葉・樹皮・樹液に様々な健康効果が期待される「森の看護婦」
白樺は北欧や東欧では古くから全樹が利用できることから重宝され、栄養源や薬用など様々なことに利用されてきた存在です。現在でもキシリトールなど身近なところで活用されていますし、白樺樹液に優れた栄養や美容効果があることから食品・化粧品原料としても注目されています。葉部も抗酸化成分などが豊富に含まれ、健康維持や美肌作りに役立ちます。
植物紹介:白樺
白樺はカバノキ科の樹木で、呼び名の由来ともなった白い樹皮が特徴です。日本でも北海道や長野県などの高原地域で日本産変種Betula platyphylla var. japonicaが自生しています。明るく清浄な高原のイメージを作る樹であることから「高原の白い貴公子」とも呼ばれています。
白樺は古くから北欧、東ヨーロッパ、ロシアなどで利用されてきました。白樺の樹は幹・樹皮・葉・樹液と地上部全てが利用でき、様々な薬効を持つと考えられたことから「森の看護婦」とも称されていたそう。フィンランドでは伝統工芸品の原料や染料としてもメジャーな存在で、国民投票によって国樹に選ばれるほど親しみのある樹なのだとか。
現代でも幹からは虫歯予防にも利用される甘味料キシリトールの主原料であるキシラン、樹皮からはエイズ薬の原料となるべチュリンなどが採取されています。ちなみに白樺に寄生するチャーガ(カバノアナタケ)も高い健康効果を持つキノコとして、現代でも重宝されています。
日本でも北海道の先住民族であるアイヌの方々はシラカバ樹液をタッニ・ワッカ(タイン・ワッカ)と呼び、飲用・炊事用水としてや、発酵させてお酒として利用していたそうです。しかしキシリトールの原料として知られている以外、ハーブ・健康食品としてはさほど認知されていませんでした。
しかし近年、白樺エキスを配合したWELEDA社の“ホワイトバーチ ボディオイル”がセルライトケアに優れた効果があるとして人気を博し、その原料である白樺も美容面で注目が集まっています。白樺樹液(ホワイトバーチウォーター)は優れた健康飲料としてだけではなく美容効果が高い飲み物として人気を高めていますし、保湿成分として化粧品にも利用されています。
白樺(ホワイトバーチ)について
基本データ
- 通称
- 白樺(White birch)
- 別名
- 白樺(シラカバ/シラカンバ)、ホワイトバーチ、シルバーバーチ
- 学名
- Betula pendula
Betula platyphylla var.japonica - 科名/種類
- カバノキ科カバノキ属/落葉樹
- 花言葉
- 柔和、忍耐強さ、光と豊富、あなたをお待ちします
- 誕生花
- 3月12日
- 使用部位
- (お茶として利用)葉・樹皮
(そのまま利用)樹液 - 代表成分
- ミネラル類、ポリフェノール(ケルセチン、ルテオリンなど)、タンニン、ビタミンC、精油(サリチル酸メチルなど)
- 代表効果
- 利尿、健胃、整腸、殺菌、血液浄化、抗炎症、免疫力正常化、抗酸化、強壮
- こんな時に
- むくみ、泌尿器系感染症、デトックス、代謝向上、痛風、リウマチ、関節炎、筋肉痛、花粉症、風邪予防、アンチエイジング、美肌(肌荒れ・乾燥の改善)、美白
- おすすめ利用法
- ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ、浸出油、湿布、手作り化粧品、精油
- ハーブティーの味
- 少しクセのある森林系の香り、味はやや苦味が強い
- カフェインの有無
- ノンカフェイン
白樺(ホワイトバーチ)の栄養・成分・期待できる効果
白樺樹液(ホワイトバーチウォーター)
世界各地の民間療法として白樺の樹液は利用されてきましたが、保存がきかなかったことから流通することがありませんでした。しかし近年加工技術の発達からボトリングが行われ、欧米ではココナッツウォーターに続く健康飲料として「ホワイトバーチウォーター」が人気を集めているそうです。日本でも“天然の栄養剤”や“飲む化粧水”として紹介される機会が増えています。
ちなみに白樺の樹液は無色無臭・かすかにブドウ糖などによる甘さを感じる程度でクセは強くありませんので、料理用に利用したい場合にも適しています。
期待される作用・効果
天然の栄養補給源として
白樺の樹液にはカルシウム・カリウム・マグネシウムなど各種のミネラルやアミノ酸のほか、ビタミン・エンザイム・糖類などが含まれています。加えて栄養成分の配合バランスが良いこと・ミネラルがイオン化していることで吸収率が高いことから、天然の栄養ドリンクとして注目を集めています。
不足しがちな栄養成分を補給することにより、体調を整えたり疲労回復・慢性疲労の改善に役立ちます。またストレス耐性を高める効果があることも報告されていますし、病後の体力回復にも役立つことが認められています。
抗酸化作用
シラカバの樹液には活性酸素を消去するSOD様活性酵素が含まれており、強力な活性酸素種スーパーオキシドラジカルアニオンを高レベルで消去する作用があることが認められています。このころから白樺樹液は免疫力向上やアンチエイジングに優れた効果を持つ成分と考えられています。
便通改善・デトックス
伝統的に白樺樹液を飲用する国では利尿や便秘、胃腸病緩和に役立つと伝えられてきました。現在でも白樺樹液は肝臓と腎臓の機能向上に役立つと考えられ、老廃物や有害物質の排出を助けるデトックス効果があるとしてダイエットなどに取り入れられています。
むくみ緩和や便秘改善にも有効と考えられていますし、便通の改善から腸内環境の改善にも良いと考えられています。デトックスや腸内環境改善は新陳代謝を高めることに繋がりますので、肥満予防やセルライト対策にも効果が期待されています。
美肌作りに
白樺の樹液はアミノ酸が豊富に含まれていることから肌の保湿機能向上や、ターンオーバーの促進などに役立つと考えられています。長期間飲用することでシミ改善などの美白効果も期待できると言われています。抗酸化作用と合わせてシワ改善や肌のハリ回復にも効果が期待できるでしょう。デトックス・腸内フローラ改善も肌荒れ予防に繋がります。
虫歯予防に
歯磨き粉やガムなどに虫歯予防成分として配合されている「キシリトール」は白樺に含まれているキシランという成分が原料となっています。キシランも虫歯の原因菌であるミュータンス菌の活動を抑制することで虫歯予防に役立つと考えられています。
白樺茶(ホワイトバーチティー)
豊富なミネラルやポリフェノールなどを含む白樺の葉は、古くから主に泌尿器系トラブルの緩和ハーブとして民間療法で使用されてきました。茶葉用として販売されているものには樹皮・小枝を加えたものもありますが、こちらはベツリン酸を含有しているそうです。
期待される作用・効果
むくみ・泌尿器トラブルに
白樺の葉は膀胱と腎臓を刺激し、水分代謝を向上させる働きがあるとされています。殺菌効果もあるため古くから膀胱炎などの尿路感染症や腎臓結石・膀胱結石など、泌尿器トラブルの緩和に役立つハーブとして利用されてきました。
利尿作用があるハーブとしてむくみに悩む女性からも支持されている存在ですし、腎臓や肝臓の働きを高めることで老廃物・毒素の排泄に役立つデトックスハーブとしても有効と考えられています。むくみ・デトックス用としてはダンデライオンやジュニパーベリー、ネトルなど同様の働きが期待されるハーブとブレンドしたものが利用されることも多いようです。
便秘解消・ダイエットに
利尿ハーブとして利用されることの多い白樺の葉ですが、様々なミネラルを含むことから新陳代謝を促進し、老廃物の排出を促す働きもあると考えられています。胃腸の働きを助ける働きもありますので、便秘の改善にも有効とされています。老廃物を排泄することで腸内フローラが整うことからも代謝向上効果が期待できるため、ダイエットサポート用としても利用されています。
免疫系疾患の緩和
白樺は内臓の働きを助けること、利尿・発汗作用などによって体内の老廃物を排出させ、血液を綺麗な状態に整える働きがあるとされています。ヒスタミンの分泌を抑制するケルセチン・芳香成分で鎮痛消炎作用のあるサリチル酸メチルも含んでいますので、血液浄化作用と相乗してリウマチや関節炎など免疫系疾患を緩和する働きが期待されています。
近年は白樺の葉の抗ヒスタミン効果が報告され、花粉症対策ハーブとしても注目されています。白樺は花粉症のアレルゲンの1つとして知られていますから、感覚的にはネトルと近く、炎症を抑えながら少量ずつ摂取することでアレルギー反応を起こしにくくするよう身体を慣らす働きもあると考えられています。
抗酸化・免疫力向上
白樺の葉・樹皮にはポリフェノール(タンニン、ケルセチンやルテオリンなどのフラボノイド)やビタミンCなど抗酸化作用を持つ成分を含んでいます。これらの成分が活性酸素による酸化ダメージを抑制することで身体の内外の老化を抑制したり、免疫力を高める働きが期待できます。
サポニンにもナチュラルキラー細胞を活性化させ免疫力を高める働きが報告されています。白樺には抗菌作用もありますので、抗酸化物質と相乗して風邪やインフルエンザ予防にも有効と考えられています。
美肌サポートに
ビタミンCやポリフェノール類による抗酸化作用は肌のアンチエイジングにも役立ちます。シミ・シワ・タルミなど肌の老化を抑えるほか、デトックス効果によって代謝が向上することで若々しい肌の維持・回復に役立ってくれるでしょう
またフラボノイドやサポニンは血液循環の改善に役立ちますし、ビタミンCやタンニンにはメラニン色素生成抑制による美白効果も認められていますので、白樺茶は肌の透明感アップやシミ予防など美白効果も期待できます。
お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果
スキンケア・ヘアケアに
ヨーロッパではホワイトバーチタールが皮膚病や外傷の治療に古くから利用されてきました。現在でも白樺の精油や木部から抽出される「シラカバ抽出液」は殺菌・収斂・保湿・消炎・血行促進・抗酸化・美白など様々な効果が期待できるとして化粧品原料として注目されています。抜け毛防止や発毛促進成分としてヘアケア商品にも配合されています。
化粧品用として利用される抽出物ほどの効果は期待しないほうが無難ですが、ハーブを活用したチンキや浸出油でも美肌作りに役立つと考えられています。精油は湿疹や皮膚炎症の改善に良いと言われていますし、飲料用として販売されているホワイトバーチウォーターをそのまま化粧水として利用しても美肌効果が得られると考えられています。
ハーブバスとして
白樺の葉を入浴剤として利用すると入浴の効果と相乗して血行促進や発汗促進に役立つとされ、抽出エキスはダイエットのサポート成分として痩身用入浴剤などにも配合されています。その他に肌を清潔に保つ・保湿効果など美肌維持に役立つ働きも期待できるでしょう。
白樺の精油(ホワイトバーチ・エッセンシャルオイル)は燻製のような独特の芳香がありますが、ドライハーブを活用した場合はさわやかな森林の香りを楽しめるのでリラックス用としても利用できます。
ちなみにフィンランドではサウナに白樺の若枝を束ねた“ヴィヒタ(Vihta)”を利用することが知られています。これは白樺の芳香によってリラックス効果を味わうというだけではなく、血行・発汗を促す、殺菌消毒作用によって傷口が炎症を起こすのを防ぐなどの役割もあると言われています。
ホワイトバーチ精油について
湿布などに使われる「サリチル酸メチル」という消炎鎮痛成分を含んでいます。そのため筋肉痛や肩こり、関節炎・リウマチの緩和などに有効とされています。希釈してマッサージオイルや湿布として利用すると良いでしょう。発汗・利尿・血液浄化作用などもあると考えられることから、足のむくみケアやデトックス促進・セルライトケア用のマッサージにも利用されています。ただし精油をスキンケアやマッサージに利用する場合は必ず希釈して利用してください。協会によって精油希釈濃度の基準は異なりますが、肌に使用する場合は概ね1%以下が安全とされています。
白樺(ホワイトバーチ)の注意事項
- 妊娠中の飲用は控えたほうが無難です。
- 精油は妊娠中の利用不可、また皮膚刺激が強いため必ず低濃度に希釈して使用しましょう。敏感肌の方は特に注意が必要です。