【サンザシ/大実山査子】
原料植物、健康茶として期待される効果効能

伝統的には消化サポートに、近年は美容面でも注目

中国や日本では古くから生薬としても利用されてきた山査子。ハーブとして使用されるホーソンと同じく“サンザシ”と呼ばれるものには数多くの品種がありますが、サンザシもしくは大実山査子(オオミサンザシ)と呼ばれる二種類が使用されています。伝統的には消化促進や腹痛・下痢の緩和など胃腸機能のサポートとして用いられることが多いですが、近年は抗酸化作用を多く含むことからアンチエイジングや血液循環を正常に保つ働きにも注目されています。また脂肪燃焼を促す働きが報告され、ダイエットティーとしても注目されています。

サンザシ/大実山査子のイメージ画像

山査子(サンザシ)とは

植物紹介:サンザシ/大実山査子

サンザシの果実は生のままではかなり酸っぱいですが、お菓子や飲料類などに加工されるとキレイな赤色と甘酸っぱい風味が特徴。そんなサンザシはバラ科サンザシ属(Crataegus属)の植物。広義ではサンザシ属の植物もしくはその果実全体を指す言葉としても使われますが、サンザシ属は中国・ヨーロッパ・北アフリカに原生しており世界的に見ると1000以上もの品種が存在しています。日本語でのサンザシというのは本来、江戸時代頃に中国から薬用植物として伝来したクネアタ種(学名:Crataegus cuneata)を指す言葉でした。このため日本でサンザシと言うと植物としてはC. cuneataを指すのが一般的ではありますが、サプリメントや健康茶・薬酒として利用する場合は大実山査子(学名:Crataegus pinnatifida)の方を指す場合もあります。

というのも漢方で生薬「山査子」として用いられるのは、基本的に中国でよく見られる大実山査子が使われているためこちらは主に中国~朝鮮半島に分布する種で“オオミ(大実)”と付くように果実が2~3cm程とほかの種よりも大振りなのが特徴です。生薬としてだけではなく果物としてもポピュラーで、中国映画などで見かけるりんご飴のようなお菓子タンフールも大実山査子をコーティングしたもの。サンザシ酒を置いている中華料理屋さんもありますね。当ページでは生薬として利用されているオオミサンザシを中心に「サンザシ」として紹介させていただきます。ただし生薬としてはサンザシもしくはオオミサンザシを乾燥させたものと定義されていますので、どちらでも同等の働きは期待できるでしょう。

原産地の中国でサンザシ(大実山査子)は古くから果物として食べられ、薬効ある食材・生薬としても重宝されてきた植物。中国最古の薬物学問書とされる『神農本草経』にも“酸棗(サンソウ)”として記載されていますし、本草学の集大成とされる『本草網目』でも優れた効果を持つ生薬として登場します。山査子は長期間服用しても副作用がなく、命を養う不良長寿の妙薬=上品(上薬)として大切にされてきた食材と言えますね。現在も胃腸の働きを助け消化を良くしてくれる生薬として利用されており、加味平胃散(かみへいいさん)や啓脾湯(けいひとう)などにも配合されています。漢方系のお薬を飲まれている方であれば知らず知らず口にしたことがある方も少なくないかもしれませんね。

ちなみにサンザシは英語でホーソン(Hawthorn)と表現されます。このホーソンという言葉もサンザシ属全体の総称としての意味があるため間違いではありませんが、基本的にはヨーロッパで古くから使われてきたヒトシベサンザシ(学名:Crataegus monogyna)などを指します。区分するために日本のサンザシ(C. cuneata)はJapanese hawthorn、大実山査子はChinese hawthornと呼び分けられていますよ。近縁種で成分も似ていることから胃腸・心臓両方に有効としている文献もありますが、伝統的用途も合わせてホーソンは心臓・血液循環に、オオミサンザシは主に消化器系への働きかけが得意だと考えられています。

↓ホーソンベリーはこちら

基本データ

通称
山査子(ミサンザシ)
学名
Crataegus pinnatifida
もしくはCrataegus cuneata
別名
C. pinnatifidaは大実山査子(オオミサンザシ)やチャイニーズ・ホーソン(Chinese hawthorn)、C. cuneataはジャパニーズ・ホーソン(Japanese hawthorn)
科名/種類
バラ科サンザシ属/落葉低木
花言葉
希望、唯一の恋、成功を待つ
誕生花
3月4日、5月13日
使用部位
果実(偽果)
※葉・花を含む場合も有
代表成分
フラボノイド(ルチン、クエルシトリンなど)、クロロゲン酸、タンニン、トリテルペノイド(ウルソール酸)、クエン酸、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維
代表効果
消化促進、整腸、健胃、収斂、抗酸化、血管保護、血管拡張、血行促進、血圧降下、脂肪燃焼促進
こんな時に
消化不良、胃もたれ、腹痛、下痢、便秘、過敏性腸症候群、高血圧、生活習慣病予防、血行不良、生理痛、アンチエイジング、美肌、ダイエット
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーブチンキ、果実は加工して食用にも
お茶の味
香り・味ともに酸っぱさを感じさせる、まれに香りにエグさがあるものも…
カフェインの有無
ノンカフェイン

サンザシ/大実山査子の成分と作用

サンザシ茶(山査子茶)に期待される効果

胃腸機能のサポートに<

胃もたれ・消化不良に

漢方生薬としてのサンザシ(山査子)は消化不調や下痢・腹痛などお腹の不調に対して使用されることが多い存在。これはサンザシの実に消化酵素が含まれていること、クエン酸が唾液や胃液などの消化液の分泌を促してくれることが大きいと考えられています。特に脂っこいものを食べた後の胃もたれ感に適していると考えられる他、食欲不振時や消化機能の低下が気になる時にも利用されています。

そのほか民間療法としては、二日酔いの気分の悪さなどにも活用されているそう。中国では食事の前後に胃腸をいたわるためにサンザシ茶やジュースを飲む・サンザシを使ったお菓子を食べることもあるようです。日本での梅や梅干しに近い感覚だという見解もあります。


お腹の不調に

サンザシ(山査子)は下痢・腹痛止めとしても称されています、こちらは消化酵素やクエン酸の働きだけではなく、抗菌作用や収斂作用を持つタンニンが含まれていることも関係しているでしょう。タンニンの収斂作用は腸の過剰な収縮活動を抑えることで、腹痛や下痢を軽減することに繋がりますね。加えて便の水分量・硬さを調節してくれるペクチンなどの食物繊維類、ビタミンやミネラルも含まれています。成分的に無理やり便を固めるというものではなく“お腹の調子を整える”という物が多いので、便秘気味の方・便秘と下痢を繰り返すような敏性腸症候群の症状軽減にも役立ってくれそうですね。

血流・心血管サポートに

血液・血管を綺麗に保つ

ヨーロッパはサンザシの仲間であるホーソンは「心臓を守るハーブ」として2000年近く前から使用されてきた存在。現在でもフラボノイド類などの抗酸化物質を多く含むため抗酸化作用や血管保護作用があると考えられており、似た成分を含んでいるサンザシも血管の健康維持や血液循環をサポートしてくれるハーブとして注目されています。

フラボノイドやクロロゲン酸は抗酸化作用によって血中脂質の酸化を抑制することでスムーズな血液循環をサポートして、悪玉コレステロール(LDL)の酸化抑制・アテローム性動脈硬化の予防にも繋がるでしょう。フラボノイドの一種であるルチンなどにはコレステロール低減作用や血管壁強化作用なども報告されていますから、合わせて高脂血症・生活習慣病予防にも効果が期待されています。


高血圧・心血管疾患予防に

サンザシに含まれているポリフェノール類は血中脂質の酸化を抑制し、血管をしなやかに保つことで負荷の少ない血液循環を手助けしてくれます。また血管を拡張する成分も含まれていることから、心臓の負担を軽減したり、血圧が上がることを予防してくれる働きもあると考えられています。心臓に血液と酸素が供給されることで、息切れや動悸・疲労感などの軽減、不整脈や血管鬱血性心不全予防にも効果が期待されています。血液凝固を抑える可能性を示唆した実験報告もあり、血栓予防としても注目されています。


血行不良による不調・痛みにも…

血液の滞りを軽減する働きが期待できるサンザシ(山査子)は“駆お血薬”の一つとしても使用されています。民間療法においては女性の血の道のトラブル、月経不順や生理痛の緩和にも使用されていました。それ以外にも血液循環が整うことで、血行不良に起因する肩こりや腰痛・頭痛・貧血などの予防や軽減、慢性疲労感・倦怠感などの改善に繋がる可能性もあります。脳への血液供給を高めることから記憶力・集中力向上効果なども期待されていますよ。

そのほか期待される作用

アンチエイジング・美肌サポート

サンザシに含まれているフラボノイドやクロロゲン酸などのポリフエノールが持つ抗酸化作用は、肌細胞の酸化を抑えることでシワやたるみなど外見の老化予防=アンチエイジングにも繋がります。お茶として摂取した場合にどの程度摂取できるかは不特定ですが、サンザシにはビタミンやミネラルなどの必須栄養素も含まれているため、美肌のサポーターとしても注目されています。血液循環を促してお肌へ滞りなく酸素や栄養を運搬することで、くすみの軽減や新陳代謝の向上・ターンオーバーの正常化にも繋がりますね。

また近年はサンザシに“ウルソール酸(ウルソル酸)”が含まれていることも注目されています。ウルソール酸は抗酸化作用や抗炎症作用が期待されている他、加齢によって細くなってしまったコラーゲン繊維を太くする働きが報告され美肌成分として注目されている存在。こちらも内服での有効性・食品としてサンザシを摂取した際の量で有効性があるのかは定かではありません。しかしサンザシには抗酸化物質が豊富であり、ルチンなどビタミンPと呼ばれるフラボノイド類はビタミンCと協力してコラーゲン生成を促してくれる働きもありますから、合わせて肌の弾力・きめ細かさアップも期待されています。


ダイエットサポートに

近年サンザシ(山査子)は糖吸収抑制や脂肪燃焼効果があるのではないかと報じられ、ダイエットをサポートしてくれる食材としても注目されています。抗酸化作用・血流を整えることで代謝低下を予防すると考えられる他。クロロゲン酸などのポリフェノールのいくつかには脂肪吸収抑制・脂肪分解(脂肪燃焼)促進効果を持つ可能性が示唆されているものもあります。

2009年に台湾で行われた高脂肪食マウスにサンザシ果実の摂取させた実験では、体重と体脂肪率に減少が見られたことも報告されています。そのほか中性脂肪の減少・脂肪肝の改善効果を示唆する報告などもありますが、実験では果実ではなく葉が使われていたり、サンザシ抽出物+αが投与されているケースもあり、有効性については断定されていません。サンザシ茶やジュースの摂取でどの程度の働きが期待できるかも未知数ですから、適度な運動とバランスの良い食事をベースに、あくまでも“サポート”として取り入れることをおすすめします。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

スキンケアに

サンザシ使って手作りローションなどを作られている方はほとんどいらっしゃいませんが、サンザシから抽出された“サンザシエキス”はビタミンCやポリフェノールを豊富に含んでいることから化粧品原料として利用されています。ミネラルやタンニンによる収斂作用も期待できるため脂性肌・ニキビ対策から、美白、エイジングケアまで肌広い効果が期待されていますよ。ウルソール酸(ウルソル酸)もコラーゲン繊維を太く回復させる働きが報告されているため、シワ改善機能についても注目されています。

山査子(サンザシ)の注意事項

  • 持病・服用中の薬がある場合には医師に確認の上で使用して下さい。
  • 妊娠中や授乳中・子どもが使用した際の安全性については十分なデータがありません。念のために使用を控えるようにすると良いでしょう。
  • 動悸・吐き気めまいなどの副作用が起こる場合があります。違和感を感じた場合には使用を中断し、症状が重い場合は医師の診断を受けましょう。

参考元