたブレンドティーの原材料の一つとして、肝臓が気になる方向けの健康食品(サプリメント)として時折その名前を見かけるハーブ、ミルクシスル。犬や猫を飼われている方であればペットフードの成分として目にしたことのある方もいらっしゃるかも知れません。ミルクシスルという呼び名から植物をイメージするのは難しいですが、和名をマリアアザミもしくはオオアザミと呼ばれる植物。原産地は地中海沿岸とされていますが、現在はヨーロッパ・北アフリカ・日本を含むアジアに広く分布しています。植物としてはキク科オオアザミ属(Silybum)に分類されるため厳密には薊=アザミ属(Cirsium)に分類される植物というわけではありませんが、特徴的な花の形・トゲなど全体的なビジュアルはよく似ています。

アザミと言えばこのトゲから一部で「花言葉が怖い花」として話題になった植物。よく紹介されるアザミ類の花言葉には“独立、厳格、復讐、触れないで”などがありますが、これも触れるとトゲが刺さっていたいぞということに起因しているそう。またアザミという和名もトゲが刺さって「驚きあきれる」ことを意味する古語「あざむ」が語源であると言われています。ただしアザミの棘は悪いイメージだけではなく、身を守ってくれるものとして捉えることも出来ます。古代北欧ではアザミを雷神トールの花として雷除けや魔除けに使っていたと言われていますし、スコットランドでは“敵兵がアザミのトゲで足を刺され悲鳴を上げたことで、スコットランド兵が気付いて敵を追い払った(国を守った)”という逸話から国花にも制定されていますよ。

アザミ全体ではなくミルクシスル(マリアアザミ/オオアザミ)に限った話としては、牛乳をこぼした跡のような白いまだら模様の葉が「ミルク」に見立てられていることが名前の由来とされています。名前の由来ともなった葉の白い斑点にも伝説があり、聖母マリアがイエス・キリストに乳を飲ませようとした際に雫が葉にこぼれ落ちたのだという話がよく紹介されています。そのほかにも聖母マリアに関わる伝説はいくつか存在しており、ミルクシスルは“St. Mary’s Thistle(聖母マリアの薊)”とも呼ばれています。“thistle”は薊を指す言葉ですので、和名の場合は乳(ミルク)ではなく聖母マリアの方を冠してマリアアザミですね。余談ですが混同されやすい植物としてサントリソウ属のキバナアザミ、学名Cnicus benedictusがあります。こちらは別名は“St. Benedict’s thistle(聖ベネディクトのアザミ)”や“ホーリーシスル(holy thistle)”などと呼ばれています。

そんなミルクシスルは宗教的な意味合いで重要視されていただけではなく、古くから薬用植物としても利用されてきた歴史があります。『博物誌』の著者である大プリニウス(ガイウス・プリニウス・セクンドゥス)は、ミルクシスルを肝臓に役立つハーブと考えていましたし、古代ギリシアの医者であり薬理学と薬草学の父と言われるペダニウス・ディオスコリデスもその有効性を記述しているそう。医学の父と称されるヒポクラテスも研究していたという説がありますから、2000年以上前には既に薬用として用いられていたと推測できます。

またアザミ類は各地で食用とされている植物でもあります、同科別属の植物としてはチョウセンアザミ属に分類されているアーティーチョークもありますね。アーティーチョークは食材として知られていますが、実はミルクシスルも花・茎・根などほぼ全てが野菜として食べられる植物。茎や葉はサラダ野菜やバター炒めなどに、また花の下にある棘状の葉はアーティチョークのように食べていた地域もあるそうですよ。古代ローマ人は野菜としてもミルクシスルを栽培していたことが分かっていますから、身近な民間薬のような感覚であったのかも知れません。中世に入ると“肝臓に良いハーブ”という認識がより広まっていたと言われていますし、ドイツ薬草学の祖とされるヒルデガルト・フォン・ビンゲンもミルクシスルを処方していたと言われています。

現在でもミルクシスルはドイツを中心として、認可を受けたものは医薬品として利用されています。ハーブの中では伝統的に伝えられてきた効能が科学的に証明されていない・賛否両論のものが数多くありますが、ミルクシスルはドイツのコミッションE(薬用植物を医薬品として利用する場合の効果・安全性の評価委員会)において消化不良・慢性肝炎や肝硬変への使用が承認されています。これはミルクシスルの種子に含まれる「シリマリン」という成分についての研究データが非常に多く、肝細胞保護作用や肝機能改善作用が見られたという報告が多くなされているためだとか。米国ハーブ協会でもクラス1(適切に使用される場合、安全に摂取することができるハーブ)として分類されていますが、健康食品・健康茶として取り入れる場合にはきちんと自己管理をしながら摂取する必要があります。

基本データ

通称
ミルクシスル(Milk thistle)
別名
大薊(オオアザミ)、マリアアザミ、、セントマリーズ・シスル(St. Mary’s Thistle)、乳薊(ニュウケイ)など
学名
Silybum marianum
科名/種類
キク科オオアザミ属/2年草
花言葉
独立、厳格、復讐、満足など(※薊と同じものを記載)
誕生花
使用部位
種子(葉を含む場合もあり)
代表成分
シリマリン(フラボノリグナン類/シリビニン、イソシリビニン、シリクリスチン、シリジアニン)、フラボノイド、脂肪酸類(リノール酸、オレイン酸、ミリスチン酸など)、ビタミン類、
代表効果
肝細胞保護・修復、肝機能亢進、解毒、抗酸化、抗アレルギー
こんな時に
二日酔い、肝障害(脂肪肝、アルコール性肝障害、肝炎、肝硬変症など)予防、デトックスサポート、消化不良、アンチエイジング
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーブチンキ、浸出油、キャリアオイル
ハーブティーの味
香りはほぼなく、味も薄いがかすかに種子・ナッツ系の苦味とまろやかさがある
カフェインの有無
ノンカフェイン

ミルクシスル(マリアアザミ)の栄養・成分・期待できる効果

ミルクシスルティー(種子)

肝臓機能のサポートに

肝臓の保護・肝機能向上に

ミルクシスルは約2000年も前の古代ギリシア・ローマ時代から、経験的に肝臓の働きを助けるハーブとして利用されてきた植物です。現代でもミルクシスルの種子には“シリマリン”と呼ばれるシリビニン、イソシリビニン、シリクリスチン、シリジアニンといったフラボノリグナン類の混合物が含まれていることが確認されており、この“シリマリン”もしくはシリマリンの主要活性成分であるシリビニンの有効性に関する研究論文は300以上とも言われています。

肝細胞保護や肝機能改善など肝臓に関わる薬理的効果を示している臨床報告も多く、ヨーロッパの一部では肝臓疾患の保管的な治療薬としても用いられています。また2016年には中国の製薬グループからも肝臓の炎症や肝障害の軽減に役立つ可能性があることを示唆する報告がなされています。ミルクシスルの成分がどのように機能しているのかについては研究途中であり、有効性についても諸説ある段階ですが、店頭的に利用されてきたこと・こうした研究報告が多くあることから医薬品として認可されていない国々でも傷ついた肝細胞の保護や修復・肝機能向上効果が期待できるハーブとして健康食品に取り入れられています。


お酒を飲む方のお供として

ミルクシスルの種子に含まれている“シリマリン(シリビニン)”の作用秩序や有効性については諸説ありますが、おそらくは肝臓が有毒物質を代謝する時に副産物として生成されるフリーラジカルから肝臓を守り、細胞の損傷を軽減してくれるのではないかという見解が主流です。また肝機能を高める・タンパク質合成を高めるとする説などもあるため、肝臓を守ってくれるハーブとしてアルコールによる悪酔いや二日酔い対策、アルコール性肝障害・肝炎・肝硬変など予防にも役立つのではないかと考えられています。

ただしアルコール関連の肝臓病に対しては、研究初期には肝機能が改善され死亡リスクが減少する可能性が示唆されていたものの、近年の研究では有効性が見られないという報告も多くなされています。このため有効性については根拠が不十分であり信憑性は低いという見解が主流となっていますが、肝臓を守ってくれる可能性があるハーブとして二日酔い予防・肝臓サポート系のサプリなどにはミルクシスル(シリマリン)が配合されたものも多くあります。

肝臓サポート成分として目にする機会の多いウコンは肝機能向上・胆汁分泌促進作用が強いとされているのに対し、ミルクシスルは肝細胞保護・肝機能向上のサポートに効果が期待されている成分。肝臓ケアとひとまとめにされることもありますが、期待されている働きが実は若干異なっているんですね。こうした得意分野の関係から、お酒を日常的に飲まれている方や不規則な生活による体・肝臓のダメージが気になる方はミルクシスルの方が適しているという説もありますよ。


解毒(デトックス)サポートに

肝臓は胆汁酸の生成・エネルギー貯蔵など様々な役割を担っている臓器ですが、アルコールだけではなく体内に入った毒物を分解して無毒化する働き=解毒を行っている臓器でもあります。アルコール類やタバコ・薬物・化学物質(薬剤)など「毒物(有害物質)」と言われるものから体を守ってくれている器官でもあるということですね。しかし肝臓も毎日フル回転していると疲労してしまいますし、肝臓は「痛まない臓器」とも言われるように自覚症状がないままに毒素を蓄積していったり不具合を起こすということも指摘されています。

肝臓の負担を減らすためにはアルコールやニコチン・薬物などの摂取を控えることが大切。それと同時に、肝臓を綺麗な状態へと整えることをサポートしてくれる成分を摂取すると良いのではないかとも考えられています。このため肝細胞保護・肝機能向上効果が期待されるミルクシスルの“シリマリン(シリビニン)”も解毒機能を助けてくれる成分として注目されており、肝機能を向上させてくれるデトックスハーブの一つにも数えられています。シリマリンは肝細胞に蓄積された毒素の排出を助ける働きがあるとする説もありますが、明確な根拠はないことが指摘されています。


肝機能低下から起こる不調にも…

ミルクシスルやその抽出物“シリマリン(シリビニン)”を使用した認可製品は、ドイツのコミッションEにおいて「消化不良」に対しての使用も承認されています。これはミルクシスルに胃腸の機能を高めるという働きがあるというわけではなく、肝機能を正常に整えることから食欲不振や消化不良などの軽減に繋がるという部分が大きいと考えられます。

また承認には含まれていないものの、同様に肝臓の働きを高めるという理由から、肝機能低下から引き起こされる慢性疲労感や慢性頭痛・自律神経失調症・イライラ・無気力などの諸症状軽減に良いのではないかという声もあります。ただしこうした症状の原因がどこにあるのかを自己判断することは難しいですし、ミルクシスル(シリマリン)の働きについても十分な根拠があるわけではないものが多いですから、気になる症状がある場合には医師の診察を受けるようにしましょう。

そのほか期待される作用

抗酸化(アンチエイジング)

ミルクシスルの有効成分とされている“シリマリン”はシリビニン、イソシリビニン、シリクリスチン、シリジアニンといったフラボノリグナン類の混合物です。これらは抗酸化作用を持つポリフェノールの一種でもありますし、ミルクシスルにはその他にもフラボノイド系ポリフェノールが含まれているとも言われています。抗酸化作用によって活性酸素の増加を抑制することに繋がりますし、シリマリンには体内で合成される抗酸化物質グルタチオンの生成を促す働きを持つ可能性も報告されています。

こうした抗酸化を促す働きを持つと考えられていることから、ミルクシスルはアンチエイジングハーブの一つとしても注目されています。アメリカでは抗酸化用としてサプリメントを取り入れる方もいらっしゃるそうですし、肝臓の働きを助けてくれることと合わせて生活習慣病の予防に役立つのではないかとする説もあります。2016年にマウスを使って行われた実験ではシリマリンの投与でインスリン抵抗性が改善されたことも報告されており、2型糖尿病患者に対する有効性についても研究が進められているハーブです。


骨粗鬆症予防・アレルギー軽減に

人に対する有効性については分かっていないものの、いくつかの動物実験ではミルクシスルに含まれている“シリマリン”に骨量減少を抑制する作用が見られたことが報告されています。マレーシアの大学での報告ではミルクシスルが抗骨粗鬆症および骨折治癒剤として活用できる可能性が示唆されていますし、韓国で行われた卵巣摘出マウスを使った実験ではミルクシスルエキス(シリビニン)にエストロゲン欠乏によって誘発される骨量減少の予防に有効であるということが報告されています。現時点で人間への有効性は不明ですが、こうした報告からミルクシスルは閉経後の女性の骨粗鬆症予防に役立つのではないかと注目されています。

同様に人に対する有効性は分かっていないものの、動物実験ではミルクシスルに含まれるシリビニンに気道炎症に対する保護効果が見られたという報告もなされています。ヒスタミンの分泌を抑えることで抗炎症作用を有するという見解もあり、抗酸化物質が多く含まれていることと合わせて花粉症などのアレルギー軽減にも効果が期待されています。花粉症大国と言われる日本でも健康食品などに使われていることがあるようですが、人に対する十分な有効性は認められていないことに留意しましょう。食品として扱われているものですから過度な期待は避けるべきです。


肌荒れ予防・美肌サポートにも

シリマリンと呼ばれるフラボノリグナン類・フラボノイドなどの抗酸化物質を多く含むことから、ミルクシスルは肌の抗酸化=活性酸素の増加によって起こるシワやたるみ・くすみなどの肌老化を抑制する働きも期待されています。またシリマリン(フラボノリグナン類)の1つであるシリビンには真皮にあるコラーゲン増加に働きかけ繊維構造を正常化する働きや、成長ホルモンの分泌を促進する働きが見られたとする実験報告もあります。こちらも人への有効性については不明瞭であることが指摘されていますが、抗酸化作用と合わせてシワを改善しハリのある肌を作るなどの美肌効果が期待されていますよ。そのほか肝機能向上・デトックスに役立つことから、ニキビや肌荒れの予防にも繋がると考えられています。

母乳サポートについて

ミルクシスルは授乳期の女性の母乳分泌を高めてくれるハーブとして紹介されることもあります。これは伝統的に利用されてきたということ・乳生産ホルモンであるプロラクチンの分泌を促す働きがあるためだと言われていますが、その効果を確認するための十分な研究は行われていないことが指摘されています。無作為化対照研究においてプラセボ投与群よりも母乳分泌が高まったという報告もなされていますが、有効性および安全性を評価できるほどのデータはないという見解が主。現在は欧米でも母乳サポートとしてミルクシスルのハーブが使われていることは少ないようですし、妊娠中・授乳中の仕様において安全性が確立されているものでもありませんから自己判断での使用は避けたほうが確実でしょう。

お茶以外の使い方(外用)について

スキンケアに

ミルクシスルに含まれているシリビニンは炎症性皮膚障害に対しての予防効果があるのではないかと考えられています。2015年に行われた動物実験ではシリビニンが強力な天然抗炎症剤として働く可能性が示唆されています。またミルクシスルの種子から抽出されたミルクシスルオイルも、抗酸化物質を含むことからアンチエイジング効果が期待できるキャリアオイルとして利用されていますね。

ただし人の肌に肌に塗布した場合の効果については断定されていませんし、ミルクシスルはアレルギー反応を引き起こすことが指摘されている植物でもあります。分離された成分(シリビニン)を配合した製品についてはさておき、ミルクシスルの抽出液・圧搾したオイルなどを使用する場合は接触性皮膚炎などの原因となる可能性もありますから使用には注意が必要です。

ミルクシスルの注意事項

  • 妊娠中の使用は避けましょう。種子を主とするものは授乳中の使用も控えて下さい。
  • 疾患のある方・医薬品を服用中の方は自己判断での摂取を避けましょう。
  • アレルギーのある方、特にキク科植物にアレルギーがある方は使用に注意が必要です。
  • 経口摂取の場合、稀に下痢や胃腸障害を起こす場合があります。

参考元

10 potential health benefits of milk thistle
7 Science-Based Benefits of Milk Thistle
アザミの花言葉