春の七草の一つとしても知られる、身近な野草
日本の広範囲で見かけることの出来るハコベ。鳥の餌代わりに利用されていたことからヒヨコグサやチックウィード(chickweed)とも呼ばれています。日本では春の七草の一つとしても知られ、かつては野菜感覚で食べられる野草としても身近な存在であったそう。内服・外用共に民間医療の中でも多用されてきた存在で、現在でもむくみや便秘の改善、デトックス・浄血に効果が期待できる健康食材(健康茶)として利用されています。
ハコベ/チックウィードについて
植物紹介:コハコベ
春先に可愛らしい小さな花を咲かせるハコベ。日本の到るところで見かけることが出来る野草・雑草の一つであり、ヨーロッパや北アメリカなどにも帰化植物として定着しているそう。寒帯~熱帯地であれば世界中で見かけることの出来る植物の一つですね。ちなみに日本でヒヨコグサやスズメグサ・英名でChickenwortやchickweedと呼ばれるのもニワトリや小鳥の餌として使われるていた為だとか。欧米では飼料用や庭草として栽培されることもありますが、繁殖力が高く他の植物の成長を妨げるため穀物畑などでは駆除対象とされる雑草でもあります。
日本でハコベは食べられる野草・春の七草の一つとしても知られています。春の七草は「セリ(芹)・ナズナ(薺)・スズナ(菘)・スズシロ(蘿蔔)・ホトケノザ(仏の座)・ゴギョウ(御形)・ハコベラ(繁縷)」で、呼び名は若干違いますがこのハコベラというのがハコベのこと。現在の春の七草・七草粥は鎌倉時代頃に庶民に親しみがある野草で、縁起の良い形や名前のものから選ばれたと言われています。現在でもハコベはお味噌汁の具やお浸し・和え物・天ぷらなどに葉野菜として利用されていますが、古くから食用として利用されてきたことがうかがえますね。
植物としてはナデシコ科ハコベ属に分類されており、広義での“ハコベ”はハコベ属の植物全体の総称としても使われています。ハコベ属の植物は日本国内だけで約18種類・世界規模では120種類程度と種類が多いですが、単にハコベと言った場合にはコハコベのことを指すことが多いと言われています。春の七草などは野菜のような感覚で利用されたり、ハーブとして利用されるのも主にコハコベです。
ちなみにハコベ属の学名Stellariaはラテン語で星を意味する“stella(ステラ)”が語源とされており、花が星の形をしているために命名されたと言われています。白い花びらは10枚あるように見えますが、深い切れ込みが入っているだけで5枚。10枚の花びらが均等に並んでいるように見えるもの・裂けた2片が寄り添うタイプ・Y字に避けており一枚の花弁が分かりやすいタイプと色々ありますよ。和名ハコベの語源には様々な説がありますが、蔓延るという言葉と何らかの関係があるのではないかという説が有力だそう。
食べられる野草・野菜としても親しまれているハコベ(コハコベ)ですが、古くから各地の民間医療で薬代わりとして利用されてきた植物でもあります。民間療法の中では胃腸の不調改善・ハコベの絞り汁と汁を混ぜた“ハコベ塩”が歯磨き粉代わりに使用されてきましたし、かつては生薬「繁縷(はんろう/ばんろう)」として利尿や浄血などに利用されていたこともあるそう。現在では民間療法上の効能などはデータが不十分であるため認められていないものが多いですが、今なお民間療法や健康茶として利用され栄養価の高さから一部では食材としても見直されつつあると言われています。内服・外用どちらにも利用されているハーブでもありますので、身近な植物を活用してみたい方は取り入れてみても良いかもしれません。
基本データ
- 通称
- ハコベ(繁縷/蘩蔞)
- 別名
- コハコベ(小繁縷)、ヒヨコグサ(Chickenwort)、チックウィード/コモン・チックウィード(Common chickweed)
- 学名
- Stellaria media
- 科名/種類
- ナデシコ科ハコベ属/一年草(越年草)
- 花言葉
- 愛らしい、追憶、初恋の思い出
- 誕生花
- 1月30日
- 使用部位
- 全草(主に葉・茎)
- 代表成分
- ビタミン類、ミネラル類、フラボノイド、サポニン、クマリン、葉緑素、食物繊維
- 代表効果
- 殺菌、利尿、緩下、血液浄化、血圧降下、高コレステロール(※外用で収斂・消炎)
- こんな時に
- むくみ、尿路感染症、便秘、血液循環改善、デトックス、疲労回復、高血圧・動脈硬化予防、貧血予防、風邪予防
- おすすめ利用法
- 食用、健康茶、ハーバルバス、ハーブチンキ、湿布、手作り化粧品、
- お茶の味
- 草と土を連想させる野草っぽい香り、味はグリーン系でやや甘みがある
- カフェインの有無
- ノンカフェイン
ハコベ/チックウィードの栄養・成分・期待できる効果
ハコベ茶
デトックスのサポートに
むくみ・尿路感染症に
ハコベはかつて腎臓関係の不調やむくみに有効な薬草として、民間医療の中で使用されていたと言われています。成分的に見てもナトリウム排出を促すことで利尿作用を持つカリウム・体液循環をサポートしてくれるマグネシウムなどのミネラルが含まれていますし、サポニンも利尿効果を持つ成分と考えられています。クマリンも血液循環を整える事によってむくみ改善効果を持つと考えられていますから、相乗してむくみ軽減をサポートしてくれるでしょう。またサポニンには殺菌・抗菌作用もあるため、利尿効果と合わせて膀胱炎などの尿路感染症予防に役立つという説もありますよ。
便秘予防・軽減に
ハコベには食物繊維と葉緑素が豊富に含まれているため、便秘の改善にも役立つと考えられています。お茶として摂取する場合はどの程度“水分(茶)”部分に溶け出すかは定かではありませんが、ハコベを煎じたものは伝統的に穏やかな緩下剤としても用いられてきたと言われていますので便通改善サポートが期待できるでしょう。
また葉緑素(クロロフィル)は分子構造が食物繊維の1/5000と非常に小さいことが特徴で、小腸のひだ(絨毛)の奥の方に溜まった汚れを排出し、汚れが吸着しないようにする働きがあるとされています。ダイオキシン・鉛・カドミニウムなどの有害物質を吸着し排泄させる働きが期待されていることから、デトックス成分としても注目されています。このためハコベは単に便通を促すだけではなく、腸を綺麗に保つ手助けをしてくれる可能性もあると考えられます。
血行促進・デトックスに
ハコベは民間医療の中で“浄血作用を持つ薬草(ハーブ)”として利用されてきた存在でもあります。有効性については未知数ですが、成分としては過酸化脂質の生成を抑制するサポニンなどの抗酸化物質が含まれていますので、血管や血液の状態を綺麗に保つサポートをしてくれると考えられます。クマリンも抗血液凝固作用(血液を固まりにくくする働き)があり、血栓予防に有効とされていますから複合効果が期待できるでしょう。
こうした成分の働きによって血液循環が良くなること、むくみ・便秘が改善することから、体内の老廃物の排出促進にも繋がると考えられます。このためデトックスサポートとして、体を内側からきれいな状態にすることで体質改善などにも役立つのではないかと期待されています。ハコベが春の七草に選ばれたのも血を綺麗にする・デトックス効果があったからではないかという説もあるそうですよ。
健康維持のサポートに
疲労回復・滋養強壮
ハコベそのものはビタミン類・ミネラル類を広く含む栄養価の高い食材です。お茶として飲む場合は水に溶け出さず茶葉(出がらし)に残るものもありますが、ある程度の栄養補給に繋がると考えられることから体力をつけたい時にも適した存在とされています。また血液循環が良くなること・老廃物の排出が促される働きから、疲労蓄積の予防や疲労回復促進にも繋がるでしょう。
そのほかハコベは葉緑素を含むため胃の粘膜の保護・修復作用を持つ、消化促進に良いとも言われています。消化器系のサポートや栄養補給としては葉から浸出されたお茶を飲むよりも、生葉の絞り汁やミキサーで粉砕してグリーンスムージーのような形で取り入れたほうが効果的でしょう。
高血圧・動脈硬化予防
ハコベには血液凝固を抑制するクマリン・抗酸化作用によって過酸化脂質の生成を防ぎ正常な血液循環サポートするサポニンやフラボノイドなどが含まれています。このため血液をサラサラに保ち、血流悪化や過酸化脂質の蓄積によって起こる血栓・動脈硬化の予防にも効果が期待されています。ナトリウムの排出を促してくれるカリウムも含まれていますので、血圧が気になる方のサポートにも役立ってくれるでしょう。葉緑素にはコレステロールの低減作用があるとする説もありますから、血圧やコレステロール値が気になる方は取り入れてみても良いかもしれません。
貧血予防・改善
ハコベに含まれている葉緑素(クロロフィル)には有機ゲルマニウムが含まれており、体の隅々まで酸素を送り届ける働きがあると考えられることから貧血の改善に効果が期待されています。またクロロフィルは赤血球中のヘモグロビンと非常によく似た構造をしているという特徴もあります。クロロフィルは中心元素が鉄分ではなくマグネシウムなのですが、体内でマグネシウムを切り離し鉄分と結びつくことで赤血球の生成を促す働き(造血作用)があるという説もあります。
このためクロロフィルは赤血球自体の数を増やす働きと、酸素をしっかりと送り届ける働きによって、貧血の改善に高い効果が期待できる成分と考えられています。ハコベには鉄分も多く含まれているため貧血改善にも有効な食材と言えますし、“血の道を司る食物”として女性の不調に良いとされてきたのも浄血作用だけではなく貧血改善効果も関係していたのかもしれません。ただし鉄分はお茶として飲む場合は水分にほとんど溶け出さないという難点がありますから、鉄欠乏性貧血の方であれば健康茶として飲むよりも野菜として食べたほうが効果的でしょう。
風邪予防・呼吸器トラブル軽減に
サポニンの持つ殺菌作用は尿路感染症予防だけではなく、風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症予防にも役立つと考えられます。また葉緑素にも殺菌作用があることが報告されていますし、ハコベには体内でビタミンAとして働いてくれるβ-カロテンも含まれています。ビタミンAは皮膚や粘膜などの強化に利用される成分のため、呼吸器粘膜を丈夫にしてウィルスの侵入を防ぐことにも繋がります。
そのほか期待される作用
ハコベの葉を煎じたものは血を綺麗にする働きがあることから母乳分泌を促す・スムーズにすると考えられ、かつては産後の女性のサポートとしても利用されていたと言われています。しかし現在は妊娠中・授乳中の使用は避けるべきハーブという見解が主流となっていますので、自己判断での摂取は控えるようにした方が良いでしょう。
そのほかハコベは動悸・息切れ・気管支炎の軽減、リウマチや関節炎の痛み緩和などにも役立つと言われています。ただし上記の紹介の中でも触れたように、お茶として摂取する場合は水に溶け出さずほとんどが茶葉に残ってしまう栄養素も少なくありません。巷で言われている効能には根拠がハッキリしていないものもありますし、お茶として飲んだ場合に有効とされる理由である栄養素を補給できない可能性もあります。飲料(食品)ですので過度な期待はせず、健康サポートにも一役買ってくれる可能性がある程度と捉えるようにして下さい。
お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果
口腔ケアに
ハコベの生葉を絞った汁に塩を加えて炒った“ハコベ塩”は歯茎の痛みや歯槽膿漏に対する民間療法として長く利用されてきました。歯磨き粉代わりに利用したり、直接歯茎に塗るようにすると良いそう。ハコベに含まれている葉緑素などの殺菌作用を保つ成分と塩の殺菌作用の相乗効果が期待できること、塩の働きで歯茎を引き締める働きが期待されています。歯茎の出血にも良いと言われていますが、手軽に様々な効果の歯磨き粉が変える現在ではあまり利用されることはありません。
肌トラブルのケアに
かつてハコベは皮膚炎や湿疹などの手当にも使われていたと言われています。切り傷などにも利用されていたのは自然界の界面活性剤と称され、石鹸のように汚れを落とす働きのあるサポニンを含んでいた関係も少なくないと考えられますが、収斂作用や消炎作用を持つとする説もあります。
利用法は生葉を揉んで患部に当てるというものから、ホワイトリカーなどに漬け込んでチンキにしてローションやクリームを作る方まで様々。ただし逆に皮膚を刺激して炎症を起こしてしまう可能性もありますから、使用前には炎症部位ではない部分でしっかりとパッチテストを行うようにして下さい。
入浴剤の代わりに
ハコベは入浴剤としても利用することができ、殺菌作用から皮膚を健康に保つ働きがあるとされています。また肌に潤いを与える働きが期待できることもあり、市販の入浴剤にも天然由来成分として配合されています。そのほか皮膚のかゆみ軽減に役立つ、血行促進によって体を温めることで女性特有の不調やリウマチなどの痛み軽減に良いとする説もあります。
少し青臭いような独特の香りがありますが、この香りが気にならない・好きという方であればお庭や家の近くなどに生えているのを見つけたら採取しておいても良いかもしれません。入浴剤としては生葉・乾燥させたものどちらも使えます。
ハコベ/チックウィードの注意事項
- 妊娠中・授乳中の使用は避けましょう。
- 採取して利用する場合は、なるべく空気のキレイなところのものを使うようにしましょう。
- アレルギーのある方は利用に注意が必要です。