糖尿病予防への有効性が報告
山菜「タラの芽」でお馴染みのタラノキですが、葉や皮を使ったタラの葉茶(たらの木茶)も古くから民間医薬として親しまれてきた存在です。タラに含まれているサポニンに血糖値上昇抑制効果がある可能性が報告されているほか、様々な作用が期待され各医療機関によって研究が行われています。ポリフェノールやサポニンを含むことからダイエットやアンチエイジングなど美容茶としても注目されつつあります。
タラの葉について
植物紹介:タラノキ
タラノキは日本では北海道~九州まで、そのほか東アジアに広く分布する落葉樹です。最も有名な部位としてはタラの芽やタランボと呼ばれるタラノキの若芽。ほのかな苦味と独特の香り・コクがあることから「(春の)山菜の王様」とも称され、春を告げる食材としても愛されていますね。山菜にはあまり馴染みが無くともタラの芽の天ぷらは知っている・食べたことがある、という方も少なくないのではないでしょうか。
タラの芽は栄養価が高く、日本でも強壮・強精効果があると言う方もいらっしゃるほど。タラノキの特徴というと幹に鋭いトゲがあることが挙げられますが、これは人間だけではなく動物にも狙われてしまうので身を守るために進化したのだとか。タラノキという呼び名の語源もトゲの古語がタラであるとか、棘が多く手を痛めやすい木=テアラシノキから変化したのではないかという説があるそうです。余談ですがタラノキの変種にはメダラと呼ばれるトゲの少ないタイプもあり、それに対してトゲが多いタラノキをオダラやノダラと呼ぶこともあります。
日本では古くからタラの芽を野菜・山菜として食べる以外に、タラの樹皮や根皮などを伝統医薬としても使用してきました。樹皮を楤木皮(ソウボクヒ)、根皮は楤根皮(ソウコンピ/タラコンピ)と呼んで生薬としても利用されています。強壮や腎臓系の疾患に良いと言われていたそうで、今でも民間療法で糖尿病のセルフケアとして取り入れている方もいらっしゃるのだとか。同じく果実やタラの葉などにも薬効があると考えられており、現在に至るまで野草茶・健康茶の一種として飲まれてきました。
近年では成分分析や研究が進められ、タラに含まれているサポニンに血糖値上昇抑制効果がある可能性も報告されています。伝統医薬・民間薬として使われてきた効果が科学的に証明されたとも言えるかもしれません。またポリフェノールも含まれていることからスタイルキープやアンチエイジングなど、美容面の効果を期待して取り入れている方も増えているのだとか。現在も各医療機関によって効果や効能についての研究が進められているそうです。
基本データ
- 通称
- タラの葉(楤の葉)
- 別名
- タラノキ(楤木/桵木)、Japanese angelica-tree(ジャパニーズ・アンジェリカ・ツリー)
- 学名
- Aralia elata
- 科名/種類
- ウコギ科タラノキ属/落葉低木
- 花言葉
- 強い態度、他を寄せつけない
- 誕生花(樹)
- 4月10日
- 使用部位
- 葉(樹皮・トゲを含むものも有)
- 代表成分
- ポリフェノール、サポニン、β-シトステロール、食物繊維
- 代表効果
- 整腸、抗酸化、血糖値上昇抑制、強肝、抗炎症、抗菌
- こんな時に
- 胃腸機能強化、便秘、老化・生活習慣病(高血圧、動脈硬化、糖尿病)予防、肝炎予防、花粉症などのアレルギー軽減、風邪予防、美肌
- おすすめ利用法
- 健康茶
- お茶の味
- 少し苦味があるがクセはなく、香り・味共にスッキリとした印象
- カフェインの有無
- ノンカフェイン
タラの葉の栄養・成分・期待できる効果
タラの葉茶
日々の健康維持に
胃腸機能のサポートに
タラの葉茶は古くから健胃・整腸効果を持つお茶と考えられ、民間療法の中で取り入れられてきました。タラの含まれているどの成分の働きかけかは明らかにされていませんが、サポニンが粘液に作用して胃腸を丈夫にすると言われています。またポリフェノールやサポニンが抗酸化や血流改善をサポートする・サポニンの殺菌作用で有害菌を減少してくれるなどの働きからも胃腸機能向上が期待できるでしょう。タラの葉茶には食物繊維も含まれていますから、整腸・便秘改善にも良いと言われています。
アンチエイジング(抗酸化)に
タラの葉にはポリフェノールが含まれていることから、身体の酸化を抑制することでアンチエイジング(老化予防)にも効果が期待されています。加えて抗酸化作用は血中脂質が酸化してできる過酸化脂質の生成を防ぐことで血管を守り、動脈硬化や血栓・心筋梗塞などの予防にも繋がると考えられます。サポニンにも過酸化脂質生成抑制や悪玉コレステロールの低減作用が期待されています。
スムーズな血流が守られることで心臓の負担も減り、高血圧予防にも役立つと考えられています。ちなみにタラの茎(幹)に生えているトゲだけを使ったお茶もあり、こちらは高血圧に良いと言われているそうです。ただし副作用として胃腸障害を起こす可能性も指摘されていますので、自己判断での服用は避けたほうが良いでしょう。健康茶としては副作用の心配が低いタラの葉茶もしくはタラノキ茶の方が適しています。
糖尿病予防・悪化防止に
タラの葉や皮などに含まれているサポニンには、肝臓や筋肉組織がグルコース(血糖)を取り込むよう促進する働きがあると考えられています。糖尿病は食事によって上がった血糖値をインスリンが正常値へと戻せず、血糖値が高いままの状態が続く状態を指します。生活習慣病にカテゴライズされている2型糖尿病はインスリン分泌低下・インスリンの効きが弱くなる(インスリン抵抗性)ことで発症すると考えられています。タラ葉茶に含まれるサポニンはインスリンと同じような働きを持つと考えられることから、糖尿病の予防に役立のではないかと注目されています。
ラットを使ったブドウ糖負荷試験では血糖値上昇の抑制が見られた事も報告されています。しかし膵臓β細胞に障害を与えた糖尿病モデルには効果が認められなかったとの報告もあります、治療ではなく“予防”もしくは悪化防止という位置づけで考えられているようです。悪化を予防するという面では、タラの葉茶には抗酸化作用を持つポリフェノールも含まれていますから相乗して糖尿病合併症予防にも役立ってくれそうですね。糖の吸収を抑制する桑の葉茶などと組み合わせてみても良いでしょう。
肝臓サポートに
タラの葉茶に含まれているサポニンの中には、甘草などに含まれているグリチルリチンと酷似した構造を持つものがあると言われています。グリチルリチンは肝臓病の薬にも使われていることから、タラの葉茶も肝炎などの予防効果が期待されています。またグリチルリチンは強肝作用が期待されている成分ですし、他サポニン類やポリフェノール類の抗酸化作用と合わせて肝機能向上をサポートしてくれるでしょう。
また実験ではタラの葉茶を飲んだ後にアルコールを飲むと、飲まない場合よりもアルコール濃度が低くなることも報告されており、アルコール分解酵素の働きを助ける働きも期待できるのではないかと言われています。二日酔い対策として取り入れてみても良いかもしれません。
そのほか期待される作用
アレルギーの軽減に
グリチルリチンには強い抗ヒスタミン・抗アレルギー作用があるとされ、花粉症やアトピーなどのアレルギー症状軽減効果が期待されています。タラの葉茶に含まれているサポニンはグリチルリチンと似た働きを持つことから、同様にアレルギーの軽減に役立つのでは無いかと考えられています。またアレルギー反応が起こると炎症部位に活性酸素が発生し、炎症の悪化を引き起こすという説もあります。タラの葉茶には抗酸化物質も含まれていますから、活性酸素抑制という面からもアレルギー症状の悪化を予防に繋がるでしょう。
風邪予防・ケアに
サポニンは殺菌・抗菌作用が認められている成分であり、ナチュラルキラー細胞活発化など免疫機能への働きかけも報告されています。タラに含まれるサポニンと構造が似ていると言われるグリチルリチンは免疫機能向上に有効とされている成分でもありますから、タラの葉茶も免疫力向上や風邪予防に効果が期待されています。
肥満予防に
タラの葉茶に含まれているサポニンには脂肪消化酵素(リパーゼ)に働きかけ、脂肪吸収を抑える働きもあると言われています。またサポニンの中にはブドウ糖と脂質の結合を抑制し、摂取した糖質が脂肪として蓄積されるのを抑制する働きを持つものもあります。このためタラの葉茶もサポニンにはグルコース(血糖)の取り込みを促進させるだけではなく、脂肪吸収・蓄積抑制効果が期待されています。
加えて抗酸化作用から血流改善や代謝促進などに、食物繊維から便秘改善にも繋がると考えられることから、メタボ予防・ダイエットサポートなどに取り入れられる事も増えているようです。むくみやすい方であればハトムギ茶・脂肪が気になる方であればグァバや明日葉などどブレンドして飲むのもオススメです。
美肌作り・保持に
ポリフェノールを含み抗酸化作用があることから、タラの葉茶は美肌作り・肌のアンチエイジングにも役立つお茶とされています。紫外線やストレス等によって起こるシワ・シミ・たるみなどの肌老化予防や、過酸化脂質が原因とされる“大人ニキビ”予防などに役立ってくれるでしょう。
タラの葉の注意事項
- 妊娠中・授乳中の方、医薬品を服用の方は医師に相談の上で利用するようにしましょう。