フェヌグリーク
ハーブティーと期待される効果効能紹介

性トラブル改善サポートや生活習慣病予防として注目されるハーブ

カレーの香辛料の一つでもあるフェヌグリーク。日本では馴染みのないハーブでしたが近年ジオスゲニンというホルモン前駆体(DHEA)類似物質を含むことが注目され、女性であれば母乳分泌サポートやバストアップに、男性用としては精力増強用などに取り入れられています。そのほかガラクトマンナンなどを含むことから血糖値の上昇を抑える働きが報告されており、糖尿病予防や肥満予防効果も期待されています。

画像:フェヌグリーク

 

フェヌグリークについて

植物紹介:フェヌグリーク(コロハ)

カレーなどの香辛料に使わえる、焦げた砂糖のような香りが特徴のフェヌグリーク。日本ではハーブやスパイス類にお詳しい方・エスニック料理が好きという方以外はあまり馴染みのない存在でしたが、近年はバストアップ効果が期待できると報じられたり、バストケアサプリメントに配合されていることもありますので「聞いたことがある」という女性もいらっしゃるかもしれません。ブレンドテイーやサプリメントはさておき、フェヌグリークの代表的な活用方法というと“カレー”が挙げられます。じっくり加熱することで香りだけではなく味にも甘さが出るので、コク・深みを付けるにも良いのだとか。

カレースパイスという印象が強いですが、ジャムやクッキーなどの焼き菓子にも合いますよ。その特徴的な甘い香りからフェヌグリーク抽出エキスはタバコの香り付け・メープルシロップの風味を引き立たてる添加物などにも使われていそう。またインド・中近東地域で種子部分はハーブ(香辛料)としてだけではなく豆としても使われており、アフガニスタンではスイーツにも使われています。それ以外の地域でもたんぱく質の豊富な食材としてベジタリアン・ヴィーガンの方に取り入れられているようです。ちなみにインドなどでは葉も葉菜・ハーブとして利用されているそう。日本でも種子から発芽させたスプラウトを“もやし”として取り入れている方もいらっしゃるようです。

豆の一つとして扱われることもある通り、フェヌグリークはマメ科に分類される植物で原産は地中海地方とされています。とは言えかなり古い時代に中近東・インド方面やアフリカへと伝わっていたと考えられており、古代エジプトの墓からも発見されています。古代ギリシア人やローマ人も食用・薬用として利用していたほか、かなり古い時代から牧草用としての栽培も行われていたと考えられており“最も古くから栽培されていた植物”の一つにも数えられています。フェヌグリークという呼び名や学名(種子名)は「ギリシアの干し草」を意味する古いラテン語に由来するのだそう。

フェヌグリークは古くから民間医薬として内服で滋養強壮・消化器トラブル・催乳(母乳の出を良くする)・丹精機能を高めるなど、外用で怪我の手当や皮膚炎症のケアにと幅広く利用されてきました。インドのアーユルヴェーダでも取り入れられていますし、インドでは母乳の出を良くするハーブとして授乳期の女性だけではなく乳牛にも使うことがあるそう。歴史は比較的浅いものの中国医学(漢方)でも生薬「胡盧巴(フルバ)」として利用されています。現代でもドイツの薬用植物評価委員会(コミッションE)でも消化器系への作用が認められていますし、近年は脂肪蓄積予防や血糖値降下への関与が報告されたことで現在も様々な研究がなされているそうです。

基本データ

通称
フェヌグリーク(Fenugreek seed)
別名
コロハ(胡盧巴)、methi seed(メッチ/メティ―シード)
学名
Trigonella foenum-graecum
科名/種類
マメ科フェヌグリーク属/一年草
花言葉
誕生花
使用部位
種子
代表成分
ステロイド系サポニン(ジオスゲニン)、フラボノイド類、アルカロイド(ゲンチアニン、トリゴネリンなど)、タンパク質、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維、精油成分(クマリンなど)
代表効果
消化促進、整腸、滋養強壮、血糖値上昇抑制、コレステロール低下、催乳、子宮刺激、精力増強、抗炎症、鎮痛、脂肪蓄積抑制、去痰
こんな時に
食欲不振、消化不良、便秘、下痢、疲労回復、生活習慣病(動脈硬化・糖尿病など)予防、母乳分泌サポート、更年期障害、月経トラブル(PMS・生理痛・月経不順)、不妊、男性機能低下、肥満予防、咳・気管支炎
おすすめ利用法
料理用ハーブ・香辛料、食用(※若芽)、ハーブティー、ハーブチンキ、湿布、手作り化粧品、キャリアオイル
ハーブティーの味
カラメルに似た甘苦い香り、味は苦みがある
カフェインの有無
ノンカフェイン

フェヌグリークの栄養・成分・期待できる効果

フェヌグリークティー(コロハ茶)

軽い不調のケア用に

食欲不振・消化不良に

フェヌグリークは西洋で伝統的に食欲増進や消化促進のハーブとして用いられており、コミッションEにおいても消化不良や食欲増進に対する有効性が認められています。インド伝統医学アーユルヴェーダでも消化を助ける薬草として利用されており、カレーに使われるのも風味の問題だけではなく消化を良くするという意味もあると言われています。

ただしフェヌグリークを大量摂取した場合や体質に合わない場合は胃粘膜の炎症や逆流・消化不良・軽度の腹部膨満などを起こす可能性が指摘されています。元々消化器系の疾患や炎症がある方は使用を控えるようにし、胃腸に不快感があった場合は使用を停止するようにしてください。豆の一つとして食用されているものですから香辛料として使ったりハーブティーにして適量飲む程度であれば心配は無いと言われていますが、食べ過ぎ・飲み過ぎには注意するようにしましょう。


整腸・便秘改善に

フェヌグリークには多糖類の一種で水溶性食物繊維に分類されるガラクトマンナンが多く含まれています。ガラクトマンナンは便の水分量を調整することで便秘や下痢を改善する整腸作用があり、特定保健用食品(トクホ)でも「お腹の調子を整える」食品として認められています。フェヌグリークそのものについては作用が認められているわけではありませんが、ガラクトマンナンを含む=整腸作用が期待できるハーブとして、特に便秘の改善に取り入れられています。


滋養強壮・疲労回復に

ヨーロッパ・インド・中国など各地の伝統医療の中で、フェヌグリークは滋養強壮に役立つハーブとして取り入れられてきました。フェヌグリークが栄養補給や強壮などに役立つとされる理由としてはリジンやトリプトファンなどのアミノ酸を含むこと・胃腸機能の働きを助けること、加えて近年はフェヌグリークサポニンの構成物質に「ジオスゲニン(ディオスニゲニン)」という成分が含まれていることも注目されています。

ジオスゲニンは山芋や自然薯の健康成分として紹介されることも多い成分で、若返りホルモンとも呼ばれる「デヒトロエピアンドロステロン(DHEA)」と構造が似ていることから、DHEAの代替品としての作用が期待されています。DHEAは性ホルモンや副腎皮質ホルモン・成長ホルモンなどの前駆物質として働くことが認められています。このためジオスゲニンを含む食材を摂取することで各種ホルモンの不足が緩和される=疲労回復や体調が整うのではないかと考えられています。


生活習慣病予防に

フェヌグリークには含まれているサポニンは悪玉コレステロール低下や、血栓や動脈硬化の元となる過酸化脂質の生成を抑制する働きがあります。またガラクトマンナンは食物繊維として働きますから、余分なコレステロールの排出を促してくれます。この働きから血液循環をスムーズにして高血圧や動脈硬化などの生活習慣病予防に効果が期待できますし、過酸化脂質量を抑えることで肝臓への負担を軽減し肝機能向上にも繋がると考えられています。

加えてガラクトマンナンは水を含んでゲル化することで、摂取した食事(糖質)の吸収を抑える働きも認められています。糖質の吸収が穏やかになることで血糖値の急激な上昇を抑えることになりますし、サポニンにも血糖値上昇抑制効果が期待されています。このためフェヌグリークは血糖値急上昇=インスリン分泌を抑え、膵臓疲労によって起こるⅡ型糖尿病予防にも効果が期待されています。


ホルモン関係の不調に

フェヌグリークに含まれている「ジオスゲニン」というステロイドサポニンは、DHEA(デヒトロエピアンドロステロン)類似物質としての働きが期待されています。プロゲステロン(黄体ホルモン)物質として紹介されることもありますがDHEAは“ホルモンの母”とも呼ばれる存在で、プロゲステロンだけではなくエストロゲンやテストステロンなど様々なホルモンの前駆体として働くと考えられています。


母乳分泌促進・バストアップに

上でもご紹介したように古くからインドなどでフェヌグリークは母乳分泌のサポート取り入れられてきたハーブです。これはジオスゲニンが体内で女性ホルモンへと変換されることで母乳分泌が高まるのではないかと考えられています。しかしフェヌグリークによる母乳量増加については摂取しなくても違いはないという報告もあり、はっきりとしていません。時代や土地などを考えるとホルモンがどうというよりは「栄養がある・滋養強壮効果によるもの」という可能性もあります。あくまでも食品なので無理をして摂取せず、体質に合うか・自分にとって良いかで選ぶと良いでしょう。サプリやハーブティーとしてはよくフェンネルレモングラスと組み合わせて使われています。

また近年は欧米を中心にジオスゲニン摂取で女性ホルモンの分泌促進が期待できることから、バストアップに役立つのではないかと美容面からも注目されています。バストアップと言うと大豆イソフラボンやプエラリアミリフィカなど植物性“エストロゲン”の方が取り上げられる機会が多いですが、これはエストロゲンが乳腺の増加・バストへの脂肪蓄積に関係するホルモンとされているため。対してプロゲステロンは乳腺を発達させる働きがあると考えられており、バストアップにはどちらか一方のホルモン分泌を促すのではなく、女性ホルモンの分泌バランスを整えることが大切とされています。この点フェヌグリーク(ジオスゲニン)はどちらのホルモンにもなる可能性がありますから、適量を取り入れてみても良いでしょう。


更年期障害・軽減に

様々なホルモンの原料となるDHEA(デヒトロエピアンドロステロン)は年齢とともに減少し、60代では20代の約30%まで分泌量が減少することが報告されています。更年期障害はエストロゲンの分泌低下が主原因と言われていますから、エストロゲンの元となるDHEAの減少も関係が深いと考えられます。

フェヌグリークに含まれているジオスゲニンはDHEA類似物質として、ホルモン前駆体としての働きが期待されています。このためエストロゲンの急激な減少を穏やかにすることで更年期障害やの軽減にも役立つのではないかと考えられています。またエストロゲンによるカルシウム保持機能が低下することで発症リスクが高まる骨粗鬆症予防にも役立つと考えられており、動物実験ではエストロゲンやDHEAと同様の効果が見られたとの報告もなされています。


月経トラブル軽減・妊活に

更年期障害がエストロゲン不足であるのに対し、生理前の不調PMS(月経前症候群)や月経不順・生理痛などの場合はエストロゲン過剰(プロゲステロン不足)の可能性もあると指摘されています。フィトエストロゲンも実際のエストロゲンよりは作用が弱いためホルモンバランスを整える方向に働くとは考えられていますが、摂取量によってはホルモンバランスが崩れる・エストロゲン依存性腫瘍などのリスクを高める可能性もあります。ジオスゲニンは特定のホルモン様物質ではなくホルモン前駆体(DHEA)類似物質として様々なホルモンの原料になるため、ホルモンとしての直接的な働きかけはない=副作用の心配が少ないと考えられています。

報告件数などの問題からはっきりとしていない点も多いですが、必要に応じてホルモンバランスを整えることで女性特有の不調緩和に役立つのではないかと期待されています。月経痛の緩和であればカモミールサフラワー、PMSの緩和であればラズベリーリーフチェストツリーなどにブレンドして取り入れてみても良いのではないでしょうか。またホルモンバランスや月経リズムが整える働きが期待できることから、フェヌグリークは妊娠しやすい体作り(妊活)サポート用のティー・サブリメントにも配合されています。


男性の生殖能力向上に

女性ホルモン前駆体と紹介されることもあるジオスゲニンですが、ホルモン前駆体(DHEA)類似物質ですから「テストステロン」などの男性ホルモンに分化する可能性もあります。即効性は期待できませんが副作用の心配が少ないので、男性でも妊活用などに効果が期待できるでしょう。
フェヌグリーク抽出物の摂取で性欲が向上する・テストロンレベルが増加するなどの報告もなされており、勃起障害などの改善用としても効果が期待されています。インドでも伝統的に男性の精力増強剤として利用されてきたのだとか。日本でも男性機能のサポート用としてマカと組み合わせたサプリメントなどが販売されています。


そのほか期待される作用

冷え性・関節痛の緩和に

漢方の中でフェヌグリーク(胡芦巴)は体を温める作用が強い「大温」の性質を持つ生薬に分類されています。ハーブ療法やアーユルヴェーダのように胃腸薬・消化促進剤としては利用されませんが、冷えから起こる腹痛の軽減用として用いられる事があるようです。

身体を温める働きが期待できることから冷え性の改善や、風邪気味・悪寒がするときなどにも適していると考えられています。加えてフェヌグリークには鎮痛・抗炎症作用期待できることから、冷えにより傷みが悪化する関節炎やリウマチなどの痛みの緩和にも用いられています。冷えや冷えによる痛みの緩和用としては、ジンジャーターメリックなどと組み合わせて利用すると良いようです。


肥満予防・美肌維持

動物実験ではフェヌグリークに脂肪蓄積抑制効果が見られたという報告もなされており、ダイエットサポートティーとしても効果が期待されています。フェヌグリークは糖の吸収を抑える働きがあるガラクトマンナンを含む他、サポニンも腸で吸収されたブドウ糖が脂肪と結合・脂肪として蓄えられるのを防ぐ働きがあると考えられています。糖を脂肪として蓄えるインスリンの過剰分泌を抑える(血糖値の急激な上昇を抑える)働きと合わせて、特に糖質摂取が多い方に適していそうですね。

ジオスゲニンは筋肉増強効果が期待されていますから、運動を取り入れたダイエットと組み合わせて使うと良いという説もあります。そのほかホルモンバランスが整う・エストロゲン分泌が増えるとして乾燥肌対策や美白など美肌作りにも効果が期待されています。


認知症予防に

アルツハイマー病患者は血中DHEAが低いという報告がされており、DHEAとアルツハイマーの発症についての関係が注目されています。アルツハイマー患者に対してのDHEA投与では有意義な改善は見られたかったとする報告もあり、治療への有効性についてはさほど期待できないという見解が主流なようです。しかし予防という点ではDHEAの減少を抑えることが役立つのではないかとする説もあります。

フェヌグリークにはDHEA類似物質であるジオスゲニンが含まれていますし、その他にも脳神経細胞成長作用が期待されているアルカロイドのトリゴネリン・血栓を予防するサポニンなどが含まれています。このためアルツハイマー症や認知症予防にも効果が期待されています。


咳・気管支炎に

フェヌグリークは去痰・抗炎症作用が期待され、民間療法として咳・痰・気管支炎の緩和にも使われています。古くは結核の治療にも使われたことがあるのだとか。成分的に見てもサポニンや粘液質などの働きで去痰、呼吸器系の保護や炎症軽減に役立つとされています。


フェヌグリークティーの淹れ方について

フェヌグリークを使ってお茶を淹れる場合は、ホール(豆状)のフェヌグリークを砕くか潰すかするとより成分を浸出しやすくなります。軽くローストしてから砕くようにすると甘い香りが引き立ちます。
カップ一杯あたり大さじ1程度・熱湯を注いで5分程度の蒸らしが目安と言われていますが、お好みあわせて調節するようにしましょう。シングルでしっかり淹れてしまと苦味がありますので、ブレンドティーを作ったり紅茶ベースで少量フェヌグリークを加える程度の方が飲みやすいと思います。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

炎症の緩和用に

フェヌグリークは抗炎症作用を持つハーブとして外用でも利用されてきました。浸出液(ティー)を布につけて湿布として利用することで筋肉痛や打撲、関節痛・神経痛・痛風などの痛みの軽減に役立つとされています。湿疹やニキビには浸出液をコットンにつけて置くと良いと言われていますが、逆に炎症を起こす原因になる可能性もありますので事前にパッチテストを行うようにしましょう。

スキンケアに

日本ではあまり見かけませんが、アーユルヴェーダ系の化粧品ではフェヌグリーク抽出物(コロハ種子エキス)が皮膚コンディショニング剤として配合されているようです。独特の甘苦い香りがあることから天然由来の香料としても使われているそう。抗炎症効果のほか皮膚洗浄効果も期待できるとして石鹸やシャンプーなどにも配合されています。

そのほかフェヌグリークパウダーをキャリアオイルに混ぜてパックにすると肌のアンチエイジングに、ヨーグルトと混ぜてマッサージすると穏やかなピーリング効果・毛穴の黒ずみ除去などに良いとされています。欧米ではフェヌグリークティーで洗顔するという方法もあるようです。日本ではほとんど外用・化粧品用として利用されていないものですから、試す場合はしっかりとパッチテストをしてください。

フェヌグリークの注意事項

  • 妊娠中の方は使用を避けましょう。
  • マメ科植物にアレルギーのある方は使用に注意が必要です。
  • 持病がある方・医薬品を処方されている方は医師もしくは薬剤師に使用可否を確認してください。
  • サポニン含有量が多いため胃腸不調を引き起こす可能性があります。また外用利用においても長期間の利用は皮膚に悪影響を与える可能性が指摘されていますから、継続期間は長くても1ヶ月以内にし、お休みの期間を入れるようにしてください。