ニンジンの葉茶(人参葉茶)
健康茶と期待される効果効能紹介

普段捨ててしまう部位の活用としても

既に切られた状態で売られていたり、付いていても捨ててしまうことが多いニンジンの葉。実はミネラル類・β-カロテンを除くビタミン類はニンジンの根よりも多く、抗酸化物質も豊富な健康食材。捨てずに食べようという声も増えレシピも紹介されていますし、葉を乾燥させて人参葉茶として飲む方もいらっしゃいます。お茶は食材の再利用や栄養補給としてだけではなく、体臭・口臭など“ニオイ対策”に役立つお茶としても注目されているようです。

画像:ニンジンの葉(キャロット・リーフ)

 

ニンジンの葉について

植物紹介:ニンジン

ニンジンはβ-カロテンを豊富に含む緑黄色野菜であり、家庭の常備野菜と言えるほど私達の食生活の中でも馴染み深い存在。キャロットジュースや野菜ジュースなどの飲料類、ニンジンを練り込んだパスタやお菓子などもありますね。そんな普段私達が食べているオレンジ色・ややずんぐりした円錐形のニンジンは、セリ科ニンジン属に分類される植物。名前こそ似ているものの薬草として利用されるオタネニンジン(朝鮮人参/高麗人参)アメリカジンセンシベリアジンセンなどは“ウコギ科”に分類されますから、全く別の植物となります。

またニンジンの学名はDaucus carota subsp. sativusとされています。学名がDaucus carotaのみのものは近縁種のワイルドキャロットもしくはノラニンジンと呼ばれるものですが、こちらは現在のニンジン(栽培種)が野生化したもの・野生種(母種)であるという両説があるそう。こちらも食用も出来ますがあまり美味しくなないと評されており、利用法としては種子を原料とした精油“キャロットシード”の方がよく知られています。

ニンジンの原産地はアフガニスタン周辺との説が有力。紀元前には既に古代ギリシアでも薬用植物として栽培が行われていたとも言われていますから、かなり古い時代に原産地を挟んで東西へと伝わっていたと考えられます。と言っても当時はニンジンの根は細長く枝分かれした形状で、色も鮮やかなオレンジ色ではありませんでした。私達が現在食べているような円錐形をなったのは10世紀頃、鮮やかなオレンジ色のニンジンは17~18世紀頃にオランダで品種改良を重ねて作り出されました。

原産地よりも西側で品種改良が重ねられたことから、現在の私達の周りでポピュラーなオレンジ色の円錐型ニンジン(五寸ニンジン)は「西洋系ニンジン」と呼ばれています。対して「東洋系ニンジン」は京野菜の金時にんじん・沖縄の島にんじんなどが該当します。12~13世紀頃に中国へ伝わったニンジンが江戸時代に日本へと持ち込まれ、各地で栽培が行われるようになり確立していった品種ですね。江戸後期から明治に入ると西洋系ニンジンが導入され、西洋人参ポピュラーな状態になっていきます。

現在ニンジンは根のみを食べることが多いですが、実は明治に入るまでは葉も根と同様に食用とされていました。もちろん現在でもニンジンの葉を味噌汁の具やお浸しなどにして食べることもありますが、節約食材というイメージの方が強いかもしれません。しかし近年はβ-カロテンこそ根部よりも少ないものの、ニンジンの葉部にビタミンEやカリウムなどを豊富に含むことが注目され「捨てずに食べよう」という声も多くなっています。

丸ごと食べる方が栄養価を余すところなく摂取することが出来ますが、独特の清涼感がある・アクの問題で料理に使うのは少し手間がかかるなどの問題もあるため干す・炒ったものを“お茶”として利用する事も考案されています。お茶として使った場合でも有用な働きが期待できますし、体臭対策に良いという説もありますよ。

基本データ

通称
ニンジン(人参の葉)
別名
Carrot leaf(キャロット・リーフ)、西洋人参、アメリカニンジン
学名
Daucus carota subsp. sativus
科名/種類
セリ科ニンジン属/二年草
花言葉
幼い夢
誕生花
12月4日
使用部位
葉、茎
代表成分
ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸(リジン、スレオニン)、カロテノイド、フラボノイド配糖体(ルテオリン、アピゲニンなど)、葉緑素、食物繊維
代表効果
抗酸化、血圧降下、免疫力向上、利尿、肥満予防、消臭
こんな時に
栄養補給、老化予防、生活習慣病(高血圧・動脈硬化)予防、便秘、むくみ、風邪予防、血行不良、乾燥肌、ニキビ、体臭対策、アレルギー軽減
おすすめ利用法
食用、健康茶
お茶の味
セリ系のハーブのような香り、味は薄いがやや苦味・クセがある
カフェインの有無
ノンカフェイン

ニンジン(葉)の栄養・成分・期待できる効果

ニンジンの葉茶

健康維持のサポートに

栄養補給・抗酸化に

ニンジンの葉には鉄分やカリウム等のミネラル類・β-カロテンを除くビタミン類はニンジンの根よりも多く含まれています。このためニンジンの葉はニンジンと同等かそれ以上に栄養補給に役立つと考えられています。鉄分やβ-カロテン・ビタミンEなど水に溶けだしにくい成分もありますから、お茶として煮出したものを飲んだ場合にどの程度摂取できるかは定かではありませんが、不足しがちな栄養成分の摂取をサポートしてくれるでしょう。

加えてニンジンの葉にはルテオリンやアピゲニンなどのフラボノイドが配糖体の形で含まれていることが報告されています。普段食べている根の部分よりは少ないもののβ-カロテンを豊富に含む食材でもありますから、カロテノイドやフラボノイド類などのポリフェノール補給源として役立つと考えられます。ビタミン類やミネラル類の中にも抗酸化作用を持つ・抗酸化をサポートしてくれるものがありますから、栄養補給とともに老化予防という面でも効果が期待できます。


高血圧・動脈硬化予防に

ニンジンの葉は根よりもカリウムを多く含む部位であるため、ナトリウム排出を促すことで血圧効果作用も期待されています。β-カロテンやフラボノイド系ポリフェノールも抗酸化作用によって血中脂質が酸化してできる過酸化脂質の生成を抑制し、血管状態・血液循環を正常に保つサポートをしてくれるでしょう。この働きからニンジン葉茶は高血圧や動脈硬化・血栓などの血流トラブルの予防にも役立つと考えられています。


むくみ・便秘軽減に

カリウムはナトリウム排出を促すことで血圧の上昇を抑制するほか、血中ナトリウム濃度を保つために蓄えられていた水分の排出を促す働きもあります。ニンジンの葉には抗酸化作用によって血液循環をサポートしてくれるポリフェノール類やビタミン類も含まれていますから、相乗してむくみの軽減効果が期待されています。

また血液循環が良くなること、活性酸素による酸化ダメージを抑えることで腸の機能向上にも繋がります。ニンジン茶やニンジン葉茶はペクチンなどの食物繊維も含まれていますので、便秘予防としても役立つ可能性があるでしょう。そのほかクロロフイル(葉緑素)にも腎機能向上・小腸の絨毛間の老廃物排出促進などの働きが期待できることから、デトックスに役立つという説もあります。


免疫力アップ・風邪予防に

ニンジンやニンジンの葉に含まれているβ-カロテンは抗酸化物質であるだけではなく、体内で必要に応じてビタミンAに変換されるプロビタミンA(ビタミンA前駆体)の一つでもあります。ビタミンAは皮膚や粘膜の保持・強化に関与するビタミンですから、喉や鼻などの呼吸器粘膜を強化することでウィルスの侵入を抑制することに繋がると考えられます。抗酸化ビタミンやポリフェノールが活性酸素を抑制することも免疫機能低下予防に繋がりますから、相乗して風邪やインフルエンザなどの予防にも役立ってくれるでしょう。

ニンジンの葉にはビタミンCが含まれているため、コラーゲン生成促進作用からも免疫力向上に役立つと言われています。しかしニンジン葉茶として利用する場合は乾燥・煮出しという過程の中での損出が多いと考えられますから、ビタミンC補給源としては期待しない方が良いでしょう。


美容面のサポートにも

冷え性・肥満予防

ニンジンの葉には抗酸化物質が豊富に含まれているため、酸化によって起こる血行不良や代謝低下の予防や改善にも繋がります。適度なカリウムの補給によるむくみ軽減・クロロフィルによるデトックス効果などが期待できることと合わせ、ニンジン葉茶は冷え性の軽減にも役立つのではないかと考えられています。

またニンジン葉には新陳代謝を促す働きのあるスレオニン、ブドウ糖の代謝促進・タンパク質吸収を高める働きを持つリジンなどのアミノ酸も含まれています。こうしたアミノ酸の働きと抗酸化作用・デトックス作用などが相乗して働くことで肥満予防やダイエットに良いのではないかという見解もあります。

極端なものでは「リジンの働きから肥満予防に良い・糖尿病改善に良い」という説もありますが、ニンジンの葉のタンパク質量は全体重量の約1%程度。タンパク質の最小単位がアミノ酸となりますから、十分な量をニンジンの葉から摂取できるとは考えない方が良いでしょう。ニンジン葉茶は薬のような働きかけを持つものではなく、予防をサポートしてくれる可能性を持つ健康茶です。


美肌保持・乾燥肌予防

抗酸化物質は体内の酸化を抑制し正常な機能を保持するだけではなく、肌細胞の酸化を抑制することでシワ・たるみ・くすみなどの肌老化予防にも役立ってくれます。紫外線によって発生する活性酸素が引き金となるシミやそばかす予防にも効果が期待できます。また皮脂が酸化して出来る過酸化脂質の生成を抑制することにも繋がりますから、ニキビほか肌荒れ予防としても役立ってくれるでしょう。

このため抗酸化物質を豊富に含むニンジン葉茶は、お肌のアンチエイジングを心がけている方のサポートととしても役立つお茶と考えられます。β-カロテンから変換されるビタミンAは皮膚を丈夫に保ったり新陳代謝を高める働きもありますから、肌のかさつき・乾燥が気になる方にも適しているでしょう。


そのほか期待される作用

体臭・加齢臭対策に

人参の葉茶は民間療法の中で口臭・体臭・加齢臭などの“ニオイ対策”に良いとして注目されているお茶でもあります。どの成分がどういった形で消臭に働くのかは明らかにはされていないものの、抗酸化物質によって脂質や汗の酸化を防ぐことが体臭や汗臭・加齢臭の予防に繋がるとないかと考えられています。その他クロロフイル(葉緑素)が消臭している・セリ科の植物は消臭作用がある、などの説もあります。

葉緑素については脂溶性で水に溶けにくいとも言われていますから、セリ科植物に多い精油成分に消臭作用があるという可能性の方が信憑性は高いかもしれません。またこうした成分の複合効果であると考えると、煮出したお茶よりもニンジンの葉そのものを食べたほうが効果的でしょう。有効性が示唆されている実験報告も“ニンジンの葉の粉末”が使われています。


便臭改善・アレルギー軽減に

ニンジンの葉は腸内細菌(悪玉菌)が発生させるアンモニア・インドール・スカトールなどの悪臭物質を抑制する働きも期待されています。2004年の日刊ゲンダイにはストーマ(人工肛門)患者がニンジンの葉の粉末を毎食後飲むことで有効性が見られたという報告もなされているそう。こちらも抗酸化物質・クロロフイル・食物繊維・精油成分などが複合して働くことで便やオナラの臭いが抑制されるのではないかと考えられています。また悪臭物質は有害物質でもあるため、大腸がん予防など健康維持の面でも役立つのではないかという見解もあります。

またニンジンの葉茶は花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー軽減に良いとする説もあります。理由としてはフラボノイドの中でも強い抗アレルギー・抗炎症作用を持つルテオリンを含んでいること、抗酸化物質が炎症部に生じる活性酸素を抑制することで炎症の悪化を軽減することが挙げられていますが、腸内の悪玉菌代謝物(有害物質)が減少することで免疫機能の働きが良くなるという可能性も考えられますね。


目の疲れ軽減に

β-カロテンから変換されたビタミンAは網膜で光を感知する“ロドプシン”という物質の原料成分でもあります。ロドプシンは光の情報を脳に伝えるために必要な物質のため、不足すると眼精疲労や暗い所でものが見えにくくなる夜盲症の原因となる可能性もあります。

加えてビタミンAは目を保護している粘液(ムチン)の分泌に関わる成分でもあるため、ドライアイ予防としても摂取しておきたい栄養素にも数えられています。このためビタミンAの摂取は視機能の保持や目の疲れ軽減に繋がると考えられます。仕事やプライペートでパソコンやスマホを使っている方・目の疲れが気になるはアントシアニンを含む黒豆茶や、有害光から目を守る働きが期待できるルテインを含むカレンデュラなどと組み合わせてみても良いでしょう。

ニンジン葉の使い方

ニンジン葉茶の作り方

人参葉茶は商品として販売もなされていますが、収穫・購入した際に付いているニンジンの葉で手作りすることも可能です。作り方としてはニンジンの葉をキレイに水洗いしてからよく水気を取り、3日~一週間ほど陰干しして乾燥したものを細かく切るだけ。乾燥後に軽くフライパンで炒る、陰干しではなくレンジで水分を飛ばしてフライパンで炒るなどしても出来ます。葉だけではなく皮や固い芯の部分などを細かく切って加えても良いですね。

ただし茶葉を煮出して作ったお茶を飲む場合には、脂溶性の栄養成分の補給はさほど期待できません。飲み物としてしっかりと栄養を補給したい場合は粉末化するか、乾燥粉末として製品化されているものを使用した方が良いでしょう。煮出しタイプであればお茶を煮出した後に料理に加えると、栄養を余すところなく摂取できます。


食材として使う場合は…

手軽な摂取方法として上記では“ニンジンの葉茶”について紹介してきましたが、人参の葉はもちろん葉野菜として普通に食べることも出来ます。硬さや独特の香りが気にならない方であればそのまま刻んでサラダに加える・お浸しやお味噌汁他スープ類の具材として使うなど広く活用できるでしょう。

香りや食感が気になる場合は一度下茹でしてから使うと食べやすくなります。カロリーや塩分量などの問題はありますが、天ぷらにする・細かく切ったものを砂糖醤油で炒めてフリカケにするのも食べやすいようです。丸ごと食べた方が栄養補給源としては優れていますから、葉の柔らかいところは料理に使い、茎の硬いところだけをお茶にするなど使い分けるのもオススメです。

ニンジン葉の注意事項

    食材・お茶として通常量を摂取する場合は特に問題はないとされています。

  • セリ科植物にアレルギーのある方は使用に注意が必要です。