大豆茶(豆茶)
健康茶と期待される効果効能紹介

半端に余ってしまった乾燥大豆の利用にも

日本では豆そのものだけではなく豆腐や納豆などの加工品・調味料である醤油や味噌の原料としても多用される大豆。大豆レシチンやサポニンなど肥満・生活習慣病予防効果が期待される成分が含まれていること、大豆イソフラボンによる女性ホルモンサポートが期待できることから健康食材としても最注目されています。豆そのものを食べる方が栄養摂取効率は良いですが、半端に乾燥大豆が余ってしまった時などに軽く焙煎してお茶にする事も出来ます。

画像:大豆(ダイズ)

 

大豆(ダイズ)について

植物紹介:大豆

大豆は「畑の肉」とも呼ばれる、ミラクルフードの一つとして世界的に注目されている食材。日本では豆そのものとして食べることは多くない場合でも、豆腐や納豆などの加工品・調味料である醤油や味噌の原料として食生活に欠かせない存在ですね。日本からヨーロッパに伝えられたことから英名が“Soya bean(醤油の豆)”と名付けられたとも言われていますが、原産地は日本だけではなく東アジアの広範囲とされています。日本ほか東アジアの各地で自生していたツルマメが栽培化されることで大豆が確立されていったと考えられています。日本では縄文時代ころと見られる出土例もあり、大豆起源地の中でも古いグループなのではないかと言われていますよ。

同じく古くから大豆を食用・栽培していたとされる中国でも紀元前1世紀の『氾勝之書』という書物に大豆の重要性が、6世紀頃記されたとされる農書『斎民要術』には発酵を含めた大豆の加工法が記載されているそうです。日本と中国の行き来が盛んになる奈良時代頃になると仏教と共に味噌・現在の醤油の元と言われる穀醤など大豆の加工方法が伝えられ、日本独自の大豆文化形成のための下地が出来上がっていきます。平安時代頃までは黒大豆を筆頭に薬用食材・高級食材として扱われていましたが、室町時代頃になると大豆生産量が増えたことで農民による自家製味噌の製造も行われていたそうですから、かなり身近な食材へと変化していたと言えるでしょう。

室町から江戸初期にかけては味噌以外にも豆腐や醤油などの大豆加工品が広まっていった時期であり、現在の私達が口にするものと近い状態になっていました。ヨーロッパには18世紀・アメリカには19世紀頃に大豆が伝わったと言われていますが、19世紀ころまでは飼料用として以外ほとんど注目されていなかったようです。日本でも開国によって肉を食べる習慣が広まったこと・戦後の洋食普及などによって、調味料や豆腐や揚げ加工品は食べても大豆そのものを食べることは減っていったと考えられています。しかし20世紀後半頃からは世界中で健康志向が高まったことからタンパク質含有量が高く栄養豊富な健康食として脚光を浴びるようになります。

日本では大豆イソフラボンのエストロゲン様作用が報じられ大ブームとなった時期もあり、大豆や豆乳を使った商品も多く流通するようになりました。お惣菜などでサラダやスープなどに使われることも増えていますね。欧米ではベリタリアンの方やダイエッターの方向けの豆を使った肉の代用品(肉もどき)「大豆ミート(ソイミート/ベジミート)」も支持されているようです。食材としての利用が多く、また豆乳が飲料として使われていることもあり、大豆(黄大豆)はアントシアニン系色素を含み種衣が黒い“黒大豆(黒豆)”大豆から豆乳を搾る際に出来る“おから”のように「お茶」用として使われることは少ない存在。豆そのものを食べたり豆乳を飲むなどした方が栄養摂取効率は良いですが、半端に乾燥大豆が余ってしまった時などに軽く焙煎して使ってみても良いのではないでしょうか。

基本データ

通称
大豆(ダイズ)
別名
ソイビーン(Soybean/Soya bean)、黄大豆
学名
Glycine max
科名/種類
マメ科ダイズ属/一年草
花言葉
可能性は無限大、親睦、必ず訪れる幸せ
誕生花
使用部位
種子
代表成分
脂質(レシチン)、フラボノイド類(大豆イソフラボン)、食物繊維、オリゴ糖、ビタミン類、ミネラル類、サポニン
代表効果
コレステロール低下、肝機能向上、血流改善、代謝向上、ホルモンバランス調整(エストロゲン様)、緩下、整腸、免疫力向上、脳活性化
こんな時に
動脈硬化・脂肪肝・生活習慣病予防、血行不良、冷え性、むくみ、風邪・インフルエンザ予防、更年期障害、骨粗鬆症予防、女性領域の不調(月経不順・PMSなど)、便秘、美肌・美髪、肥満予防
おすすめ利用法
食用、健康茶、キャリアオイル
お茶の味
クセの少ない炒り豆の香ばしい風味、味はやや薄い
カフェインの有無
ノンカフェイン

大豆(ダイズ)の栄養・成分・期待できる効果

大豆茶(豆茶)

毎日の健康サポートに

生活習慣病予防に

健康食材として注目されている大豆には健康効果が報告されている成分がいくつかありますが、その一つに大豆サポニン(ソヤサポニン)があります。サポニンはエグみ・苦味の元とも言われている成分ですが、抗酸化作用によって脂質の酸化によって出来る過酸化脂質の生成を抑制する働きを持つと考えられることから健康維持にも役立つと考えられています。大豆サポニンを投与した実験では総コレステロール・中性脂肪値の減少が見られたという報告もあり、悪玉(LDL)コレステロール減少への有効性も示唆されています。

加えて大豆に含まれているリン脂質の一種「レシチン(大豆レシチン)」にも脂質の代謝を活発にさせる働きがあり血中脂質(コレステロールや中性脂肪)を減少させる働きが報告されています。レシチンとサポニンは水と油の両方に溶ける特性があり、乳化剤のような形で働くとも言われています。こうした働きからレシチンとサポニンによって血液や血管を健やかに保つ働きが期待されており、動脈硬化や高血圧予防を始めとした生活習慣病の予防をサポートしてくれると考えられています。


肝臓の健康サポートに

レシチンには肝臓細胞(クッパー細胞・多核細胞)を増加させる働きも報告されています。また構成成分に含まれているコリンは肝臓での脂質代謝時に必要とされる成分でもあります。これらの働きからレチシンは肝機能向上や、脂肪代謝を促すことで脂肪肝・肝硬変の予防に役立つと考えられています。

サポニンも中性脂肪やコレステロールなどの脂質が酸化されることで出来る、過酸化脂質の生成を抑制する働きが認められています。エストロゲン作用が注目される大豆イソフラボンもフラボノイド系ポリフェノールに分類される成分ですから、抗酸化作用によって過酸化脂質生成を抑制してくれると考えられます。過酸化脂質の増加は肝臓に負担をかけ肝機能障害のリスクを高めると言われていますから、レシチンの働きと複合して肝臓の保護・機能向上効果が期待できるでしょう。


血行不良・むくみに

血流関係のサポートとしてはアントシアニンを含む黒豆茶が使われることの方が多いですが、大豆茶の場合もレシチンやサポニンが血管や血液をきれいに保ちスムーズな血液循環を保持することから、大豆茶は血行不良による肩こりなどの症状・冷え性の改善に対しても効果が期待されています。血行促進効果が期待されるイチョウ葉茶や、より直接的に体を温めたい場合には生姜などと組み合わせるのもおすすめです。

また大豆はカリウム含有量が非常に多い食材であり、カリウムは水分にも溶け出すため味の濃い食事などナトリウム過多状態が原因となるむくみの軽減にも効果が期待できます。レシチンやサポニンによる血液循環の改善からもむくみ、特に循環機能低下の可能性が高い下半身のむくみ軽減に繋がるでしょう。


免疫力アップ・風邪予防に

食材に含まれているサポニンのいくつかには免疫機能の一つである「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」を活性化させることで免疫力向上効果を持つ可能性があることが報告されています。サポニンはエグみ成分でもあるため多すぎると摂取しにくいことに加え、過剰に摂取した場合は細胞膜を破壊して赤血球を壊す溶血作用などの副作用が指摘されていますが、大豆サポニンには毒性がなく副作用の心配が少ないとも言われています。

レシチンやサポニンなどの抗酸化物質によって血流が整うことからも、体を温め免疫力向上に繋がる可能性があります。大豆をお茶にして数杯飲む場合であればサポニン摂取量自体も多くはありませんし、温かいお茶として飲むことで内側から身体を温めることにもなります。こうした働きから大豆茶やおから茶は風邪やインフルエンザが気になる時期のサポートとしても役立ってくれると考えられます。ビタミンCが豊富な柿の葉茶や、呼吸器系の不調緩和に役立つリコリス(甘草)などとブレンドする際のベースとしても利用しやすいでしょう。


女性・美容に嬉しい働きも期待

更年期障害・骨粗鬆症予防に

大豆に含まれている成分として、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きを持つ「大豆イソフラボン」を連想する方も少なくないでしょう。実際には大豆イソフラボンと呼ばれる成分があるわけではなくイソフラボン類の総称で、ゲニステイン・ダイゼインなどの女性ホルモン(エストロゲン)と似た構造を持つ成分が含まれています。こうした成分がエストロゲンをサポートしてくれるため、加齢に伴ってエストロゲン分泌量が低下することで起こる更年期障害の予防や軽減に役立つと考えられています。

またエストロゲン分泌量が減少すると骨にカルシウムを蓄える力が低下してしまい、更年期~閉経後の女性は骨粗鬆症の発症リスクが高まることも指摘されています。このためエストロゲン様作用を持つ大豆イソフラボンは骨粗鬆症の予防効果も期待されています。細かくなっているおから茶の方が大豆イソフラボンの摂取効率が良いという見解もありますが、原材料として見ると豆乳を搾った後に残るおからよりも大豆のほうが多くなっています。お茶として利用する場合は出し殻に残る分もありますのでどちらにせよ摂取量はさほど多くないと考えられますが、過剰摂取による悪影響を心配せず補給出来るのは嬉しいところですね。


月経トラブルの軽減に

エストロゲンと似た作用が期待されている大豆イソフラボンですが、フィトエストロゲン(植物性ホルモン)は本来のエストロゲンよりも作用が弱いという性質があります。若い女性がホルモンバランスの乱れから月経トラブルや生理前症候群(PMS)などを起こす場合はエストロゲン過剰という可能性もありますが、作用の弱いフィトエストロゲンがエストロゲン受容体へ入り混むことで全体的なエストロゲンの働きを弱めることにも繋がります。

もちろんエストロゲンが不足している場合はフォローする形で働く考えられますから、大豆イソフラボンなどのフィトエストロゲンは“ホルモンバランスを整える”働きがあるのではないかとも考えられています。そのため大豆や黒豆などはエストロゲン不足による更年期障害だけではなく、生理不順・生理痛・PMSなど様々なホルモンバランスの乱れに起因する女性のトラブルの緩和にも効果が期待されています。


美肌・美髪の維持に

エストロゲンは“美肌ホルモン”とも呼ばれている存在で、肌の弾力やハリの元であるコラーゲン生成を促す働きがあると考えられています。またコラーゲンは頭皮にも存在し髪の毛の艶やコシを保つ・抜け毛を防ぐなどの働きもあるとして、近年は薄毛対策などでも注目されていいます。コラーゲンそのものを摂取しても体内でアミノ酸に分解されてしまいますから、コラーゲン生成力を高めるエストロゲンを減らさないことで肌や髪を若々しい状態に保ちやすくしてくれるでしょう。

大豆イソフラボンはエストロゲン様作用が期待されるほか、抗酸化物質としても働いてくれますから肌のアンチエイジングにも役立つと考えられます。加えて大豆にはレシチンやサポニンという、スムーズな血液循環をサポートしてくれる成分が含まれています。お茶として摂取できる分には限度がありますが、大豆そのものはビタミンやミネラルが豊富な食材でもあります。このため酸素や栄養分を体の隅々にまで行き渡らせることで、肌や髪の状態を健やかに保ってくれるでしょう。そのほかレシチンには皮膚保護作用があるとする説もありますよ。


そのほか期待される作用

便秘・肥満予防に

大豆は食物繊維やオリゴ糖を豊富に含む食材です。大豆そのものの食物繊維としてみると不溶性食物繊維が多いですが、お茶の場合は水分に溶け出した水溶性食物繊維の補給が主になると考えられます。水溶性食物繊維は水を含んでゲル化することで便の硬さを調節したり、善玉菌のエサになり腸内フローラのバランスを整えてくれる成分。お茶から摂取できる量は少ないものの、同じく腸内環境改善効果が期待できるオリゴ糖と合わせて便通改善・腸内フローラ改善をサポートしてくれるでしょう。

加えて水溶性食物繊維は水を含んでゲル化する性質から、同時期に食べた食材の消化・吸収スピードをゆっくりにすることで血糖値の急激な上昇を抑える働きも認められています。大豆の場合はレシチン+サポニンの働きで血流が改善されるこによる基礎代謝向上も期待できますし、サポニンはブドウ糖と体内の脂肪の結合を防いで体脂肪蓄積を抑制する可能性も示唆されている成分。こうした成分をまとめて補給できることから肥満予防やダイエットサポートとしても役立つのではないかと考えられています。

ちなみにキッコーマンさんからは「食後の血糖値が気になる方に」としてトクホ認定の『焙煎大豆茶』が発売されていますが、こちらは食物繊維(難消化性デキストリン)が配合されている商品となっています。通常の大豆茶はそこまでの効果は期待できないと考えられますので、大豆茶=肥満予防・血糖値上昇を抑えるとは思わない方が確実。あくまでも健康をサポートしてくれる可能性がある飲料と考えておきましょう。


認知症の予防に

レシチンは脳の情報伝達物質アセチルコリンの原料として利用されるため、神経伝達物質合成を促進し脳の機能を高める=記憶力や集中力を高める働きが期待されています。レシチンの摂取は老人性認知症の予防・改善にも有効とされていますし、アルツハイマー病予防にも効果が期待されています。

認知症の予防については大豆レシチンよりも卵黄レシチンの方が高い効果が期待されていますが、大豆・おからもレチシン補給現として記憶力アップや認知症予防に役立つと考えられています。またサポニンとの複合効果で血流改善にも役立ってくれますから、脳血管性認知症予防にも効果が期待できるでしょう。


大豆茶の作り方

大豆茶はおから茶や黒豆茶のように市販されているものは少なく、手作りするという方が多くなっています。栄養補給を考えると“きなこ”を溶いて飲むなどのほうが効率が良いと考えられますが、料理用に乾燥大豆を買ったものの余ってしまった時などに試してみると良いかもしれません。味・香りが弱めでクセもないので自家製ブレンド茶作りなどにも役立ちますよ。

簡単な大豆茶の作り方としては

  1. 乾燥大豆(1杯分につき大さじ1程度)を耐熱容器に入れる。
  2. 電子レンジで皮が破れ香ばしい香りがするまで加熱する。
  3. コップ1杯分の熱湯を注ぎ、蓋をして5分程度蒸らす。

という手順でがあります。

より本格的な方法としては外皮が破れて香ばしい香りがするまでフライパンなどで焙煎する、という方法もあります。こちらはまとめて炒って保存容器に入れておけば、熱湯を注いで蒸らすだけで飲むことも出来ますよ。より成分を出したい場合には細かく砕いてからお湯を注ぐようにすると良いでしょう。
一度お茶を出した後の大豆は“戻しした状態”に近いので、そのままお料理に使うことも出来ます。カレーや麻婆豆腐・チリコンカンなどに加えたり、細かく砕いたものであればひき肉のカサ増しのような形で使うのもオススメです。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

スキンケアに

大豆そのものを使ってスキンケア用品を手作りされることはほとんどありませんが、大豆もしくは豆乳由来の大豆イソフラボンは化粧水やクリームなどの原料として配合されています。大豆イソフラボンの外用利用にはニキビやシミのケアに良い・抑毛効果があるなどの説がありますが、実際のところ効果についてはデータが少なく「可能性がある」程度という見解が強いそう。

また食用としては賛否両論ある大豆オイルですが、こちらもアミノ酸やビタミン含有量が多い事から化粧品油・キャリアオイルとして利用する方もいらっしゃるようです。オイルですから保湿作用が期待できるほか、エラスチンの劣化を抑制する(エラスチン破壊酵素エラスターゼの働きを抑制する)・回復を促す可能性も報告されていることから注目度が高まっているようです。

大豆の注意事項

  • ホルモン治療薬や避妊薬を服用中の方、乳がんなどエストロゲン依存性悪性腫瘍もしくは疾患等がある方は摂取の可否を医師に確認しましょう。
  • 過剰摂取はホルモンバランスを崩す・アレルギーを起こすなど悪影響となる可能性があります。飲用は多くても1日3杯程度にしましょう。
  • マメ科植物にアレルギーがある方は注意が必要です。
  • 大豆アレルギーの方は摂取を避けましょう。