ネトル/西洋イラクサ
ハーブティーと期待される効果効能紹介

花粉症などのアレルギー性症状の緩和改善に注目されるハーブ

ネトルはヨーロッパで紀元前から薬用として用いられてきたハーブで、日本でも近年は花粉症などアレルギー症状軽減に対する有効性が報じられたことで注目が高まっています。血液浄化作用があるとして“春季療法”の定番ハーブだったことに加え、ケルセチンなどの働きで炎症そのものを軽減する働きも期待されています。アレルギー対策として以外にむくみ軽減や血行促進・デトックスなど様々な働きが期待されていますから、栄養補給や健康維持のサポートとして取り入れてみても良さそうですね。

画像:ネトル(イラクサ)

 

ネトル(西洋イラクサ)について

植物紹介:西洋イラクサ

日本ではまだあまりポピュラーではないものの、近年花粉症対策としてハーブティーやサプリメントなどの注目度が高まっているネトル。広義で「ネトル(Nettl)」という言葉はイラクサ科イラクサ属に分類される植物の総称として用いられますが、ハーブとしては学名Urtica dioica・和名を西洋イラクサと呼ばれる種を指すのが一般的です。英語の場合はコモンネトルやスティンギングネトルと呼ぶことで区別されています。ネトルの同属種には日本に自生しているイラクサ(Urtica thunbergiana)や北海道に自生するエゾイラクサ(Urtica platyphylla)などがあります。ちなみにアイコなどとも呼ばれる山菜“ミヤマイラクサ”は名前こそ似ているものの別属で、学名はLaportea cuspidata

ネトル類は日本では現代でこそハーブとして注目されていますが、かつては北海道に古くから暮していたアイヌの人々がエゾイラクサから繊維(糸)を取っていた・汁物の具にして食べていたと言われる程度。あまり食材・薬用植物として利用されてはいなかったようです。しかしネトル(西洋イラクサ)の原産地であるヨーロッパでは古くから身近な植物の一つであり、青銅器時代には既にネトル繊維を使って布を作っていたとも言われています。余談ですが第一次戦時中、物資が不足していたドイツでもイラクサ繊維を衣服に利用していたそうですよ。

薬用植物としてもネトルは古くから取り入れられており、古代エジプト・古代ギリシアなどではネトルを咳や結核など呼吸器系の不調から関節炎・腰痛などのケアまで広く利用していたと伝えられています。鉄分補給源や滋養強壮薬のような形でも用いられ、現在でも栄養価が豊富なことから「天然のマルチビタミン」と称され妊産婦や病後の栄養補給に用いられることがあるそうです。古くは古代ギリシアの医者で「医学の祖」と称されるヒポクラテスもネトルを治療に用いていたそうですし、1世紀ころには「薬草学の父」と称されるディオスコリデスも利尿・便通促進作用があることなどと認めています。そのほか傷の手当や皮膚感染症のケアにも利用され、アメリカ南北戦争の時に南軍の軍医がネトルの抽出水を止血に利用したという話もあります。

またヨーロッパでは冬に溜め込んだ老廃物や毒素が春先に血液が汚れることがアレルギーなどの疾患になるいう考えがあることから、春に血や身体を綺麗にしてくれるハーブを摂る“春季療法(Spring Cleansing)”と呼ばれる療法が行われています。ネトルは血をキレイにしてくれるハーブとしてこの春季療法でも欠かせない存在なのだとか。近年では成分的にもアレルギー抑制効果を持つ可能性が報告されてたり、コミッションE(薬用植物を医薬品として利用する場合の効果・安全性の評価委員会)でも認証されていますが、元々は「花粉症など春先に起こるアレルギーは血の汚れが原因」と考えられていたために摂取されていたんですね。

ちなみにネトルという英名は“針(needle)”が語源とされ、和名のイラクサも漢字表記では“刺草(イラクサ)”となります。こうした名称はネトルに触った時に起こる焼け付くような痛みが原因。ネトルの茎や葉にはビッりりと鋭く細かいトゲが生えており、このトゲに触れるとトゲ付近にある袋から刺激性化学物質が皮膚下に混入されることで痛みや炎症が起こります。英名スティンギング・ネトルの“Stinging”も刺す・苦しめるなどの意味がありますし、属名のUrticaもラテン語の“uro(焼く)”が語源とされていますから、触れてしまった時の衝撃は古今東西変わらずというところでしょうか。ハーブとして活用されてきたわりに、ネトルの花言葉が悪意や残酷などネガティブなイメージが多いのも納得です。乾燥したり火を通した場合はトゲ・トゲに含まれている刺激物質は抜け落ちてなくなるためハーブティーの茶葉を触る分には問題ありませんが、生のネトルやイラクサなどに触れる場合には注意が必要です。

基本データ

通称
ネトル(Nettle)
別名
スティンギング・ネトル(Stinging nettle)、コモン・ネトル(Common nettle)、セイヨウイラクサ(西洋刺草)、苛草、蕁麻
学名
Urtica dioica
科名/種類
イラクサ科イラクサ属/多年草
花言葉
残酷さ、中傷、悪意、根拠のない噂
誕生花
3月10日(※イラクサ)
使用部位
葉・茎
代表成分
フラボノイド類(ケルセチン、ルチンなど)、カロテノイド類、クロロフィル、フィトステロール、ビタミン類、ミネラル類、アミン類(ヒスタミン、コリンなど)
代表効果
造血、浄血、血行促進、利尿、抗アレルギー、抗炎症、収れん、鎮痙、ホルモン分泌調整
こんな時に
貧血、血行不良、冷え性、肩こり、腰痛、関節痛、痛風予防、ストレス対策、むくみ、便秘、デトックス、アレルギー(花粉症・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎など)軽減、アンチエイジング・美肌、生理痛、月経過多、前立腺肥大
おすすめ利用法
ハーブティー、、ハーブチンキ、浸出油、湿布、手作り化粧品
ハーブティーの味
緑茶に似たグリーンな印象だが、青臭さが気になるという方も。
カフェインの有無
ノンカフェイン

ネトル(西洋イラクサ)の栄養・成分・期待できる効果

ネトルティー

栄養補給・健康維持に

貧血予防・改善サポートに

ネトルはビタミンやミネラルを多く含み、特に鉄分を豊富に含むハーブです。鉄分の吸収を助けてくれるビタミンCや、ヘモグロビンに構造が似ていることから造血をサポートする働きが期待されるクロロフィル(葉緑素)などが含まれていることもあり、造血に関わる成分を効率的に補給できることから「血を作るハーブ」とも呼ばれているのだとか。このためヨーロッパでは古くから貧血や、東洋で言うところの虚弱体質のケアに用いられてきました。

蒸らす・煮出して作ったお茶の場合は鉄分の大半が茶葉部分に残ると考えられますが、ハーブティー類の中では鉄分が豊富であると考えられます。1日1~2杯のネトルティーを飲むだけで不足分の鉄分が補えるとは考えないほうが良いでしょうが、鉄分不足の緩和や貧血改善のサポートとしては役立ってくれるでしょう。クロロフィルは骨髄を刺激することでより良質な血液生成を促してくれるという説もありますよ。


血行不良の軽減に

ネトルの葉はビタミンB群・ビタミンC,D,Eなどのビタミン類や、鉄分・カルシウム・マグネシウムなどのミネラル類を幅広く含むことが認められています。加えてβ-カロテンやルテイン・キサントフィルなどカロテノイド類を幅広く含み、ケルセチンやルチンなどのフラボノイド系ポリフェノールが多く含まれている事も報告されています。水に溶け出さない栄養素もありますのでハーブティーを飲むことですべての栄養素を余すこと無く…という訳にはいきませんが、フラボノイドなど抗酸化作用を持つ成分を多く補給できることから、抗酸化作用によって血液・血管の状態を整えて血液循環のサポートに役立つと考えられます。

クロロフィル(葉緑素)もドロドロ血液をキレイにする働きが期待されていますから相乗効果が期待できるでしょう。ヨーロッパで春先のデトックス用として長く利用されてきたのも、経験的にこうした働きを感じていたからかもしれませんね。また血液・血管の状態を良くすることで血流をサポートすることに加え、ネトルは循環器系を刺激することで血液循環を促す働きがあるとする説もあります。血液浄化と血行促進という2つの働きによって、ネトルティーは血行不良に起因する冷え性、肩こり・頭痛・関節炎・リマウチ・痛風など様々な不調の軽減に役立つと言われています。血行不良や冷えが気になる方はジンジャーレモングラスとのブレンドもオススメです。


精神安定・安眠サポートにも

ネトルは気持ちに揺らぎがある時や不眠(寝付きが悪い)時に適したハーブの一つにも数えられています。これはネトルにカルシウムとマグネシウムが豊富に含まれていることが大きいと考えられます。カルシウムの不足症状としてストレスに対する反応が過敏になる・ストレス回避能力が低下することが指摘されており、イライラや抑鬱の原因にもなり得ると言われています。マグネシウムはカルシウムと対になって働くミネラルで「天然の精神安定剤」と呼ばれることもある存在。このためカルシウムとマグネシウムの不足が緩和されることで精神面における不調改善や、ストレスや悩み事で寝付けない・眠りが浅いなど睡眠トラブル改善に繋がる可能性があると言われています。


むくみ・便秘対策に

ネトルはカリウムも豊富に含むハーブであり、鉄分などとは異なりカリウムは水に溶けやすいのでハーブティーとして摂取してもしっかりと補給することが出来ます。カリウムはナトリウムの排出促進・利尿作用を持つとされるミネラル。ドイツでは「足のむくみにはネトルのハーブティー」と言われるくらいポピュラーな存在とされていますし、カリウムなどのミネラル補給だけではなく血行促進効果も期待できますから下半身のむくみ改善にも効果が期待できるでしょう。そのほかシリカ(ケイ素)などを含むため尿酸排出を促すとも言われており、痛風予防にも用いられることがあるようです。

またネトルティーから食物繊維がどの程度取れるのか・他に緩下成分が含まれているかは不明瞭なものの、ネトルは古代ギリシア時代から便秘改善に有効とされてきたハーブでもあります。血液循環が良くなることからも腸の働きが良くなると考えられますから、便秘対策として補給してみても良いでしょう。こうした働きからネトルティーはデトックスティーとしても用いられていますし、カルシウムには脂肪の吸収を抑制する効果を持つ可能性が報告されていること・気持ちを安定させることでイライラ食いの予防に繋がる可能性があることからダイエットのサポートにも効果が期待されています。


アレルギー軽減について

花粉症などのアレルギー軽減に

近年、日本でネトルは花粉症などのアレルギー性炎症を緩和してくれる可能性があるハーブとして注目され、花粉症が出始める春先には需要が増えるとも言われるほど。ネトル=抗アレルギーというのは元々ヨーロッパの“春季療法”という自然療法で、血を綺麗にすることで体質改善をサポートしてくれるハーブとされていた事に起因すると言われています。成分的に見てもケルセチンなどヒスタミンの分泌を抑制しアレルギー症状を軽減させる働きが報告されているフラボノイドが含まれていることが分かっていますし、ケルセチンは抗炎症作用も持つと考えられている成分。このため花粉症の場合であれば目のかゆみやくしゃみ・鼻ずまりなどが既に出てしまっている際の症状緩和に良いとされており、ドイツのコミッションEでもアレルギーの炎症を抑える効果が非常に高いことが認められています。

古くから言われているように抗酸化物質や葉緑素などの働きによって血液が綺麗になることからもアレルギー体質の改善に繋がるという説もありますし、豊富に含まれている抗酸化物質が炎症部に生じた活性酸素を除去することで症状の悪化予防にも期待できます。こうした様々な方向からの働きかけにより、ネトルは花粉症・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・喘息など様々なアレルギー症状の軽減や改善に役立つのではないかと注目されています。体質改善のサポートとしてはエルダーフラワーダンデライオンなど体内を綺麗に保つ働きが期待できるハーブ類と、花粉症の症状軽減にはペパーミントエキナセアなど抗炎症が期待できるハーブ類とブレンドして使われることが多いです。


ネトルに含まれる“ヒスタミン”について

「ネトルにはヒスタミンが含まれているため、アレルギー対策に良い」という説もあります。ヒスタミンはアレルギー反応を誘発する鍵となる成分で、上記でご紹介したようにアレルギー抑制と言うとヒスタミンの分泌を抑える働きを持つものが一般的に利用されています。処方される医薬品も通称“抗ヒスタミン薬”と呼ばれていますよね。そのためヒスタミンが含まれていると言われるとアレルギー症状が悪化しそうに感じますが、ネトルに含まれているヒスタミンはごく微量のため、摂取することで体が慣れてアレルギー反応を起こしにくくなるという説があるようです。身体を慣らすという考えから、ネトルティーの摂取はアレルギー症状が出てからではなく出る前、花粉症ならは2~3ヶ月前から飲み始めると良いとも言われています。

ヒスタミン量は微量であるから問題ない・ケルセチンなどの成分と相殺されるなど諸説ありますが、ネトルティーをいきなり大量に飲むとアレルギーが悪化したり炎症が出てしまう可能性も否定できません。アレルギー体質の方がネトルティーを摂取する場合は1日1杯程度から始め、体調の変化や違和感が無いかをしっかりと自己確認しながら取り入れるようにして下さい。


そのほか期待される作用

肌や髪を綺麗に保つ

ネトルはフラボノイドなど抗酸化物質を多く含む事から、肌など外見のアンチエイジング(老化予防)にも役立つと考えられています。またケルセチンなどのフラボノイドは別名“ビタミンP”とも呼ばれ、ビタミンCの吸収や作用を助ける働きを持つことも認められています。ビタミンCと協力してコラーゲン生成を促してくれる成分とされていますから、抗酸化作用と相乗して肌のハリを高めてくれるでしょう。シリカ(ケイ素)も髪・爪・皮膚の生成に関わるミネラルで、爪や髪・皮膚の弱質化を防ぐとともにコラーゲンの生成を助ける働きが期待されています。ネトルには肌や髪の健康を維持するのに必要なビタミン・ミネラル類が広く含まれていますから、外見をキレイに保つサポートにも役立ってくれるでしょう。


男性・女性特有のトラブルに

ネトルは鉄分を豊富に含み貧血予防に良いこと・血液をキレイにして血行を整えてくれることから、生理痛や月経過多など女性特有の不調軽減にも取り入れられてきました。子宮を収縮させる働きを持つ可能性があるため妊娠中や授乳中の方は使用できないハーブとされていますが、月経不順気味の方には改善に繋がる可能性もあります。そのほかネトルの根の部分には多糖類や植物ステロールが含まれており、男性ホルモンのバランスを整えることから前立腺肥大症の予防に有効とする説もあります。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

髪・頭皮のケアに

ネトルは地肌の強壮や血行促進により、脱毛とフケを予防するトリートメントとして何世紀も前から使用されてきた歴史を持ちます。血行促進により栄養が行き渡るので髪の艶を守りたい場合にも有効です。ヘアケアに対しての効果は葉よりも根の方が高いこと認められているようです。


止血・鎮痛用として

ハーブティーやハーブチンキを布に浸して湿布をすることで関節炎の痛み、神経痛、捻挫、座骨神経痛などの痛みの緩和に役立つとされています。入浴剤としても効果が期待できるででしょう。関節炎などの痛みに対する有効性が示唆された実験結果もいくつか報告されていますが、皮膚に直接塗布した場合は皮膚炎症・かゆみが出るという報告もなされています。事前にパッチテストを行い注意して使用するようにしてください。そのほか収れん作用による止血効果があること・組織の修復を促進する働きが期待できることから痔疾や鼻血のケアに用いられることもあります。

ネトル(西洋イラクサ)の注意事項

  • 妊娠中・授乳中は使用を控えましょう。
  • 子供に使用する場合は量や濃度などに注意が必要です。
  • 心臓・腎臓疾患によるむくみがある方や、降圧剤や利尿剤を服用している場合は使用を避けるか医師に相談してください。