【レモングラス】
原料植物とハーブティーや精油に期待される効果効能

スッキリした香りから「リフレッシュハーブ」とも

タイ料理などではスパイスとして使用されているレモングラス。レモン様の爽やかさを持ったハーバルな香りが特徵で、古くからインドや中国の伝統医療の中で生薬として利用されてきたハーブでもあります。有効性については研究段階のものがほとんどですが、世界各地の民間療法でも取り入れられている関係から様々な健康メリットが期待されています。また、香りがよく虫除けにも役立つためルームフレグランスなどにも使われています。

レモングラスティーのイメージ画像

レモングラスティーのイメージ画像

レモングラスとは

植物紹介:レモングラス

タイ料理のトムヤムクンによく使われているハーブ、レモングラス。頑丈なニラもしくは“草”というビジュアルですが、呼び名のとおりレモンを連想させるような爽やかな香りが特徴的な植物。タイだけではなくフィリピンやインドネシアでもよく使われているハーブの一つで、ローストチキンやレチョン(豚のロースト)など肉料理に・サンバルゴレンなど魚やシーフド類のお料理にと多用されています。香りはレモンとハーブをミックスしたような印象ですが、味を変えることがないのも料理に使いやすいポイントなのかもしれませんね。インドでもカレーにもよく使われていますし、現在はペルーやブラジルなど南米・カリブ料理でもよく使われています。

そんなレモングラスは東南アジア、おそらくマレーシア周辺が原産と考えられるイネ科オガルカヤ属の植物。学名はCymbopogon citratusで、種小名のcitratusは柑橘類のような香りが由来。特徴的な香りから和名でも“レモン茅”もしくは“レモン草”と呼ばれています。一般的に単に「レモングラス」と呼んだ場合にはCymbopogon citratusを指しますが、オガルカヤ属にはイーストインディアン・レモングラスと呼ばれる植物(C. flexuosus/マラバルグラスとも)があります。このため区別を明確にするためレモングラス(C. citratus)を「ウエスト・インディアン・レモングラス」と呼ぶこともあります。

そのほかにもオガルカヤ属にはシトロネラやパルマローザなど、特有の芳香を持ち香料原料として使われる植物が含まれています。特にシトロネラの和名である“香水茅”はレモングラスにも使われることがあるため紛らわしく、芳香はレモンっぽさの強いハーバル系。更に植物としては別物ですが、レモンバームやレモンバーベナなど似た名前と香りを持つハーブもあり混同されることも。レモングラスはアジアが原産であること、専ら精油原料として使われるシトロネラとは異なり各地で料理にも使われていることが特徴。

レモングラスは味もマイルドなことからハーブティーにも使われていますし、アジアでは紀元前から生薬として用いられてきた歴史もあります。インド伝統医学アーユルヴェーダでは風邪などによる発熱・関節炎の痛みのケアに利用されてきました。中医学では鎮静・鎮痛作用を持つ生薬として頭痛や腹痛・リウマチなどに使用されています。ブラジルの南部でも同様にレモングラスは中枢神経系を鎮静させるハーブとして使用され、ジャマイカでは風邪・咳・発熱のケアに利用することからレモングラスティーは“フィーバーグラスティー(Fever grass tea)”と呼ばれているそう。そのほかインドネシア・キューバ・ナイジェリアなど世界各地の民間療法の中でレモングラスは使われているようです。

また、伝統的な生薬としての用途に加えて、レモングラスの精油やドライハーブ(ポプリ)などは優れた昆虫忌避作用を持つことでも注目されています。古くから伝染病や発熱対策として用いられてきたのも、マラリアやデング熱などの媒介となる蚊を遠ざける働きが関係していたのではという見解もあるほど。伝統的効能を確認する人での臨床試験がほとんど行われていないこともあり、医薬品としての承認制度・保険制度が確立している日本で薬としてレモングラスを使用することはありません。しかし虫除けに役立つこと・爽やかで心地よい香りがあることからレモンバームはお部屋の芳香剤などの原料としてよく見かけます。ハーブティーも薬感覚ではなく、爽やかな風味を楽しむ事をメインに「健康メリットもあったら良いな」というスタンスで取り入れてください。

基本データ

通称
レモングラス(Lemon grass)
別名
レモンガヤ(檸檬茅)、レモンソウ(檸檬草)、ウエストインディアン・レモングラス(West Indian lemon grass)、セレー(sereh)、セライ(serai)など
学名
Cymbopogon citratus
科名/種類
イネ科オガルカヤ属/多年草
花言葉
爽快(爽やか)、凛々しさ
誕生花
9月22日
使用部位
葉、茎
代表成分
精油(シトラール、ゲラニオール、リナロール、アルデヒドなど)、フラボノイド類(ルテオリン、ケルセチン、ケンフェロール、アピゲニンなど)、フェノール酸類(コーヒー酸、p-クマル酸誘導体)、クロロゲン酸、ミネラル類、サポニン、タンニン
代表効果
抗不安、鎮静、健胃、消化促進、抗菌、抗真菌、抗酸化、抗炎症、鎮痛、収斂
こんな時に
リフレッシュ、ストレス対策、食欲不振、消化不良、風邪予防・初期症状ケア、生活習慣病予防、むくみ、アンチエイジング
おすすめ利用法
料理用ハーブ(香辛料)、ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ、手作り化粧品、精油
ハーブティーの味
グリーンな中にレモンの爽やかさ、味に酸味はなく飲みやすい
カフェインの有無
ノンカフェイン

レモングラスの成分と作用

レモングラスティーに期待される効果

スッキリ感のサポートに

精神安定・リフレッシュ用として

スッキリとした清々しい印象のレモングラスの芳香を構成する特徴と言えるのがテルペン系化合物のシトラールで、レモンのような香りの元になっている精油成分でもあります。このシトラールは抗不安作用や鎮静作用を持つのではないかと期待されている成分。レモングラスの芳香成分にはその他にも抗鬱作用が期待されるゲラニオールなどもあり、全体として見ると気持ちを落ち着ける働きも持ち合わせているのではないかと考えられています。2015年12月に『Journal of Alternative and Complementary Medicine』に発表されたブラジルの実験では、レモングラス精油の芳香を短時間吸引することで状態不安と主観的緊張の軽減が見られた事が報告されています。

他の臨床研究には“レモングラスティーによって不安の軽減・心を落ち着かせる効果は見られない”という結論に至っているものもあり、レモングラスの作用や有効性は認められていません。ハーブティーと精油を使った芳香浴での違いなども考えられますから、期待されているような抗不安・抗ストレス作用があるのかは定かではありません。

しかし、レモングラスは爽やかな香りが世界中で好まれ「リフレッシュハーブ」とも称されている存在。医学的な部分は置いておくとしても、心地よい香りのハーブティーを飲むことで気分転換・リフレッシュにやうだってくれる可能性は十分にあるでしょう。仕事の休憩中や朝起きがけのハーブティーとしても適していますし、アイスティーで飲むと夏場のどんより感を癒してくれます。サッパリした味や気分を味わいたい時にはペパーミントローズマリーなどとブレンドしやすいのも魅力です。


安眠・自律神経調整にも…?

レモングラスに含まれている精油成分(芳香成分)には鎮静作用を持つと考えられているものが多いことから、レモングラスティーは寝付きを良くする・睡眠の質を改善する働きも期待されています。鎮静作用によって交感神経の興奮を鎮めることから自律神経のバランスを整える=不眠軽減に繋がるという説もありますが、こちらも根拠と言えるほどの研究は行われていないため民間療法の一つという扱いです。南米では鎮静作用を持つお茶として親しまれているため何らかの効果を実感する方もいらっしゃるのでしょうが、個人差も大きいと考えられます。覚醒作用を持つカフェインが含まれている訳ではありませんから、コーヒーや紅茶よりは寝る前に飲むものとしては適している程度に考えることをお勧めします。


胃腸機能のサポートに

レモングラスは胃の働きを助けて消化を促進すると考えられ、各地の伝統医療・民間療法の中で消化促進剤のような感覚で使用されてきたハーブでもあります。昔の中国医学では消化不良・鼓腸(腹腔内にガスが発生してお腹が張ること)・便秘の緩和から、胃痙攣・胃痛のケアなど消化器系の不調に対して幅広く使用されたとも伝えられています。現代の研究でも2006年にはインドの大学から下痢の改善に対しての有効性を示した報告が、2012年に『Journal of Young Pharmacists』に掲載された研究ではレモングラス抽出物にエタノールおよびアスピリン誘発性胃潰瘍に対して保護効果を示したことが報告されています。

しかし、こうした研究はエッセンシャルオイルが使われていたり、動物実験での結果。ヒトに対しての臨床試験はほとんど行われていないことから、レモングラスティーの消化器系に対しての作用は認められていません。胃潰瘍などの病気が疑われる場合は医療機関で適切な治療を受けましょう。有効性は認められていないものの、レモングラスティーは自律神経や精神面への働きかけも期待されていることから、神経性の胃腸トラブル予防・軽減に役立つのではという見解もあります。ストレスでお腹の調子が乱れやすい方は同じく消化器系サポートが期待されるカモミールティージンジャーなどと組み合わせて、日常的なセルフケア・予防策の一つとして取り入れる程度にしましょう。

そのほか期待される作用

風邪予防・初期症状ケアに

レモングラスティーはジャマイカで“fever grass tea”と呼ばれ、悪寒や発熱がある時に風邪薬感覚で飲まれています。レモングラスに含まれているシトラールやゲラニオールなどの精油成分やタンニンは抗菌作用が報告されている成分であり、in vitro試験ではレモングラス精油に抗菌・抗真菌・抗ウィルス活性があることも報告されています。伝統的な効能やこうした研究報告からレモングラスティーも風邪予防・初期症状ケアに役立つのではないかと期待されています。シトラールなどの精油成分には血液循環を促して体を温める・発汗を促す働きがあるという説もありますよ。


抗酸化サポート・生活習慣病予防に

レモングラスにはフラボノイド類やクロロゲン酸などの抗酸化物質が豊富に含まれていることが認められています。ドライハーブを使用したハーブティーとして摂取した場合にどの程度補給できるかは分かりませんが、生のレモングラスの葉にはビタミンCも豊富なのだとか。こうした抗酸化物質の補給によってレモングラスは活性酸素/フリーラジカルの過剰な増加による酸化から体を守り、体を若々しく健康に保つ手助けをしてくれると期待されています。抗酸化作用からLDLコレステロール・血中脂質の酸化を抑えて高血圧や動脈硬化を予防する働きも期待できます。

加えてレモングラスにはより直接的な血圧降下作用・コレステロール低減作用を持つ可能性も。72人の男性を対象にしたパキスタンの研究ではレモングラスティーを飲んだ人のほうが緑茶を飲んだ人よりも血圧と心拍数が低下したことが『Medical Forum Monthly』に発表されています。また、2007年7月の『Journal of Ethnopharmacology』に掲載されたレモングラス葉水性抽出物の研究では、レモングラスを多く投与したラットほど大幅な体重減少・血糖値低下が見られ、LDLコレステロールおよびVLDLコレステロールも用量依存的に低下したもののHDLコレステロールは増加したという報告がなされています。人に対しての研究は少なく作用は分かっていませんが、こうした研究発表から生活習慣病予防に役立つのではないかと注目されています。


美肌・スタイルの維持に

上記のレモングラス葉水性抽出物の研究ではレモングラス抽出物摂取マウスに体重減少も報告されていること、2011年には『Indian Journal of Pharmacology』というインドの医学雑誌にシトラールが脂肪生成抑制・耐糖能の改善に役立つ可能性を示唆した研究報告が発表されたこともあってレモングラスはダイエットハーブとしても期待が寄せられています。こちらも有効性が示唆されている段階ですし、研究はラットを使ったもののため人に対してはさらなる研究と身体系への影響を観察する必要があると結論付けられています。

また、レモングラスは民間医療の中で利尿薬として利用されてきたハーブでもあります。動物実験ではレモングラス抽出物の投与で尿の生成増加・腎臓保護作用が見られたという報告もあり、経験則的な効能を裏付けするような形となっています。人に対して抗肥満作用や腎臓保護作用があるかは定かではありませんが、むくみの軽減やスタイルの維持に役立つ可能性がないとも言い切れませんね。

レモングラスにはビタミンB群やミネラルなど代謝機能に関わる栄養素も含まれていますし、砂糖を入れなければカロリーもほぼゼロですから、ダイエットに取り入れてみても良いかもしれません。美容面では抗酸化物質の補給から肌のアンチエイジング(老化予防)、血行促進からターンオーバーの正常化なども期待されています。


鎮痛・抗炎症にも期待

レモングラスに含まれている精油成分の一つ、オイゲノールにはアスピリン様の鎮痛作用を持つのではないかという説もあります。加えてシトラールにはNF-κBの活性化を抑制することで抗炎症作用を持つ可能性が示唆されており、レモングラス抽出物を使った研究では炎症誘発性サイトカインTNF-αと一酸化窒素の放出が減少し抗炎症効果を有意に示したという報告もなされています。抗酸化作用を持つこと・こうした発表によってレモングラスは慢性疾患への有効性についての研究が期待されています。風邪薬感覚でレモングラスティーが飲まれているのも、鎮痛作用や抗炎症作用で喉の痛みなど呼吸器系の炎症が和らぐことが関係しているのではという見解もありますよ。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

スキンケアに

レモングラスは収斂作用と抗菌・抗真菌作用が期待できることから、脂性肌や毛穴の開きが気になる時のケアに利用されています。抗真菌作用が報告されていることから水虫(白癬菌)や脂漏性皮膚炎(マラセチア菌)など真菌性皮膚炎症のケア・再発防止に役立つのではないかという説もあります。ただしレモングラスに含まれているシトラールなどのテルペン系アルデヒド類は皮膚刺激性が高いことも指摘されています。精油は希釈しても接触性皮膚炎を起こす場合があるため注意が必要です。ハーブティーをローションのように使用する場合も安全とは言い切れませんから、パッチテストを行うようにしましょう。

抗菌・防虫剤としても

レモングラスは伝統的に抗菌や防虫のために使用されてきました。原産地は暖かい地域ですから、こうした作用を持つことも多用されてきた理由の一つかも知れません。現在でもレモングラスは抗菌作用を持つことが報告されていますし、芳香成分のシトラールは昆虫忌避作用が高いことから虫除け製品にも配合されている成分。特に蚊に対して高い忌避特性を持つことが認められています。ドライハーブはポプリやサシェに、精油の場合はコットンに染み込ませるかデュフーザーで拡散することで天然の殺菌消臭・虫除け剤としても利用出来ます。抗菌や虫除け重視ならばユーカリ、消臭力重視の場合はラベンダーローズマリーとブレンドして利用するのもオススメです。梅雨時~夏場は爽やかな香りと合わせて活躍してくれそうですね。

そのほかに2008年10月の『Food Chemistry』には虫歯の原因となるう蝕細菌に対するハーブの抗菌活性評価が掲載されており、レモングラスは口腔内連鎖球菌に対して緑茶以上の阻害作用が見られたことが示されています。レモングラスティーをマウスウォッシュとして使用することで口内を清潔に保ち、虫歯や口臭予防に繋がる可能性もあるでしょう。

レモングラス精油に期待される作用

精油の経口摂取(飲用など)は出来ません。レモングラスの精油は高濃度でシトラールを含み、皮膚刺激が強いためマッサージやスキンケアなど皮膚へ直接付けることは控えたほうが無難です。

心への作用

レモングラスの精油はハーブティーよりも高濃度でシトラールなどの芳香成分(精油成分)を含んでいます。アロマテラピーではストレスと不安を緩和する働きがあると考えられており、精神的な疲労感がある時などに用いられています。ブラジルの実験ではレモングラス精油の芳香を短時間吸引することで状態不安と主観的緊張の軽減が見られた事が報告されていますし、2015年にはタイの研究チームからレモングラスの精油によるマッサージを週に1回3週間受けた被験者は対照群よりも拡張期血圧が低下したということも発表されています。また、レモングラス精油のスッキリとした香りはリフレッシュ用としても活用されています。


体への作用

ハーブティー同様にレモングラスの精油も消化器系のサポートが得意であると考えられています。皮膚刺激性があるのでマッサージオイルとして使用するには相手を選びますが、さっぱりとした香りは胃もたれ・吐き気がある時のサポートに役立つかもしれません。血液や体液の循環を整える働き・鎮痛作用が期待できることから肩こり・腰痛や筋肉痛のケアに用いられることもあります。

レモングラスの注意事項

  • 妊娠中、授乳中の方はハーブティーの飲用、精油の使用を避けましょう。
  • 医薬品を服用中の方は医師もしくは薬剤師に相談の上で飲用してください。
  • 肝疾患・腎臓障害のある方は精油の利用を避けましょう。

参考元