巡りの悪さやむくみ、肌荒れ・くすみなどが気になる方に
健康茶コーナーに置かれているハトムギ茶・イボ取り商品の原材料など私たち日本人にとっては馴染みある食材と言えるハトムギ。ニキビやイボなど肌荒れに対して使用するのは日本だけとも言われていますが、生薬“薏苡仁(ヨクイニン)”は中国でも古くから使用されています。現在は体の巡りを整えて水分・便・老廃物の排泄を促すことからダイエットのお供として取り入れられているほか、コイクセラノイド・有機ゲルマニウム・アミノ酸など新陳代謝を高めてくれる成分を含むことから肌荒れや乾燥を軽減してくれる美肌茶に配合されることもありますよ。
ハトムギ/ヨクイニンについて
植物紹介:鳩麦(ハトムギ)
ハトムギは日本でも古くからお茶として親しまれてきた存在で、飲んだことがあるという方も多いのではないでしょうか?爽健美茶や十六茶などペットボトルでお馴染みの健康茶にも配合されていますよね。またハトムギは漢方で“薏苡仁(ヨクイニン)”という名前の生薬としてや、イボ取りの薬としても知られています。お米と混ぜて炊くなど食用穀物としても身近な存在ですね。
ハトムギは植物分類上はイネ科ジュズダマ属に属し、ジュズダマ(数珠玉、学名Coix lacryma-jobi)の栽培品種です。名前に麦(ムギ)と付きますが、麦茶の原料として主に用いられている「大麦」よりもトウモロコシに近い種とされています。中国南部からインドシナ半島周辺が原産とされ、古くから食用・薬用としてアジア周辺で利用されてきた存在です。古代インドの聖典『リグ・ヴェーダ』にハトムギについての記載が見られることから、紀元前1500年頃には既にインドで栽培が行われていたと考えられています。
中国へは今から2000年程前、後漢時代初期の名将である馬援が持ち帰ったとする説が有名です。当時馬援将軍は老齢であったが遠征先でハトムギを愛用したため無事帰還できた、という故事が学名(変種名)の“ma-yuen”の由来にもなっています。また中国最古の薬物書とされる『神農本草経』にも薏苡仁(ヨクイニン)についての記述があり、副作用の心配がなく長寿効果がある「上品(ジョウホン)」とされ“痛みやしびれ等を治す・継続服用により体が軽くなる”などの効能が紹介されています。
日本伝来については奈良時代説から江戸時代説と年代がかなり開いていますが、医師・本草学者の貝原益軒が編纂した『大和本草』(1708年)に記述が見られます。ハトムギはニキビやイボ取りに良いというのは漢方の効能ではなく、貝原益軒が民間療法として紹介したことに始まるようです。江戸時代中期頃には薬用植物として栽培されていた事もわかっています。
江戸時代には一般に四石麦・朝鮮麦・唐麦など、学問的には漢名の薏苡が用いられていましたが、明治時代になると現在の呼び名である「ハトムギ(鳩麦)」が定着します。1884年(明治17年)には厚生省がハトムギを保健食として推奨したそう。その後食生活が豊かになることで需要が低下していきますが、近年再び健康食・美容食として注目を集めています。
基本データ
- 通称
- ハトムギ(Coix seed)
- 別名
- 鳩麦(はとむぎ)、薏苡仁(ヨクイニン)、Job’s tears、四石麦(シコクムギ)、七石麦(シチコクムギ)、朝鮮麦(チョウセンムギ)
- 学名
- Coix lacryma-jobi var. ma-yuen
- 科名/種類
- イネ科ジュズダマ属/一年草
- 花言葉
- 恩恵、祈り、成し遂げられる思い(※ジュズダマのもの)
- 誕生花
- 10月10日、11月9日(※ジュズダマのもの)
- 使用部位
- 果実
- 代表成分
- フラボノイド類、SOD様酵素、コイクセラノイド、ミネラル類、ビタミン類、フィトステロール
- 代表効果
- 利尿、代謝促進、中枢抑制、筋弛緩、健胃、解熱、解毒、消炎、排膿、腫瘍抑制、皮膚浄化
- こんな時に
- むくみ、神経痛、関節炎、リウマチ、胃腸潰瘍、デトックス、イボ、皮膚炎、肌荒れ、色素沈着、美肌作り
- おすすめ利用法
- ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ、湿布、スチーム、手作り化粧品、穀類として食用、キャリアオイル
- ハーブティーの味
- 香ばしい香りがあり、味は麦茶と近く飲みやすい
- カフェインの有無
- ノンカフェイン
ハトムギ/ヨクイニンの栄養・成分・期待できる効果
ハトムギ茶(ヨクイニンティー)
はと麦茶を作る場合は主に殻付きのまま乾燥・焙煎したもの使いますが、生薬として利用される“薏苡仁(ヨクイニン)”の場合は脱穀した後の白い部分のみを指します。色・味・香りすべてが薄くなりますが、脱穀したものにお湯を注いで浸出したヨクイニンティーを飲む方法もあります。成分の吸収率についてはヨクイニンの方が良いと言われています。
スッキリ・スタイルキープに
むくみ解消・デトックスに
ハトムギは利尿作用があるお茶として、むくみが気になる方に取り入れられています。利尿効果というと緑茶やコーヒーのように腎臓を刺激して排尿を促すカフェインや、体内塩分濃度を調節し貯留水分排泄を促すカリムが豊富なコーンシルク茶などが知られていますが、ハトムギ茶の利尿効果はこのどちらにも当てはまりません。
ハトムギ(ヨクイニン)は血液やリンパ液の循環を促進する働きや、腎臓の機能を高める働きがあり、結果として尿の排出を促進することに繋がっていきます。そのため少量ずつしか出ないのに尿意を感じる・頻尿になる心配も低いと言われています。体内循環・内蔵機能がしっかり整った結果の利尿効果ですから、体にある水分を出すだけではなく老廃物の排泄を高めること(デトックス)や体質改善にも有効とされています。
便秘・下痢の改善に
ハトムギは豊富な食物繊維を含むため便秘解消に良いと言われますが、穀物として利用される「ハトムギ」の食物繊維含有量は実はさほど多くありません。また食物繊維の比率で見ても不溶性食物繊維が多いため、お茶として飲用した場合に食物繊維がたっぷり補充できる可能性は低いと言えるでしょう。
ハトムギ茶が便秘の緩和に役立つのは食物繊維が豊富であるからというより、巡りがよくなること・内蔵機能が高まる(正常に機能する)ことが大きいと考えられます。水分代謝を高める働きから、余分な水分による胃腸への負担を軽減して消化機能を高める働きもあると考えられていますから、適量であれば便秘・下痢をはじめとするお腹の不調全般の改善に効果が期待できるとも言われています。
肥満・糖尿病予防
巡りを整えて水分・老廃物の排泄を促す以外に、ハトムギに含まれている「9-ヒドロキシ-オクタデカン酸」という成分は脂肪代謝促進することで肥満を予防する働きがあると考えられています。また細胞にグルコースが取り込まれるのを促す作用があることから、血糖値の急激な上昇を抑制し糖尿病を予防する働きも報告されています。
肌トラブル緩和・美肌作りに
ハトムギ(ヨクイニン)は美肌作りによい食品として女性に愛用されている存在でもあります。代表成分とも言えるコイクセノライドをはじめ有機ゲルマニウム・アミノ酸・ビタミン・ミネラルなど様々な成分が相乗して働くことで、肌トラブルの予防・改善に役立つと考えられています。
コイクセノライド(コイクセノリド)の働き
コイクセノライド(coixenolide)は不飽和脂肪酸の一種で、ハトムギの脂質に含まれています。ハトムギ特有の成分で、新陳代謝を高める働きがあり、特に角質細胞の代謝を活性化すると考えられています。
皮膚細胞の代謝を活発化するため、炎症を起こした皮膚細胞を排泄(ターンオーバー)させることにも繋がるとする説もあり、民間療法とされてきた「イボ取り」もコイクセノライドの働き(抗腫瘍作用)によるものと考えられています。
有機ゲルマニウムの働き
有機ゲルマニウムはその名のとおり炭素と結合したゲルマニウムで、水溶性であるため体内で吸収・排泄がスムーズにという特徴があります。有機ゲルマニウムは植物に含まれているほか、奇跡の水と言われる「ルルドの泉」にも多く含まれていることが分かっています。
有機ゲルマニウムにはインターフェロンを産生を促進して免疫力を高める働きや自然治癒力向上、細胞に酸素を届ける事で新陳代謝を活発にする、水素イオンを除去しアルカリ体質に保つ、毒素・老廃物の排泄促進、抗腫瘍作用など様々な働きがあると考えられています。
美肌作り・美白に
ストレスや加齢によってターンオーバーが乱れてしまうと角質層が厚くなり、肌のザラつきや保湿機能の低下による乾燥、毛穴詰まりなどを引き起こします。この状態が続くことが肌荒れ・肌のくすみ・老化などの大きな原因と考えられています。
ハトムギ(ヨクイニン)に含まれているコイクセノライドと有機ゲルマニウムは共に新陳代謝を高め、ターンオーバーの正常化をサポートする働きが期待出来ます。また肌荒れ予防に役立つビタミンB群や、肌の原料となるタンパク質(アミノ酸)を豊富に含んでいることからも肌を整える働きがあると言えるでしょう。
ターンオーバー促進は発生してしまったメラニン色素の排出を促進する=シミの改善に繋がりますし、肌の表面が整うことで光の反射が均一になり滑らかさや透明感も出てきます。有機ゲルマニウムによる酸素の供給や、巡りを整える働きからくすみ改善にも効果が期待出来ます。これらの働きからハトムギは肌のアンチエイジングや美白など、美肌を保ちたい女性に支持され続けています。肌荒れ対策にはルイボスやドクダミ、美白にはヒース(ヘザーフラワー)やエルダーフラワーとのブレンドもオススメです。
ニキビ・イボ緩和に
ハトムギは水分代謝や体内の“巡り”を整えることで老廃物の排泄を促す働きがあります。良質のアミノ酸やミネラル・ビタミン類を含むため皮膚の生成・保持に必要な栄養素の不足を改善するとも考えられています。また新陳代謝を促進することで角質層の保湿機能を高めたり、毛穴詰まりを改善することにもなりますから、ニキビ対策(特に大人ニキビの予防・改善)にも高い効果が期待されています。
加えてコイクセノライドには抗腫瘍作用があると考えられています。これは皮膚細胞の異常・異変を抑える働きですし、肌代謝の向上から変形した皮膚細胞の排出を高める働きも期待でいます。この2つの働きでハトムギ(ヨクイニン)は気になる二の腕のブツブツから老人性イボなどの改善に役立つと考えられています。
そのほか期待される作用
花粉症・アトピー性皮膚炎の緩和
ハトムギにはアレルギー症状を起こす原因物質であるヒスタミンの抑制作用、サイトカインの一種で炎症関連物質のTNF-α(腫瘍壊死因子)抑制作用があることが報告されています。アトピー性皮膚炎モデルマウスにハトムギを投与した実験では改善がみられたことも報告されていることもあり、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を予防する働きが期待されています。
またTNF-αは関節リウマチや関節炎などにも関係しています。ハトムギには炎症物質を抑制するだけではなく、巡りを整えて蓄積してしまった老廃物・毒素の排泄を促進する働きもあるため、リウマチや関節痛などの緩和にも役立つのではないかと考えられています。
ガン予防
ハトムギ(ヨクイニン)に含まれているコイクセノリド(コイクセノライド)は動物実験の結果として抗がん作用があることが示唆されており、ハトムギを含む抗癌剤の開発や臨床試験も行われています。
お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果
ハーブバスに
ハトムギは比較的安価で手軽な薬用入浴剤として利用されています。殻付きのものを利用する場合はいきなり湯船に入れてもあまり浸出されませんので20~30分くらい煎じ、煎じ汁とハトムギを浴槽に入れると良いと言われています。また余ってしまったハトムギ茶を利用したり、お茶の出がらしを再利用する方もいらっしゃいます。
ハトムギ風呂はニキビやイボ、皮膚の乾燥など皮膚トラブルの緩和に有効とされるほか、くすみとりや肌のキメを整えるなどの働きや、アトピー性皮膚炎緩和にも効果が期待されています。同様に皮膚炎症改善に効果が期待できるドクダミや熊笹と合わせて使われることもあります。また経口摂取と同様にむくみの改善、リウマチ・関節痛・神経痛の緩和にも役立つと考えられています。
スキンケアに
化粧品原料としてハトムギエキス(ヨクイニンエキス)は皮膚再生・保湿・消炎剤としてスキンケア商品やヘアケア用品に良く配合されています。ハトムギ化粧水はドラッグストアでもよく見かけますね。
ハトムギ茶でそのまま洗顔をしたり、ハトムギもしくはヨクイニンをアルコールで浸出したものに精製水を加えて化粧水を手作りすることも出来ます。肌荒れ・乾燥・くすみなどを防ぎ皮膚のコンディションを整える働きが期待出来ます。ニキビやイボなど部分的な炎症のケアにはハトムギの粉末を少量の水に溶いたものを湿布のように貼り付けると良いと言われています。試す場合はいきなりつけず、パッチテストを行うようにしてください。
ハトムギ/ヨクイニンの注意事項
- 妊娠中・授乳中の摂取は控えたほうが良いとされています。