緑茶の約20倍と言われる熱に強いビタミンCを含む
日本人にとっては果物としても馴染み深い柿。柿の葉も柿の葉寿司などのように梱包材として利用されたり、健康茶・民間薬として親しまれてきました。近年再びビタミンCを豊富に含むことから柿の葉な注目されており、アンチエイジング効果・美肌効果が期待できるお茶として、シミ・ニキビなどに悩む多くの女性に支持されています。また体臭・口臭・加齢臭などの「臭い」抑制効果が期待できます。内側からも外側からもキレイをサポートしてくれる存在とも言えますね。
柿の葉について
植物紹介:柿
多くの日本人にとって馴染み深い果物と言える柿。栗や焼き芋等とともに秋の味覚として楽しみにしている方もいらっしゃるでしょうし、秋の季語としても認められています。ちなみに英語で使われている“persimmon”はネイティブ・アメリカンのアルゴンキン族の言葉で「干し果物」を表す言葉が語源です。アメリカ大陸にもアメリカガキ(Diospyros virginiana)という柿があり、先住民は干し柿を保存食にしていたのだそうです。
柿は果実部分を果物として食べる以外に、柿酢・柿の葉寿司や柿の葉風呂、幹は家具材として、柿渋は防水剤・除菌剤や民間医薬として幅広く利用されてきました。また柿果実のへた部分は柿蒂(してい)という名前で生薬として利用されています。日本人にとっては木材・塗装材でもあり、食料源もあり、医薬でもあると生活を支える存在であったと考えられます。「柿が赤くなると医者が青くなる」という諺もありますね。
柿の原産地は中国の長江(揚子江)流域と考えられています。日本には弥生時代~奈良時代頃、桃・梅・杏などと一緒に栽培種が大陸から伝来したと考えられています。歌人として有名な「柿本人麻呂」は屋敷に立派な柿の木があったために柿本と名乗っていたという逸話もあります。古事記や日本書紀などにも記述が見られますし、平安時代に編纂された「延喜式」には祭礼用の菓子として柿が使われていたこと・宮廷でも栽培されたことなどが記載されています。
鎌倉時代になると突然変異による甘柿が発見されます。これは現在禅寺丸柿もしくは王禅寺丸柿と呼ばれているもので、日本最古の甘柿とされています。江戸時代になると大和国御所町で樹上で自然に甘くなる完全甘柿(御所柿)が突然変異によって出現し、それを元に様々な品種が作られていきます。このため甘柿の発祥は日本と言われることもありますが、中国にも甘柿は存在していることがわかっています。
ただし一般的な「柿」として広く甘柿が栽培されているという点では日本が柿大国・柿先進国であると考えられます。日本から1789年にヨーロッパへ、1870年に北アメリカへと柿は伝えられます。学名に“kaki”という日本語がそのまま利用されているのは、ルーツというよりも日本の代表的な果物と捉えられていたためではないかと考えられています。
基本データ
- 通称
- 柿の葉(Kaki leaf)
- 別名
- Kaki Persimmon(カキパーシモン)、Japanese persimmon(ジャパニーズパーシモン)
- 学名
- Diospyros kaki
- 科名/種類
- カキノキ科カキノキ属/落葉樹
- 花言葉
- 恵み、恩恵、優美、自然美
- 誕生花
- 9月26日、10月24日
- 使用部位
- 葉部
- 代表成分
- フラボノイド(ケンフェロール、ケルセチン)、タンニン、ビタミン類
- 代表効果
- 血圧降下、血行促進、強壮、利尿、止血、抗酸化、美白、抗アレルギー
- こんな時に
- 高血圧予防、動脈硬化・心筋梗塞予防、生活習慣病予防、加齢臭予防、下痢、疲労感、風邪予防・回復促進、むくみ、シミ・ニキビ・肌荒れなどの予防改善、美白、美肌作り、花粉症などアレルギー症状の緩和
- おすすめ利用法
- ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ、手作り化粧品、料理用ハーブ
- ハーブティーの味
- やや葉の青っぽさがあるが、さっぱりとしてクセは少ない
- カフェインの有無
- ノンカフェイン
柿の葉の栄養・成分・期待できる効果
柿の葉茶
熱に強いビタミンCの補給源として
柿の葉茶の最大の特徴と言えるのが、葉100g中に1000mgも含まれている豊富なビタミンC。ビタミンC含有量は緑茶の約20倍、レモンの約10~20倍とも言われています。
通常ビタミンCは熱に弱く、お茶として飲む場合も茶葉としての含有よりも摂取できるビタミンC量はかなり減少してしまいます。しかし柿の葉に含まれているビタミンCは「プロビタミンC(ビタミンC誘導体)」と呼ばれるビタミンCになる前段階の形状の天然成分で、熱による損失が比較的少ないという特徴があります。体内でビタミンCへと分解され働いてくれますので、効率のよいビタミンC補給源と言えるでしょう。
ビタミンC(アスコルビン酸)は様々な働きが知られていますが、中でもストレスと戦う・抗酸化作用を持つビタミンの1つとして注目されています。またビタミンCは体内で有毒物質を分解・解毒する際にも利用されるため、喫煙者・アルコールをよく飲む方などは多めに補給した方が良いと考えられています。手軽に天然ビタミンCを補給できる柿の葉茶はビタミンCの補給源として注目されています。ノンカフェインなのも嬉しいポイントですね。
風邪予防・回復促進
昔から風邪には柿が良いと言われてきたとおり、ビタミンCの補給は抗体(免疫グロブリン)の産生量増加や白血球の活性化に役立つ可能性があることが報告されています。またビタミンC自身も細菌やウイルスを攻撃する働きが期待されていますし、タンニンにも殺菌作用がありますから、風邪予防に一役買ってくれるでしょう。
そのほか風邪をひいてしまった時にビタミンCを摂取することでタンパク質の生成促進・ウィルスによって荒れた細胞の修復を助けることで風邪の回復を早めるとも言われています。
ストレス・疲労に
私達の体はストレスを受けた際、副腎から副腎皮質ホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾール)を分泌しストレスを緩和しようとします。この副腎皮質ホルモン生成時にはビタミンCが利用されます。副腎には元々ビタミンCが蓄えられているのですが、ストレスを受けるとビタミンC濃度が急激に低下することが認められています。
ビタミンCが不足している、もしくはストレスを受ける時間が長くビタミンC補給が追いつかない状態になると不足副腎皮質ホルモンの分泌が滞ってしまします。結果としてストレス耐性の低下や副腎疲労を起こすことから、ビタミンCの補給は抗ストレス・副腎疲労の予防や緩和にも効果があると考えられています。またビタミンC不足は疲労感や脱力感の原因となり、逆に適切な補充が出来ていれば疲労回復促進などにも役立つと考えられています。
美容面への働き
老化防止(抗酸化)に
老化の原因として取り上げられることの多い活性酸素は普通に生活しているうえでも作られていく存在ですが、ストレス・喫煙・激しい運動など更に激しく増大させる要因も存在しています。
ストレスを受けることでも活性酸素が発生するのはもちろんのこと、ストレスを緩和させるためにはビタミンCも消費されてしまいますので、抗酸化成分として働く分が減少してしまうことからもストレス=老化を引き起こすと考えられています。喫煙や過度の飲酒なども解毒にビタミンCが使われるため同じような状態になります。
活性酸素から身を守るには抗酸化作用のある成分の摂取が推奨されていますが、中でもビタミンCは他の仕事に回されてしまう上、体内に留めておける時間が短いことから意識的に摂取したい栄養素の1つと考えられています。
柿の葉はビタミンC以外にタンニンなど抗酸化作用を持つポリフェノール類も含んでいますから、相乗して活性酸素を抑制して老化予防(アンチエイジング)に働きかけると考えられています。
美肌作り・美白ケアに
柿の葉に豊富に含まれているプロビタミンCはビタミンCとして働きます。ビタミンCには黒色細胞であるメラニンを作り出す酵素チロシナーゼの阻害作用があることが認められています。加えてメラニン色素の沈着を淡色化する働き(還元作用)を持つため、出来てしまったシミ・そばかす・肝斑などを薄くする効果も期待できます。
タンニンにもメラニンを産生するヒト黒色腫メラノーマ細胞の増殖を抑制する働きが報告されており美白作用があると考えられています。またタンニンは肌・毛穴を引き締める働き(収斂作用)がありますし、ビタミンCはコラーゲン生成を促す働きがあります。そのため肌の透明感・ハリの維持や、脂性肌・ニキビ予防など幅広い肌トラブルの予防や緩和にも柿の葉茶は役立つと考えられています。
むくみ対策・スタイルキープに
柿の葉茶は美白・美肌ケアに役立つお茶として親しまれている以外に、利尿作用を持つむくみ軽減茶としても利用されています。また成分的に見ると柿の葉に含まれているタンニンは脂肪吸収を抑制する働きがあると考えられていますから、脂っこい食事と合わせて飲用することで肥満予防に役立つとする説もあります。
そのほか期待される作用
生活習慣病予防
柿の葉に含まれているポリフェノールの中には血管の強化・血流改善作用などが認められているルチンやケルセチンなどのビタミン様物質(ビタミンP)が含まれています。ビタミンPは血管・血流をサポートすることで、動脈硬化・脳血管障害・心臓疾患などの予防にも役立つと考えられています。そのほかルチンはインスリンの分泌を促す働きが、ケルセチンには血糖値上昇を抑制する働きが報告されており、糖尿病予防などにも効果が期待されています。
ルチンやケルセチンは抗酸化物質にも数えられていますし、その他にも柿の葉は抗酸化作用を持つタンニンやビタミンCも含んでいます。様々な成分が複合して働くことで生活習慣病と呼ばれる幅広い症状の予防に役立つと考えられています。
下痢止めに
柿の葉に含まれているタンニンには摂取することで体内で収斂作用を発揮します。このため腸を引き締めて便を固めることで下痢の改善に役立つことが分かっており、下痢止め剤などにも配合されています。逆に便秘気味の方は柿の葉茶を飲み過ぎると便秘が悪化してしまう可能性がありますので、摂取量に注意しましょう。
虫歯予防・体臭対策に
体臭対策としては「柿渋」を利用した化粧品が数多く販売されていますが、柿渋の主成分はタンニンで柿の葉茶にも含まれています。タンニンには殺菌作用があり、皮膚の常在菌を殺菌することでわきがや体臭を抑えると考えられています。また柿の葉にはタンニン以外にもポリフェノール類やビタミンCなどの抗酸化成分が相乗して働くことで加齢臭対策にも有効とされています。
そのほかに殺菌作用があることから、タンニンは虫歯予防に対しても効果が期待されています。歯周菌を殺し虫歯菌の繁殖を防ぐ働きがありますし、口臭の原因となる嫌気性菌の抑制にも役立つとしてオーラルケア商品にも活用されています。
昔女性がしていた「お歯黒」の主成分もタンニンで、文化的なものだけではなくむし歯を予防するという実用的な面があったことも認められています。
花粉症予防・緩和
近年柿の葉に含まれているポリフェノールの一種「アストラガリン」にはアレルギー反応を抑制する働きがあることが報告されています。アストラガリンはアレルギーの炎症物質であるヒスタミンを抑制することで、花粉症であればくしゃみ・鼻水・鼻詰まりなどの緩和に役立つと考えられています。
また活性酸素はアレルギー反応を促進させるという報告もなされています。活性酸素によって変化した過酸化脂質はアトピー性皮膚炎の炎症を悪化させるとの説が有力視されていますし、花粉症・喘息なども活性酸素の影響を受けていると考えられています。柿の葉茶には抗酸化成分が豊富に含まれていますので、活性酸素がアレルギー反応を促進してしまうことを緩和する働きも期待できるでしょう。
タンニンの作用について
柿の葉茶に含まれているタンニンには抗酸化作用や抗菌作用など有用な作用がある一方、デメリットとして鉄分吸収を阻害する・便を固める働きがあるため摂り過ぎると便秘を悪化させるなどの可能性があります。一日1~2杯程度であれば問題ないと考えられていますが、摂り過ぎには注意が必要です。
ノンカフェインですし子宮を刺激する成分も含まれていないことから妊娠中のお茶として「柿の葉茶」が勧められることも多いようですが、貧血気味・便秘気味のママさんも飲み過ぎに注意してください。
また胃腸の活動を活発化させる反面、空腹時にたくさん飲用した場合は胃腸に負担をかけてしまう可能性があります。胃の弱い方や逆流性食道炎の方などは食後に飲むようにしたほうが無難でしょう。
柿の葉茶の作り方
柿の葉茶を自分で作る場合、柿の種類は甘柿でも渋柿でも良いですが、若い葉(春から初夏頃)を使うようにします。摘んだ葉をよく水で洗い、葉脈を取り除きます。そこから先は作り方が分かれますが、三分ほど湯通しして細かく刻んだものを乾燥させる、という方法が最も簡単でしょう、
また少し手間がかかりますが、下処理をした柿の葉を蒸し器で2分蒸し、うちわなどで熱を取った後に細かく刻み、手で絞ってアクを抜いたものを陰干しするなどの方法もあります。こちらの方がアク抜きの工程が含まれていますので飲みやすいものが出来るでしょう。
どの方法で作った場合も柿の葉茶は湿気に弱いと言われていますので、除湿剤などを入れて保存したほうが安心です。
お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果
柿の葉風呂(柿湯)に
柿の葉を入浴剤として利用した柿葉風呂もまた、ビタミンC(プロビタミンC)が破壊されず肌へ馴染むことから高い美肌効果が期待できると考えられています。タンニンの働きから毛穴を引き締めることで脂性肌の改善、体臭・加齢臭予防にも役立つと考えられます。
柿の葉にはビタミンC・タンニン以外にビタミンA,K,P、アストラガリンなどのポリフェノールが含まれており、止血、殺菌、消炎作用などもあると考えられています。そのため柿葉湯は外傷・ニキビ・吹き出物・湿疹・肌荒れ・乾燥など幅広い炎症や肌トラブルの予防や改善サポートに有効とされています。保温効果も高まるという報告もありますので、お茶の場合冷え性の方は飲み過ぎ注意ですが、入浴剤としては冷え性の緩和にも役立ってくれそうです。
柿の葉湯を作る場合は茶葉として利用している乾燥した柿葉を使うほか、生葉を水洗いしたものを布袋に入れ湯船に入れる方法もあります。お庭に柿の木がある場合などは簡単に活用できるのも嬉しいポイントですし、買った柿の葉茶をフル活用したい場合は茶殻をヤカンで再煮出ししてから袋ごと湯船に入れて使うことも出来ます。
スキンケアに
柿の葉は化粧水・石鹸などスキンケア商品にも応用されていますし、ご自宅で手作り化粧品を作る方にもよく利用されている素材です。熱に強く壊れにくいというプロビタミンCの性質がありますので、煮だしたものを化粧水として利用することで天然のビタミンC化粧水となりシミ予防に効果が期待できますし、タンニンの働きと合わせてニキビケアにも良いと考えられています。
また消炎効果があり刺激が少ない化粧品原料としてトラブル肌のケアにおすすめされている書籍も多く存在しています。敏感肌の方はパッチテストなどを行う必要がありますが、敏感肌やアトピー肌で利用されている方も多いようです。
柿の葉の注意事項
- 貧血・便秘・冷え性の方は飲み過ぎに注意しましょう。
- 胃が弱い方は空腹時の飲用を避けましょう。
- 鉄分を含む食べ物や鉄錠などを摂取する場合、鉄の吸収が妨げられてしまうため30分以上時間を空けるなどタイミングを選ぶ必要があります。