【エキナセア】
原料植物、ハーブティーに期待される効果効能

女性の体と美しさを守る

免疫サポートに役立つとして欧米では健康補助食品に多く使用されているエキナセア。風邪やインフルエンザ予防・治癒促進に対する有効性を示唆する報告が多く存在する一方で、プラセボとの差異は認められないとの見解も多く有効性は分かっていません。アレルギー軽減や糖尿病予防・皮膚炎症ケア・メンタルサポートと幅広い働きが期待されていますが、自己免疫疾患の悪化などの懸念もあるため注意が必要です。

エキナセアのイメージ画像:ボタニカルラブ

エキナセアとは

植物紹介:ムラサキバレンギク

風邪やインフルエンザ予防・免疫力が気になる方向けのハーブやサプリメントとして、日本でも見かける機会の増えているエキナセア。欧米では高麗人参イチョウ葉セントジョーンズワートなどと共に“近代のベストセラーハーブ”と言われるほどポピュラーな存在で、ヨーロッパの一部では伝統的医薬品(THMPD)としても利用されています。サプリメント大国アメリカでも人気があるハーブであり“one of the most frequently used herbal medicines in the United States(アメリカで最も頻繁に用いられる伝統薬の一つ)”とも称されるほど。アメリカ食品医薬品局(FDA)による承認が得られているわけではありませんが、風邪予防などの健康メリットを期待して取り入れる方も多いようです。

そんなエキナセアは、植物としてみるとキク科ムラサキバレンギク属に分類される多年草。広義でエキナセアやコーンフラワーという言葉はムラサキバレンギク属の植物の総称。園芸品種まで含むと非常に多くの種類があります。属名としても花の呼び名としても使われている「エキナセア(Echinacea)」という言葉は花の形状に由来しており、語源はハリネズミを意味するギリシア語ekhinos。ちなみに、エキナセア=ムラサキバレンギク属の植物は10種が存在し、薬草として利用される種は主にエキナセア・アングスティフォリア(E.angustifolia)、プルプレア(E.purpurea)、パリダ(E.pallida)の3種類で、現在ハーブとして利用されているのは主にアングスティフォリ種とプルプレア種の2種類。特にプルプレア種(和名ムラサキバクレンギク)は栄養補助食品として最も多く使用されており、単にエキナセアと呼ばれる場合はこちらを指すことが多いようです。

エキナセアの原産は北アメリカ原産で、北米の平原地域に住む先住民の人々は古くからエキナセアを薬効のある植物として利用してきたと伝えられています。葉と根は毒消しの効果があると考えられ、いくつかの部族は蛇に噛まれた傷のケア、切り傷や化膿などの手当に使用していたそうです。部族によって使用するエキナセアの種類や用途に若干の違いがあったことも分かっています。用法や目的は異なっている部分もありますが、ヨーローッパ系の入植者たちもアメリカインディアンからエキナセアの利点を知り、19世紀頃になるとアメリカの折衷主義の医師を中心に呼吸器感染症や皮膚疾患の治療・鎮痛などに使用しました。梅毒やマラリアなどにも利用され、一時期は万能薬のように扱われていたのだとか。こうした歴史から日本では「インディアンのハーブ」「ネイティブアメリカンの秘薬」などと紹介さることもありますね。とは言え、北米では合成医薬品の開発・普及に伴ってエキナセアの存在は忘れらていったようです。

しかし1930年代にエキナセアに着目したドイツの科学者が自国へと持ち帰り、自国で栽培と研究をスタート。ドイツを中心にヨーロッパの国々でも本格的な臨床研究が行なわれるようになり、抗菌性や感染症予防に対する有効性が報告されたことで世界的に注目されるハーブの1つになっていきました。1950年頃に抗生物質が登場したことで需要は衰退し研究も下火になりましたが、20世紀末頃には合成作の副作用が指摘されること・自然派志向の人々が増えたことで再びハーブに注目が集まります。エキナセアについても再び臨床研究が行われるようになり「天然の風邪薬」「Immune Support tea(免疫サポートティー)」など栄養補助食品や健康食品原料に使われています。しかしながら系統的レビューとメタ分析では試験に使われた製品と報告された有効性にバラつきが見られることが指摘されており、風邪の治療や予防に効果的ではないと結論付けられているものもあります。日本でも医学的な効果が認められてものではありませんから、過度な期待は避けるようにしましょう。

基本データ

通称
エキナセア(Echinacea)
別名
エキナケア、パープル・コーンフラワー(Purple Coneflower)、紫馬簾菊(ムラサキバレンギク)、紫西洋菊(ムラサキセイヨウギク)、金光菊、紫錐花など
学名
Echinacea purpure
もしくはE.angustifolia
科名/種類
キク科ムラサキバレンギク属/多年草
花言葉
優しさ、深い愛、あなたの痛みを癒します
誕生花
3月16日、8月20日、10月7日、10月13日
使用部位
全草(根も含むものも有)
代表成分
多糖類(アラビノガラクタン、イヌリン)、フェノール類(クロロゲン酸、チコリ酸、シナリン、エキナコシド)、フラボノイド類(ニコチフロリン、ルチン)、アルカミド類(エキナセイン/イソブチルアミド誘導体)、精油など
代表効果
抗菌、抗ウイルス、免疫賦活、抗炎症、抗アレルギー、抗酸化、血圧降下、利尿、抗不安
こんな時に
免疫力向上、風邪・インフルエンザ予防、風邪の治癒促進、アレルギー軽減、関節炎や頭痛の軽減、生活習慣病予防、むくみ、ストレス対策、ニキビ予防
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ
ハーブティーの味
ドライな草の香り、さっぱりしているが少し青臭さを感じる場合も
カフェインの有無
ノンカフェイン

エキナセアの成分と作用

エキナセアティーに期待される効果

免疫機能サポートに

風邪・インフルエンザ予防に

エキナセアの利点として最も注目されているのが、風邪やインフルエンザなどの感染症予防に役立つのではないかという部分。作用秩序については解明されていない部分も多いのですが、豊富に含まれているフェノール化合物が複合して働くことで免疫刺激・増強効果を持つのではないかと考えられています。

特にエキナセアの根に多く含まれているエキナコシド(echinacoside/エキナコサイドとも)という成分には抗菌および抗ウイルス活性が見られたこと・白血球の一種であるマクロファージの活発化などの働きを持つ可能性が報告されています。そのほか多糖類(糖タンパク質)やフラボノイドにも免疫機能の働きを高める働きが期待できることから、免疫機能サポートと抗菌・抗ウィルス作用の両方からエキナセアは風邪やインフルエンザを始めとした感染症予防をサポートするのではないかと考えられています。

エキナセアやその抽出物についての働きについては解明されておらず、抗ウィルス作用を持つという説もあれば、明らかな抗ウイルス効果は持たないが免疫機能を調整するという説もあります。エキナセア抽出物が適応免疫および自然免疫機構に働きかけるという報告は世界各地からなされており、2011年9月『Journal of Ethnopharmacology』には日本の九州大学農学部から免疫グロブリン産生を増加させることで免疫機能を強化する可能性を示唆した研究論文も発表されています。2007年にコネチカット大学薬学部から『The Lancet』に発表されたメタ分析では「エキナセアは風邪の発症確率を58%減少させる」と発表された事もあって、エキナセアは世界中で免疫機能サポーター、風邪やインフルエンザ予防に役立つハーブ・健康補助食品として注目されています。

しかしながら、エキナセアとプラセボでの比較実験では差異が見られなかったという報告もありますし、いくつかの系統的レビューとメタ分析では“有効性を示唆した報告で適切に設計された二重盲検プラセボ対照研究は少ない”ということも指摘されています。作用成分・作用秩序もはっきりが解明されていませんし、確認された有効性はエキナセアの品種や抽出物を配合した製品によって差が大きいことも報告されています。エキナセアは現在も有効性を確認すべく研究が行われている植物と言えますし、抽出物や製剤以上にハーブティーの場合は作用が分かりません。過度な期待は避けましょう。

ちなみに、エキナセア有益派によると風邪やインフルエンザなどの感染症予防としてエキナセアのハーブティ・チンキを飲用する場合、2週間飲んで1週間休むというサイクルで継続するのが効果的であるとの見解もあるようです。同じく免疫サポートに効果が期待できるビタミンCが豊富なローズヒップなどとブレンドしてみても良いかもしれません。ただしドイツのコミッションEからは8週間以上の連続摂取を避けるよう警告も出されていますし、休みを開けずに飲用し続けると効果が薄れる可能性が示唆されています。適度に“お休み”の期間を設けて取り入れるようにしてみて下さい。


風邪・インフルエンザの治癒促進に

エキナセアは予防だけではなく、風邪やインフルエンザの治癒を助けてくれるハーブとして使用されていることもあるようです。こちらも有効成分・作用秩序は断定されていませんが、免疫力を高める働きが期待できることに加えて、抗炎症作用を持つことが示唆されているフラボノイドやアラビノガラクタンなどの多糖類の働きが関与しているのではないかと推測されています。その他にエキナコシドなどのフェノール化合物やフラボノイド類が抗酸化作用によって炎症部位に発生する活性酸素を抑制する炎症悪化を予防する、免疫機能を高めることで治癒を促すなどの見解もあります。

エキナセア抽出物を使用した研究でも免疫機能や炎症反応に対する働きかけを示唆した報告は多く、2007年『The Lancet』に掲載されたコネチカット大学薬学部のメタ分析では「風邪症状の持続期間を1~4日間短縮させる」と有効性を評価しています。民間療法やハーブ療法の中では風邪の回復を早めるだけではなく、頭痛・のどの痛み・鼻炎・発熱などの風邪による諸症状軽減に良いハーブとしても使われています。「天然の風邪薬」と称されるのもこのためですね。風邪やインフルエンザのケアとしては「インフルエンザの特効薬」とも称されるエルダーフラワーや、体を温めてくれるジンジャーなどを加えて飲まれることも多いようです。

伝統的な用法に加え医学的な面でも有効性を認める声がある一方、2014年に『Cochrane Database of Systematic Reviews』に発表されたドイツの系統的レビューではプラセボに対するエキナセアの有意な効果を示した試験は1つしか無いことを指摘し“エキナセア製品が風邪の治療に効果があることは示されていない”と結論づけています。同様に風邪治療に対して効果的ではないと結論付けている系統的レビューとメタ分析は多く、2017年にアメリカ合衆国保健福祉省から発表された『風邪と補完的な健康アプローチ』でもエキナセアは“臨床的な治療効果の証拠は弱い”と紹介されています。現時点ではエキナセアによる予防も治療も民間療法の一つと言えますから、インフルエンザに罹患した・その疑いがある場合は医療機関での診断と治療を受ける必要があります。


アレルギー性鼻炎や花粉症軽減にも?

エキナセアは免疫機能を高めると称されていますが、これは過剰に攻撃性を増すものではなく正常に機能するようサポートしてくれる働きと考えられています。2006年にはノースカロライナ大学からエキナセアに含まれるアルキルアミドが、T細胞による炎症性サイトカインと呼ばれるグループに含まれる“IL-2”の分泌を抑制することで免疫調節機能を持つことを示唆した研究報告がなされています。2007年にはエキナセアが自然免疫機能と適応免疫機能の強化に役立つ可能性があることを示唆したアイオワ州立大学の研究が『Journal of Medicinal Food』に発表されており、エキナセア製剤には動物実験では炎症性サイトカインであるTNF-αとIL-1βに対して粗大作用を持つことが示唆されています。

他ポリフェノール類による抗酸化・抗炎症作用も期待できることからエキナセアは花粉症やアレルギー性皮膚炎などのアレルギー症状の軽減サポートにも期待されています。ただし、抗アレルギー作用についての研究数は少ないこと・エキナセアの品種・抽出方法や製剤によっても観察された結果に違いがあることから、まだ有効性について評価が出来る段階ではありません。

また、エキナセアはキク科植物であり、特に外用・サプリメントなどの抽出物を使用した場合はアレルゲンとして作用してしまう可能性も指摘されています。ティーやチンキの使用で花粉症が緩和されたという方もいらっしゃいますが、医薬品ではないので効果の実感についてはまちまち。自分の体質に合うかを見極めながら取り入れるようにして下さい。

そのほか期待される作用

頭痛・関節炎などの痛み緩和に

エキナセアは伝統的にネイティブ・アメリカン達が頭痛などに対する鎮痛剤として利用していたハーブで、現在でも痛みの緩和に役立つと考えられています。頭痛や歯痛・腹痛など様々な痛みを緩和する働きが期待されていますし、近年は抗炎症作用と合わせて関節炎の軽減にも注目されています。イタリアの大学で行われた実験では慢性的な膝関節炎がある被験者のうち、ショウガとエキナセア抽出物を摂取したグループに有意な膝関節の痛み軽減効果が見られたことも報告されています。


抗酸化&生活習慣病予防に

エキナセアはクロロゲン酸やエキナコシドなどの抗酸化物質を持つポリフェノール類を含んでいます。このため活性酸素/フリーラジカルの増加を抑えることからも免疫機能の低下や炎症の軽減が期待されていますし、酸化によって起こる早期老化や動脈硬化・心血管疾患の予防にも繋がると考えられます。

加えて、エキナセアが血圧降下に役立つ可能性があることを示唆したEssentia Institute of Rural Healthによって行われた予備調査が2013年『BMC Complementary and Alternative Medicine』に、2017年『Journal of medicinal food 』には台湾の弘光科技大学からエキナセア(Echinacea purpurea)の花抽出物には濃度依存的にα-アミラーゼ、α-グルコシダーゼ、およびACE活性の阻害が見られたことが報告されています。こうした報告からエキナセアが高血圧や糖尿病予防にも役立つ可能性も注目されています。


むくみ・排尿トラブルに

風邪予防など免疫機能関係で取り入れられることの多いエキナセアですが、それ以外にリンパの循環を活性化させ老廃物の排出を促進する働きも期待されています。この働きからむくみ改善やデトックスのサポート用としてブレンドティーに加えられていることもあるそう。また抗菌・抗ウィルス作用や免疫力を高める働きから、ドイツなどでは尿道炎・膀胱炎など泌尿器系感染症に対する民間療法としてエキナセアティーが使われることもあるようです。

こちらも有効性について認められているものではありませんが、むくみ対策としてはダンディライオン(ルート)ゴボウなどとブレンドして取り入れてみても良いでしょう。ただしエキナセアはアレルギー性や継続使用による肝毒性なども懸念されていますから、飲んだ翌日・女性であれば生理前のむくみなど“一時的なむくみ”対策として取り入れるのがお勧め。継続して利用したい場合は前記のハーブだけにする・作用が穏やかなハトムギ茶などを飲むようにしたほうが無難です。


美肌保持・肌トラブル予防に

エキナセアの免疫力向上作用効果などはニキビや湿疹、ヘルペスなど肌の炎症を抑えることにも繋がると考えられています。これは免疫力が整った状態であれば抑えられるはずの菌やウィルスが、免疫機能が乱れていることで大きな炎症として表れてしまう可能性があるため。ヘルペスの再発予防・いつまでも治らない大人ニキビの改善に免疫力を整えようと言われるのも同様の理由からです。

エキナセアは免疫力を整える働きが期待できることに加え、抗菌・抗ウィルス作用や抗炎症作用を持つとも言われています。このため炎症の原因をより直接的に抑制し、症状を緩和させる働きも期待できます。様々な抗酸化物質の補給から肌のアンチエイジングサポートに繋がる可能性もあるでしょう。


メンタルサポートにも期待

2012年3月に『Phytotherapy Research』に発表されたハンガリー科学アカデミーの研究では、In vitro試験でエキナセア抽出物がシナプス伝達を有意に調節したことが報告されています。作用や有効性が断定される段階ではありませんが、副作用を抑え不安障害やうつ病などの精神疾患のケアに役立つのではないかと更なる研究が期待されています。アメリカではADD(注意欠如障害)やADHA(注意欠如多動性障害)に対する自然療法薬として利用されており、メンタルサポート用のサプリメントにも使われているそうです。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

スキンケア・皮膚炎症予防に

エキナセアの抗菌・抗ウィルス作用や免疫力を整える働きは、外側から幹部に直接使用することでも皮膚炎症の予防や軽減に役立つと考えられています。このためニキビ対策などに利用されており、身近な利用法としては冷ましたエキナセアのハーブティーをローションとして利用するとニキビの殺菌に良いとも言われています。

また、抗炎症作用から欧米では傷・ただれ・湿疹・火傷・日焼けなどの皮膚炎症に用いる軟膏の成分としてエキナセアが配合されているものもあるそうです。皮膚のバリア機能を回復させる・アトピー性皮膚炎の症状を緩和するという報告もなされており皮膚科学方面に対しての研究も行われています。

エキナセアの注意事項

  • 妊娠中・授乳中の方、12歳未満のお子さんへの使用は避けましょう。
  • 免疫系統を刺激する可能性があるため、自己免疫疾患のある方・結核の人やHIV陽性の方は症状を悪化させる危険性があります。使用を避けるか医師に相談の上で利用するようにしましょう。
  • 医薬品を服用中の方は医師・薬剤師に相談してください。
  • ヨモギなどキク科植物にアレルギーがある方、アレルギー体質の方は使用に注意が必要です。
  • 連続使用期間は内用・外用を問わず、8週間以内にしましょう。
  • カフェインとの同時摂取は控えましょう。

参考元