【レッドクローバー】
原料植物、ハーブティーに期待される効果効能

大豆の10~20倍のイソフラボンを含む植物として注目される

レッドクローバーは和名をアカツメクサという、クローバーの一種。牧草として世界中に広まった植物ですが、古代ローマの時代から薬用ハーブとして利用されてきたという側面もあります。近年はエストロゲン様作用が期待できるイソフラボン類を含んていることが注目され、更年期障害や骨粗鬆症予防などへの有効性が研究されています。女性サポート系の健康食品にも使われていますが、効果は認められないという研究報告もあるため注意。

レッドクローバーのイメージ画像

レッドクローバーとは

植物紹介:レッドクローバー

ダイゼインやゲニステインなどのイソフラボン類を豊富に含むことが報告され、女性領域のサポートに役立つ可能性があると各国で注目されているレッドクローバー。日本でも近年は更年期障害やPMS(月経前症候群)のセルフケア用として、レッドクローバーを使用したハーブティーやサプリメントなどの健康食品が販売されていますね。ハーブや健康補助食品の中で名前を見かける機会が増えた植物の一つですが、実はレッドクローバーは日本でも見かけることが出来る野草でもあります。花や茎葉は食用も可能で、葉を茹でて食べたり、花に砂糖入れて煮詰めてジャムを作ったりすることもあるのだとか。

そんなレッドクローバーはマメ科シャジクソウ属(Trifolium)に分類される多年草。クローバーと言われると幸運のシンボル“四つ葉のクローバー”を想像しますが、クローバー(Clover)という英語はシャジクソウ属を総称する言葉です。日本で最もポピュラーなクローバーはシロツメクサ。レッドクローバーは花が赤~紫よりのピンク色をしていることが多いため、和名ではムラサキツメクサもしくはアカツメクサと呼ばれています。と言っても稀に白花を咲かせる株もあるようですし、紫詰草の白花変異を固定した園芸種=雪花詰草(セッカツメクサ)というものも存在しています。花の色だけではなく、シロツメクサと比べると大柄なこともアカツメクサ=レッドクローバーの特徴です。ちなみに日本にレッドクローバーが持ち込まれたのは明治頃、シロツメクサと共に牧草に適した植物として導入されたと推測されています。

現在はシロツメクサ・アカツメクサ共に日本全国に帰化していますし、同様に飼料作物もしくは被覆作物として持ち込まれたアメリカやオーストラリアでも帰化しているのだとか。それもそのはず、原産地のヨーロッパでは先史時代(約5000年以上昔)から牧草として用いられていたという歴史がある植物でもあります。レッドクローバーの種子名pratenseもラテン語の「牧場に見られる・牧草」という言葉に由来していますから、人々の移動と共に牧草として世界中に広まっていったという見解も説得力がありますよね。欧米ではレッドクローバーの花と葉を調理の付け合せ、日本で言う食用菊のような感覚でも使用されてきたそうですから、牧草用としてのほかに非常食・民間薬的な意味合いもあったのかもしれません。

日本に導入されたのはごく最近ですが、レッドクローバーはヨーロッパからアジアにかけての地域で古くから親しまれてきた植物。古代ローマ帝国期には薬用として咳止め・痰切りなどに利用されてきたという説もありますし、インドの伝統医療(アーユルヴェーダ)でも鎮静・鎮痙剤や皮膚治療薬として利用されてきました。また、ジプシーと呼ばれる移動型民族の人々は健康促進と精神安定に役立つ強壮ハーブとして活用していたという逸話も。また、食用・薬用目的だけではなく、レッドクローバーを宗教・神秘的な象徴と長く愛されてきた植物でもあります。クローバーですからね。旧約聖書にも何度も登場していますし、中世には3片の葉から「神・キリスト・精霊」の三位一体と関連付蹴られたことで悪霊避けのお守りにも使われたそう。四葉のクローバーも、キリスト教以前から現在に至るまで「希望・幸運のシンボル」として特別な存在として大切にされていますよね。

基本データ

通称
レッドクローバー(Red clover)
別名
紫詰草(ムラサキツメクサ)、赤詰草(アカツメクサ)、赤クローバー、パープルクローバー(purple clover)
学名
Trifolium pratense
科名/種類
マメ科シャジクソウ属/多年草
花言葉
勤勉、実直、快活、豊かな愛、陽気な心
誕生花
4月7日、4月18日、5月24日、6月26日など
使用部位
地上部(花、葉)
代表成分
フラボノイド類(イソフラボン:ダイゼイン、ゲニステイン、フォルモノネチン、バイオカニンAなど)、シアン配糖体、サポニン、クマリン、ミネラル類
代表効果
エストロゲン様、抗酸化、抗炎症、抗菌、去痰、血液浄化、血行促進、利尿
こんな時に
更年期障害に伴う諸症状、閉経後の骨粗鬆症予防、PMS(月経前症候群)、月経不順、むくみ、薄毛予防、美肌
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーブチンキ、湿布、手作り化粧品
ハーブティーの味
やや甘みのある草の香り、味は烏龍茶を薄めたような印象
カフェインの有無
ノンカフェイン

レッドクローバーの成分と作用

レッドクローバーティーに期待される効果

女性領域でのサポートに

エストロゲン様成分を含む

レッドクローバーは女性ホルモンの1つであるエストロゲンと似た作用を持つイソフラボン類を豊富に含むことが報告されており、その含有量が大豆の10~20倍という説もあります。少量ではあるものの大豆と同じくエストロゲン作用を持つダイゼインやゲニステインなどのイソフラボンが含まれていることに加え、レッドクローバーの特徴成分として注目されているフォルモノネチン(formononetin/ホルモノネチンとも)やバイオカニンA(biochannin-A among)というイソフラボン類は選択型エストロゲン調整物質としての作用=エストロゲンの分泌バランスを調整する働きも期待されています。

『Botanical Medicine for Women’s Health』にはレッドクローバー抽出物を使用したin vitro試験ではエストロゲンおよびプロゲステロンの活性が見られたことが掲載されていますし、植物性エストロゲンの作用については様々な研究報告がなされています。しかしレッドクローバー抽出物を使用した製剤であってもプラセボ以上の有効性は認められないという研究もありますし、レッドクローバーそのもの摂取については更年期障害に対して統計学的に有益な効果は認められない・更年期障害以外に対しての効果を判断する科学的根拠はないという見解が多くなっています。現在もなお研究・実験が行われているハーブの一つであり、有効性については認められていないことを念頭に置く必要がありますね。


ほてりなど更年期障害の緩和に

レッドクローバーが世界的に注目されるハーブとなったのは、植物性エストロゲンを含み更年期障害の軽減に役立つ可能性があるという報告がなされたためであると言っても過言ではありません。更年期障害は女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌が減少し、自律神経の乱れを併発する事で引き起こされる、ほてり(ホットフラッシュ)・イライラ・抑鬱・不眠・めまい・頭痛など全身に渡る様々な症状の総称です。

イソフラボン類を含む植物の中でも脚光を浴びたのは、レッドクローバーに含まれているイソフラボン(フォルモノネチン・バイオカニンA)は腸で直接吸収されるため。大豆のイソフラボン(ダイゼイン・ゲニステイン)よりも吸収率が高いのではないかと考えられたこと・イソフラボン全体の含有量も多いことから、不足しているエストロゲン補給またはエストロゲン分泌を促進する働きによって、更年期障害の諸症状改善に効果が期待されているわけです。レッドクローバーイソフラボン抽出物を使用したいつくかの実験では更年期の女性のほてりを大幅に減らすことができることを示唆しており、レッドクローバーの補給が更年期症状を軽減すると結論付けている研究報告もあります。

しかし、こうした研究は予備的なものが多く、2007年の『Journal of Women’s Health』に掲載された更年期症状のための植物および栄養補助食品についてのレビューでは“4つの臨床試験のうち3つがプラセボと有意な差を示さなかった”ことが紹介されています。食品・ハーブティーは根っこの部分が“薬”とは異なり栄養補給や健康維持が目的ではありますから過度な期待を避けるのは勿論ですが、有効性が確認されていない研究も多い=自分の体にメリットがあるか分からないという部分は意識しておくことをお勧めします。医者などが経過を見て判断してくれるわけではありませんから、メリットを感じたかどうか自分の体調を確認しながら取り入れて下さい。


閉経後の骨粗鬆症にも?

加齢に伴って発症数が増える骨粗鬆症は、骨に含まれるカルシウムなどのミネラル量(骨密度/BMD)と骨質が低下して骨が脆くなっている状態を指します。閉経後の高齢女性の骨粗鬆症発生リスクが高い原因として、閉経期にエストロゲンのレベルが下がることが挙げられています。エストロゲンは女性領域の機能だけではなく、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きを持つホルモンでもあります。カルシウムほか骨を丈夫に保つミネラルやビタミンは今まで通りに摂取していても、エストロゲンが減少すると十分に骨に蓄えられない状態になり骨密度の低下が起こりやすくなるのです。

このため閉経前後からの女性の骨粗鬆症予防方法として植物性エストロゲンの補給が研究されています。レッドクローバーについてもエストロゲン様作用を持つと考えられるイソフラボン類を含むことから、閉経前および閉経前後の女性の骨密度を保つ働きが期待されています。イギリスで行われた49〜65歳の女性205人の二重盲検無作為化プラセボ対照試験では、イソフラボンサプリメント(レッドクローバー由来)を一年間飲たグループのほうがプラセボグループよりも骨ミネラル量と骨ミネラル密度の損失が有意に低かったことが2004年『The American Journal of Clinical Nutrition』に掲載されています。ただし、骨粗鬆症予防についてもプラセボとの有意差は見られないという報告もあることから、有効性については分かっていません。


PMS(月経前症候群)・月経トラブルに

レッドクローバーなどに含まれている植物性エストロゲンは更年期障害や閉経後にはエストロゲンとしての働きが期待されている成分ですが、ヒト本来のエストロゲンよりも作用は弱いと考えられています。このことからエストロゲン分泌が過剰な際には、エストロゲンと競合してエストロゲン受容体を埋めることで全体的なエストロゲンの作用を抑える=ホルモンバランスを整える働きを持つのではないかという見解もあります。こうした働きから植物性エストロゲンの摂取は若い女性にとっても月経不順やPMSなど、ホルモンバランスの乱れに関係する不調の緩和に繋がるのではないかと期待されています。

生理が始まる3~2週間前からイライラ・抑鬱・むくみ・胸のハリなど心身に様々な不調を感じる状態を月経前症候群(PMS)と呼びますが、なぜ体調が崩れるのかという原因については黄体期にプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が増えることでホルモンバランスを崩し自律神経失調状態になる・エストロゲン過多・体内で必要な物質の合成能力が低いなど諸説あり解明されていません。レッドクローバーなどの補給はホルモンバランスの乱れによって起こる・悪化している月経前症候群(PMS)の症状緩和に繋がる可能性があるとして、チェストベリーなどと組み合わせたハーブティーやサプリメントなどが健康食品としても使われています。月経不順やPMSに対しての研究は更年期障害に対するものよりも少なく、有効性についてはわかっていません。

そのほか期待される効果

老化・生活習慣病の予防に

エストロゲン様作用が注目されていますが、イソフラボンはポリフェノールの一種で強力な抗酸化作用があります。イソフラボン類には血液中の悪玉(LDL)コレステロールを減少させる働きなども報告されていますし、レッドクローバーは血液凝固を防いで血液の流れを改善する働きのあるクマリンも含んでいます。このためレッドクローバーティーは天然の抗酸化物質と抗炎症化合物を豊富に含んだ、クレンジングティーとしても親しまれています。

古くは血液浄化作用のあるお茶として体質改善などに活用されていたそうですし、現在では血栓や心臓病の予防に役立つ可能性を持つハーブとしても研究が行われています。コレステロールや心疾患予防に対しての研究では矛盾する結果が示されているため有効性については断定されていませんが、抗酸化物質補給源の一つとして取り入れてみても良いかもしれませんね。


アンチエイジング・美肌作り

レッドクローバーはイソフラボンやアントシアニンなどの抗酸化物質を含むことから、肌を若々しく保つ働きも期待されています。肌細胞がフリーラジカルによってダメージを受けるとるシワ・くすみ・たるみなど原因となり、肌老化を促進することが指摘されています。抗酸化作用の補給という面からも肌のアンチエイジングに繋がると考えられますし、抗炎症作用から肌トラブルの予防や軽減にも役立つ可能性があります。

イソフラボンはエストロゲンの変わりとなる・エストロゲンの分泌を促進する事からコラーゲンの生成向上・艶と透明感のある肌を保つ手助けも期待されています。レッドクローバー由来のイソフラボンを使ったイタリアの動物実験では、コラーゲンの量が有意に増加し、表皮の厚さと角質化の減少が見られたことが2006年『Phytotherapy Research』に発表されています。この結果からイソフラボンは皮膚の老化を軽減するのに役立つ可能性が示唆されており、抗酸化作用と複合して肌老化を防ぎ、肌のハリやキメ細かさを維持する手助けも期待されています。


女性らしい体・抜け毛予防に

イソフラボンを含むレッドクローバーはエストロゲン量を増加させることでバストアップやウエストのくびれなど曲線的な女性らしいボディライン作りにも効果が期待されています。エストロゲンは女性らしいボディラインを司るホルモンではありますが、植物性エストロゲンの補給とボディラインの因果関係については根拠となるほどの研究がないことが指摘されています。バストアップについての口コミなどを調べて個人差が大きく賛否両論といった状態。胸にハリが出たと感じる方もいらっしゃるようなので試してみても良いかもしれませんが、過剰摂取はエストロゲン過多によって乳癌や子宮筋腫などの発症リスクを高めてしまう可能性があるため注意が必要。

そのほかエストロゲンは髪の成長にも関与しているホルモンで、更年期から老年期に起こる女性の薄毛の原因としても閉経に伴うエストロゲン減少が考えられています。このため植物性エストロゲンは抜け毛・薄毛対策に役立つのではないかと考えられており、カナダではレッドクローバーエキスを配合したキャピキシル(Capixyl)という育毛成分が開発され育毛剤の原料として利用されているようです。


むくみ・セルライト予防に

レッドクローバーにはイソフラボンやクマリンなど血流を改善する成分と、ナトリウムの排泄を促し水分貯留を軽減するカリウムが含まれています。特にクマリンは血液の流れを良くすることで、リンパ液循環や血流を改善しむくみ解消に有効性が高いと言われています。古くは血液浄化作用を持つと考えられクレンジングティーとして使われてきたのも、こうした働きがあるからなのかもしれませんね。血液循環を促すことから、むくみだけではなく、冷え性対策や疲労回復促進・倦怠感の軽減などにも効果が期待されています。


呼吸器系の不調・感染症に

レッドクローバーは伝統的に呼吸器の不調軽減のためのハーブとして使われてきました。粘液の状態を整えて気道を滑らかにするこで肺からの粘液の排出を促す働きがあると伝えられているのだとか。現在でも抗炎症作用と去痰作用を持つハーブとして、喉の痛みや咳、鼻水、風邪・気管支炎・百日咳・インフルエンザなどの呼吸器感染症の症状緩和に取り入れる方もいらっしゃるようです。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

湿疹・炎症のケアに

レッドクローバーは湿疹・乾癬・発疹などに対する抗炎症剤のような形で伝統的に使用され、軟膏の成分としても使われてきました。抗炎症作用によって皮膚炎症の軽減に役立つと考えられているほか、関節炎やリウマチの痛みを軽減する目的でも使用されています。その他に傷跡や火傷の治癒を促進する、細胞成長を促すという説もありませんが、根拠となる研究はほぼないため作用秩序や有効性は不明です。

レッドクローバーの注意事項

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は控えましょう。
  • エストロゲン依存性腫瘍のある方やエストロゲン補充療法を受けている方は使用出来ません。>
  • 長期間に渡る使用は控えましょう。
  • 医薬品との相互作用を起こす恐れがあります。疾患がある・医薬品服用中の方は医師に相談しましょう。

参考元