【月桃/サンニン茶】
植物エピソードと期待される健康メリット

豊富な抗酸化物質が世界的に注目される沖縄ハーブ

沖縄県民の長寿の秘訣とも称される月桃(ゲットウ)。ショウガ科に分類される植物で、呼び名のイメージとは異なり緑茶と生姜を組み合わせたような香りがあります。加えて月桃に含まれている5,6-デヒドロカワイン(DK)などの成分は抗肥満作用やコラーゲン生成促進作用を持つ可能性も報告されており、若さと健康をサポートしてくれるハーブとして現在も研究が進められています。塗布することでもコラーゲンやエラスチン破壊酵素の働きを抑止する可能性が報じられたことで、スキンケア用にも注目されています。

月桃のイメージ画像:ボタニカルラブ

月桃(ゲットウ)とは

植物紹介:月桃

ポリフェノールを豊富に含む植物として世界中に注目されている月桃。沖縄県の特産品として女性を中心に日本でも人気を集めています。海外で注目されるようになったきっかけも、世界最高の平均寿命を誇る沖縄の食事や生活についての研究の中で、月桃が豊富にポリフェノールを含む食材として紹介されてことが大きいのだとか。赤ワインよりも強い抗酸化力を持つ植物として研究が進められており、健康寿命の延長や美容面でのアンチエイジング効果が期待されている注目の沖縄ハーブの一つと言えます。ちなみに沖縄県では「サンニン」と呼ばれているとよく紹介されていますが、地域によってサニン、サヌイン、サネン、ムチガシャ、ムチザネン、マームチハサーなど様々な呼び名で親しまれているのだそうです。

そんな月桃はショウガ科ハナミョウガ属に分類される多年草で、熱帯から亜熱帯アジアに分布しています。見た目はあまり似ていませんが薬味として使用している生姜の仲間で、英語では“シェルジンジャー(shell ginger)”と呼ばれています。広義で月桃という呼び名はハナミョウガ属に属すいくつかの植物の総称としても使われていますが、単に月桃と呼ぶ場合には学名Alpinia zerumbetという種のことを指します。沖縄県や奄美諸島など日本国内に分布しているのはこちらのタイプで、他の月桃類と区分するためにシマ月桃や本月桃と呼ばれることもあります。

そのほか月桃の仲間としては台湾北部に自生しているウライ月桃(Alpinia uraiensis)、それとシマ月桃の交配種であるタイリン月桃(Alpinia zerumbet var. excelsa/ハナソウカとも)、台湾東南からフィリピンにかけて分布するアツバ月桃(Alpinia glabrescens)などがあります。日本で見られるのは大半がシマ月桃とタイリン月桃の二種。

沖縄県民の長寿の秘訣として紹介されることの多い月桃ですが、主に食用ではなく天然のラップ・本州で言うところの竹の葉のような感覚で使用されています。健康・長寿を願って旧暦の12月8日に月桃の葉にムーチー(餅)を包んで蒸した「ムーチーカーサー(鬼餅)」を食べるのが伝統という地域もあります。月桃の葉に包まれたムーチーカーサーは何ヶ月もカビが生えずに保つとも言われており、月桃の葉はその他にも防カビ・抗菌防腐の目的で使われることがあったそうです。縁起物として以外にも肉や魚を蒸し焼きにする時や饅頭の包装用や、虫除け、近年は特産品の一つとして様々な商品にも利用されています。爽やかな香りから月桃フレーバーのお饅頭やクッキーなどのお土産物、月桃茶や月桃エキスを配合した化粧品などがありますね

ちなみに月桃というファンタジックな呼び名は台湾での呼称をそのまま取り入れたもの。語源・由来は断定されていませんが、白く滑らかで先端がピンク色をしている花のつぼみが桃に似ているためというのが定説となっています。英名で“shell”が使われているのも、同じく花(蕾)の形を貝殻に見立てたためでしょう。そのほか英語では“”pink porcelain lily”や“butterfly ginger”などとも呼ばれるほか、日本での呼び方通り「Gettou」と表記されることも。見た目から桃やユリ(lily)の呼称が使われますが、月桃の香りや味は見た目とは異なりショウガにフローラル調の甘さを加えたようなスパイシーさが特徴です。

基本データ

通称
月桃(ゲットウ/Gettou)
別名
サンニン、シェルジンジャー(Shell ginger)、シェルフラワー(shell flower)、ピンク・ポースリン・リリイ(pink porcelain lily)など
学名
Alpinia zerumbetほか
科名/種類
ショウガ科ハナミョウガ属(アルピニア属)/多年草
花言葉
爽やかな愛
誕生花
7月5日
使用部位
代表成分
ポリフェノール(フラボノイド類:ケンフェロール、ケルセチン、ルチンなど)、カバラクトン類、精油(テルピネン-4-オール、1,8-シネオール、リモネン、カンフェン、ピネンなど)、フェノール、フェノール酸、脂肪酸類、アミノ酸類、ビタミン類、ミネラル類など
代表効果
抗酸化、血圧降下、血管弛緩、抗コレステロール、抗肥満、抗炎症、抗うつ・抗不安、抗菌、消毒、防虫
【外用】抗酸化、コラーゲン生成促進・美白・収斂
こんな時に
アンチイジング、生活習慣病(高血圧・動脈硬化・糖尿病など)予防、肥満予防・ダイエット、ストレス対策、不安・気持ちの落ち込み、風邪予防、美肌作り
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ、浸出油、湿布、スチーム吸引、手作り化粧品、精油
ハーブティーの味
グリーン調の風味ではあるが、生姜に通じるスパイシーさと苦味がある
カフェインの有無
ノンカフェイン

月桃の成分と作用

月桃茶/サンニン茶に期待される効果

抗酸化・老化予防に

高い抗酸化作用が期待

月桃が沖縄ハーブとして注目されるようになった理由の一つに、赤ワインを超えるほどのポリフェノールを含み高い抗酸化作用を持つという点が挙げられます。諸説ありますが、月桃茶は「赤ワインの34倍のポリフェーノールを含む」と表現されることもあるほど。植物化学物質の分析でも月桃にはルチン、ケンフェロール、ケルセチン、カテキンなどのフラボノイド系ポリフェノール類やフェノール酸などが含まれていることが認められており、高いラジカル消去活性を持つと考えられています。過剰に増加した活性酸素/フリーラジカルは老化促進や病気の発症リスクを高めることが指摘されていますから、抗酸化物質の補給という面から健康リメリットも期待できそうですね。

ちなみに月桃(Alpinia zerumbet)葉抽出物によって線虫の平均寿命が22.6%増加したという実験結果が2013年『Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry』に発表[1]され、レスベラトロールやケルセチンよりも優れていたと報じられた事も世界的に注目されています。月桃は元々沖縄県の長寿ハーブとして注目されるようになったハーブでもあるためか「寿命延命(延命長寿)のハーブ」と称されることもありますが、現時点では可能性段階であり、人に対しての有効性を示す十分なデータもありません。食品として摂取している現段階では抗酸化物質の補給に役立つ=若さや健康をサポートしてくれるかもしれないハーブ程度に考えるようにしましょう。


高血圧・心血管疾患予防に

月桃はブラジルの民間療法の中で高血圧や心血管疾患に対して使用されています。医薬品としての有用性については認められていないものの、抗酸化物質が豊富に含まれていることから予防に役立つ可能性はあるでしょう。月桃に含まれているフラボノイドなどの抗酸化物質は血中の脂質・LDLコレステロールの酸化を抑えることで血流をスムーズに保ち、酸化LDLの蓄積に起因するアテローム性動脈硬化の予防に効果が期待できます。

フラボノイドに含まれるルチンやケルセチンはビタミンPとして働くことでコラーゲン生成を促し血管強化・弾力保持をサポートしてくれる成分でもありますし、韓国で行われた高脂血症ラットを対象とした実験ではコレステロールの低減効果が見られたという報告も2002年『International Journal for Vitamin and Nutrition Research』に発表されています。

加えて2018年『Nutrients』に発表された月桃に関する論文[2]ではカバラクトン類と呼ばれるラクトンの中でも、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン(dihydro-5,6-dehydrokawain/DDK)と5,6-デヒドロカワイン(5,6- dehydrokawain/DK)が月桃の特徴成分としてピックアップされています。カバラクトン類の作用は現在も研究が行われている最中ではありますが、抗炎症作用や抗血栓活性を持つ可能性を示唆した実験報告も存在しています。

月桃は部位によって成分含有率も異なりますし未解明の部分もありますが、月桃全体として善玉(HDL)コレステロールレベルの上昇・血管平滑筋弛緩による血圧降下・抗アテローム性動脈硬化などの働きが見られたとの報告もあります。こちらも人についての有効性を認めたものではありませんが、生活習慣病予防の健康茶として取り入れてみても良いかもしれませんね。


肥満・糖尿病予防にも期待

月桃は抗酸化作用や血圧降下だけではなく肥満予防に役立つ可能性が示唆され、長寿に役立つ理由として肥満に関連する合併症予防に役立つためではないかという説もあるほど。日本からも3T3-L1脂肪細胞を使用したin vitro試験で、月桃の根茎に含まれているヒスピジン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン(DDK)、5,6-デヒドロカワイン(DK)の三つの成分に抗肥満特性が見られたことが2014年『Molecules』に発表されています[3]。2015年には鹿児島大学大学院農学研究科による月桃化合物が肥満予防に役立つ可能性を示唆した論文が『Drug Discoveries & Therapeutics』に発表されています。

2014年『Molecules』に発表された研究論文の中で、月桃に含まれているヒスピジン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン(DDK)、5,6-デヒドロカワイン(DK)にはin vitroで膵リパーゼの阻害活性が見られたことが紹介されており、リパーゼ阻害剤として機能することで脂肪吸収を抑制する=血漿中性脂肪上昇抑制・抗肥満作用を持つ可能性があることも示されています。

ちなみにウーロン茶などがダイエットティーとして注目されているのもリパーゼ阻害作用が期待できるため。実験では抽出された成分が使用されていますから月桃茶の摂取でどの程度の働きがあるのかは定かではありませんが、食事や生活習慣の見直しと合わせて取り入れることで肥満予防をサポートしてくれる可能性はありそうです。また、肥満予防効果が期待できること、抗酸化・抗糖化作用を持つ可能性が報告されていることから、月桃は糖尿病やその合併症予防に対しての研究も行われています。


骨粗鬆症予防にも…?

月桃に含まれているカバラクトン類のジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン(dihydro-5,6-dehydrokawain/DDK)に骨芽細胞MC3T3-E1細胞の分化促進が見られた、という日本食品分析研究所の研究[4]が2016年『Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry』に掲載されています。論文では作用メカニズムの定義や効果の評価にはさらなる研究や臨床試験が必要であると締めくくられていますが、研究が進めば骨粗鬆症の予防・治療薬へ応用される可能性もあるかもしれません。

そのほか期待されるメリット

リラックス・不安緩和

月桃はブラジルの民間療法の中で鎮静剤としても使用されており、その有効性について科学的な研究も行われています。マウスを使った実験では月桃(Alpinia zerumbet)エタノール抽出物によって抗不安薬・抗うつ薬様効果を示した事も報告されており、2016年『Pharmaceutical Biology』に発表されたブラジルの研究では“ルチンが抗うつ薬のような効果に寄与している可能性がある”と紹介されています[5]。それ以外に月桃に含まれる約14種類のアミノ酸(うち必須アミノ酸6種)による神経系のサポートや疲労回復促進効果、リモネンやピネンなどの精油成分(香り)による働きかけもメンタル面のサポートに役立つ可能性があります。

ちなみに、月桃の成分として注目されているジヒドロ-5,6-デヒドロカワインなどのカバラクトン類は、鎮静系ハーブとして扱われているカヴァ(学名:Piper methysticum)の特徴成分でもあります。カヴァの作用秩序や各成分が特異的に持つ役割についてはまだほとんど解明されていないものの、2003年にミシシッピ大学で行われた研究ではカヴァの抗不安作用にデヒドロカワイン類が関与している可能性を示唆しています。


風邪予防・冷え対策に

月桃に含まれている精油成分には抗菌作用が認められているものが多く含まれており、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン(dihydro-5,6-dehydrokawain/DDK)や5,6-デヒドロカワイン(5,6- dehydrokawain/DK)には抗炎症活性を持つ可能性が報告されています。フラボノイドのケルセチンも抗炎症作用が期待されていることと合わせて、花粉症などのアレルギー性症状の軽減に役立つのではないかという説もあります。ルチン・ケルセチン共に関節痛の痛み緩和に役立つ可能性も示唆されていますから、アレルギー以外の症状緩和にも効果が期待できそうです。

また、ショウガ科の植物であるためか、月桃茶はショウガと同じく体を温めてくれる・飲むとポカポカするという方もいらっしゃいます。民間療法の中で月桃茶は風邪のひきはじめのケア、喉の痛みや咳止めのような感覚で使用されることもあり、冷えによって悪化する生理痛や頭痛・肩こり・関節痛などの痛みの緩和にも良いという説もあるようです。


肌老化予防・美肌作りに

赤ワインを超えると評されるほどポリフェノールを豊富に含み、高い抗酸化作用が期待されている月桃。葉を原料としたハーブティーの摂取も抗酸化物質の補給に役立つことから、活性酸素/フリーラジカルの増加を抑えることで肌の細胞へのダメージを軽減する働きも期待されています。肌細胞の酸化ダメージはシワやたるみ・角質化や皮膚老化を促進させるリスクファクターと考えられていますから、お肌のアンチエイジングにも注目されています。

ビタミンCの働きを助けることから“ビタミンP”とも呼ばれているルチンやケルセチンも月桃には含まれていますので、ビタミンCが豊富な緑茶ローズヒップティーなどと組み合わせることでコラーゲン生成促進やメラニン色素生成抑制に繋がる可能性もあるでしょう。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

スキンケアに

お茶にして飲むことでも抗酸化作用が期待できる月桃ですが、スキンケアに活用することでも高い美肌効果を持つ可能性が報告されており注目度が高まっています。自然派コスメのお店を中心に月桃エキスを配合したローションや手作り化粧品用のフローラルウォーター(芳香蒸留水)などが販売されていますね。月桃が化粧品原料として注目されるようになったのは抗酸化物質が豊富に含まれていることに加え、研究によって肌のコラーゲン量を増加させる可能性があることが認められたため。

2012年に鹿児島大学大学院農学研究科によって行われた研究では月桃抽出物、特にや5,6-デヒドロカワイン(5,6- dehydrokawain/DK)にコラーゲン分解酵素(コラーゲン分解酵素)・ヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)・エラスチン分解酵素(エラスターゼ)・メラニン色素生成に関与する酵素チロシナーゼに対しての強い阻害活性が見られたことが報告されています[6]。この結果から月桃もしくはその抽出物は肌の弾力や水分保持力を向上させ、シミの発生を防いでくれる美肌成分として注目されたわけです。

ただし、論文では5,6-デヒドロカワイン(DK)が抗皮膚疾患製剤として有用である可能性が示唆されているものの、現時点ではさらなる研究が必要であると締めくくられています。使用部位や抽出方法によってDK含有量やコラゲナーゼ、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、チロシナーゼに対する阻害活性の度合いが異なることも認められていますから、月桃の葉を使って化粧水などを自作した場合にどの程度の効果が得られるかは未知数です。民間療法上の効能や含有成分から抗菌・保湿・収れん・抗炎症作用も期待され幅広い肌トラブルのケアに役立つハーブとも紹介されていますが、十分なエビデンスはないため使用する際は自分の肌の状態を確認しながら取り入れるようにして下さい。

抗菌・防虫用にも

月桃は沖縄では古くから防カビや虫除けに利用されてきた歴史を持ち、近年の研究でも1.8シネオールやβ-ピネン、カンフェン、テルピネン-4-オールなど様々な精油成分の複合効果で消臭・防虫・防カビ・抗菌に役立つことが認められています。近年は消臭剤や防虫・防カビ剤などに月桃精油を配合したものが販売され、化学薬品を使わない安全な製品として人気が高まりつつあります。ハーブや精油を使って抗菌剤を自作する場合は、ペパーミントやレモンなどとブレンドされることも多いようです。

月桃の注意事項

    お茶として1~2杯を飲む程度であれば健康上の懸念は低いとされています。

  • 妊娠中の方・小さいお子さんへの安全性を示すデータはありません。不安な方は摂取を控えましょう。
  • 持病のある方・医薬品を服用中の方は医師もしくは薬剤師に相談の上で利用しましょう。

参考元