マルベリーリーフ/桑の葉茶
健康茶と期待される効果効能紹介

糖の吸収を抑える働きから肥満・糖尿病予防に注目

桑の葉(マルベリーリーフ)はカルシウム・鉄分・カリウム・ビタミン類・食物繊維などが豊富に含まれ、栄養補給源として優れた存在。また古くは『喫茶養生記』で飲水病(糖尿病)良いと記され、現在でも-デオキシノジリマイシン(DNJ)が糖分解酵素α-グルコシダーゼに結合し糖質吸収を抑制する可能性があることが報じられています。このため血糖値の上昇抑制やダイエットに役立つと考えられていますし、SOD酵素やケルセチン-3-マロニルグルコシド(Q3MG)による抗酸化作用などと合わせて生活習慣病予防にも効果が期待されています。

画像:マルベリーリーフ

 

マルベリーリーフについて

植物紹介:桑の葉

スーパーフード(スーパーフルーツ)として一部で注目を集めているマルベリー。マルベリーやミュールと言われると馴染みの無い植物のようにも感じますが、日本語で言うと桑(クワ)の実のことを指しています。日本ではマルベリーとは“実”を指す言葉として用いられるのが一般的ですが、植物全体を指す場合の呼称でもあります。日本語は木ありき、英語は実ありきと名前の付け方が逆ですね。

日本でも桑は古くから木材や養蚕(カイコの餌)などに用いられてきたことが知られていますが、クワ属の植物全体としては熱帯地域から温帯地域が原産とされています。桑は日本で養蚕用に栽培されてきたヤマグワ系・中国の漢方で使われるトウグワ系・中東などで果実用に栽培されている西洋クワ系の3系統に大きくわけられます。現在は世界中で栽培されており100以上もの品種があると言われています。

原産地の一つとされる中国では生薬としてその効能が古くから知られており、約1800年前に記されたとされる中国最古の薬物書『神農本草経』にも中薬の一つとして紹介されています。桑の葉を陰干ししたものは“神仙茶”と呼ばれ、滋養強壮や咳止め・中風などに良いとされていたそう。近年は栄養価が高い優れた食材としてクワの実(マルベリー)が近年注目されていますが、漢方において桑は葉をはじめ各所に薬効があると考えられ利用されています。生薬として実は桑椹子(ソウジンシ)として補血薬に、葉は桑葉(ソウヨウ)と呼ばれ解熱や止咳に、若枝は桑枝(ソウシ)と呼ばれ関節痛や浮腫などに、根は桑白皮(ソウハクヒ)と呼ばれ抗炎症・利尿剤として使われています。また桑を食べた蚕のフンも蚕砂という生薬として利用されているそう。日本でも桑白皮は“専ら医薬品”に指定されており、漢方薬の処方にも使われています。

ヨーロッパでもギリシア神話やローマ神話の中にも登場しています。神話の中では許されぬ恋をしたピュラモスとティズベーの二人が、白い実のなる桑の木の下で逢瀬を約束します。しかし行き違いが生じて恋人が死んでしまったと思ったピュラモスが自殺、後にティズベーも後を追って自殺してしまいます。この一部始終を見ていた桑の木は二人の悲しみと愛を伝えるため赤や紫色のマルベリーを実らせるようになったとされてます。余談ですがこのピュラモスとティズベーは親同士の仲が悪いなどの設定もあり、戯曲『ロミオとジュリエット』の元になった神話とも言われています。また中東・中央アジア地域でも桑は栽培されており、マルベリーは救荒食としても重宝されていたそう。

日本でも日本書紀などの原点とされる『秀真伝(ホツマツタエ)』で天照大神の孫“瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)”が薬草として用いたという伝承が残っているため、元々自生していたのではないかと考えられています。ただし5世紀頃に養蚕技術と共に、エサとなる桑の葉も伝えられたという説もありはっきりしません。平安時代になると養蚕が行われていましたし、『和名類聚抄』や『医心方』などの記述から薬としても用いられていたと考えられます。また中国や日本では桑の木そのものに対しても厄を払うと考えており、桑の弓で蓬の矢を射る儀礼(神事)などにも用いられていました。

鎌倉時代には臨済宗の栄西が記した『喫茶養生記』には、現在で言う糖尿病と考えられる“飲水病”に桑粥もしくは桑湯を服用すると良いという旨も記述されています。 江戸時代後半~昭和半ばくらいまでは各地で養蚕用を主とした桑畑が大々的に作られていましたし、桑の実は産地の子供のおやつとして食べられていたのだとか。近年桑畑は減少傾向にありますが、郷愁感のある食材であり高い健康効果も期待されていることから桑の葉・桑の実を使った町興しも行われているようです。最近は糖吸収抑制などが報じられていることもあり、桑の葉を配合した青汁も流通していますね。

基本データ

通称
マルベリーリーフ(Mulberry Leaf)
別名
桑の葉(くわの葉)
学名
Morus alba(真桑/白桑/ホワイトマルベリー)
Morus nigra(黒実桑/ブラックマルベリー)
科名/種類
クワ科クワ属/落葉高木
花言葉
彼女のすべてが好き・共に死のう
(白い実:知恵、黒い実:私はあなたを助けません)
誕生花
7月22日、9月26日
使用部位
代表成分
ボリフェノール類、DNJ(1-デオキシノジリマイシン)、GABA(γアミノ酪酸)、フィトステロール、ミネラル類、食物繊維、クロロフィル
代表効果
強壮、リラックス、整腸、利尿、発汗、解熱、消炎、鎮咳、血糖値降下、抗肥満、抗酸化、血圧降下、強肝
こんな時に
貧血予防、骨粗鬆症予防、ストレス、便秘、風邪・インフルエンザ予防、糖尿病予防、ダイエット、むくみ、アンチエイジング、美肌・美白、高血圧
おすすめ利用法
食用、健康茶、チンキ
お茶の味
草のような香りと味(苦味)があるが、後味は比較的あっさりとしている
カフェインの有無
ノンカフェイン

マルベリーリーフの栄養・成分・期待できる効果

桑の葉茶(マルベリーティー)

日々の健康サポートに

栄養補給・滋養強壮に

桑の葉(マルベリーリーフ)は栄養価が豊富な食材とされています。100gあたりの成分含有量としてはカルシウムは牛乳の約24倍・鉄分は小松菜の約15倍・総カロテン量はほうれんそうの約10倍とも称されています。それ以外にも亜鉛やマグネシウムなどのミネラル類・ビタミンCやB群などのビタミン類を広く含んでおり、タンパク質・アミノ酸類も多く含まれています。このため女性に多い貧血や骨粗鬆症の予防としても注目されていますし、幅広い栄養素をカバーしてくれる食材として青汁などの健康食品にも使われています。

ただし茶葉(茶殻)を食べずにお茶だけを飲む場合は、ミネラルなどはほとんど水分に溶け出さないと考えられるため摂取できる栄養分は減少します。ある程度の補給には役立つ可能性もありますが、栄養価を余すところなく摂取したい場合は粉末状にして粉茶のように利用すると良いでしょう。食生活の偏りが気になる場合などであれば粉茶タイプのものがオススメです。


リラックス・ストレス軽減

桑の葉にはγ−アミノ酪酸(gamma-aminobutylic acid:通称GABA/ギャバ)が含まれている事が分かっています。GABAはグルタミン酸から生成されるアミノ酸の一種で、人を始めとする哺乳類の中枢神経に存在し抑制系の神経伝達物質として働いています。このためGABAを摂取することで神経系の過度の興奮を抑制したりリラックス効果をもたらすのではないかと考えられおり、ストレスケアやメンタルケア系の健康食品などにも配合されています。

加えて桑の葉茶には神経伝達などに関与しており、不足するとイライラや鬱・不安障害・パニック障害などの発症リスクを高めるとされるカルシウムやマグネシウムなどのミネラルも豊富に含まれています。代謝に関わるビタミンB群など必須栄養素も多く含まれていますから、GABAの摂取と合わせてストレスケアやリラックス効果が期待出来るでしょう。緑茶や抹茶とブレンドすると飲みやすくなりますし、テアニンとの相乗効果も期待できそうですね。


便秘予防・腸内環境改善

桑の葉(マルベリーリーフ)には緑茶の約5倍と言われるほど、食物繊維も多く含まれています。煮出して桑の葉茶として飲用し茶葉の部分を食べない場合は不溶性食物繊維がほとんど茶葉に残ってしまうものの、水溶性食物繊維の補給源としては役立ってくれるでしょう。水溶性食物繊維は水に溶けてゲル化することで便の硬さを調節する働きがあるため、便秘・下痢両方の改善に繋がると考えられています。

また水溶性食物繊維は腸内でビフィズス菌などの善玉菌のエサとなることで善玉菌の活発化・増殖を促し、腸内フローラのバランスを整える働きも期待できます。食物繊維よりも小さい分子構造で小腸の絨毛の奥の老廃物を綺麗にする働きがあるとされるクロロフィル(葉緑素)も含まれていますから、相乗して腸を綺麗に保ち腸内環境を整える手助けにもなるでしょう。腸内環境が整うことからも便秘改善などお腹の調子を整えることに繋がると考えられます。


風邪予防・軽減に

漢方で桑の葉は解熱や鎮咳作用を持つ生薬と考えられ、風邪による発熱や喉の痛み・咳などの治療に用いられることがあると言われています。成分的にそうした働きを持つものが含まれているのかは不明瞭な部分もありますが、栄養価が豊富なこと・腸内環境を整える働きが期待できることから免疫力を高めることに繋がる可能性はあるでしょう。β-カロテンなどのカロテノイドは体内でビタミンAに変換されることで皮膚・粘膜の保持に活用されますから、喉や鼻など呼吸器粘膜の強化も期待できます。


肥満予防・美容サポート

糖質の吸収抑制に

桑の葉茶(マルベリーティー)の成分として近年注目を集めているのが「1-デオキシノジリマイシン(1-deoxynojirimycin:DNJ)」という成分です。DNJはブドウ糖の類似物質とされており、小腸で糖分解酵素α-グルコシダーゼに結合する性質があります。DNJがα-グルコシダーゼと結合することで結果的には糖分解酵素が糖類の分解を行うのを抑制する=小腸からの糖質吸収を抑制してくれる成分であると考えられています。

糖質の吸収が抑制されると食後の血糖値の上昇が穏やかになり、血糖値を安定させるためにインスリンを分泌する膵臓への負担の軽減に繋がります。またDNJにはインスリン分泌を促すのではないかという説もあり、DNJ・DNJを含む桑の葉茶は糖尿病の予防に役立つと考えられています。

糖質の吸収・血糖値の上昇を抑える効果を期待する場合は食事の20~30分前に桑の葉茶を飲むのがベストと言われています。これは食事よりも少し早めに摂取してDNJを糖分解酵素(α-グルコシダーゼ)と結合させておくことで、食事時には糖質のブロック体制が整っているようにするためだとか。食前の摂取が出来なかった場合は食事と一緒に飲んでもある程度の働きは期待できるようです。


ダイエットサポートに

食事によって摂取した糖質が体内に吸収されると、血液中に含まれるブドウ糖の量が増える=血糖値が上昇します。血糖値が急激に上昇し高血糖状態にならないように働くのがインスリンですが、血糖値を一定に保つために血液中のブドウ糖を脂肪細胞に蓄積させる・脂肪分解を抑制するなどの働きを持っています。このため血糖値の急激な上昇を抑えることはインスリン分泌量を抑え、脂肪蓄積抑制や肥満予防に繋がると考えられています。低インシュリンダイエットや糖質制限ダイエットが提唱されるのもこうした働きからでしょう。

桑の葉に含まれているDNJ(1-デオキシノジリマイシン)は糖質分解酵素と結合することで、糖の分解を抑制することで食後の血糖の上昇を抑える働きがあります。加えてシトステロールやスティグマステロールなどのフィシトステロール(植物ステロール)類にも脂質吸収を抑制する働きが期待されていますし、水溶性食物繊維もコレステロールの排出を促す働きがあります。水溶性食物繊維は善玉菌を助けて腸内善玉菌を活発化してくれる存在でもあるので、腸内フローラのバランスが良くなることからも代謝向上(代謝低下予防)に繋がるでしょう。

また分解を阻害された糖質は腸内細菌によって乳酸や酢酸といった有機酸類に分解され、こちらも腸内善玉菌の活動を助けたり便通を促してくれるとも言われていますよ。桑の葉には利尿作用があるとも言われていますし、成分的に見てもカリウムが多いのでむくみの改善にも役立ってくれるでしょう。低インシュリンダイエットに似た状態を作り出してくれること+便秘やむくみを軽減しデトックスにも繋がることから、桑の葉茶(マルベリーリーフティー)は肥満予防やダイエットサポートとしても役立つと考えられています。


抗酸化・抗糖化に

桑の葉には抗酸化作用を持つビタミンやカロテノイド・スーパーオキシドジムターゼ(SOD)酵素などが含まれていると言われています。近年では島根県産業技術センターと島根大学医学部の研究グループによってフラボノイド系ポリフェノールの一種である「ケルセチン-3-マロニルグルコシド(Q3MG)」という成分が含まれていることも発見されており、抗酸化作用の高いアンチエイジング食材ととしても注目されています。

また老化や様々な病気を引き起こす原因として、酸化に加えて近年は“糖化”も注目されています。糖化というのは体内の過剰な糖質がタンパク質と結びつき、変性・劣化してAGEs(糖化最終生成物)という有害物質になってしまうこと。桑の葉に含まれるDNJ(TM)は小腸からの糖質吸収を抑制してくれますから、余計な糖質の吸収・蓄積を抑えることで抗糖化にも繋がる可能性があります。抗酸化作用と抗糖化作用の2つの方面から、桑の葉茶は若々しさや健康をサポートしてくれるのではないかと期待されています。


美肌保持・アンチエイジング

抗酸化物質を豊富に含み、糖質の過剰摂取を軽減する働きが期待されている桑の葉茶(マルベリーティー)は美肌作りのサポートとしても役立つと考えられます。Q3MGなどのフラボノイドやSOD酵素などは酸化を抑止することでシワやシミを予防する働きが期待できるでしょう。コラーゲンや角質のケラチンなども糖化によって劣化してしまいますし、AGEs(糖化最終生成物)は「コゲ物質」とも呼ばれているように茶褐色の物質のため黄くすみの原因にもなります。このため抗酸化・抗糖化が期待できる桑の葉茶は美白や肌のハリ・透明感の維持に繋がると考えられます。

老化予防以外にも、桑の葉茶にはキレイなお肌を保持するために必要なビタミンやミネラルが広く含まれています。肌に必要な栄養素をフォローしてくれることからも、肌荒れや乾燥などの予防に繋がるでしょう。そのほか便秘の改善や腸内フローラのバランスが良くなることからも、肌荒れや吹き出物・くすみなどの軽減に繋がると考えられます。美肌サポートとしてはハイビスカスティーやグァバ茶など抗酸化作用が期待できものとブレンドして使ってみても良さそうですね。


そのほか期待される作用

生活習慣病予防

桑の葉茶(マルベリーティー)に含まれているDNJは血糖値上昇を抑えることで糖尿病予防に繋がるだけではなく、メタボリックシンドロームを予防することで生活習慣病のリスク低減にも繋がると考えられています。またフラボノイドの一種であるQ3MGには悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の低減や抗動脈硬化作用が見られたことが報告されていますし、桑の葉にはSOD酵素やビタミン類などの抗酸化物質も含まれています。

これらの成分が複合して働くことで高血圧・動脈硬化・血栓などの予防にも繋がるでしょう。特に高血圧に関してはナトリウム排出を促すことで血圧を保つカリウムや、血圧降下作用を持つとされるGABAなども含まれているため高い効果が期待されています。ちなみにGABAにもコレステロールや中性脂肪の低減なども期待されていますから、生活習慣病全般の予防や健康維持のために取り入れてみても良いでしょう。


疲労回復・強精

桑の葉茶にはBCAA(イソロイシン、ロイシン、バリン)やアスパラギン酸など疲労軽減に役立つとされるアミノ酸類や、タイシャンに関わるビタミンB群が含まれています。このため単なる栄養補給としてだけではなく、疲労回復のサポートにも効果が期待されています。GABAによるリラックス効果も期待できますので、神経性の疲労軽減にも役立ってくれるでしょう。そのほか強壮・強精作用があるとする説、二日酔いに良いとする説もありますが、これらも栄養補給に適しているという事が大きいようです。

また強壮作用があるとされるお茶はカフェインなどのアルカロイド・刺激物質を含むものが多いですが、桑の葉茶はノンカフェインで刺激物質も含まれていないという点もポイントですね。ただし桑の葉には体を冷やす作用があるとされていますので、冷え性の方は摂取量を控えるか、体を温める作用のあるハーブやショウガなどと組み合わせて摂取した方が良いでしょう。


関節痛などの軽減に

伝統的に桑の葉茶は関節炎など慢性疾患に起因する炎症の緩和にも用いられてきました。2010年に『Phytotherapy Research』にて発表された動物実験では桑の葉抽出物が抗炎症作用を持つ可能性が示唆されています。おそらくこうした抗炎症性はフラボノイド類によるものであると考えられており、フラボノイドが多く含まれていることから抗アレルギー作用があるのではないかという説もあるようです。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

スキンケアに

マルベリー(桑の葉)は入浴剤や手作り化粧品など外用として用いられることはあまりありませんが、肌の状態を整える整肌効果作用や美白作用があるとも言われています。皮膚への利用についてはデータが少ないため注意が必要ですが、クレイと合わせてフェイスパックにするとシミ予防や肌のキメ・状態を整えるのに良いという説もありますよ。

マルベリーリーフ(桑葉茶)の注意事項

  • 稀に腹部膨満感などお腹に不快感を感じる場合があります。
  • 妊娠中や小さいお子さんの摂取についてはデータが少ないため控えたほうが良いでしょう。
  • 白桑(桑葉)は安全に摂取できるハーブとされていますが、ブラックマルベリーの葉は血糖値降下作用が認められているため糖尿病・投薬を受けている方は注意が必要です。