【ブラックコホシュ】
原料植物、ハーブティーとして期待される効果効能

更年期障害対策として注目されるが、肝障害の懸念も

更年期障害に悩む女性のサポーターとして、サプリメントなどの健康食品に使われているブラックコホシュ。女性ホルモンのエストロゲンを増加させる働きが期待されており、ホルモンバランスを整えることでPMS(月経前症候群)の諸症状軽減や月経不順などの軽減にも効果が期待されています。ただしエストロゲン様作用や更年期障害の緩和などに対しては否定的な報告もあり、十分なエビデンスが無いという指摘や肝毒性がある懸念も。女性サポートとして広く用いられてはいますが、体調に注意して用いる必要があるハーブと言えます。

ブラックコホシュのイメージ画像

ブラックコホシュとは

植物紹介:ブラックコホシュ

女性向け健康食品やブレンドティーの中で、その名を目にする機会も増えているブラックコホシュ。呼び名からは植物の想像がつきにくいですが、キンポウゲ科ルイヨウショウマ属(Actaea)に分類されるルイヨウショウマの近縁種で、呼び名にブラックと付きますが白い花を咲かせます。ブラックコホシュの“Black”はハーブとして使われている根茎が黒っぽい色をしていることが由来とされており、コホシュというのはルイヨウショウマ属の植物の総称。紛らわしいのですが黒升麻(クロショウマ)と呼ばれている植物はサラシナショウマ(学名:Cimicifuga simplex)という別の植物で、ホワイトコホシュやブルーコホシュなど似た名前の植物が多くありますが植物としても成分としても違うもののため注意が必要です。

ブラックコホシュは北アメリカ東部が原産で、アメリカ大陸に古くから生活していたネイティブアメリカン達は薬草としてこの植物を活用していたことが分かっています。彼らは関節炎や筋肉痛などの痛みや咳・発熱などの症状に対する消炎鎮痛剤のような感覚で、また月経不順や月経困難症など女性領域での不調にと、広くブラックコホシュを使用していたのだとか。ヨーロッパ人がアメリカ大陸に入植するようになると先住民以外にもその存在は知られるようになり、初期の入植者達は筋肉弛緩剤としてブラックコホシュを取り入れたと伝えられています。1820年には米国薬局方にも“black snakeroot”として登場するようになり、19世紀のうちには女性領域の不調に対しても使用されるようになっていたと考えられています。

よりブラックコホシュの利用が広まったのは1950年代半ば以降、ブラックコホッシュがドイツの臨床医に使用されるようになったことがきっかけとされています。1960年までにはブラックコホッシュ製剤(Remifemin/レミフェミン)について、閉経前および更年期症状に伴うほてりや不快症状の軽減に役立つ可能性があるという報告が多く寄せられました。このためドイツほか欧州では更年期障害の症状緩和などを目的とする医薬品の原料として承認されており、承認されていないアメリカでもレッドクローバーと並ぶ更年期対策ハーブとして親しまれている存在となっています。しかし更年期障害に対するブラック・コホッシュの有効性を示すために十分なエビデンスが無いという指摘もありますし、今だに研究・試験が行われ続けているハーブであることに留意しましょう。

ちなみにブラックコホシュの属名cimicifuga虫(cimex)と逃げる(fugere)という言葉を合わせたものが由来とされ、古くは強い香りから虫除けに使われていたとも言われています。ハーブティーにした場合も独特の香り・苦味が強いため「ウッ…」と感じる方も少なくないことから、サプリメントなど風味を感じにくいようコーティングしての利用が多くなっています。ただし海外ではブラックコホシュ摂取に関連している可能性がある肝障害の事例も報告されています。日本でブラックコホシュによる健康被害事例は報告されていませんが、厚生労働省はブラックコホシュの利用に関して注意喚起を行っていますので、きちんと用法用量を守って取り入れるようにしましょう。肝臓に疾患のある方や医薬品を服用中の方は医師に事前に確認し、違和感を感じた場合には即座に使用を中止するようにしてください。

基本データ

通称ブラックコホシュ(Black cohosh)別名アメリカショウマ、黒升麻(くろしょうま)、ブラックスネークルート(black snakeroot)学名Actaea racemosa
(syn.Cimicifuga racemosa)科名/種類キンポウゲ科ルイヨウショウマ属(サラシナショウマ属)/多年草花言葉 - 誕生花 - 使用部位根・根茎代表成分トリテルペン配糖体(アクテイン、23-epi-26-デオキシアクテイン、シミシフゴシド)、イソフラボン類、タンニン、樹脂、サリチル酸類、精油など代表効果エストロゲン様、女性ホルモンバランス調整、通経、鎮痛、抗炎症、鎮痙、鎮静、血管拡張こんな時に更年期障害(ホットフラッシュ、寝汗、耳鳴り、眩暈、頭痛、不眠など)、骨粗鬆症予防、PMS(月経前症候群)、月経不順、生理痛、筋肉痛、リウマチ、神経痛、関節痛、気管支炎おすすめ利用法ハーブティー、ハーブチンキ、湿布ハーブティーの味墨汁を連想するような土臭い香り、味も苦味が強く飲みにくいカフェインの有無ノンカフェイン

ブラックコホシュの成分と作用

ブラックコホシュティーに期待される効果

女性の健康サポートに

更年期障害

ブラックコホシュは欧米を中心に、更年期障害など女性ホルモンのバランスの乱れに起因する不調緩和に役立つハーブとして取り入れられてきました。作用秩序などは解明されていませんが、ブラックコホシュはフィトエストロゲンと呼ばれる植物性のホルモン様物質を含み、天然のホルモン代替品としてエストロゲンを増加させるのではないかと考えられています。

閉経前後に起こる更年期障害と呼ばれる諸症状の原因として、女性ホルモンのバランスが変化する、特にエストロゲンの分泌が低下することが挙げられます。ホルモンバランスの変化に引きずられるような形で自律神経も乱れてしまい、ホットフラッシュと呼ばれる火照りや寝汗、イライラ・抑鬱・不眠・めまい・頭痛など様々な症状が起こるという見解が主流となっています。ブラックコホシュはエストロゲン様作用によってエストロゲンレベルの増加を助け、こうした更年期障害に伴う不調を軽減させる働きが期待されています。

2013年に『Gynecological Endocrinology』に掲載されたレビューでは、ブラックコホシュを服用した女性の方がプラセボ投与群よりも平均して更年期症状が軽減されていることが報告されています。そのほかにもクッパーマン指数(更年期指数)の低下・ほてりや寝汗を抑える働きが見られたなどの報告が多くある一方で、ブラックコホッシュの補給とほてりなどの血管運動症状の数の減少に有意な関連は見られない・エストロゲン様作用を示さなかったという報告もなされています。

このことからアメリカでは更年期障害の緩和にブラックコホッシュなどのハーブ療法を推奨しないことを表明している学会もあり、日本でも十分な根拠がないとして食品・健康食品として扱われているわけです。効能については個人差がある、使用されるブラックコホッシュによって不均一であるという指摘もあるため、あくまでも更年期生涯の不快感を予防・軽減してくれる可能性があるハーブという扱い。ちなみにブラックコホシュによる更年期障害の緩和効果が認められるまでは4週間程度の継続飲用が必要との見解が多く、セントジョーンズワートとの併用で効能が増すとの研究報告もなされています。ただし長期継続利用についての安全性は確認されていないため、6ヶ月以上の服用は避けるようにしましょう。


骨粗鬆症の予防に

閉経に伴うエストロゲンの減少は、女性の骨粗鬆症リスクを高めることが認められています。コツッ少々というのは骨に蓄えられている骨に含まれるカルシウムなどが減少することで骨量が低下し、骨の強度が弱くななることで骨折しやすくなる状態を指します。女性ホルモンの一つであるエストロゲンは骨からカルシウムが溶けだすのを抑制する働きがあることから、閉経後の女性に骨粗鬆症が多くみられるのはエストロゲン分泌減少が関係していると考えられています。

ブラックコホシュはエストロゲンの分泌低下を抑制する、もしくはエストロゲンレベルの増加を助kる働きが期待されているハーブ。このことからエストロゲンの減少を抑えて骨量減少を予防し、骨粗鬆症予防にも役立つのではないかと研究が行われています。またエストロゲンの低下は骨密度の減少だけではなく、軟骨代謝異常の原因となる可能性も報告されています。閉経後の女性でリウマチなどの疾患が検査で発見されない場合に生じる、関節痛・O脚・指関節が太くなるなどの減少についてもエストロゲン減少が原因の可能性があることから、ブラックコホシュが関節系の健康維持に役立つのではないかという見解もあります。


月経前症候群(PMS)・生理痛に

月経前症候群(PMS)は生理が始まる約2週間前頃からイライラや気分の落ち込み、胸のハリや痛み・腰痛・むくみなど心身に様々な不快症状を指します。日常生活に支障をきたすような症状が継続して続く場合はPMSと診断されますが、診断を受けるまではいかずとも心や体に不調を覚える女性は珍しくありません。月経前にこうした様々な不調が現れる原因は解明されていませんし幾つかのタイプがあると考えられていますが、女性ホルモンのバランスが崩れることで自律神経などにも乱れが生じるのではないかと考えられています。

女性ホルモンの乱れと言ってもプロゲステロンの増加、エストロゲン過剰など意見は様々。ブラックコホシュはフィトエストロゲン(植物性ホルモン様物質)を含む可能性があるハーブではありますが、植物性のエストロゲンは私達の体内で合成・分泌されるエストロゲンよりも作用は弱いと考えられています。このためエストロゲン過多の場合にはフィトエストロゲンが一部のエストロゲン受容体に入り込むことで全体的に見るとエストロゲンを弱める働きをし、エストロゲンが不足している場合にはエストロゲンを補強する働きが期待されています。

つまりブラックコホシュなどエストロゲン様作用が期待されている食品類は、エストロゲンを高めるだけではなくホルモンバランスを整える働きも期待されていると言えます。この働きからブラックコホシュは月経前症候群(PMS)の緩和や、ホルモンバランスの乱れに起因する生理不順の軽減にも注目されています。近年はブラックコホシュにエストロゲン作用は認められないという報告もありますが、エストロゲン作用ではなくセロトニン作用やドーパミン作用を有する可能性があるという報告もなされています。ドイツのコミッションEでは月経前の不快感および月経困難症に対しての使用を承認しているハーブでもありますから、日本でも女性サポートとしてアンジェリカやレッドクローバーチェストベリーなどと組み合わせたブレンドティーなどが販売されています。

そのほか期待される作用

痛み・炎症の軽減に

ブラックコホシュはネイティブアメリカン達が伝統的に発熱や筋肉痛などのケアに利用してきたハーブでもあります。成分的にもサリチル酸を含んでいることが認められており、頭痛や関節の痛み・炎症などの軽減に役立つ可能性があると考えられています。有効性は認められていませんが、筋肉痛や神経痛・リウマチなどのケアにも取り入れられることがあります。筋肉の痙攣を抑制する鎮痙作用を持つという説もあり、生理痛や気管支炎・喘息などのケアに役立つ可能性があるハーブにも数えられていますよ。


血流トラブル・冷え性に

ブラックコホシュには血管を拡張させることで末梢循環を改善し、血液循環を促す働きがあるのではないかという説もあります。エストロゲンも血管のしなやかさ維持やコレステロールのバランス維持などに関わるホルモンのため、エストロゲン様作用から血管・血流の健康維持に役立つ可能性もあるでしょう。そのほかブラックコホシュは人体の体温調節に役立つアヘン受容体への作用を示唆した報告もあることから、伝統的な効能として紹介される「体の熱(ほてり)を取る」「冷え性を改善する」など体温調整機能の正常化に役立つ可能性があるハーブとしても注目されています。


リラックス・安眠サポートに

ブラックコホシュは神経系に対して鎮静剤として働きかけることで、ストレスや緊張を和らげる働きがあるのではないかという説もあります。欧米のハーバリストは不安や不眠の軽減にブラックコホシュを利用することもあるのだとか。かつてブラックコホシュがこうした働きを持つのはホルモンバランスを安定させるためであると考えられてきましたが、近年は何らかの形で中枢神経・視床下部などに働きかけることで鎮静作用を発揮したりホルモンバランスを整えることに繋がっているのではないかという見解もあります。ただし作用成分や作用秩序については解明されていませんし、有効性についても認められていませんので可能性がある程度の段階です。


美容効果について

エストロゲン様作用を有することから飛躍して、ブラックコホシュはバストアップやウエストのくびれなど女性らしい体のラインを作る働きがある・コラーゲン生成を促すなど美肌作りにもメリットがあるとして美容系のサプリメントなどにも配合されている場合があります。エストロゲンは乳腺細胞やコラーゲンの増加などに関わっていますからブラックコホシュにこうした美容効果が無いとは断定できませんが、そもそもブラックコホシュにエストロゲン様作用があるのか否かも結論付けられていません。また植物性エストロゲンは体内で合成されるエストロゲンよりも働きが弱いこともあり、エストロゲンが持つとされる恩恵を受けられるかについても意見が別れています。

ブラックコホシュはコミッションEで6ヶ月以上の継続利用を避けることが推奨されているハーブですし、体質や摂取量によっては胃腸の不快感・めまい・体重増加・倦怠感・吐き気など様々な不調を起こすことも指摘されています。美容目的で取り入れる場合であっても効果があるか定かではないこと、過剰摂取や継続利用は避けるべきハーブであることを念頭に置いて用いるようにしてください。

ブラックコホシュの肝毒性について

上記でもご紹介したようにオーストラリアやイギリスなどでは、ブラックコホシュ摂取に関連している可能性がある肝障害の事例が報告されています。2007年にはオーストラリア保健省が注意喚起を掲載することを要求し、米国薬局方・英国医薬品庁・フランス食品衛生安全庁・フィンランド食品安全局なども「倦怠感や食欲減退、腹痛、黒色尿、黄疸など肝障害の症状が感じられる場合は使用を中止して医師の診断を受ける」という注意書きのラベルを付けるなどの注意喚起を行っています。日本でも2006年に厚生労働省からブラックコホシュ利用に関しての注意喚起が行われていますが、実際にブラックコホシュが肝障害を引き起こす原因となるかは分かっていません。

2011年にドイツで行われたハーブ誘発性肝障害の調査では、肝毒性が報告された症例で使用されていたブラックコホッシュ製品の品質に問題があった可能性も指摘されています。ブラックコホシュ製品の中にはブラックコホシュではなく類似した近縁種(Actaea cimicifugaなど)が使用されているものがあったこと、不純物や混和物によって肝毒性リスクが生じた可能性があることが報告されています。このためブラックコホシュに肝臓に対しての悪影響はないとする見解もありますが、現時点では品質規格上の問題であったのか、ブラックコホシュに肝毒性があるのかは断定されていません。摂取する健康食品・個人の体質・医薬品や他ハーブなどとの相互作用もあって健康障害があるのか無いのか明言できるものでもありませんから、取り入れる場合は用法容量を守り、体調に異変を感じた場合は使用を中断して医療機関を受診するようにしましょう。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

痛み・炎症の緩和に

ブラックコホシュにはサリチル酸が含まれていることから、ハーブティーやチンキに布を浸して湿布として利用することで消炎鎮痛剤のような働きが期待されています。月経痛や関節痛などの痛みには温湿布として、筋肉痛などには冷湿布としてと温度を変えて利用してみても良いでしょう。また、喉に痛みがある場合はハーブティーをうがい薬代わりに利用することで炎症緩和に役立つという説もあります。

スキンケアに

19~20世紀にかけてはブラックコホシュは肌を綺麗にするハーブと捉えられ、スキンケアにも活用されていた歴史があります。ニキビ・湿疹・いぼ・傷跡・アザなど様々な肌トラブルに用いられていたそうですが、現在はスキンケア基剤として用いられることはほとんどありません。抗炎症作用と血管拡張作用によって血行不良によるくすみ・ニキビケアなどに役立つという説もありますが、皮膚刺激性などについての情報が少ないので使用は避けたほうが無難です。

ブラックコホシュの注意事項

  • 妊娠中・授乳中・お子さんへの利用は避けましょう。
  • 乳がん・前立腺がん・子宮筋腫などホルモン感受性疾患のある方は医師に相談してください。
  • 肝臓障害のある方・医薬品を服用中の方は医師・薬剤師に相談してください。
  • アレルギー体質の方は使用に注意が必要です。
  • 6ヶ月以上の継続服用は控えましょう。
  • 胃腸の不快感、めまい、疲労感などの副作用が起こる場合があります。体調変化を感じた場合は利用を中止し、症状が続く場合は医療機関で診断を受けてください。

参考元