十薬とも呼ばれるほど多様な効果が期待される、馴染みの薬草
日本でも古くから利用されていたドクダミ。お茶として飲用することでむくみ・便秘の緩和やデトックスに役立ち、血流改善・消炎作用などもあることから生活習慣病予防や肌荒れ対策・体質改善にも取り入れられています。また生葉を外用として利用することで皮膚トラブルの緩和や美白・美肌効果などが期待できることからローションや入浴剤などの化粧品成分としても高く評価されています。
どくだみについて
植物紹介:ドクダミ
ドクダミは日本ではヨモギなどと並ぶほど「薬草」として古くから知られている野草です。健康茶・野草茶としても多くの方にも親しまれていますし、おばあちゃんの知恵袋・民間療法でも必ずと言って良いほど登場しますね。肌を整える働きに優れた化粧品原料としても注目され「ドクダミ化粧水(ローション)」などがランキングサイトの上位にランクインしていますね。アトピー性皮膚炎の緩和などに取り入れている方も多く、民間療法・自然療法の入り口とも言える存在かもしれません。
日本ではドクダミというとお茶もしくは化粧水や入浴剤などの化粧品という印象が強いですが、一部地方では天麩羅などに野菜(山菜)として利用することもあります。中国南西部では野菜として、ベトナムでは香草として利用しているようです。
ドクダミの原産地は東アジアとされており、日本では平安時代の薬物書『本草和名』や『和名抄』などに記述が見られることから平安時代以前に伝わっていたと考えられます。日本ではドクダミに殺菌抗菌作用があること知られており、古くから民間療養・民間薬として湿疹などの皮膚炎症、水虫、痔などに対する外用薬代わりに利用されてきました。
ちなみに当時はドクダミではなく“之布岐(シブキ)”と呼ばれていました。江戸時代に編纂された『大和本草』には「馬に用いると10種の効能があることから十薬と呼ぶ」ということ、『和漢三才図会』には「ドクダミは俗称である」ことなどが記されています。現在“十薬”は日本薬局方にも収録されています。
“ドクダミ”という名前の語源は「毒矯み」ですが、その由来としては①ドクダミ独特の臭気が毒を溜めているように感じられたため、②毒を抑える効能があるとされたため、という2つに分かれます。ただし中国語の魚腥草(魚のように生臭い草)やベトナム語のザウザプカー(魚の野菜の葉)、英語のfish mint/herb/wortなど各国で「魚のような独特の芳香」に由来する名前が付けられていることから、独特の臭気に由来するという説のほうが有力のようです。
生の葉は不快感を感じるほど強い臭気を持ちますが加熱・乾燥することで臭いが薄れ、取り入れやすくなります。と言っても好き嫌いがある香りですから、麦茶などとブレンドして飲むという方も多いようです。市販されている「ドクダミ茶」もドクダミブレンドのものと単体のものがありますから、購入時には商品名を確認するようにすると良いでしょう。
基本データ
- 通称
- ドクダミ(蕺草)
- 別名
- ジュウヤク(十薬、重薬)、魚腥草(ギョセイソウ)、地獄蕎麦、Fish mint、Fish herb、bishop’s weed、chameleon plantなど
- 学名
- Houttuynia cordata
- 科名/種類
- ドクダミ科ドクダミ属/多年草
- 花言葉
- 白い追憶、野生
- 誕生花
- 5月15日
- 使用部位
- 全草
- 代表成分
- フラボノイド系ポリフェノール(クエルシトリン、イソクエルシトリン、ルチン)、デカノイルアセトアルデヒド、ミネラル(主にカリウム塩)、葉緑素(クロロフィル)、精油など
- 代表効果
- 利尿、緩下、解毒、血圧降下、血管強化、消炎、強心、疲労回復、抗酸化
【生葉】皮膚細胞再生促進、殺菌、抗菌 - こんな時に
- むくみ、便秘、デトックス、肥満予防、冷え性、血行不良による不調(肩こり・腰痛など)、肌荒れ予防・改善、生活習慣病予防、膀胱炎、胃炎、アレルギー
【外用】美肌・美白、水虫、ニキビ、アトピー性皮膚炎などの皮膚炎症 - おすすめ利用法
- 食用、ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ、浸出油、湿布、手作り化粧品
- ハーブティーの味
- 薬臭さのある独特の香り、味はあっさりしている
- カフェインの有無
- ノンカフェイン
どくだみの栄養・成分・期待できる効果
どくだみ茶
デトックス・美容面への働き
むくみ・高血圧予防に
ドクダミ茶はフラボノイド系ポリフェノールの一種「クエルシトリン」「イソクエルシトリン(ケルセチン)」という成分を含んでおり、これらの成分には高い利尿作用があると考えられています。ちなみにイソクエルシトリンはダンデライオン(たんぽぽ茶)のむくみ解消成分としても注目されている存在です。
またドクダミはカリウムも豊富に含むため、ナトリウム過剰によるむくみの緩和・高血圧の予防改善にも有効とされています。ただし腎機能が低下している方(高齢の方・腎疾患のある方など)は高カリウム血症を引き起こす危険性が示唆されているほどカリウムが多いので、過剰摂取は控えるようにしましょう。むくみ緩和用としては循環系をサポートしてくれるハトムギ茶などとブレンドして飲むのもオススメです。
便秘の改善に
ドクダミに含まれているフラボノイド類(クエルシトリン・イソクエルシトリン)には強い緩下作用があり、便を柔らかくして排便を促してくれます。クロロフィルも食物繊維の1/5000と分子構造が小さいため、小腸の絨毛の奥に溜まった老廃物・有害物質を絡めとり便として排泄させ、腸内環境を改善してくれる働きがあるとされています。
またクエルシトリンには殺菌作用も含まれているため、腸内の悪玉菌・有害物質の発生を抑える働きも期待されています。飲み過ぎると下痢をするとも言われていますが、適量の摂取であれば便秘の改善に高い効果が期待できます。
デトックス・ダイエットサポートに
中医学(漢方)では「どくだみは三毒を消す」と言われているそうです。この三毒というのは遺伝的な問題で生まれ付き持っている“先天の毒”、色々な病気によって受けた“後天の毒”、食べ物や添加物などに含まれている“食毒”のこと。便秘やむくみの改善と合わせて、老廃物や有害物質の排泄を促す働きがあると考えられているため、ドクダミはデトックスティーとしても利用されています。
デトックス・血流の改善などによる新陳代謝向上効果や、クエルシトリンには脂肪蓄積を予防する働きも期待されています。これらの働きからドクダミはスタイルキープやダイエットサポート用の健康茶としても役立つと考えられており、「ドクダミ茶ダイエット」とというダイエット法も提唱されています。ダイエットサポート用としてはプーアルや杜仲茶、サラシアなどとよくブレンドして利用されています。
血行不良・冷え性の緩和に
むくみ改善(利尿)に高い効果が期待されているクエルシトリン・イソクエルシトリンは水分代謝を整えることでも冷えの解消に役立ちますが、抗酸化作用によって血液・血管の状態を整えて血流をスムーズにする働きもあります。このためドクダミは血流改善に有効とされており、血行不良による肩こり・頭痛・腰痛などの緩和にも利用されています。
その他にも酸素の運搬を促進してくれるクロロフィル(葉緑素)、代謝を助ける働きのあるミネラルなどもドクダミには含まれています。これらの成分が代謝による熱生成を高めてくれますし、熱を運ぶための血液循環の改善にも役立つことから冷え性緩和に効果が期待できるでしょう。むくみ改善やデトックス効果も冷え性の改善に繋がります。
美肌作り・皮膚トラブル緩和に
ドクダミ茶は便秘やむくみを改善し有害物質の排泄を促す(デトックス)ことに優れていると考えられています。老廃物や有害物質の排泄が行われることで血液が綺麗になり、ニキビや吹き出物などの肌荒れの予防や緩和に対しても効果が期待されています。綺麗な血液が隅々まで循環することで乾燥肌の改善や透明感の維持などにも役立ってくれるでしょう。
またクエルシトリンやイソクエルシトリンなどは抗酸化物質であるため酸化ダメージによる肌トラブル・肌老化の予防に役立ちますし、毛細血管への血流を改善にすることで肌の新陳代謝を高める働きも期待できます。加えてポリフェノールの一種である「ルチン」にも毛細血管の強化作用がありますし、ビタミンCの吸収促進作用もあります。ビタミンCを含む食事と合わせて摂取したり、柿の葉茶などとブレンドして飲むことで美肌・美白の相乗効果も期待できます。
健康増進・体質改善サポートに
疲労回復・ミネラル補給に
ドクダミはポリフェノールだけではなくカリウム・鉄・亜鉛・マグネシウム・カルシウムなどのミネラルを含んでいます。カリウム以外のミネラルはお茶として多量に浸出されるわけではありませんが、毎日少量ずつ摂取することで食事の不足分のフォローとしては役立ってくれるでしょう。ミネラルの多くは補酵素として酵素の働きを助けることで代謝・細胞やタンパク質の合成などをサポートしています。そのため不足によって疲労回復が遅れたり、疲れやすくなるなどの問題が発生します。
ドクダミ茶だけでミネラルを十分に摂取できるわけではありませんが、補給として役立つこと・デトックス作用や血流改による新陳代謝向上効果も期待できることから疲労回復に役立つお茶とされています。肉体疲労だけではなく、慢性疲労・体のだるさなどの緩和も期待できますし、カリウム量が多いため汗などでカリウムが失われることで起こる夏バテの予防や改善にも役立ってくれます。
膀胱炎など泌尿器炎症に
ドクダミ茶には高い利尿効果があることから、膀胱内の細菌を尿と共に排出させてくれます。この働きから膀胱炎や腎炎などの泌尿器炎症緩和に有効とされており、軽度であればドクダミ茶だけで症状が落ち着くケースも有るようです。
また膀胱炎を起こしやすくなる背景として、血行不良や冷え(体温の低さ)も関係しています。膀胱や尿道など排尿に関わる臓器が冷えた状態だと働きが悪くなる・細菌が繁殖しやすくなるなどのことが指摘されています。ドクダミ茶の血流改善効果によって泌尿器機能正常化や細菌が繁殖しにくくなることが期待できますから、再発予防としても役立つと言われています。
生活習慣病予防
ドクダミに含まれているルチンは血管の弾力の維持や回復に役立ち、血流をスムーズにする働きがあります。またクエルシトリンは血管壁強化にも役立つと考えられていますし、豊富なポリフェノールと相乗して過酸化脂質の生成を抑制することで血液をサラサラの状態に保ってくれます。スムーズな血液循環をサポートすることで動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞などの予防にも役立つと考えられています。
またカリウムなどによる高血圧予防にも役立ちますし、クエルシトリンやイソクエルシトリなどの働きで血糖値降下に役立つことも報告されています。これらのことからドクダミ茶は生活習慣病の予防に対しても有効とされています。
そのほか期待される作用
アレルギー症状の緩和に
抗酸化作用のある成分を多く含むこと、クエルシトリンの持つ消炎作用などからドクダミはアトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー症状を予防・改善する効果が期待されています。老廃物の排泄を促進するデトックス・血液浄化効果が期待できることなどから体質改善用としても有効とされていますし、代謝が高まることで炎症痕が残りにくくなるとする説もあります。
月経トラブル緩和・妊活サポートに
ドクダミ茶は生理痛や月経不順など女性特有の不調の緩和にも利用されてきました。直接的に女性ホルモンに働きかける働きがあるわけではありませんので、血液循環の改善によって体が温まること・子宮機能が正常化することで症状が緩和すると考えられています。利尿作用がありますので生理前のむくみや、むくみ・血行不良などによって悪化しているPMSの諸症状緩和にも効果が期待できるでしょう。
デトックス効果や血液循環促進作用などから生殖機能を整える働きが期待できますし、加えてフラボノイド類(クエルシトリン・イソクエルシトリン)の抗酸化作用で精子や卵子の酸化を防ぐ働きもあると考えられています。これらの働きから妊娠率の維持・向上に効果が期待され、不妊体質の改善・妊活サポート茶としても取り入れられています。
胃の不調緩和に
ドクダミ茶に含まれているクエルシトリンには消炎作用があるため、ストレスによる胃炎や胃潰瘍の改善に高い効果があると考えられています。粘膜の炎症を抑えて治癒を促してくれると言われていますので、暴飲暴食で胃腸が弱っていると感じた時に取り入れてみても良いでしょう。
お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果
生のドクダミ葉は臭気と言って差し支えない香りを持ちますが、この香りの元となっている精油成分「デカノイルアセトアルデヒド」は抗菌・解毒作用を持つほか、消炎・組織再生によって皮膚疾患改善への有効性が報告されています。デカノイルアセトアルデヒドは揮発性ですし、乾燥させることで酸化し抗菌作用が失われてしまいます。クロロフィルも乾燥させると減少してしまうため、スキンケアなど外用として利用する場合は生葉を利用した方が高い効果が期待できます。
水虫・虫刺されケアに
ドクダミの精油成分であるデカノイルアセトアルデヒドの殺菌・抗菌作用は非常に強く、水虫の原因となる白癬菌に対しても有効とされています。殺菌作用に加えて炎症を抑える働きもあることから、虫刺されや汗疹などの痒み止めとしても利用できます。
局部的な使用の場合は生葉を揉んでそのまま患部に貼り付けたり、すり潰したものをカーゼなどで絞ったエキスを塗ると良いと言われています。寝る前などはアルミホイルでドクダミの生葉を包んで蒸し焼きにし、すり潰したものをガーゼに塗って湿布にしておいても良いそう。作って時間が経つとデカノイルアセトアルデヒドが揮発して効果がなくなってしまいますので、アルコールで抽出したドクダミチンキを作っておくと便利です。
スキンケアに
ドクダミに含まれているクロロフィル(葉緑素)は皮膚組織の再生促進や新陳代謝促進・肌のバリア機能向上・毛穴の黒ずみ改善や引き締めなどに役立つと考えられています。加えて精油成分であるデカノイルアセトアルデヒドにも殺菌抗菌効果や抗炎症・皮膚組織再生などの働きがありし、クエルシトリンなどのフラボノイド類による血行促進作用や抗炎症作用が期待できます。
これらの成分が相乗してニキビなど肌トラブルの予防改善、ターンオーバーを促すことで肌の状態を整えシミ・シワ・乾燥・角質化などの改善に役立つとされています。肌の状態を整えること・血行が良くなることから美白効果も期待できるでしょう。肌の再生を促す作用に加え、炎症・かゆみ緩和にも効果が期待でいることからアトピー性皮膚炎のケアとしても取り入れられています。
化粧水として利用する場合、通常はアルコール浸出したものに精製水・保湿剤などを加えて作成します。アルコールが気になる敏感肌の方の場合は、日持ちはしませんが生葉の絞り汁に精製水(お好みで保湿剤)を加えたものを利用する方法もあります。また手軽さを求める場合は効果は薄れますがドクダミ茶をそのままローションとして利用することも出来ますし、パッチテストの最初の段階としても適しています。
ドクダミ風呂に
ドクダミを入浴剤として利用することで、リラックス・肌トラブルの緩和・殺菌・美白・体臭予防など様々な効果が期待できます。乾燥肌・脂性肌・ニキビ肌など肌タイプを選ばずに利用でき、湿疹・かぶれ対策や水虫予防としても取り入れられています。炎症や痒みを防ぐ作用に優れているとされ、アトピー性皮膚炎緩和用入浴剤としてもメジャーな薬湯の1つです。
美肌・皮膚疾患の予防緩和以外にも血行促進やデトックス効果が期待できるとして、ドクダミはダイエット用の入浴剤としても利用されています。湯上り後の保温効果を高める働きもありますし、リラックス効果も期待できますので冷え性の緩和や、寝付きの悪さ・不眠対策としても役立ってくれるでしょう。夏は汗疹対策に、冬は冷え予防になど、一年中役立ってくれる存在です。
ドクダミ風呂は生葉であれば一掴み程度、乾燥葉であれば20~30g程度が一回分の目安とされています。どちらも布袋・ティーパックなどに入れて一度煮だしてから浴槽に入れると効果的です。デイリーに利用する方の場合はドクダミ(よく洗った生葉)を焼酎やホワイトリカーなどに漬け込んでチンキ剤を作り、それを入浴剤として利用する方法もあります。
生葉の方が皮膚へ対しては効果的だとする説もありますが、独特の臭いが気になる場合は茶葉や乾燥させた葉・チンキを利用したほうが香りは弱いでしょう。ドクダミ湯は浴槽やタオル等への着色の可能性がありまので、その日中にお湯は捨てて浴槽を流すようにしましょう。
どくだみの注意事項
- 腎臓・肝臓に疾患がある方、高カリウム血症を起こす可能性のある医薬品を服用中の方は医師に相談のうえ利用有無を決めるようにしてください。
- 妊娠中・授乳中は摂取量に注意が必要です。