【ボリジ/ボラージ】
原料植物、ハーブティーやオイルに期待される効果効能

γ-リノレン酸を豊富に含む種子油は日本でも活用されている

ボリジは地中海沿岸地域が原産のハーブで、古代から人に勇気を与えてくれる植物として親しまれてきた歴史があります。現在は葉をハーブティーとして使用するよりも、種子から採れるボラージオイルの方が注目されている存在。ボラージオイルはγリノレン酸の含有率が高いことが認められており、アレルギーや乾燥肌のケア・抗炎症剤としての可能性が注目されています。オイルサプリメントとして見かける機会も増えていますが、作用・有効性については十分な根拠がないことが指摘されているため過信は禁物。

ボリジ/ボラージのイメージ画像

ボリジ/ボラージとは

植物紹介:ルリジサ

キャリアオイルやスキンケア商品などとして種子を原料としたボラージオイル(ボリジオイル)が注目され、日本でも名前を知られつつあるボリジ。日本人にとっては馴染みの薄いため植物のイメージはありませんが、ヨーロッパでは花や葉をサラダやスープに加えて使用したり、お花は砂糖漬けにしたりして食されている植物でもあります。葉はキュウリに似た芳香があることから野菜として、甘い蜂蜜のような風味がある花はデザート類やカクテルの飾付けにも使われているのだとか。商業的な栽培は種子の採取が目的ですが、観賞用植物としても人気があり、薬味の栽培を兼ねるような感覚でお庭で育てている家庭もあるようです。

そんなボリジは南ヨーロッパ・地中海沿岸地域が原産とされる、シソ目ムラサキ科に分類されるハーブ。呼称のボリジ(Borage)は学名Borago officinalisの属名そのままで、和名は瑠璃萵苣(ルリジサ)と言います。呼び名の通り瑠璃色(紫みを帯びた青)の花を咲かせることが特徴で、5枚花弁で星型の花を咲かせることから“スターフラワー(Star Flower)”という別名でも呼ばれています。ちなみに、ボリジが属すムラサキ科には勿忘草(ワスレナグサ)や紫根の原料となるムラサキ、コーンフリーなどが含まれています。ムラサキは日本で紫色の染料として使われていましたが、ボリジもヨーロッパでは青色染料として使われており、聖母マリアの青い衣を描く際に利用されていたことから「マドンナ・ブルー」とも呼ばれます。

ボリジの原産地はで、古代ギリシアやローマ帝国時代には既に人々に使用されていました。研究者によっては紀元前8世紀頃に成立したとされるホメロスの叙事詩『オデュッセイア』の中で「この葉や花を酒に浸して飲めば、あらゆる悩み悲しみを忘れた」と表現される薬草“nepenthe”はボリジのことを指していると考えている方もいらっしゃるそう。古代には勇気を与え神経を落ち着かせるハーブであると考えられ、古代ギリシャ時代の医者ディオスコリデスは「心を慰め、憂鬱を取り除き、狂人を静める」とボリジの摂取を推奨したとも伝えられています。古代ローマでも博物学者のガイウス・プリニウス(大プリニウス)はその効能について調べていましたし、ローマ兵士は戦闘のために行進する前にお酒にボラジを混ぜたものを与えられていたという逸話もあります。2000年ほど昔から、気持ちを高めて奮励を促すハーブとして使われていたということですね。

諸説ありますが、呼称や属名として使われているBoragoもしくはBorageの由来についても、ラテン語で勇気を意味する“(cor)”ともたらす・与えるなどの意味を持つ“アゴ(ago)”という言葉を組み合わせたものではないかという説があります。その他にケルト語の「barrach(勇気ある人)」が訛った説、茎の白い毛から綿毛を意味するイタリア語の“burra”が由来など諸説あり断定はされていません。ともあれボリジには剣闘士が試合前に飲用した・十字軍遠征の際に兵士たちの別れの杯に添えられたなどの伝承があり、中世の間「勇気をもたらすハーブ」として使われ続けてきたと考えられています。近年でもボラジにアドレナリンの分泌を促して高揚・抑うつ効果を持つの可能性があるとストレスケアに注目されています。

また、アラブ語で汗の父を意味する“abu arak”が語源という説もあるように、時代の変化もしくは異なる文化圏からの情報によって発汗・解熱作用を持つハーブとしても親しまれるようになっていきました。地域によっては夏バテ防止や清涼感を味わえると、夏の必需品のような感覚で受け入れられていたのだとか。歴史・伝統のあるハーブということもあり、ヨーロッパを中心にボリジは風邪や女性領域での不調のケアなど幅広いトラブルに対しての民間療法で使用されています。しかしボリジの葉・ボラージオイル製品には肝臓に毒性を引き起こす可能性ピロリジジンアルカロイド類が少量含まれていることが分かっており、大量もしくは長期間の継続摂取は避けるべきハーブにも数えられています。不安がある方は摂取を控えた方が確実でしょう。

基本データ

通称
ボリジ(Borage)
別名
ボラージ、瑠璃萵苣(ルリジサ・ルリチシャ)、スターフラワー(Star Flower)
学名
Borago officinalis
科名/種類
ムラサキ科ルリジサ属/一年草
花言葉
勇気、保護、安息、心を刺激する、憂いを忘れるなど
誕生花
3月31日、4月13日、5月21日など
使用部位
葉、茎、花
代表成分
ビタミンC、ナイアシン、ミネラル類(カリウム、カルシウムなど)、タンニン、サポニン、精油、粘液質、ピロリジジンアルカロイド類
代表効果
強壮、抗うつ、神経鎮静、利尿、発汗、粘液保護
こんな時に
ストレス、緊張、軽度の抑うつ、無気力、むくみ、感染症予防、風邪の初期症状ケア
おすすめ利用法
食用、ハーブティー、ハーブチンキ、種子油(服用/キャリアオイルとしての使用)
ハーブティーの味
グリーンではあるが独特のクセを感じる香り、味は薄め
カフェインの有無
ノンカフェイン

ボリジ/ボラージの成分と作用

ボリジティー/ルリジサ茶に期待される効果

ボラージオイル油もしくは種子油の特徴成分であるγ-リノレン酸についての研究は多く存在するものの、ボリジの葉や花についての研究報告・科学的証拠と呼べるものはほとんど存在していません。ボラージティーに期待される働きについては伝統医学・民間療法上のものが大半を占めているため、下記でご紹介する情報については参考程度にお考え下さい。ピロリジジンアルカロイド類を含むことを考慮すれば、あえてボラージティーを摂取する必要性は低いと考えられます。

精神・神経面のサポートに

抗うつ・気分を高める手助けに

ボリジティーは古代ローマ時代から気持ちを高め、勇気を与えてくれるハーブとして利用されてきました。現在でもボリジティーは副腎の働きを助けることでアドレナリンなどの副腎皮質ホルモンの分泌バランスを整える働きが期待されており、やる気を高めたり気分を改善する働きがあるのではないかと考えられています。ストレスで副腎が疲弊してくると体を守るためのホルモンの分泌が滞ることは分かっていますから、副腎機能を整えてくれるとすればありえない話ではありません。

ボリジの葉に含まれていることが判明している成分で副腎と関係するものとしてはビタミンCが挙げられます。ビタミンCの不足は副腎皮質疲労の原因となる・副腎軽ホルモンの分泌を低下させる=ストレス抵抗力を低下させることが指摘されています。このため副腎の働きを高める可能性が無いとは言えませんが、乾燥葉+お湯で浸出して作ったハーブティーでどの程度ビタミンCが補給できるのかは未知数。緑茶柿の葉茶ローズヒップティーなど“お茶”として飲む場合でも十分にビタミンCが補給できる茶類が多く存在していますから、ビタミンC補給という面でボリジティーに特別アドバンテージがあるとは考えにくいです。


鎮静・安眠サポートにも

ボリジティーは古代ギリシアのディオスコリデスが「心を慰め、憂鬱を取り除き、狂人を静める」と表現したと伝えられるように、精神を高揚させるだけではなく気持ちを落ち着ける目的でも使用されてきました。古くは神経症状の治療にも用いられていたこともあり、神経疲労やストレス性の疲労感の軽減にも効果が期待されています。ストレス・神経の興奮を和らげてくれることから睡眠の改善に良いという声もあります。こうした働きはミネラルと抗酸化物質によるところが大きいのではないかと考えられていますが、こちらも詳細は分かっていません。睡眠サポートに良いと紹介しているサイト・文献でも“落ち着きがなくなり眠れない場合は服用を中止する”という注意が記されているところがありますから、個人差も大きいのではないでしょうか。

そのほか期待される作用

むくみ対策・デトックスに

ボリジは穏やかな利尿作用を持ち、体内をきれいに保つクレンジングハーブとしても取り入れられています。血液・リンパ液など体液の循環をスムーズにし、腎機能を整えると信じられているそう。発汗作用を表したアラブ語“abu arak(汗の父)”がボラジという呼び名の語源という説もあり、利尿作用・発汗作用の両方で老廃物の排出を促す働きも期待されています。この働きから痛風や関節炎の緩和、むくみ解消やデトックス・クレンジングダイエットのために取り入れる方もいらっしゃるようです。


風邪予防・呼吸器系のケアに

ボリジには粘液質が含まれており、この成分が粘膜を保護することで風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症予防・喉の痛みを緩和すると考えられています。またボリジの葉に含まれているビタミンCも抗酸化作用によって免疫機能を保持する他、免疫機能を高めたり抗ウイルス作用を持つ可能性が報告されている成分。同じく免疫関係への働きかけが示唆されているサポニン、体の各機能を調えるミネラルが含まれていることと合わせて免疫強化や風邪予防、回復を手助けしてくれる可能性はあるでしょう。利尿・発汗作用によって熱の放出を促す=解熱に繋がる可能性もあります。


産後の使用について

母乳分泌促進作用があると言われており、産後の母乳不足やマタニティブルーなどに良いとする説もありますが、授乳中の使用に対しては十分なデータがありませんので自己判断で摂取するのは避けたほうが良いでしょう。

ボリジティーの色について

通常のボリジティー(葉部)は薄茶~茶色をしていますが、花の部分を使ったボリジティーはマロウブルー薄めたような青色の水色をもつお茶になります。これはマロウ同様にアントシアニン系色素成分によるもののため、レモン汁など酸性のものを混ぜることでピンク色へと変化していきます。ボリジの花をワインなどに浮かべても青色からピンク色への変化が観測できますし、新鮮なものであれば少し甘いフレーバーも感じる事ができるそう。ヨーロッパなどでカクテルの飾りにボリジの花が使われるのはこうした性質あっての部分もあるのかもしれませんね。

ボラージオイル(ボリジオイル)に期待される効果

ボラージオイルイメージ

ボラージオイルについて

上記でご紹介したボラジティーは葉茎・花を原料としたものですが、ボラージオイルは種子を圧搾することで製造されています。ボラージオイルはかつてイブニングプリムローズオイル(月見草油)の代用品として用いられていましたが、月見草オイルよりもγ‐リノレン酸(ガンマリノレン酸/GLA)を豊富に含んでいることが分かり注目されています。月見草オイルの平均的なγ-リノレン酸含有率が10%程度なのに対して、ボラージオイルはγ‐リノレン酸含有率が17~26%と非常に高く「γ-リノレン酸を最も多く含む植物」とも称されています。

γ-リノレン酸は抗炎症作用を持つ可能性が報告され、皮膚疾患や関節リウマチなどの軽減効果が期待されている脂肪酸。このためγ-リノレン酸を豊富に含むボラージオイルが敏感肌・アレルギー肌のケアに役立つのではないかと注目されることになったのです。ボラージオイルはテクスチャーが重くベッタリとした印象があるため、他のキャリアオイルとブレンドして利用するのが一般的。スイートアーモンドオイルやローズヒップオイルなどと比べるとベッタリとした質感と独特の香りがあるので、好き嫌いは分かれる部類かもしれません。

ちなみに肝臓毒性が懸念されるピロリジジンアルカロイドはボラージオイルにも含まれていますが、製造工程により除去することもできます。ボラージオイルはキャリアオイル・化粧品油としての使用だけではなく、オイルサブリメントとしても使われている存在。購入する場合はピロリジジンアルカロイドフリー(PA-free)のものを選ぶことをお勧めします。

オイル基本データ
名称
ボラージオイル(borage oil)
…ボラジ油/るりじさ油
学名
Borago officinalis
抽出部位
種子
抽出方法
低温圧搾法
クリーム色~黄色
香り
独特の香りがある
粘度
やや粘度が高く重い。他のオイルとブレンドするのが一般的
適応肌質
敏感肌、乾燥肌、老化肌
こんな時に
アレルギー性皮膚炎の緩和、関節炎やリウマチのケア、肌荒れ・エイジングケア
注意事項
γ-リノレン酸は光・熱・湿気・酸素によってすぐに変化してしまうため、開封後はガラス遮光瓶に入れ冷暗所に保管し早く使い切りましょう。生臭いような臭いは酸化サインなので要注意。

アレルギー・炎症ケアに

ボラージオイルはアトピー性皮膚炎などアレルギー性皮膚炎症の緩和や改善に役立つ可能性が注目されているオイルです。これはアトピー性皮膚炎や乾燥肌など原因として、γ-リノレン酸(GLA)の欠乏との関連が考えられているためです。2018年に『International Journal of Molecular Sciences』に掲載された植物油の局所適用についてのレビューでは、乳児および脂漏性皮膚炎またはアトピー性皮膚炎にボラージオイル局所適用することで皮膚バリア機能を正常化したという1993年の報告を紹介しており、ボラージオイルなどγ-リノレン酸を含む油はアトピー性皮膚炎の人々に有益な抗酸化作用と抗炎症作用の両方を持ち合わせている可能性を示唆しています。

同じγ-リノレン酸(GLA)を含むものでも、研究でアトピー性皮膚炎に対する改善が報告されているのはイブニングプリムローズオイル(月見草油)よりもボラージオイルの方が多いようです。γ-リノレン酸は抗炎症作用によって痒みを鎮める働きだけではなく、新陳代謝や肌新生を高める働きを持つのではないかと考えられています。こうした様々な働きからアトピー性皮膚炎・湿疹・乾癬・乾燥などの皮膚炎症の軽減に効果が期待され、自然療法の一つとして広く活用されています。とは言えボラージオイルについては有効性を判断するには科学的証拠が不十分とされていますし、人によっては皮膚炎症を起こす原因になる場合もあります(※炎症を起こしにくいと紹介されていますが筆者はかぶれました)。ご自身の肌に合うかをきちんと確かめて使用するようにして下さい。


美肌・アンチエイジングに

ボラージオイルは皮膚に塗布することで抗炎症剤のように働くことが期待されている以外に、保湿作用の高さも注目されています。皮膚表面のγ-リノレン酸の欠乏を緩和することからも乾燥肌の改善が期待されているほか、オイルとしても水分蒸発を防ぐ“フタ”としての役割を果たしてくれると考えられます。加えて水分を保持し栄養を行き渡らせることで、肌を柔らかく保つ働き(エモリエント効果)も期待できることから、肌の水分バランスを整える保湿成分として美肌ケアにも繋がると注目されています。

また、γ-リノレン酸の不足を緩和することは肌の新陳代謝を促進する働きがあるという見解もあり、皮膚細胞成長・修復の促進に繋がることからγ-リノレン酸を「アンチエイジング脂肪酸」と評する声もあります。保湿+お肌の新陳代謝が高まることでシワや小じわ・肌の弾力性・傷跡やニキビ跡などの改善が期待できます。抗酸化作用と合わせてエイジングケアにも役立ってくれそうですね。γ-リノレン酸には抗炎症作用+皮膚機能を正常化させ肌荒れを防ぐ機能が示唆されているため、肌荒れ予防や美肌保持のためのスキンケアオイルとしても高く評価されています。


ボラージオイルの摂取について

γ-リノレン酸(GLA)はオメガ-6脂肪酸に分類されますが、同じオメガ6系でも食事性酸化リノール酸(LA)は炎症誘発性を持つのに対して、食事性GLAは抗炎症性を持つことが報告されています。必須脂肪酸に含まれる栄養素でもありますから経口摂取による影響についての研究も多く行われており、抗炎症作用によって関節炎や関節リウマチ、更年期障害・PMS(月経前症候群)、心血管疾患や糖尿病など様々な不調の軽減に対しての有効性が期待されています。

特にγ-リノレン酸はPMSや生理痛などの緩和を掲げた女性向け健康食品で目にする機会が多いのではないでしょうか。これはγ-リノレン酸がプロスタグランジンE1という抗炎症性物質の原料になり、プロスタグランジンE2の働きを抑制してホルモン分泌を整える働きが期待されているため。月経前症候群の症状を訴える女性の多くがγリノレン酸の血中濃度が低いという指摘があることなどもあって、PMS緩和のサプリメントとして人気になっているようです。しかしγ-リノレン酸もしくはボラージオイルがPMSの緩和に機能するという決定的な科学的証拠はなく、有効性が確認できたかどうかについても様々な研究結果が混在しているというのが現状のようです。

WebMDによると、ボラージオイルの摂取が効果的である可能性が高いのは関節リウマチの症状緩和。アトピー性湿疹についてはγ-リノレン酸の栄養補助食品によって改善が見られたという報告もあれば、GLA含有ボラージオイルの摂取はプラセボよりも利益を示さなかったという報告もあります。このため経口摂取よりも塗布するほうが有望なのではないかという見解もあります。γリノレン酸にはヒスタミン分泌抑制・炎症関連物質のNF-κBの活性阻害など様々な働きを持つ可能性が報告され、一部では万能薬のように取り上げられてはいますが、まだ研究途中で有効性は分かっていないものがほとんどと言えます。

ボリジの注意事項

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子様への使用は避けましょう。
  • 肝毒性のあるピロリジンアルカロイドを含むため過剰摂取や長期使用は避けましょう。
  • 持病がある方・医薬品を服用中の方は医師に相談の上利用して下さい。

参考元