滋養強壮に役立つ生薬として親しまれてきた果実
日本では春黄金花(ハルコガネバナ)とも呼ばれる樹木になる赤い果実、山茱萸(サンシュユ)。古くから中医学や民間療法で滋養強壮・加齢に伴う不調の軽減に取り入れられて来ました。少し前までは虚弱体質や高齢の方の健康維持のほか、男性機能サポートなどに使われることが多かったようです、しかし近年はイリドイドほか抗酸化物質を含むこともあり、健康や美容をサポートする成分として女性向け健康食品にも取り入れられています。
サンシュユ(山茱萸)について
植物紹介:サンシュユ(山茱萸)
山茱萸(サンシュユ)と漢字で書かれると馴染みのない植物・漢方の生薬のような印象がありますが、ミズキ科に属する樹木で日本でも“春黄金花(ハルコガネバナ)”やアキサンゴなどの呼び名で知られています。呼び名の通り春に黄金色の花を咲かせること、鮮やかな赤い実を付けることが特徴で、その姿の良さから庭木・公園樹や盆栽用など観賞用としても広く使われています。
サンシュユは中国から朝鮮半島が原産の樹木で、中国では古くから生薬として利用されてきたと考えられています。日本にも江戸時代(1700年代前半頃)に種子が持ち込まれ、薬用植物として栽培が始められました。種子名にも“officinalis”=薬用植物という言葉が使われていますね。花言葉としても持続・強健など健康を連想させるものが多いのもこのためかもしれません。
現在でもサンシュユは日本薬局方に生薬として収載されており、滋養強壮や補血・止血などの用途で用いられています。漢方処方としては八味地黄丸・六味地黄丸・牛車腎気丸など虚証(虚弱)の方向けのものによく使われているようです。また食品(お茶・サプリメントなど)としては妊活・美容サポートなど女性向け商品に配合されてることもあります。
「山茱萸」という字は中国名をそのまま音読みしたものです。名前の由来はいくつか言われていますが、日本国内では赤い果実がグミに似ていることから用いられたという説が主流のようです。ただ日本でグミ(茱萸)と呼ばれている植物はバラ目グミ科と全く別の植物なので注意が必要です。そのほか“呉茱萸湯”で知られる呉茱萸(ゴシュユ)はミカン科と同じ漢字が使われていても植物分類上は全くの別科となっています。
サンシュユの近縁種としては東ヨーロッパなどで食されている“セイヨウサンシュユ(Cornus mas)”があります。そのままでは酸味が強いのでジャムやジュースなど加工品にして食べるのが一般的なようですが、現地の民間療法では風邪や腹痛などに使われることもあるそう。ですが日本では伝統的なブルガリアヨーグルト作りで使われる「ヨーグルトの木」としての方がよく知られているかもしれません、これはセイヨウサンシュユの葉・小枝などについている朝露に乳酸菌などが含まれており、温めた乳をこれで混ぜて浸しておくと乳酸菌発酵が促されるためです。ちなみに温めた牛乳にサンシュユの枝を入れておいても、ヨーグルトを作ることができるそうですよ。
基本データ
- 通称
- 山茱萸(サンシュユ)
- 別名
- 春黄金花(ハルコガネバナ)、秋珊瑚(アキサンゴ)、ヤマグミ、Japanese Cornel Dogwood
- 学名
- Cornus officinalis
- 科名/種類
- ミズキ科ミズキ属/落葉小高木
- 花言葉
- 持続、強健、耐久、気丈な愛
- 誕生花
- 1月18日、2月12日、3月17日
- 使用部位
- 果実(果肉)
- 代表成分
- イリドイド配糖体(モロニサイド・ロガニン)、ウルソール酸、サポニン、タンニン、有機酸類(リンゴ酸・酒石酸・没食子酸)
- 代表効果
- 滋養、強壮、抗酸化、血糖値上昇抑制、抗菌、抗ウィルス、免疫賦活、収斂
- こんな時に
- 虚弱体質、疲労・疲労感、老化予防、生活習慣病予防、冷え性、免疫力低下、尿トラブル、男性機能低下
- おすすめ利用法
- 食用、健康茶、ハーブチンキ
- お茶の味
- 全体的にフルーティーな印象があるが、酸味と渋味がやや強い
- カフェインの有無
- ノンカフェイン
サンシュユ(山茱萸)の栄養・成分・期待できる効果
サンシュユ(山茱萸)茶
健康維持のサポートに
滋養強壮・疲労回復に
サンシュユの煎剤や果実酒(薬酒)は古くから滋養強壮・疲労回復に役立つ民間薬として親しまれてきました。漢方でもサンシュユは滋養強壮作用に役立つ補益剤として取り入れられています。また、身近なところでは佐藤製薬さんの『ユンケル』シリーズの中にも配合されているものがあります。
成分的に見てもリンゴ酸などの有機酸類はクエン酸回路(TCAサイクル)を活発化することで代謝を高め、乳酸などの疲労物質の分解を促す働きがあると考えられています。また代謝が高まることで体内にエネルギーが行き渡るようになるとも考えられますから、慢性的な疲労感・倦怠感などの軽減にも効果が期待できるでしょう。
抗酸化・老化予防に
サンシュユに含まれているモロニサイドやロガニンなどの“イリドイド配糖体”には抗酸化作用があると考えられています。サンシュユはその他にもタンニン・没食子酸・サポニン・ウルソール酸など抗酸化作用が期待される成分を豊富に不運で居ます。このことから活性酸素が増え細胞が酸化されることで起こる、様々な機能低下・老化現象の予防に役立つと考えられています。またイリドイドには高等科作用が期待できるという報告もあるようです。
漢方の成立時期には抗酸化という概念は無かったかと思いますが、更年期~高齢者にもよく用いられる「八味地黄丸(八味丸)」などの漢方薬に配合されているのは不思議ですね。この八味丸は高齢者の聖薬・老化予防の名薬などとも称される存在で、山茱萸酒はこの八味丸とほぼ同じ働きがあり老化症状全般に良いとも言われているそう。
その関係か老眼の予防や軽減に良いという説もあり、漢方的な考え方であればザクロなど滋陰の作用のあるものと組み合わせると良いとされています。抗酸化作用が高いと考えられており、視機能サポートに役立つゼアキサンチンを含むクコの実などと組み合わせてみても良いかもしれません。
生活習慣病予防に
抗酸化物質が豊富であることからサンシュユは血栓を作る原因となる過酸化脂質の生成を抑制し、動脈硬化・高血圧・高脂血症などの予防に役立つと考えられています。加えてサンシュユに含まれている没食子酸はプーアル茶にも含まれている成分で、抗酸化作用と共に余分な脂肪の吸収を防ぐ働きが期待されています。内臓脂肪が増えると血糖・血中脂質・血圧上昇のリスクが高まりますから、余分な脂肪をつけない=メタボリックシンドローム予防も生活習慣病予防に役立ってくれるでしょう。
またウルソール酸もインスリンの働きを助けることで筋肉への糖質供給を助けるのではないかと考えられており、マウスを使った実験では血糖値・血中中性脂肪の低下が見られたことが報告されているようです。サンシュユ抽出物を使った実験では抗糖尿病作用が報告されていますし、漢方でも動脈硬化や糖尿病の予防や改善に用いられることがあるようです。
冷え軽減・風邪予防に
サンシュユは漢方では微温~温性と、やや体を温める性質があるものの中に分類されています。成分的に見ても有機酸による代謝向上・抗酸化物質による血液循環の改善などが期待できますから結果として冷えの改善に繋がってくるでしょう。そのほかサポニン(コルニン)には副交感神経を刺激する作用があることも報告されていますし、ウルソール酸に血行促進作用があるとする説もあります。
代謝低下や血行不良を予防し身体を温める働き、抗酸化作用によって免疫力低下を予防する働きに加え、タンニンやサポニンなどには抗菌・抗ウィルス作用があります。サポニンにはナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化させることで免疫力を高める働きも報告されていますから、風邪予防にも役立ってくれそうですね。
またイリドイドにも抗ウイルス作用が報告されている他、免疫賦活(免疫調節)作用があると考えられています。ウルソール酸にも抗炎症作用があるのではないかと考えられていることから、近年これらを含むサンシュユは免疫力向上やアレルギー軽減というの点からも効果が期待されています。
そのほか期待される作用
肌のアンチエイジングに
イリドイド・タンニン・サポニンなど抗酸化成分を多く含むことから、サンシュユは老化に伴う不調だけではなく肌のアンチエイジングにも役立つと考えられます。特に近年は酸化よりも老化の原因として“糖化”が大きいという説もあり、抗糖化作用が期待できるイリドイドを含むサンシュユやノニなどへの注目が高まっているようです。
女性の身体を整える
サンシュユは妊活応援のブレンドティーや、更年期が気になる女性向けのお茶・サプリメントなどにも配合されていることがあります。これはホルモン様物質を含んでいるというものではなく、抗酸化作用があること、疲労回復・代謝向上・血液循環促進による冷えの改善などに役立つことから派生しているようです。冷えによって悪化する生理痛の軽減などにも有効とされています。
男性器・排尿トラブルに
サンシュユは中医学の分類では“収渋薬”という、体内から漏れ出るものを止める働きがある生薬に分類されています。これは大便・便・汗・精液など様々なものを収斂することで止めるという考え方で、夜間頻尿などにも良いと言われています。ただしサンシュユには利用作用があるという中医学的な見解とは逆の報告もなされており、ハッキリとした働きについては分かっていません。
また収渋(固精)の効能があるとされていることや、強壮に役立つと考えられることから、サンシュユは男性の精力減退・生殖機能低下などの改善にも良いとされています。収斂作用が男性機能サポートに繋がるのかはさておき、抗酸化作用が期待できる食材ですからそちらの方面でも老化予防という点では効果が期待できるでしょう。
サンシュユ(山茱萸)の注意事項
- お茶として通常量を摂取する場合は特に問題はないとされています。
- 体質・摂取量によっては食欲減退・お腹の調子が悪くなるなどの可能性があります。不快感がある場合は使用を中止するようにしましょう。