イライラや不眠症対策などメンタル面のサポートが期待
独特の苦味を持つ“蓮芯茶(蓮子心茶)”はベトナムなどでよく食される蓮の実の、真ん中に入っている緑色の芯(胚)部分を原料とするお茶です。「不眠症の特効薬」とも言われ伝統的に眠りのサポートに取り入れられてきたお茶であり、現代でも胚芽部分に含まれているアルカロイド類はメンタルサポート効果が期待できるのではないかと考えられストレス対策などにも効果が期待されています。
ハスの実について
植物紹介:蓮(ハス)
蓮と言えば水辺に咲く美しい花や、根菜の一つである“レンコン”など私達にとっても馴染み深い植物。原産地であるインドでは古くから宗教的にも非常に大切にされてきた存在。ヒンドゥー教の神話や聖典にも多く登場していますし、古代インドでは女性の格付けでも最高位は“パドミニ(蓮女)”とされています。仏教でも大切にされている存在で、仏の智慧や慈悲の象徴とも言われていますね。
蓮の花や葉はモチーフとしても見慣れていますが、一方で私達日本人にあまり馴染みのない部分が「実」ではないでしょうか。薄緑色で蜂の巣のような形をした花托の中に、種がぎっしりと詰まったビジュアルが気持ち悪い・怖いなど、生理的に受け付けられないという方も多いようです。しかしベトナムでは砂糖漬けや“チェー”と言うぜんざいのようなスイーツの材料としてポピュラーで、中国やマカオでは月餅などの餡に使われています。
日本でも古くは弥生時代の地層から発掘されたとも言われており、現在でも薬膳や精進料理などに取り入れられているそうです。また近年は栄養豊富で滋養強壮に良い・伝統的に婦人病などに用いられてきたことから日本でも少しずつ注目されるようになっています。果実として見ると不気味な形状ですが、蓮の実としてバラされたものであれば見た目も嫌悪感を催すようなものではありません。
蓮の実茶について
蓮のお茶は葉を乾燥させて茶葉として使う蓮葉茶(trà lá sen)・緑茶や茉莉茶などにハスの花の香りを付けた蓮花茶(trà hoa sen)・蓮の実の芯部分を乾燥させたものから浸出するの蓮芯茶(trà tim sen)の大きく3つに分けられます。このうち一般的に“蓮茶(ロータスティー)”と呼ばれるものは蓮の花香を付けた「蓮花茶」で、ほのかに蓮の花の爽やかで甘い香りがするのが特徴です。味は蓮というよりはベースとなるものに近いので、基本的にはあっさりと飲みやすいでしょう。対して蓮の葉茶は蓮の葉を乾燥させたものですから、葉というか草のような香りを持ちます。ほのかな苦味と甘みがありアッサリとはしていますが、フレーバーティーとも言える蓮花茶よりは好き嫌いが分かれるかもしれません。
蓮芯茶は蓮の実の中でも真ん中に入っている芯(胚)部分のみを取り出して乾燥したものから浸出し、上記二つのお茶よりもハッキリとした苦味があります。中国では製菓材料として使う際に苦味が強い芯部分を取り除き、それをお茶にしていると言われるほど。お茶の印象としては香り・味共に漢方薬を薄めたような感じ、というのがしっくりと来るかもしれません。
蓮の葉・花茶は主にダイエットやアンチエイジングなど美容面への働きかけが期待されていますが、蓮芯茶の場合は不眠症緩和などの効果を期待して取り入れる方が多いようです。生薬としても用いられ作用も強いとされていますし、苦みも非常に強いので他のお茶とブレンドして飲むようにすると良いでしょう。
基本データ
- 通称
- 蓮の実(Lotus seed)
- 別名
- 蓮芯(レンシン)、蓮子心(レンシシン)、水芙蓉(スイフヨウ)、不語仙(フゴセン)、池見草(イケミグサ)
- 学名
- Nelumbo nucifera
- 科名/種類
- ハス科ハス属/多年草(水生植物)
- 花言葉
- 清らかな心、神聖、沈着、休養、離れゆく愛
- 誕生花
- 7月3・8日、8月15日、9月26日
- 使用部位
- 果実(種子)
- 代表成分
- アルカロイド類(メチルコリパリン、ベンジルイソキノリン誘導体、ビスベンジルイソキノリン誘導体)、タンニン、フラボノイド
- 代表効果
- 鎮静、鎮痛、抗炎症
- こんな時に
- ストレス、情緒不安定、不眠、関節痛、神経痛、神経性の胃腸トラブル、ほてり
- おすすめ利用法
- 健康茶
- お茶の味
- 香りには甘さを含むが、薬草系の苦味が強くやや舌に残る
- カフェインの有無
- ノンカフェイン
ハスの実の栄養・成分・期待できる効果
ハスの実茶(蓮芯茶)
リラックス・安眠サポート
気持ちを落ち着かせる
蓮の胚芽にはベンジルイソキノリン誘導体・ビスベンジルイソキノリン誘導体という成分には高精神作用作用があるのではないかとする説があります。このため蓮芯茶はストレスによるイライラや気分の落ち込み・無気力感などを軽減し、リラックスを促したり心のバランスを整える働きが期待されています。伝統的にも蓮芯茶は気持ちを落ち着かせるのに役立つお茶とされていたようですし、生薬としても興奮を鎮める・気持ちを落ち着けるなどの目的で配合されることがあるそうです。
不眠軽減のサポートに
蓮芯茶はアルカロイド類による鎮静作用から、ストレスや不安などによる不眠の軽減にも役立つと考えられています。ベトナムの民間療法では古くから“不眠の解消の特効薬”とも言われているそうですし、ハノイ薬科大学の実験でも蓮茶を飲むと不眠症状の改善がみられたという報告もなされています。薬ではなく食品ですから目覚ましい効果こそ期待できませんが、リラックスタイムの演出も兼ねて取り入れてみると良いでしょう。薬のように起きがけのだるさ等の心配もありません。
蓮芯茶は人によっては不快なほど非常に苦味が強いお茶ですが、親しみやすい一般的なロータスティー(蓮花茶)や蓮の葉茶よりも鎮静作用が高いと言われています。特に蓮花茶は概ね緑茶をベースにしているため覚醒作用があるカフェインが含まれていますから、カフェインを含んでいないという点でも蓮芯茶の方がおやすみ前の飲用には適していると言えるでしょう。
そのほか期待される作用
蓮芯茶の伝統的な利用から期待されている働きを幾つかご紹介します。ただし成分・働きについては曖昧な点も多くありますので、あくまでもお茶として楽しむようにして下さい。有用性が期待されている一方でアルカロイドなどは毒性を持つ可能性も示唆されていますから、多量の摂取は避けましょう。
神経痛・消化器トラブルに
蓮に含まれているアルカロイド類(ベンジルイソキノリン誘導体・ビスベンジルイソキノリン誘導体など)は鎮静作用のほか、鎮痛作用や抗炎症作用が期待されている成分でもあります。そのため蓮芯茶は神経痛や関節痛などの緩和に良いとする説もあります。また精神面へのサポートに役立つと考えられることから、胃痛や胃炎・下痢・食欲不振など神経性の消化器系トラブル軽減にも効果が期待されています。
肥満予防に
蓮芯に含まれているアルカロイドの中には糖や脂肪の吸収を抑える・脂肪分解を促したり脂肪代謝を促進する働きがあるのではないかと期待されています。蓮(植物)を使った実験では有効性が報告されたものもあるのだとか。これらの作用については曖昧な点もありますが、蓮の実茶はストレス軽減効果が期待されていることからイライラ食い予防などにも役立つのではないかと考えられます。
ほてり・高血圧に
蓮芯(蓮子心)は東洋医学で清熱作用(発熱や炎症による熱症状・のぼせ・興奮などを改善する働き)を持つとされています。この働きから蓮芯は血圧降下や動悸・ほてり・喉の渇きなどの軽減にも良いと言われています。そのほか熱が内側にこもることで起こる肌荒れやニキビ・吹き出物などに良いとする説もあります。
ハスの実の注意事項
- 車の運転中など集中力が必要なタイミングでの飲用は避けましょう。
- 便秘・胃腸に膨張感がある方は飲用を避けましょう。
- 摂取量に注意が必要です。一日1~2杯程度を心がけて下さい。