蓬(ヨモギ)
健康茶と期待される効果効能紹介

体を温める・代謝向上・美肌など女性に嬉しい作用が沢山

日本で古くから薬草として利用されてきたことから「究極の和製ハーブ」とも呼ばれる蓬(ヨモギ)。よもぎ蒸しなどの影響もあり再び注目が高まっています。抗酸化・抗糖化による健康維持や老化防止効果が期待されるほか、デトックス、貧血・冷え性改善、代謝向上、美肌、月経トラブル緩和など女性に優しい成分を秘めた野草です。

画像:蓬(ヨモギ/Japanese mugwor)

 

蓬(ヨモギ)について

植物紹介:蓬(ヨモギ)

草餅(蓬餅)や天ぷらなど春を告げる食材として、お灸に使う艾(モグサ)の原料や止血剤などの薬草として日本でも古くから利用されてきたヨモギ。使い勝手の良さや万能性から「究極の和製ハーブ」「ハーブの女王」などとも呼ばれています。近年はあまり使われなくなったと言われていましたが、近年韓国の“よもぎ蒸し”などの影響でヨモギの効果が見直されるようになり、女性特有のトラブル緩和や美肌・ダイエット・デトックスなど美容に良いハーブとして注目されています。

ヨモギは英語だとMugwortもしくはJapanese mugwortと呼ばれますが、西洋でハーブとして使われているマグワート(和名オウシュウヨモギ、学名Artemisia vulagaris)とは別種のため注意が必要です。「苦艾」という生薬名で利用されるニガヨモギやタラゴン(エストラゴン)なども同じヨモギ属の植物ですし、ヨモギ属の植物は世界では約250種、日本でも30種以上あるそう。沖縄では「フーチバー」と呼ばれるニシヨモギが料理に利用されてきましたし、北海道の先住民族であるアイヌの人々も風邪や肺炎の治療に蓬の蒸気を吸引していたそうですから、日本全国で古くからヨモギは身近な存在であったと考えられます。

よもぎ食用の起源・歴史はわかっていませんが、どんなところでも生育する生命力の強さから食用・薬用植物として注目されたのではないかと考えられています。日本では奈良時代に成立したと考えられる『万葉集』に蓬が登場するほか、平安中期に書かれた『枕草子』には5月の節句にショウブやヨモギを軒先に飾ることが記されています。平安時代には母子草を使った草餅を厄払いに食べる習慣があったようですが、時代とともにヨモギの草餅へと変化し定着したと考えられています。現在も3月3日(上巳の節句)は桃、5月5日(端午の節句)は菖蒲と蓬で厄を払い子どもの健やかな成長を願う習慣は残っていますね。

中国や韓国、モンゴルなどでも薬草として古くから利用されてきた歴史があり、ヨモギは「東洋を代表的する薬草の1つ」と言われていますが、近縁種を含めるとヨーロッパでも古代から利用されてきた存在です。ヨモギ属の属名のArtemisiaはギリシア神話の女神“アルテミス(Artemis)”が語源とされ、アルテミスの聖草として古代ギリシアでは婦人科系の治療に利用されていたのだとか。

基本データ

通称
蓬(Japanese mugwort)
別名
Japanese mugwort(ジャパニーズマグワート)、餅草(モチグサ)、艾葉(ガイヨウ)、エモギ、モグサ
学名
Artemisia princeps
Artemisia indica var. maximowiczii
科名/種類
キク科ヨモギ属(アルテミシア属)/多年草
花言葉
幸福、平和、夫婦愛、決して離れない
誕生花
2月29日、12月1日
使用部位
葉部
代表成分
クロロフィル(葉緑素)、精油(1,8-シネオール、ツヨン、ピネン、β-カリオフィレンなど)、ビタミン類、タンニン、コリン、食物繊維
代表効果
健胃、整腸、鎮痛、収斂、止血、鎮静、造血、血液循環改善、解毒、代謝促進、消臭、抗菌、抗酸化、美肌
こんな時に
精神安定、リラックス、不眠緩和、貧血、冷え性、悪寒、血行不良、月経不順、更年期障害、PMS(月経前症候群)、デトックス、代謝向上、ダイエットサポート、便秘、老化予防、アンチエイジング、肌荒れ・ニキビ、アトピー性皮膚炎緩和、体臭・口臭予防、風邪予防、解熱
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ、浸出油、湿布、スチーム吸引、手作り化粧品、料理用ハーブ(香辛料)
ハーブティーの味
草餅でお馴染みのヨモギの香り、味は青っぽさ・苦味がある
カフェインの有無
ノンカフェイン

蓬(ヨモギ)の栄養・成分・期待できる効果

よもぎ茶/蓬茶

精神面への働き

精神安定・ストレス対策

ヨモギにはβ-カロテン、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE(α-トコフェロール)などのビタミン類を豊富に含んでいます。中でも脳の中枢神経を正常に保つビタミンB1・神経伝達物質の合成に関わるビタミンB6など、ビタミンB群は神経伝達や精神状態の維持に深く関係している栄養成分ですし、ヨモギにはビタミンB6と共に神経伝達物質の合成に関わるマグネシウム、神経の興奮を鎮めるカルシウムなどのミネラルも含まれています。

神経系を正常に保つために必要な栄養成分の補給が出来ることに加えて、シネオールやピネンなどのヨモギの香りの成分も精神面への働きかけを持つと考えられています。シネオールは鎮静作用によりリラックス状態へと導くと考えられていますし、ピネンは“森林浴の香り”とも言われリフレッシュ・強壮効果があると考えられています。栄養成分と香り成分が相乗することで、ヨモギはストレスを和らげてリラックス状態を作る・気持ちを安定させる働きをもたらすと考えられます。


不眠気味の時にも

ヨモギに含まれる精油成分のシネオールは脳神経を鎮静させることでリラックス作用・安眠作用をもたらすと考えられています。西洋ではラベンダーなどを使ったハーブピローを安眠用に利用しますが、中国では2000年以上前から「蓬枕」が利用されてきたそうです。

日本でもヨモギ枕を始めマットレスなども販売されています。ヨモギを利用した寝具は安眠効果だけではなく抗菌・消臭などの衛生的なメリットがあるのも嬉しいところですね。ほんわりと温かさを感じる方もいらっしゃるようですから、体を温めるという点からも眠りにつきやすくする働きがあると考えられます。


女性に多い不調の緩和に

貧血の予防・改善

ヨモギに含まれるクロロフィルは赤血球中のヘモグロビンと非常によく似た構造をしています。クロロフィルは中心元素が鉄分ではなくマグネシウムなのですが、体内でマグネシウムを切り離し鉄分と結びつくことで赤血球の生成を促す働き(造血作用)があるとされています。またクロロフィルに含まれている有機ゲルマニウムは体の隅々まで酸素を送り届ける働きがあることが認められています。

クロロフィルは赤血球自体の数を増やす働きと、酸素をしっかりと送り届ける働きによって、貧血の改善に高い効果が期待できる成分と考えられています。ヨモギにはこのクロロフィルが含まれているほか、ヘモグロビンに必要とされる鉄分もホウレンソウの3倍以上と非常に多く含まれています。


冷え性の緩和に

ヨモギは貧血の改善をサポートしてくれるクロロフィル・有機ゲルマニウム・鉄分などの成分を含んでいます。血液の不足がなくなることからも冷え性の改善に繋がりますが、加えて血行を促すビタミンE、抗酸化作用によって血液・血管の状態を整えるβ-カロテンやフラボノイド類など、血液循環をサポートする様々な成分も含んでいます。現代の実験でもヨモギは血管を拡張させることで血流改善・冷え性緩和に役立つことが報告されています。

香り成分のシネオールも血行促進作用があるとされていますし、ヨモギのリラックス効果によって副交感神経が活性化し自律神経のバランスが整うことからも欠集の改善が期待できます。筋肉や内臓にしっかりと血液が循環するようになることで代謝の向上も期待できますから、二重三重の働きで冷え性改善効果を発揮すると考えられます。血行不良や冷えが気になる場合にはイチョウ茶、むくみもある場合はハトムギ茶などとブレンドすると良いでしょう。


月経トラブル・更年期障害に

ヨモギは子宮や卵巣の老廃物の排泄を促すことで子宮の機能低下を改善する働きがあると考えられています。また血流を改善することで子宮の冷えを緩和し、正常な機能をサポート・生理痛の緩和に有効されています。加えて女性ホルモンのエストロゲンに似た作用をもつツヨシを含んでいることから、ホルモンバランスを整えることで月経不順の改善にも役立つと考えられています。

またヨモギにはリラックス作用があり気持ちを落ち着けるのに役立つシネオール、女性ホルモン(黄体ホルモン)の血中濃度変化期におけるイライラ・不安・落ち込みなどの緩和効果が期待されるβ-カリオフィレンなどの精油成分が含まれています。女性器の機能を整える働き・ホルモンバランス調整作用と相乗して更年期障害・PMS(月経前症候群)などの緩和にも効果が期待できるでしょう。

月経不順やPMSの緩和であればラズベリーリーフチェストベリー、更年期障害であればセントジョーンズワートシナモンなどと別のハーブと組み合わせてみるのもオススメです。ただし若干の子宮刺激作用があるため妊娠中や授乳中などのデリケードな時期は飲み過ぎ・食べ過ぎに注意する必要があります(※日本のヨモギは妊娠中でも通常量の摂取であれば問題ないと考えられていますが、マグワート/オウシュウヨモギは妊娠中・授乳中の使用はできません)。


美容面での嬉しい働き

デトックス・ダイエットに

ヨモギに含まれているクロロフィルは分子構造が食物繊維の1/5000と非常に小さいことが特徴で、小腸のひだ(絨毛)の奥の方に溜まった汚れを排出し、汚れが吸着しないようにする働きがあります。また体の機能低下の原因となるダイオキシン・鉛・カドミニウムなどの有害物質を吸着し排泄させる性質もあることから、デトックス成分として注目されています。またヨモギの渋み(苦味)の元となるポリフェノールの一種タンニンにも解毒作用があり、クロロフィルと相乗して体内をクリーンに保ってくれると考えられます。

有害物質が排出されることで低下していた代謝を回復する効果も期待できますし、クロロフィル内に含まれている有機ゲルマニウムが酸素を送り込むことで脂肪燃焼を高める働きがあるとも考えられています。ヨモギには代謝に関わるビタミンBなどの栄養素も含まれていますので、代謝を高め太りにくい体質へのサポートにも役立つと考えられています。


便秘の緩和に

ヨモギはホウレンソウの約2倍の食物繊維を含んでいます。よもぎ茶として飲む場合は食物繊維の大半を占める不溶性食物繊維が茶葉部分に残ってしまうため、余すところ無く食物繊維を摂取できるわけではありません。しかし便通改善や腸内で善玉菌のエサとなり腸内フローラ改善に役立つ水溶性食物繊維はある程度摂取できると考えられます。

加えてヨモギ茶には腸内で潤滑油として働くことで便の通りをスムーズにするオレイン酸が含まれていますし、クロロフィルが腸を綺麗な状態に改善してくれることから、腸内フローラの状態が整い腸機能全体の向上にも効果が期待できます。
よもぎ茶の場合、即効性の便秘改善はさほど期待できませんが、穏やかな便通改善・腸内フローラを整えることで便秘をしにくい体質への改善などに役立つと考えられています。


美肌作り・アンチエイジングに

ヨモギはクロロフィルを始めとして、β-カロテンやビタミンEなどのビタミン類、タンニンなどのポリフェノール類と抗酸化成分を含んでいます。これら成分の働きで活性酸素による細胞のダメージを抑制し、シミ・シワ・タルミなどを防いで肌を若々しく保ってくれると考えられます。また近年はヨモギ抽出物に糖化(メイラード反応)によるAGEs生成を抑制する働きがあることが報告され、抗糖化という点からも肌のアンチエイジング効果が期待されています。

またヨモギのデトックス作用はニキビや肌荒れの改善に繋がると考えられていますし、貧血の改善や血行促進によって肌に酸素を栄養を行き渡らせ新陳代謝(ターンオーバー)を促進する・くすみをなくし透明感を保つことにも役立ちます。浄血効果・デトックス効果が高いことからヨモギはアトピー性皮膚炎の緩和・体質改善などにも効果が期待されています。


消臭効果

クロロフィルは血液循環改善やデトックス作用から、腸内腐敗などによる体臭・口臭改善効果があるとされています。加えてヨモギはタンニンや防腐・殺菌効果があるとされる精油成分シオネールやα-ツヨンを含むため口内にいる嫌気性細菌・ワキガ原因菌など悪臭源の抑制、抗酸化成分によって汗や皮脂の酸化を抑制することで加齢臭対策にも役立ってくれるでしょう。


そのほか期待される作用

風邪・インフルエンザ予防に

ヨモギ茶は風邪を引いた時に飲むお茶としても親しまれてきました。体を温める働きがあることや栄養豊富なことから、悪寒や発熱時のケア・風邪の回復を助ける働きがあると考えられます。

またβ-カロテンは免疫力アップに役立つほか体内ビタミンAに変換されることで粘膜を保護してウィルスの侵入を防いでくれますし、クロロフィルを始めとした殺菌作用を保つ成分の働きによって風邪やインフルエンザ予防にも効果が期待できます。


コレステロール低下・がん予防

ヨモギに含まれているクロロフィル(葉緑素)は重金属などの有害物質だけではなく、血液の悪玉コレステロールを吸着して排泄させる働きがあります。動脈壁に沈着したコレステロールも排除することが報告され、高脂血症をはじめ動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞などの予防にも役立つのではないかと考えられています。

そのほかクロロフィルには染色体異常を抑制する働きがあることなども報告されており、がん細胞は一種の染色体異常と考えられていることからガン細胞の発症を抑える(抗癌)働きなどにも効果が期待されています。またヨモギの香りに含まれるピネンにも動物実験における報告などからガン増殖抑制の可能性が考えられているそうです。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

よもぎ風呂(蓬湯)に

ヨモギというとヨモギの蒸気を椅子の穴から吸引する「よもぎ蒸し(座浴)」の印象が強い方もいるかもしれませんが、菖蒲湯と並んで蓬湯も日本では古くから薬湯として利用されてきました。

期待できる効果としては第一に血行促進作用。冷え性の改善だけではなく肩こり・腰痛・神経痛などの緩和にも有効とされています。その他にヨモギの香りが充満することによるリラックス効果、湿疹・かぶれ・アトピー性皮膚炎などの肌トラブルの緩和や美肌効果、新陳代謝促進や発汗作用によるダイエット効果、体臭予防効果なども期待できます。また体が温まることと、一日の緊張をリラックスさせることから寝付きを良くするとも言われています。

ヨモギ風呂は生でも乾燥ヨモギでも作れますが、生葉を使う場合は細く刻んだものを予め煮出してから浴槽へ入れる・乾燥葉の場合はティーパックや布袋に入れてそのまま湯船に入れるという方法が多いようです。市販されているエキス・入浴剤ではなく葉を使う場合、タオル等に着色する場合があるので気をつけてください。


スキンケアに

ヨモギはクロロフィルやフラボノイド、タンニンなど抗酸化作用を含む成分を含んでいることから、外側からもお肌の酸化抑制に働きかけると考えられます。またヨモギエキスには糖化してしまったAGEsを分解排泄し排泄しやすくする効果があること、モギ抽出物を配合した化粧品を肌に塗布することで肌の弾力・柔軟性・黄色化の改善が期待出来ることがポーラ化成工業から発表されています。

その他にもクロロフィルによる保湿・殺菌作用、タンニンの収斂作用が相乗することでヨモギはニキビ予防にも有効とされています。シオネールなど精油成分の働きからは皮膚炎症を抑える働き(消炎作用)が期待できますし、血行を促す働きもありますので乾燥肌・脂性肌・トラブル肌・年齢肌など様々なタイプのスキンケアとして利用できると考えられます。

またクロロフィルはビタミンCとの相乗効果で美白効果が期待されていますし、タンニンにもメラニンを産生するヒト黒色腫メラノーマ細胞の増殖を抑制する働きが報告されています。美白効果を期待する場合は柿の葉ローズヒップなどビタミンCが豊富なものとブレンドするとより効果が期待できるでしょう。

手作りコスメに利用する場合は煮出すもしくはホワイトリカーなどで浸出させたものを希釈した化粧水が良く作られていますが、乾燥ヨモギを粉末にして水で練ったものをパックとして利用しても肌を整える・ニキビ鎮静・美白などに良いと言われています。

蓬(ヨモギ)の注意事項

  • キク科植物にアレルギーがある方は使用に注意が必要です。
  • 少量の摂取であれば問題ないと考えられていますが、妊娠中の大量摂取・飲用は控えるようにしましょう。