【クランベリー】
原料植物、ハーブティーに期待される効果効能

ポリフェノールたっぷりで、膀胱炎予防にも…?

ドライフルーツやジュースとしても親しまれているクランベリー。アメリカの民間療法では膀胱炎などの尿路感染症対策に用いられてきた歴史もあり、現在の研究でもクランベリーに含まれているA型プロアントシアニジン(A型PAC)が細菌付着を抑制して細菌の増殖を抑える可能性があると考えられています。歯垢対策や歯周病予防など葉の健康維持に役立つフルーツとしても注目されているほか、ボリフェノールとビタミンCを豊富に含むことから抗酸化作用によってアンチエイジング健康維持やサポートしてくれる働きも期待されていますよ。

クランベリーのイメージ画像:ボタニカルラブ

クランベリーとは

植物紹介:クランベリー

ジャムやドライフルーツとして目にすることも多い赤色の果物、クランベリー。一口にクランベリーとは言うものの、クランベリーという言葉はツツジ科スノキ属ツルコケモモ亜属に属す低木もしくはその果実の総称です。ブルーベリーやビルベリーも同じスノキ属の植物ですが、ツルコケモモ亜属ではないのでクランベリーと呼ぶことはありません。種で見るとツルコケモモ亜属に分類されるツルコケモモ(学名:Vacinnium oxycoccus)・ヒメツルコケモモ(学名:Vacinnium microcarpum)・オオミツルコケモモ(学名:Vaccinium macrocarpon)に、日本にも自生しているアクシバ(学名:Vaccinium erythrocarpumもしくはVaccinium japonicum)を加えた4種類に大別されていますよ。

ちなみに英語ではツルコケモモを最も一般的な種であるという意味で「Common Cranberry」と呼ぶこともありますから、ヨーロッパではクランベリーというとツルコケモモを指すのが一般的なようですが、北米では“ベアベリー(Bearberry)”とも呼ばれるオオミツルコケモモもよく使われているようです。日本には輸入品として両方入ってきており、一般的にはどちらも区別せずにクランベリーと呼んでいます。日本でクランベリーを生状態で見かけのはレア。これは国内でほとんど生産されていないだけではなく、酸味と渋みが強く生食には適していないという事もあります。北欧や北米では生産・消費共に多いものの、青果として食べることはほぼありません。ジュースもしくはソースを作るために使われるのが主で、アメリカやカナダの感謝祭料理では七面鳥にクランベリーソースが定番なのだとか。そのほかスープやシチューの隠し味や焼き菓子などのトッピングに、甘さを加えてドライフルーツにしたりもします。

種類によって原産地や歴史は異なっていますが、北米ではネイティブアメリカン達が古くから食料・医薬・染料と様々にクランベリーを活用してきたと伝えられています。ネイティブアメリカンの携帯保存食“ペミカン”にもクランベリーは使われてますし、消化不良や下痢・傷のケアなどにも利用していたと考えられています。クランベリーという呼び名の語源も鶴(crane)と小果実(berry)を合わせた言葉と考えられており、17世紀にアメリカへと渡ったヨーロッパ移民が命名したという説がありますよ。ヨーロッパ系移民達もグランベリーを食べるようになり、19世紀初頭にはクランベリーの栽培も本格化します。この頃からアメリカでは膀胱炎にクランベリージュースという民間療法も、女性を中心に広まっていったのだとか。

20世紀に入るとクランベリーの成分や伝統医療・民間療法の効能に対しての研究も行われ、尿路感染症への有効性や歯周病・心臓血管系・消化器系などに対する有用性が報告されるようになり注目を集めます。プロアントシアニジンやフラボノールなどの抗酸化物質が多く含まれていることも報告されていることから、アンチエイジングフルーツとして美容意識の高い女性にも取り入れられています。ただし尿路感染症への有効性に対しては賛否両論ですし、それ以外の効果についても現状では認められているとは言い難い存在。クランベリー製品によっても有効性に差があるのではという見解もありますから、医薬品的な効能は考えないようにしましょう。健康維持や美容面でのサポートが期待できる“食品”という位置付けです。

基本データ

通称
クランベリー(Cranberry)
別名
蔓苔桃(ツルコケモモ)、姫蔓苔桃(ヒメツルコケモモ)、大実蔓苔桃(オオミツルコケモモ)など
学名
Vacinnium oxycoccus
Vaccinium macrocarponなど
科名/種類
ツツジ科スノキ属/常緑低木
花言葉
天真爛漫、心痛を和らげる、心を癒やす
誕生花
10月18日
使用部位
果実
代表成分
A型プロアントシアニジン、フラボノール、ケルセチン、タンニン、ビタミン類、食物繊維、有機酸類(クエン酸、キナ酸など)
代表効果
抗酸化、細菌付着防止、抗菌、腎機能向上、利尿、抗コレステロール
こんな時に
尿路感染症(膀胱炎・尿道炎・腎盂腎炎)予防、むくみ、血行不良、動脈硬化予防、歯周病・歯肉炎予防、風邪・インフルエンザ予防、疲れ目、アンチエイジング、美肌
おすすめ利用法
ドライフルーツ、ジュース、ハーブティー、ハーブチンキ
ハーブティーの味
甘酸っぱいフルーティーな風味、味は少し酸味を強く感じるかも…
カフェインの有無
ノンカフェイン

クランベリーの成分と作用

クランベリーティーに期待される効果

健康維持のサポートに

尿路感染症予防に

伝統医療・民間療法の中で、クランベリーティーは膀胱炎などの尿路感染症のケアに用いられてきました。こうした働きはクランベリーに含まれているプロアントシアニジンの働きではないかと考えられています。プロアントシアニジンは二重結合A型と一重結合B型という2タイプがあり、クランベリーに含まれているものはA型プロアントシアニジン(A型PAC)の方。A型プロアントシアニジンには細菌付着防止作用を持つことが認められており、膀胱壁への細菌の付着を抑制して細菌を尿と共に排泄させる働きがあると考えられています。

そのほかにキナ酸などの有機酸類が尿のpH値を弱酸性に保つことで細菌増殖を防ぐ、抗酸化作用によって腎臓機能を助けるという説もありますよ。膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症は細菌が発生することで起こる炎症が原因ですから、キナ酸やA型プロアントシアニジンなどが複合して働くことでクランベリーは細菌性の尿路感染症予防を助けてくれていると言えるかも知れません。

ただしクランベリーによる尿路感染症リスク低減効果については、研究者の中でも見解が分かれています。2012年に出されたシステマティックレビュー(系統的レビュー)では“クランベリージュースまたはクランベリー抽出物がUTI(尿路感染症)予防に有効だという証拠はない”と結論づけています。しかし2017年にポルトガルの大学から発表された系統的レビューでは尿路感染症の発生率を有意に減少させたことが示されており、クランベリーが尿路感染症予防、特に再発予防に役立つ可能性を示唆しています。有効性があるかはより詳細な研究が必要であると考えられているのが現状と言えます。膀胱炎などを起こしている場合は医療機関で適切な治療を受け、予防策の一つとしてクランベリージュースやティーを取り入れるようにしましょう。


むくみ解消・血行不良にも

クランベリーの代表成分とも言えるA型プロアントシアニジン(A型PAC)は細菌付着防止作用が注目されていますが、ポリフェノールの一つとして抗酸化作用もあります。クランベリーにはフラボノールやケルセチンなどのポリフェノールも含まれていることから、総合してみると抗酸化作用や抗炎症作用を持つと考えられています。この働きから腎臓のダメージを軽減させ、腎臓機能を正常に保つ手助けも期待されていますよ。腎臓は腎臓は血液を濾過し体内の余分な水分や塩分、老廃物を尿として排出させる働きを担っている臓器ですので、機能促進による水分排泄=むくみの解消にも繋がる可能性があります。

加えてケルセチンなどのフラボノイドには悪玉コレステロール低減・蓄積抑制作用を持つ可能性も報告されています。血中脂質の酸化を抑える抗酸化作用と合わせて血管の健康維持にも繋がりますし、ケルセチンとビタミンCはコラーゲン生成を促して血管を丈夫にする働きも期待できます。血液と血管の状態を整えることで血行不良の改善、血液の滞りを改善することからむくみの軽減に繋がる可能性もあるでしょう。冷え性の方や疲労感が抜けない時に取り入れてみても良いかも知れません。


生活習慣病予防にも期待

プロアントシアニジンなどのポリフェノールによる抗酸化作用やコレステロール低減作用は、動脈硬化や心疾患の予防にも繋がります。増えすぎた活性酸素が悪玉(LDL)コレステロールを酸化させることで出来る酸化LDLは血管壁に沈着し、動脈硬化を引き起こすプラークの元となります。このため抗酸化物質の補給はアテローム性動脈硬化症の予防に役立ち、心筋梗塞や脳梗塞の予防にも繋がると考えられます。体を酸化ダメージから守ることで健康や若々しさをサポートしてくれるでしょう。ちなみにアメリカの民間療法では膀胱炎だけではなく心臓病予防にも利用されており、クランベリージュースを1日2杯飲むことで生活習慣病のリスクが下がるという報告もあるようです。


歯周病・歯肉炎予防に

クランベリーは歯に良い果物としても注目されています。これは尿路感染症と同様にA型プロアントシアニジン(A型PAC)によって細菌付着を抑える働きを持つと考えられているため。と言うのも、歯周病や歯肉炎の原因となる“歯垢(プラーク)”と呼ばれる白色~黄白色のネバネバした物体は細菌とその代謝物が主体。A型プロアントシアニジンは口内の細菌増殖防止・減少する働きがあることが報告されており、歯垢を歯に付着させにくくすることで歯周病や歯肉炎予防に役立つと考えられています。歯垢は口臭の原因にもなりますから、口臭対策にも期待できるでしょう。


風邪・インフルエンザ予防に

作用成分やメカニズムについては断定されていないものの、ベリー類の果汁には抗ウイルス作用があることが報告されています。このためベリー類に含まれているプロアントシアニジンなどのポリフェノールのウイルス活性阻害作用があるという見解もありますし、抗酸化作用から免疫機能を整える働きも期待できるでしょう。

クランベリーの場合はビタミンCほかビタミン類を豊富に含んでいることからも、免疫力や抵抗力アップに繋がると考えられています。ビタミンCには抗ウイルス作用を持つインターフェロンの生成を促進することで免疫力を高める・自身が免疫細胞のように細菌やウイルスを攻撃する働きなども報告されていますよ。抗酸化を兼ねて風邪予防に取り入れてみても良いかも知れませんね。

そのほか期待される作用

目の疲れ・視機能サポートに

クランベリーの特徴といえば、クランベリーレッドとも言われるルビーのような鮮やかな紅色。その色の元となっているのはブルーベリーと同じくアントシアニン系色素で、青ではなく赤系の色を呈しているのはクエン酸などの有機酸類と反応しているためです。アントシアニンは抗酸化作用を持つ成分であるだけではなく、目の網膜に存在するロドプシンの再合成を促すことで目の健康をサポートしてくれる成分としても注目されている存在です。

私達の目の網膜にはロドプシンという色素体が存在しており、光の刺激を受けると分解されて電気信号を発することで脳に映像が認識されています。この時に分解されたロドプシンは再合成され、再び情報を伝えるために分解され…と分解・再生を繰り返し行っています。しかし加齢や視機能の酷使などによってロドプシン再合成が滞ると目の疲れやかすみ・ぼやける・視力が低下するなど影響が出てきます。このためロドプシンの再合成を促すアントシアニンを補給し、ロドプシンの再合成が正常に行われることで目の疲労から起こる見づらさや不快感解消に役立つと考えられています。

またアントシアニンは抗酸化作用を持つことから、酸化ダメージによって発症する白内障・緑内障の予防に繋がる可能性もあります。アントシアニンが体内に留まっていられる目安は24時間程度ですので、目の酷使が気になる方は定期的に補給すると良いと言われています。ルテインを含むカレンデュラ(マリーゴールド)とブレンドするものオススメです。ただし疲れ目や眼精疲労の原因はロドプシン再合成低下によるものだけではありませんから、アントシアニン補給が全ての疲れ目や視力低下改善に役立つ訳ではありません。


美肌保持・アンチエイジングに

クランベリーにはプロアントシアニジンやフラボノールなど20種類以上の抗酸化化合物が含まれていることが認められています。抗酸化作用は肌細胞の酸化を抑えすることで、シワ・タルミ・シミなどの肌の老化現象を抑制してお肌を若々しく保つ手助けをしてくれます。そのほか酸味成分であるクエン酸やリンゴ酸などにも新陳代謝を高める働きが期待できますから、抗酸化作用と合わせて肌のターンオーバー促進・くすみ軽減を手助けしてくれる可能もあるでしょう。

また、クランベリーにはビタミンCとビタミンCの働きを助けてくれるケルセチンも含まれています。ビタミンCは抗酸化作用以外にコラーゲンの生成促進作用、シミ・そばかすの原因となるメラニン色素の生成に関わる酵素チロシナーゼの働きを阻害することでメラニン色素の沈着を予防する美白効果があることが認められています。肌のハリを維持したい、内側からも紫外線対策を心がけている方にもぴったりですね。似たような成分と風味のハイビスカス、ビタミンCの働きを助けるビタミンP(フラボノイド)類が豊富なローズヒップティーとブレンドして飲むのもオススメです。


デトックス・肥満予防にも

クランベリーは腎臓機能を高めて排尿を促す働きが期待されているほか、食物繊維も含んでいます。このため老廃物の排出を促すことでデトックスのサポーターとしても役立つと考えられています。ポリフェノール類などの抗酸化作用やクエン酸の働きによって血液循環が良くなることと合わせて、代謝を良くすることにも繋がるでしょう。直接的なダイエット効果(脂肪燃焼促進・吸収阻害など)は期待できませんが、老廃物排出促進・代謝低下予防から肥満予防にもクランベリーが取り入れられています。

クランベリージュースとクランベリーティー

クランベリーを飲み物として利用する場合は、クランベリージュースとクランベリーティーの二つが主。そのほかにチンキやシロップを使うなどの方法もありますが、手軽な方法としては二択ですね。ジュースはミキサーなどで粉砕するか濃縮還元された製品など他の果物と同じですが、ハーブティー感覚で使用したい場合には少し注意が必要です。乾燥クランベリーに熱湯を注いで蒸らすだけでは、お茶と呼べるようなものにはなりません。

海外サイトで“Cranberry Tea”として紹介されている方法は、概ねクランベリーを鍋に入れてしっかりと煮詰めるというもの。しっかりと水分に色が出るまで30分から1時間程度煮込み、火を止めてから30分から1時間くらい置いておく方が多いようです。煮込む時にはお好みに合わせてシナモンやクローブなどで香り付けし、レモン汁やオレンジジュースで割って飲むという方もいらっしゃいますよ。

そのほかクランベリージュースやシロップを紅茶などと混ぜたものをクランベリーティーと呼んでいる場合もあります。またクランベリーティーとして販売されているティーパックなどであれば、ハイビスカスとのミックスやクチナシ色素などを付けて綺麗なルビー色になるように調整されているものも珍しくはありません。お湯を注ぐだけなのに素晴らしく濃く綺麗な色が出ているものは原材料を確認した方が無難ですね。

成分として見れば、クランベリーには鉄分やカルシウムなど水分には溶け出さないミネラルも豊富。煮出したクランベリーにも色がかなり残っているあたりアントシアニン類なども全てが抽出出来ている訳ではないと考えられます。ビタミンやミネラルをしっかりと補給したい場合であればクランベリージュースの方を飲むか、お茶を作った後のクランベリーもジャムなどに加工して食べると良いでしょう。ただし市販されているクランベリージュースは美味しくするために甘味料をたっぷり加えているものもありますし、ジャムもお砂糖をかなり使います。糖質のとりすぎにならないように注意してください。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

スキンケアに

クランベリーはビタミンCやクエン酸を含んでいることから、外側から使用しても肌の抗酸化・ピーリング効果などが期待されています。ドライクランベリーを粉末化したものを石鹸やパックとして利用することで、天然スクラブとして毛穴の汚れや余分な脂質の除去に役立つという説もあります。ただし成分的にも、スクラブという部分においても皮膚刺激性が懸念されます。敏感肌の方は使用を避け、事前に皮の厚い部分から順にパッチテストを行うようにすることをお勧めします。

またポリフェノールやビタミンCが豊富なことから、外側からも抗酸化を助けることでシミ・シワ・たるみの予防に役立つと考えられています。抗菌作用が期待できる成分が含まれていることと合わせてニキビ予防に役立つ可能性もあります。このためクランベリーティーをそのまま化粧水代わりに利用することで美白効果(シミ予防)に良いという説もありますが、市販されている化粧水などに含まれているビタミンCとは異なり自分で浸出したものは安定性が低いという指摘もあります。スキンケア基剤として売られているビタミンCのような効果は期待できないという見解が主ですから、期待はしすぎないようにしましょう。

クランベリーの注意事項

  • シュウ酸塩を含むため腎臓結石・尿路結石のある方は使用を避けましょう。
  • 医薬品との相互作用がある可能性があります。薬を服用中の方は医師に相談してください。
  • 妊娠中・授乳中の安全性について十分に信頼できる情報がありません。使用は控えたほうが確実です。

参考元