棗(ナツメ)
健康茶と期待される効果効能紹介

精神的ストレスや血行不良・冷え対策にオススメ

ナツメ(大棗)は古代中国では五果の一つとして珍重され、「1日に3個食べれば歳をとらない」とも信じられてきた果物。現在でもアーユルヴェーダや漢方など東洋の伝統医療では重要視されてる植物の一つで、日本でも女性に優しい食材としてドライフルーツ・テチュ茶(なつめ茶)・棗シロップなどが食されています。ビタミンやミネラルが豊富なことから神経の緊張によって起こる不眠・胃腸トラブルなどの緩和・ストレス耐性向上が期待されていますし、貧血や冷え性・むくみ緩和など女性のお悩みサポーターとしても注目されています。

画像:大棗(ナツメ)/チャイニーズデーツ

 

棗(ナツメ)について

植物紹介:棗(ナツメ)

薬膳料理やドライフルーツ・菓子材料としても知られているナツメ。日本では庭木・街路樹として生えているものの、一部地域でシロップ煮にする程度であまり食べられる機会のない果物でした。近年は韓国ブームや健康志向の高まりから、薬膳スープのサムゲタンやテチュ茶(なつめ茶)などに使われている薬膳素材としても認識が高まり、健康に良い、女性に優しい食材としてパンやケーキ、炊き込みご飯など様々な料理に取り入れられ始めています。より手軽なナツメシロップなども販売されており、ドライフルーツ類や乾燥ナツメがあまり得意ではないという方もお茶・炭酸割り・甘味料などとして利用しやすくなっています。

ナツメの原産地は南ヨーロッパ~アジアと考えられており、中国では紀元前8000年頃の遺跡からもナツメ栽培の痕跡が発見されています。中国最古の薬物書『神農本草経』にも上品として効能が記載されていますし、五臓を養う果物として桃・杏、棗・栗・李(すもも)の5つの果物を「五果」と呼び珍重されてきました。「一日食三棗、終生不顕老」=1日3粒のナツメで老いを防ぐという諺もありますし、世界三大美女の一人である楊貴妃や西太后などが美しさと若さを保つために取り入れていたとも言われています。東洋医学だけではなくインド伝統医学のアーユルヴェーダにおいても、ナツメは重用され治療に用いられています。

またその赤い色から中国や韓国では子宝に恵まれる“縁起物”としても好まれているそうです。日本にも奈良時代以前には伝来していたと考えられており、『本草和名』の記述などから平安時代には薬用として利用されていたことが分かっています。
現在でも果実を乾燥したものは生薬“大棗(タイソウ)”として利用されていますし、果実を夜露にあて日にさらし干したものを紅棗、紅棗を蒸してさらに干し皺がよって黒みを帯びたものを黒棗と呼び分けます。ナツメの実を乾燥させた大棗は日本薬局方にも収録されており、葛根湯・柴胡桂枝湯・甘麦大棗湯など有名な漢方薬にも配合されています。

基本データ

通称
棗(ナツメ)
別名
Jujube(ジュ-ジュ-ブ)、Chinese date(チャイニーズデーツ)、大棗(タイソウ)、紅棗(コウソウ)、黒棗(コクソウ)
学名
Zizyphus jujuba
Ziziphus zizyphus
科名/種類
クロウメモドキ科ナツメ属/落葉高木
花言葉
健康の果実、英俊、若々しさ
誕生花
9月7日
使用部位
果実
代表成分
多糖類、サポニン、ペクチン、ミネラル類、ビタミン類、
代表効果
抗ストレス、鎮静、緩和、消化管強壮、利尿、免疫力向上、抗アレルギー
こんな時に
精神的ストレス、情緒不安定、神経疲労、神経衰弱、貧血、血行不良、冷え性、肩こり、PMS、更年期障害、ストレス性の胃腸不調、疲労回復、むくみ、肥満予防、免疫力向上、花粉症などのアレルギー緩和
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーブチンキ、果物として食用
ハーブティーの味
独特の甘い香り、フルーティーでほんのり甘い
カフェインの有無
ノンカフェイン

棗(ナツメ)の栄養・成分・期待できる効果

ナツメ茶(大棗茶/テチュ茶)

ストレス・精神不調にへ

ストレス耐性アップ

ナツメにはビタミンB群の仲間であるパントテン酸を含んでいます。パントテン酸は様々な働きを持っていますが、その中でも副腎皮質ホルモンの合成を助ける働きはストレスと深い関係があります。ストレスを受けると副腎はホルモンを分泌しますが、その状態が続くと副腎疲労(副腎機能低下症)と呼ばれる状態に陥り副腎皮質ホルモンの分泌が大幅に減少し、ストレスへの抵抗力も低下します。

パントテン酸は副腎皮質ホルモンの合成を促進することでストレスへの抵抗力を高める働きから「抗ストレスビタミン」とも呼ばれている存在です。またナツメには副腎皮質ホルモンの原料となるマグネシウムも含んでいますから、相乗してストレス耐性を高める働きが期待されています。


精神安定

副腎疲労(副腎機能低下)状態になるとイライラ感、軽度の鬱のような状態、無気力、慢性的な披露などをを引き起こすと考えられています。不定愁訴と言われるような原因不明の肉体的・精神的不調の原因として、過度もしくは長期のストレスによる副腎機能低下が関係しているとする説もあります。

抗ストレス作用が期待できるパントテン酸やマグネシウムなどを含むナツメは、ストレス耐性を高めると同時に、ストレス性の情緒不安定さ・緊張・不安・神経疲労などの緩和にも役立つと考えられています。加えて不足することで精神トラブルを起こしやすくなると指摘されている、鉄分・カルシウム・マグネシウムなどのミネラルもナツメには含まれています。


不眠の緩和

ナツメには睡眠ホルモンメラトニンの前段階であるセトロニン合成に必要なマグネシウムが含まれていますし、近年はナツメに含まれているオレイン酸アミド(オレアミド)という成分に睡眠を誘導する働きがあるのではないかとも考えられています。
またストレス耐性を高めることからも、精神的なストレスによる不安や神経過敏などを緩和し寝付きを良くする・不眠の緩和などの効果が期待出来ます。

ナツメは作用が穏やかなことから古くは幼児の夜泣きを改善するためなどにも用いられていましたし、ドライフルーツとして普通に食べられている食材ですから、バレリアンなど強い作用のハーブを使うのはちょっと怖い方にもオススメです。穏やかさを尊重するのであればオレンジピールエルダーフラワーなどと、不眠の改善第一であればバレリアンとのブレンドやお茶ではなく薬用酒にして飲んでも良いでしょう。



貧血・冷え・女性特有の不調に

ナツメ(大棗)は女性に優しい食材・女性が抱えやすいな不調の改善に役立つ生薬として親しまれています。妊娠中も食べられる食材ですから子宮を刺激する・ホルモン様物質によるデメリットの心配が少なく、よりナチュラルに体を整えるお茶として・フルーツとしてナツメを取り入れる女性も増えています。


貧血の予防・改善

ナツメにはヘモグロビンの原料となる鉄分、赤血球を形成するために必要な葉酸を豊富に含んています。加えて丈夫な赤血球を作るのに必要とされる亜鉛なども含まれていることから、ナツメは貧血の予防や改善、貧血によるめまい・立ちくらみ・疲労感・だるさなどの緩和に役立つと考えられています。また平常時よりも葉酸を必要とする妊娠中の方にも適しています。

貧血の改善としてはワイルドストロベリーや、ミネラル吸収を高めるローズヒップハイビスカスなどとブレンドして飲むのがオススメです。なつめ茶はほんのりとした甘さがあるので、ハイビスカスティーの酸味が苦手な方も飲みやすくなりますよ。ただしローズヒップティー同様に「出がらし」部分に栄養成分が残ってしまいますので、粉末にするか、シロップ漬けにする・焼き菓子に加えるなど再利用すると余すところなく自然の恵みを頂けます。


血行不良・冷え改善

生薬としても大棗は体を温め筋肉や神経の緊張を緩和させる働きがあるとされていますし、成分的に見ても血液の循環を良くするビタミンP、ドロドロ血液の改善に役立つサポニンなどが含まれていますので、血液循環を改善し体を温める働きが期待出来ます。ナツメには貧血の改善に役立つ成分も含まれていますので、相乗して冷え性の改善に役立ってくれるでしょう。

また抗ストレス・精神安定効果などが期待できることから、ストレス・緊張・不安などで強張ってしまった筋肉を緩めることにも繋がるでしょう。血行改善と合わせて、肩こりや腰痛など筋肉の緊張による体の痛みの緩和に役立つと考えられます。筋肉痛の緩和や疲労回復促進にも適しています。


女性特有の不調・更年期に

貧血を改善する・血液循環を整えるなどの働きや、抗ストレス・精神安定作用が期待できることから、ナツメは女性特有の不調の改善にも用いられています。主にイライラ・ヒステリー・抑うつなど情緒不安定さの緩和に利用されますが、血流を促し内蔵を温めることで冷えによる子宮機能低下改善や生理痛などの緩和にも効果が期待できるでしょう。

PMS(月経前症候群)の精神的不調の悪化や、更年期障害の副腎疲労が関係しているとする説もあります。特に更年期障害は子宮・精巣から分泌される性ホルモンの低下を副腎が補おうとする=副腎が疲労することで症状が出やすくなるとする説もあります。ナツメは副腎の働きを助けることで精神面を落ち着かせると考えられていますから、女性・男性共に更年期の緩和に取り入れてみても良いかもしれません。


消化器系サポート、スタイル維持に

胃腸機能の正常化

大棗(ナツメ)は緊張をやわらげる作用に優れています。そのため精神的・肉体的なストレスや緊張の影響を受けやすい胃腸の負担を軽減すると考えられます。血液循環を整えてお腹を温める働きから胃腸機能を正常化する手助けをしてくれますし、若干の粘液質を含んでいますので、胃腸粘膜の保護にも効果が期待できるでしょう。

また神経の高ぶりを抑えることによって痛みを緩和する働きもありますので、特にの胃痛・腹痛・下痢などの改善、ストレス性潰瘍の予防に役立つと考えられています。漢方薬では胃腸虚弱や胃炎・胃痛に用いる六君子湯、緊張をほぐし体を温めることで腹痛・排便以上・過敏性腸症候群などに処方される桂枝加芍薬湯や、、胃腸の働きを良くして体力を回復させる補中益気湯などにも大棗(ナツメ)は配合されています。


むくみの緩和に

ナツメはカリウムを豊富に含む果物であることから、ナトリウムバランスを調節し、体内の水分量を正常化する働きがあります。またカリウム自体にも若干の利尿作用がありますし、血液循環を改善することもむくみの解消に繋がります。


ダイエットのサポートに

ナツメに含まれているサポニンにはブドウ糖と脂肪の合体を防ぐことで脂肪蓄積を抑制する働=肥満予防効果が報告されています。またcAMP(サイクリックAMP、環状アデノシン一リン酸とも)という成分にも中性脂肪やコレステロールエステルを分解し、脂肪酸を遊離させることで脂肪分解を助けると考えられています。加えてナツメにはエネルギー代謝、特に糖質・脂質の代謝にとって重要な成分とされるパントテン酸も含まれているため、合わせて代謝低下を防ぎ脂肪燃焼向上・脂肪蓄積予防に繋がる可能性もあるでしょう。


そのほか期待される作用

薬効成分の刺激緩和に

ナツメは刺激の強い薬剤・生薬を合わせて服用することで薬効を緩和する働きがあります。多くの漢方薬に大棗が生姜と共に配合されているのはこの働きのためでもあるのだとか。
科学的に見てもナツメにパントテン酸には有害な化学物質を解毒する作用があることが認められており、現代医療でも抗生物質による副作用の緩和・治療に利用されているため信ぴょう性は高いと言えそうです。


アレルギーの緩和

ナツメに含まれている短糖類のフルクトピラノサイドにはIgE(免疫グロブリンE)の生成を抑制する作用があることから、抗アレルギー効果があると考えられています。アレルギーはヒスタミンなど炎症性物質が放出されることで発生しますが、そのきっかけがアレルゲンが血液中のIgE抗体と結合することによる考えられています。

アレルギーを持つ人は血中IgE濃度が増加傾向にあることが報告されていますが、フルクトピラノサイドによってIgE抗体を抑制することで過剰な免疫反応を起こしにくくなると考えられます。そのためナツメは花粉症などのアレルギー症状を緩和する働きが期待されています。


免疫力向上

伝統医療・民間療法において大棗(ナツメ)は滋養強壮や免疫力向上などにも役立つ食材として利用されていました。これは血行を良くして体を温める・消化吸収を助けるなどの働きによるものと考えられてきましたが、、近年の研究でナツメに含まれる多糖類にはナチュラルキラー細胞の活性を高めることが報告されており、免疫力向上により直接的に役立つと考えられています。

また漢方で大棗は抗がん及びがんの突然変異抑制の処方に利用されていましたが、こちらも近年5環系トリテルペノイドに抗がん作用・抗腫瘍作用・抗炎症作用などがあるのではないかと説が出ており、ベツリン酸やオレアノール酸などのトリテルペノイドを含むナツメも発がん抑制など、癌細胞に対しての働きかけを持つのではないかと注目されています。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

肌ケアへの利用について

化粧品原料としてナツメから抽出された“ナツメ果実エキス/タイソウエキス”は保湿・収斂・血流改善・皮膚活性作用があるとされ、基礎化粧品などに利用されています。有名なことろであれば丸善製薬さんが販売されている化粧品原料(ホワイトニング成分)「プランテージホワイト」などにも配合されています。スキンケア以外の面では脂肪分解を促進する働きが期待できることからスリミングジェル・クリーム類に配合されていますし、2013年には資生堂さんからナツメ果実エキスにまつ毛を長くする働きが見られたことも報告されています。

※手作りコスメ原料として利用されることはほとんどありません。ナツメそのものを使う場合の使用量や皮膚刺激等は不明ですので、化粧品として許可・販売されているものを利用するようにしましょう。

棗(ナツメ)の注意事項

    通常の食用・飲用利用であれば安全と考えられています。