メグスリノキ(目薬の木)
健康茶と期待される効果効能紹介

古くから目の健康維持に用いられてきた、日本の固有植物

アイケア系健康食品などでブルーベリーやアイブライトなどと共に注目されているメグスリノキ。日本固有のカエデの一種で、煎じ汁を目薬として使用していたことが“メグスリノキ(目薬木)”という名前の由来とも言われています。現在でもゲラニインやロドデンドロールなどの成分には目に対する有効性があると考えられ疲れ目のケアなどに用いられているほか、肝臓機能のサポートにも効果が期待されています。

画像:メグスリノキ(目薬の木)

 

メグスリノキ(目薬の木)について

植物紹介:メグスリノキ

名前からして“目”に良さそうな印象の強い、メグスリノキ。アイケア系サプリメントなどの健康食品に配合されている成分として目にしたことがある方も少なくないのではないでしょうか。そんなメグスリノキはムクロジ科カエデ属に分類される落葉広葉樹で、モミジ・カエデ類の一種として紹介されることもあります。ちなみに「紅葉(モミジ)」というのは本来紅葉している樹木全般を指す言葉でしたが、特に鮮やかに紅葉するカエデ類の総称・代表種であるイロハモミジの呼び名として使われるようになったそう。メグスリノキの葉は深い切れ込みのない楕円形のため一般的にイメージされる“モミジ”とは異なりますが、秋には紅く鮮やかに色付くため園芸用としても用いられています。

メグスリノキは日本のみに自生する固有種。英名や学名では“日光”に関連する言葉が使われていますが、これはロシアの植物学者・その助手が日本各地で植物採取を行った際に栃木県日光でメグスリノキを採取したことに由来しています。日光以外にも東北以南から九州・四国にかけて範囲に分布しており、長野県の八幡宮鞠子社の入口にあるメグスリノキや、福島県喜多方市の「杓子ケ入メグスリノキ」などは天然記念物にも指定されています。原産国である日本では古くからメグスリノキの樹皮などを煎じて飲み薬・洗眼薬として利用していたと考えられおり、室町~戦国時代には眼病などに対しての効能を持つことが知られていたようです。メグスリノキという呼び名も戦国時代に煎じた汁を目薬として使用していたことに由来すると言われています。

メグスリノキに関わる歴史として、黒田官兵衛の祖父である黒田重隆のエピソードも知られています。司馬遼太郎の小説『播磨灘物語』の中でも黒田重隆は“メグスリノキを原料とした目薬”を作った事で財を成し黒田家の礎を築いたと描かれていますし、NHK大河ドラマでも「黒田家は目薬から財を成していった」というセリフが使われていましたね。この黒田家のメグスリノキの目薬が史実かについては否定的な見解も多いようですが、メグスリノキの別名である“長者の木”も目薬を売って財を成したという伝承に由来しているという説もありますよ。

江戸時代になるとメグスリノキの煎じ薬や洗眼薬・液を指などにつけて目を洗う膏薬型洗眼薬などが人気を集めるようになります。徳川家の植物園でも栽培されていたそうですし、山間部に暮らす人々から江戸や京の町人まで広く目に良いというイメージが浸透していたと考えられます。しかし1867年には点眼式目薬が登場し、明治には西洋医学が取り入れられ主流となっていきます。こ一部地域では目や肝臓に良い薬草(薬木)として利用され続けていたそうですが、全国的に見るとメグスリノキの利用は減少し、忘れられていったと言えるでしょう。

そんなメグスリノキが再注目されるようになるのは1970年代以降。1971年頃から星薬科大学生薬学教室でメグスリノキについての本格的な研究がスタートし、眼病の予防・視神経活性化・肝機能の改善などの効果があることが報告されます。1978年発売された『薬草カラー図鑑』などにもそうした効果が紹介されたこと・関連商品が発売されたことなどからメグスリノキは再び広く知られるようになりました。21世紀に入るとパソコンやスマホなどによる目を酷使が問題視され、メグスリノキはブルーベリーやビルベリーなどと並んで注目される健康食品となっています。アイブライトとともに「飲む目薬」と称されることもありますよ。

基本データ

通称
メグスリノキ(目薬木)
別名
千里眼の木、長者の木、ミツバナ、Nikko maple
学名
Acer maximowiczianum
(Acer nikoense Maxim.)
科名/種類
ムクロジ科カエデ属/落葉高木
花言葉
大切な思い出、自制心(※カエデ属共通)
誕生花
10月10日・23日(※カエデ属共通)
使用部位
小枝・樹皮・葉
代表成分
β-アミリン、β-シトステロール、エピ・ロドデンドリン、フラボノイド配糖体(クエルシトリン、ケルセチン)、タンニン類(ゲラニイン、ロドデンドロール、カテキン)、エラグ酸など
代表効果
抗菌、収斂、抗酸化、肝機能向上、血行促進、利尿、抗コレステロール
こんな時に
眼病予防、花粉症軽減、疲れ目、かすみ目、眼精疲労予防、デトックス、むくみ、動脈硬化・生活習慣病予防、アンチエイジング
おすすめ利用法
健康茶
お茶の味
味はやや苦味がある程度で薄めだが、香りは乾燥した木に近く独特
カフェインの有無
ノンカフェイン

メグスリノキ(目薬の木)の栄養・成分・期待できる効果

メグスリノキ茶

目の健康維持に

眼病・アレルギー予防に

メグスリノキは戦国時代頃から眼病予防やケアに役立つ民間医薬として用いられてきた存在です。現在でもゲラニインやロドデンドロールなどのタンニン系成分は抗菌作用を持つため、目の粘膜をウイルスや細菌から守ることで炎症の予防や軽減に繋がっていると考えられています。また収斂作用によって傷を修復させる・炎症を軽減するという説もあります。かつて洗眼薬として用いられていたのは、これらの働きがよりダイレクトに得られたためでしょう。

このためメグスリノキはただれ目(眼瞼縁炎)・はやり眼(流行性角結膜炎)・ものもらい(麦粒腫)・アレルギー性結膜炎などの予防や軽減に役立つと考えられています。近年では花粉症に伴う目のかゆみなどの炎症軽減にも効果が期待されていますし、葉にも抗ヒスタミン作用によってアレルギー軽減に役立つとされるケルセチンが含まれていることから花粉症軽減に役立つと考えられています。そのほか玉川大学農学部生命科学科からは、糖尿病合併症による白内障や網膜症の進行を抑制する可能性がある事も報告されています。

ただしメグスリノキの薬理作用については未だ解明されていない点が多く、メグスリノキ茶も医薬品ではなく健康茶(食品)として扱われています。医薬品のように一定の効果保証があるわけではありませんので、あくまでも予防や目の健康サポートとして取り入れるようにしましょう。目が炎症を起こしている時や白内障などの疑いがある場合は、メグスリノキで何とかしようとせず医師に診察していただき指示を仰ぎましょう。


目の疲れ・かすみ軽減に

メグスリノキの別名には“千里眼の木”というものもあり、これは「メグスリノキの煎じ薬を飲んだら、かすみ目が改善されて千里の先まで見えるようになった」という伝説に由来していると伝えられています。こうした呼び名からもうかがえるように伝統的にメグスリノキは疲れ目やかすみ目に有効とされており、現代でも目の疲れや眼精疲労対策として取り入れられています。メグスリノキが目に良い理由として、東洋医学(漢方など)の考え方では“肝気は目に通ず(肝臓の働きを高めることで目を良くする)”とされています。

成分的にもタンニンの一種で苦味成分でもあるロドデンドロールに肝臓の解毒機能を高める働きを持つ可能性が報告されおり、目の周りの水分を排泄する利水作用・気の流れを良くする通絡作用・血行を良くする活血作用などがあるとも言われています。肝臓を良くすることで目が良くなるという考え方自体は眉唾ものという見解もありますが、肝機能アップなどの働きは老廃物排出促進や体液バランスを整えることに繋がりますし、血行が良くなることなどと合わせて疲れ目やかすみ目の予防・軽減に繋がる可能性はあるでしょう。

ちなみに血液循環を整えるという点ではフラボノイドに属すクエルシトリンやケルセチンなども含まれていますし、トリテルペンの一種であるβ-アミリンなどにも抗酸化作用が期待できます。これら成分による目周りの血流改善と抗酸化作用も目の疲れ・紫外線や活性酸素によるダメージ軽減が期待できるでしょう。眼精疲労の予防としてはアイブライトクコハブ茶などと組み合わせて利用されることも多いようです。


そのほか期待される作用

肝機能向上・デトックスに

メグスリノキの樹皮や葉に含まれているタンニンの一種ロドデンドロールや、エピ・ロドデンドリンという成分は肝臓の持つ解毒機能を高めることで肝機能向上・肝機能の障害を予防する働きがあると考えられています。肝機能が気になる方・お酒を毎日飲まれているような方の肝臓サポートにも適しているでしょう。お酒を飲んだ後や二日酔い気味の時に飲むと良いとも言われていますし、実験では血清肝炎(B型肝炎)や黄疸に対する有効性も報告されているそうです。

また肝臓は胆汁合成やグリコーゲン貯蔵など様々な働きを持つ臓器で、静脈を通ってきた老廃物をはじめ有害物質などの分解・解毒化も担っています。肝臓の解毒力が低下してしまうと、肝臓に有害物質が蓄積し倦怠感やホルモンバランスの乱れ・脂肪増加などの原因となる可能性があります。このためメグスリノキは肝臓機能を高めることで、デトックスサポートや肥満予防にも役立つのではないかと考えられています。ロドデンドロールには利尿作用もあるとされていることもあり、むくみが気になる方やダイエッターの方にも取り入れられています。肝臓サポートにはウコン・むくみ対策にはハトムギ茶などとのブレンドもオススメです。


生活習慣病予防に

メグスリノキには悪玉(LDL)コレステロールの減少・血糖値降下などの働きを持つ可能性が報告されているβ-シトステロールが含まれています。またフラボノールのケルセチン・その配糖体のクエルチトリンはもコレステロールや中性脂肪の低減が期待されていますし、血管の保護や強化に有効とされている成分でもありますから、合わせて血管壁の硬化予防にも役立つと考えられます。

加えてクエルシトリンやケルセチンをはじめ、メグスリノキにはゲラニインやロドデンドロールなどのタンニン類やエラグ酸を含んでいます。これらの成分には抗酸化作用があるため、血中の過酸化脂質の増加を防ぐことで動脈硬化や高血圧の予防にも繋がるでしょう。タンニンやβ-シトステロールには血糖値降下作用も報告されていることから、糖尿病などの生活習慣病予防にも効果が期待されています。


老化予防・美肌保持に

メグスリノキはケルセチンなどのフラボノイドやカテキン・タンニンなど抗酸化物質を多く含むことから、肌細胞の酸化を抑制することでシワ・たるみ・くすみなどの肌老化予防にも効果が期待されています。抗酸化作用はシミ予防にも繋がりますし、メグスリノキに含まれているロドデンドロールやエラグ酸はより直接的なメラニン産生抑制効果も報告されていますので紫外線対策・美白にも繋がる可能性があるでしょう。β-シトステロールは肌に潤いを与える働きも期待されていますから、若々しい肌を保持したい方のサポートにも役立ってくれそうですね。

また抗酸化作用は皮脂が酸化して出来る過酸化脂質の生成を抑制することにも繋がりますから、大人ニキビの予防にも効果が期待できます。そのほかロドデンドロールやエピ・ロドデンドリンによる肝機能向上=デトックス力アップからも、老廃物や有害物質の蓄積に起因する肌荒れやくすみの軽減が期待できます。美容茶としてメグスリノキ茶が取り入れられることは稀ですが、肌に対しても有益な働きが期待できるでしょう。


部位・飲み方について

メグスリノキは枝・樹皮・葉など様々な部位がお茶やサプリメントとして利用されていますが、それぞれの部位によって含有成分に差があることが分かっています(参考:注目されるメグスリノキ)。このため期待する働きに合わせて原材料として用いられている部位を選んだ方が良いと言われており、目や肝臓の健康維持用としては樹皮・枝、動脈硬化やアンチエイジングには葉を主体としたものが選ばれることが多いようです。

また摂取時には温かい温度で飲んだ方が成分の吸収率が良いとされており、近年の研究ではビタミンCと組み合わせることでより高い効果が期待できると言われています。味こそ薄めなものの、メグスリノキ茶は独特の木の香りがありますから他のお茶・ハーブなどとブレンドして使っても良いでしょう。苦味が気になる方はレモンやはちみつを加えるのもオススメです。

メグスリノキの注意事項

  • 妊娠中・授乳中の方は使用を避けましょう。
  • 持病がある方・医薬品を服用中の方は医師に確認の上利用して下さい。
  • タンニン類を多く含むため貧血気味の方は飲むタイミングに注意が必要です。