エルダーベリー
ハーブティーと期待される効果効能紹介

抗酸化物質が豊富で、スーパーフルーツの一つにも数えられる

古くから民間医療に取り入れられ「万能の薬箱」とも呼ばれたエルダー(西洋ニワトコ)の果実であるエルダーベリー。ビルベリーに似た黒い実にはアントシアニンが多く含まれており、他フラボノイド類やビタミンCも豊富なことからアンチエイジングに高い効果が期待されています。風邪やインフルエンザ対策としても古くから用いられており、実験ではインフルエンザ完治までの日数が短縮したなどの報告もなされています。

画像:エルダーベリー

 

エルダーベリーについて

植物紹介:セイヨウニワトコ(果実)

エルダーベリーは呼び名の通りエルダー(西洋ニワトコ)の果実で、晩夏~秋頃に実ります。日本でポピュラーなニワトコの果実は熟すと赤くなりますが、エルダーベリーは黒みの強い紫色になることが特徴です。セイヨウニワトコの種子名であるnigraも“黒”を意味していますし、果実の色から樹木そのものを“Black elder(ブラックエルダー)”と呼ぶこともあります。ただしアメリカニワトコ(American elder)などの果実も黒っぽい色なので、果実が黒い=西洋ニワトコという訳ではありません。
エルダーベリーはそのまま食べることも出来ますが、酸味が強くお世辞にも美味しいと言える代物では無いそう。そのため現在ではジュース・コーディアル・ワインなどの飲料、もしくはジャムやゼリーなどに加工して用いられています。また色素を抽出して天然着色料としても利用されているそう。

エルダーベリーは旧石器時代から食用とされていたと考えられており、人類が最初に発見したハーブ・世界最古のハーブとも言われています。古代エジプトでは既に薬用として用いられ、ギリシャやローマでは「万能の薬箱」と呼ばれていたそう。現在に至るまでヨーロッパの伝統医療では風邪やインフルエンザなどのケアを始め毒消し・鎮静・歯痛の緩和など様々な用途で用いられているハーブで、「田舎の薬箱」や「庶民の薬箱」とも呼ばれているのだとか。現在のように医療制度が充実していない時代に重宝されていたことがうかがえますね。ちなみに和名では“接骨木”と表記する事がありますが、これは幹や枝が打撲・骨折・打身などの湿布に利用されていたためだとか。

古くからハーブ・民間医薬として利用されてきたエルダーには様々な伝承も残っています。「魔除けの木」と信じられていたことから庭木としてエルダーを植える家庭も多かったようですし、小枝を家の中に吊り下げる・棺に入れるなどの風習が残る地域もあるそう。反対に「死を連想させる木」ともされ、キリスト教においてはイエス・キリストを処刑した十字架の木やユダが首を吊った木であるとも言われています。魔女の木である・火にくべると悪魔が見えるとも言われていたそう。
セイヨウニワトコが死など不吉なイメージを持たれたのは葉の形が鏃と似ていたためとも、生および未熟の果実・種子・樹皮には青酸配糖体(サンブニグリン)が含まれていて中毒症状を起こすためとも考えられています。完熟度合いの見分けられない子どもが間違って食べないように脅かす意味もあったのだとか。実際に死亡例も報告されているそうなので、採取・使用時には注意が必要なハーブでもあります。

同じ樹木で使用部位が違うエルダーフラワーとエルダーベリーは似た用途で用いられることが多いですが、大きな差異としてエルダーベリーにはこの色の元であるアントシアニン系色素が含まれていることが挙げられます。アントシアニン以外にβカロテンやビタミン類の含有も多いことから眼精疲労予防など目のケアに効果が期待されていますし、抗酸化物質を豊富に含むことから近年ではスーパーフード・アンチエイジングフルーツとしても注目されています。水に溶け出しにくい成分などもありますからジュースやジャムなどの形で摂取した方が効果は高いと考えられますが、砂糖などを使わないこと・フルーティーな風味があることからハーブティーとしても用いられています。ブレンドティー作りにも役立ってくれますよ。

基本データ

通称
エルダーベリー(Elder berry)
別名
セイヨウニワトコ(西洋庭常/西洋接骨木)、接骨木(セッコツボク)、European Black elder berry(ヨーロピアン・ブラックエルダーベリー)
学名
Sambucus nigra
科名/種類
レンプクソウ科ニワトコ属/落葉低木
花言葉
思いやり、苦しみを癒す、哀れみ、嫉妬深さ
誕生花
7月25日
使用部位
果実(※花を含む場合も有)
代表成分
ポリフェノール類(アントシアニン系色素、ルチン、イソケルセチンなど)、ビタミン類、ミネラル類、フルーツ酸
代表効果
抗酸化、免疫力向上、強壮、抗ストレス
こんな時に
風邪・インフルエンザ予防、疲労回復、ストレス、目の疲れ・眼精疲労、アンチエイジング、高血圧予防、動脈硬化・心筋梗塞予防、美肌、美白(シミ予防)
おすすめ利用法
食用(加工品)、ハーブティー、ハーブチンキ、浸出油、湿布、キャリアオイル
ハーブティーの味
甘酸っぱいフルーティーな香りで、味もサッパリとしている
カフェインの有無
ノンカフェイン

エルダーベリーの栄養・成分・期待できる効果

エルダーベリーティー

抗酸化・健康維持のサポート

風邪・インフルエンザ対策に

エルダーベリーはビタミンCを豊富に含む果物であることから、風邪予防や回復サポートに役立つと考えられています。ビタミンCは白血球の活性化・自身が免疫細胞のように細菌やウイルスを攻撃する働きなどがあると考えられているほか、コラーゲンの生成を促すことでウィルスの侵入抑制や荒れた細胞の修復を助けることで風邪の回復をサポートする働きも期待されています。エルダーベリーには粘膜強化に役立つビタミンAも含まれていますから相乗効果が期待できますし、抗酸化作用も免疫力低下予防に繋がります。

ヨーロッパの民間療法では「風邪をひいたらエルダーベリーを使ったハーブティーなどを摂る」という方法もポピュラーなのだそうで、現在はサプリメントなども活用されています。近年ではビタミン以外にエルダーベリーには免疫機能のサポートが期待されるフラボノイドが含まれていることも分かっており、イスラエルの大学で行われたインフルエンザ患者での実験ではエルダーベリーを摂取するとインフルエンザ完治までの日数が短縮することも報告されています。ハーブティーの場合はエキナセアジンジャーなどとブレンドして取り入れても良いでしょう。


強壮・疲労回復に

エルダーベリーに含まれているビタミンCはコラーゲン合成に必要とされるビタミンと言われています。コラーゲンというとお肌のハリというイメージを持たれることも少なくありませんが、体の組織や細胞を結びつける役割を担っており血管・筋肉・骨・軟骨など様々な部位に存在しています。このためコラーゲン合成をサポートすることは体を丈夫に、靭やかに保つことにも繋がると考えられています。

またビタミンC不足は疲労感や脱力感の原因となることも指摘されていることから、適切な補充は疲労感軽減や疲労回復促進に役立つのではないかとも考えられています。エルダーベリーにはフルーツ酸(クエン酸)も含まれており、糖代謝をサポートすることで疲労物質の蓄積を抑制する働きも期待されています。そのほかポリフェノールやビタミンCなどの抗酸化成分が活性酸素を除去・分解すること、ミネラル補給ができることも肉体的・精神的な疲労軽減に役立つと考えられます。


ストレス抵抗力アップに

私達の体はストレスを受けた際、副腎から副腎皮質ホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾール)を分泌しストレスを緩和しようとします。この副腎皮質ホルモン生成時にはビタミンCが利用されており、ストレスを受けるとビタミンC濃度が急激に低下することが認められています。ビタミンC補給が追いつかない状態になると不足副腎皮質ホルモンの分泌が滞り、ストレス耐性の低下や副腎疲労を起こす原因となる可能性があります。

またビタミンCは神経伝達物質の合成も関わる存在でもあるため、体内のビタミンCが不足しないよう適切に補充することでストレス抵抗力を高める・メンタル面の強壮などに繋がると考えられます。エルダーベリーはビタミンCを含んでいますし、活性酸素を抑制するポリフェノールなども豊富なことからストレス対策としても効果が期待されています。ストレスが気になる時はエルダーフラワーオレンジピールなどと組み合わせるのもオススメ。


疲れ目対策・眼精疲労予防

黒っぽい紫色をしたエルダーベリーにはアントシアニン系色素やビタミンAが豊富に含まれています。私達の視覚は網膜にあるロドプシンというタンパク質が光を受け分解されることで、脳へと光の情報が伝わり映像として認識されています。ロドプシンは分解された後に再合成され、新たな光の情報を得ると再び分解…と分解と合成を繰り返しています。しかし目の酷使や加齢などの影響を受けるとロドプシンの再合成速度は低下し、目のかすみ・視力低下などの疲労症状となると考えられます。

アントシアニンはロドプシンの再合成を促進する働きを持つことが報告されており、目の疲れを軽減することで眼精疲労の予防・改善効果が期待されています。またビタミンAはロドプシンの構成物質の一つですから、こちらも不足なく補うことで視機能の維持をサポートしてくれるでしょう。ルテインを含むカレンデュラ(ポットマリーゴールド)と組み合わせると相乗効果も期待できます。PCやスマホを使う時間が長い方はもちろんのこと、暗い所で目が見えにくくなったと感じている方にも適しています。


抗酸化・アンチエイジングに

老化防止(抗酸化)に

エルダーベリーはビタミンCのほかイソケルセチン・ルチン・アントシアニンなどのポリフェノールも豊富に含み、高い抗酸化作用を持つ食材としても注目されています。活性酸素は細菌など有害物質を攻撃するために必要な物質で、普通に生活している中でも作られていく存在です。しかしストレス・喫煙・激しい運動など更に激しく増大させる要因も多くあり、活性酸素が過剰となると健康な細胞まで酸化させ劣化や機能低下を引き起こしてしまします。

人の体内には抗酸化処理を行うSOD酵素が存在していますが、年齢とともに体の持つ抗酸化力は衰えていきます。このため酸化=老化の引き金とも言われており、体内外の老化や病気の原因となる可能性が指摘されています。抗酸化物質はこうした活性酸素を抑制・除去する働きをもつ物質で、自身の力だけでは抑えられない活性酸素を抑制する手助けをしてくれると考えられています。このため抗酸化物質を豊富に含むエルダーベリーも、アンチエイジングや健康維持のサポート効果が期待されています。


高血圧・動脈硬化予防に

活性酸素は血中脂質を酸化させて過酸化脂質を生成します。過酸化脂質が血管内に蓄積すると血管の柔軟性を失わせたり、血管を狭めることで血液循環を妨げる原因となります。このため抗酸化物質の補給は血流が悪くなって起こる高血圧や動脈硬化・血栓・心筋梗塞などの予防にも繋がると考えられています。またエルダーベリーにはルチンなどビタミンP(ビタミン様物質)に分類されるポリフェノールも含まれていることから、ビタミンCと協力してコラーゲン生成を高め丈夫な血管の保持する効果も期待できます。


肌のアンチエイジング・美白に

抗酸化物質を豊富に含むエルダーベリーは、酸化が原因で起こる肌のシワやタルミなどの老化減少の予防にも有効とされています。加えてルチンは毛細血管を強化して肌への血流を整える・ビタミンCの働きを助けてニキビの原因となる皮脂分泌や過酸化脂質生成を抑制する働きも期待されています。皮膚粘膜を保護するビタミンAも含まれていますから、肌のアンチエイジングから肌荒れ予防まで幅広く“美肌”をサポートしてくれると考えられます。

またビタミンCは黒色細胞であるメラニンを作り出す酵素チロシナーゼの阻害作用があることが認められています。ビタミンAも肌のターンオーバーを促進する働きがあると言われていますから、出来てしまったシミを改善する(薄くする)サポートとしても役立ってくれるかもしれません。抗酸化作用・コラーゲン生成促進作用と合わせて肌のハリを高めたりキメを整えるなどの働きも期待できます。海外セレブ達がエルダーベリーを取り入れているのもアンチエイジングや美白効果を期待してというところが大きいようです。


そのほか期待される作用

便秘改善・肥満予防に

エルダーベリーは民間療法の中で緩下薬(下剤)としても用いられることがあるため、便秘の改善にも役立つと考えられています。成分的に見ても便を柔らかくする・腸内善玉菌のエサとなり増殖を助けるなどの働きがあるビタミンCが豊富ですし、女供物繊維も含まれていると考えられます。便秘改善への有効性が示唆されている実験報告もあるそうです。

アントシアニンには内臓脂肪の蓄積を抑える働きが期待されていること・ルチンはインスリン分泌を促し血糖値の正常なコントロールをサポートしてくれると考えられることから、エルダーベリーは肥満予防や糖尿病予防に役立つのではないかという説もあります。腸内環境が整うことや抗酸化作用なども代謝低下予防に繋がりますから、取り入れてみても良いでしょう。ただしジュースやジャムなどは砂糖が多く使われているものも多いので注意が必要です。


花粉症・神経痛軽減に

エルダーベリーに含まれているアントシアニンは、アレルギー症状の原因物質とされるヒスタミンの抑制効果が期待されている成分でもあります。わかさ生活研究所さんの調査ではアントシアニン入りのエサを与えた花粉症マウスは普通のエサを食べていたマウスよりもヒスタミン量・ひっかき回数が減少したことが報告されています。このためエルダーベリーは花粉症軽減にも役立つのではないかと考えられており、リコリスペパーミントなどとブレンドして取り入れる方もいらっしゃるようです。

ヒスタミン放出量の低減のほか、エルダーベリーはフラボノイドなどの抗酸化物質を含むことから血流を良くして筋肉痛の回復促進・神経痛などの痛みを和らげる働きも期待されています。反面、免疫亢進作用があることから関節リウマチなどの自己免疫疾患に対しては症状を悪化させる可能性があることも指摘されています。摂取に不安がある方は使用を避けるか、医師に相談して摂取するようにしてください。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

スキンケアに

エルダーフラワーのようにローションなどの手作りコスメに利用されることは殆どありませんが、タンニンやフラボノイドなどを含むことから柔軟作用や収斂・消炎作用などがあると考えられています。このため皮膚の保護・肌を整えるなどの目的で“セイヨウニワトコ果実エキス”を配合した化粧品がいくつか販売されています。またクエン酸などのフルーツ酸によるピーリング効果(古い角質や皮脂を取り除く働き)・ターンオーバー促進作用なども期待できることから石鹸等に使われることもあるようです。

エルダーベリーの注意事項

    通常量を摂取する場合は特に問題はないとされています。

  • 妊娠中・授乳中の方、持病がある方は摂取を控えましょう。
  • 長期間利用した場合の安全性に関するデータが不足しているため、適度にお休み期間を作ったほうが無難と言われています。また体調に異変を感じた場合は直ちに摂取を中止して下さい。