【リンデン・フラワー】
原料植物、ハーブティーに期待される効果効能

甘い香りで心身のリラックスをサポート

ヨーロッパ原産で菩提樹の近縁種であるリンデンバウム。ヨーロッパでは「千の用途をもつ木」として幅広く活用されてきた植物で、甘くフローラルな香りを放つお花は香料源としても愛されています。フランスでは穏やかな時間を過ごすために使われているハーブティー「ティユール(tilleul)」として知しまれており、日本でもストレスや神経疲労を和らげてくれるリラックスティーとして注目されています。フラボノイドを含むことから抗酸化・美容効果も期待できますし、香りが良いのでバスハーブとしてもオススメですよ。

リンデン・フラワーイメージ画像

リンデン・フラワーとは

植物紹介:リンデン(花)

ふんわりと上品な花の香りが特徴のリンデンフラワー。植物としてはヨーロッパを中心に分布している、シナノキ科もしくはアオイ科のうちシナノキ属に分類される樹木。リンデンは下向きの小さな淡黄色の花をつけ、そのままの状態でもふんわりと甘い香りを漂わせます。この香りはヨーロッパ中心に多くの人々に愛され、抽出された精油(アブソリュート)は香水や入浴剤の香りにもよく使われています。日本でもブレンドハーブティーだけではなく、ボディミストやルームフレグランスなどの芳香商品でも見かけることがありますね。

日本ではリンデンと呼ぶことが多いですが、イギリス英語ではコモン・ライム(common lime)と呼ぶほうが正式。リンデン(Linden)というのはドイツ語の“リンデンバウム(Lindenbaum)”を元にした呼び名です。ライムと言えば柑橘類の方のライムもありますから、アメリカ英語でもリンデンの呼び方が使われる事が多いようで、日本でも「リンデン」という呼び方のほうが定着しています。リンデンは日本でよく見かける菩提樹(ボダイジュ/学名:Tilia miqueliana)の仲間でもあり、和名では西洋シナノキもしくは西洋菩提樹と呼ばれています。ただし、お釈迦様が悟りを開いたとされる「菩提樹」はクワ科イチジク属の“インド菩提樹(学名:Ficus religiosa)”という別物。インド菩提樹は中国や日本に存在しなかったので、その代用として似ていたボダイジュが使われるようになったのだそうです。

話を戻しますと、リンデンはヨーロッパ原産とされるフユボダイジュとナツボダイジュの自然交配種ヨーロッパでは古くから木材・繊維・ハーブ・蜜源植物など様々に利用され。「千の用途をもつ木」とも称されるほど親しまれてきた植物です。キリスト教以前の宗教でも各地で大切にされてきた植物であり、キリスト教でも花の芳香が素晴らしいから“神聖な木”として好意的に捉えられ、教会の近くに植えられていたのだとか。ちなみにギリシア神話では相思相愛の夫婦が姿を変えた樹木として描かれています。伝説では旅人に姿を変えたゼウス夫妻が親切にもてなしてくれた老夫婦の願いを叶えようと告げると「死によって離れ離れにならないように」と願われ、夫を樫の木・妻をリンデンに変えた二本の樹木を寄り添わせたと伝えられていますよ。

ハーブティーに使うリンデンは花葉を乾燥させた「リンデンフラワー」と、木部を乾燥させた「リンデンウッド」の2つに分けるのが一般的。これは部位によって含まれている成分が異なる=作用や効能が分かれると考えられるためで、香りの良いリンデンフラワーは心を癒やしてくれるハーブティーとして愛されています。フランスに詳しい・フランス文化がお好きな方であれば、穏やかな時間を過ごすために使われているハーブティー「ティユール(tilleul)」という呼び名のほうが親しみがあるかもしれません。また、昔は風邪薬・解熱剤のような感覚でハーブティーを飲んだり、肌の乾燥やかゆみがあるときにリンデンの花を使ってローションを作ることもあったそうですよ。

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基本データ

通称
リンデン・フラワー(Linden flower)
別名
コモン・ライム(common lime)、セイヨウボダイジュ(西洋菩提樹)、セイヨウシナノキ(西洋科の木)、リンデンツリー(Linden Tree)、リンデンバウム(Lindenbaum)、ティユール(tilleul)
学名
Tilia europaea
科名/種類
シナノキ科シナノキ属/落葉高木
花言葉
夫婦愛、結ばれる愛、結婚
誕生花
7月9日、7月30日、8月23日
使用部位
花、苞、葉
代表成分
フラボノイド、ケルセチン、クマリン、粘液質、精油(ファルネソールなど)、タンニン
代表効果
鎮静、鎮痙、消化機能改善、抗酸化、血圧降下、発汗、利尿、抗炎症、保湿
こんな時に
ストレス、心身の疲労、緊張、不安、不眠、頭痛、胃痛、腹痛、下痢、高血圧予防、風邪予防、咳や喉の痛み、乾燥肌
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ、浸出油、湿布、手作り化粧品
ハーブティーの味
ハチミツを連想させる甘く上品な香りがあるが、味はほぼない
カフェインの有無
ノンカフェイン

リンデン・フラワーの成分と作用

リンデンフラワーティーに期待される効果

心のサポートに

リラックスティーとして

ふんわりと甘いお花のようでもあり、フローラルなハチミツの様にも感じられる香りが特徴のリンデンフラワーティー。この甘い香りは神経の緊張を鎮めて高ぶった気持ちを落ち着ける手助けをしてくれると考えられ、ヨーロッパでは伝統的に情緒不安定な時や慢性的なストレス対策として取り入れられてきました。フランスでは興奮しやすい・落ち着きのない子供にリンデンフラワーティーを飲ませる習慣もあったようです。

現代でもマウスを使った動物実験では不安軽減への有効性を示唆する報告がなされており、鎮静効果を有する可能性が高いハーブと考えられています。作用については断定されていませんが、精神的なストレスを感じているときや神経疲労・不安定さを感じた時に飲んでみると良いでしょう。甘く優しい香りを楽めるというメリットもありますから、心を落ち着けてゆったりとした気分になるためのサポートをしてくれるかもしれません。PMS(月経前症候群)による生理前イライラや更年期障害など、女性特有のデリケートな状態の時にもオススメです。


安眠のサポートにも

柔らかい香りで神経・気持ちの緊張を緩めてくれるリンデンフラワーのハーブティーは、心身へのリラックス効果をもたらすことでストレス性の不眠緩和につながる可能性もあります。特に緊張状態が続いて目が冴えてしまう時や不安・心配事が頭から離れず悶々としてしまう夜があるなど、精神的なストレスに起因するタイプの方に適しているでしょう。同じくリラックスや安眠効果が期待されているレモンバームティーカモミールティーとブレンドして利用しても良いですね。薬のような効能は認められていませんが、気持ちを穏やかにする手伝いをしてくれること・寝起きが辛いなどのデメリットがないことが利点と言えます。


ストレス性の胃腸トラブルにも…

リンデンフラワーティーは神経系の緊張を緩和することで、ストレス性の不調軽減にも効果が期待されています。緊張性頭痛や動機・筋肉のこわばりから引き起こされる肩こりなど様々な不調の緩和に使用されていますが、特に消化器系の不調緩和が得意なハーブと考えられています。神経系の緊張を緩めることで筋肉の強張り・痙攣を鎮める働き(鎮痙作用)も期待されているため、ストレス性の激しい腹痛や下痢・胃痛などの予防として取り入れられることもあります。症状が重い場合には医師の診察を受けるべきですが、ストレスでお腹の調子が乱れやすい方であれば予防策として一日一杯ずつ飲んでみても良いかもしれません。

そのほか期待される作用

抗酸化・血管トラブルの予防に

リンデンには抗酸化作用を持つフラボノイド類が含まれていることが認められており、抗酸化作用によって活性酸素の派生を抑制する働きが期待されています。活性酸素は増えすぎると細胞や脂質を酸化させる有害物質として振舞います。細胞を酸化させることで老化や劣化を促進する原因ともなりますし、抗酸化物質の補給によって酸化を抑えることは若々しさを維持することに繋がる=アンチエイジングティーとしても役立つと考えられます。

リンデンにはケルセチンやクマリンなど血管の保護や強化・血液循環をサポートしてくれる可能性のある成分も多いですし、ビタミンPと呼ばれるフラボノイド類には血圧降下作用も報告されています。このため抗酸化作用と合わせて、高血圧や動脈硬化・心筋梗塞の予防に役立つ可能性があるハーブとしてもリンデンフラワーが注目されています。精神面での鎮静作用もありますので、イライラやストレスによる動悸や高血圧対策に繋がる可能性もありますね。血圧や動脈硬化など血流系のサポートとしてはホーソンベリーイチョウ茶とブレンドして用いられることもあります。


風邪予防・初期症状ケアに

リンデンフラワーはヨーロッパで伝統的に悪寒や発熱時に飲む、風邪薬感覚のハーブとして利用されてきた歴史もあります。これはリンデンフラワーに末梢血管拡張作用や発汗・利尿作用により、体を温めて汗を出すことで熱を下げる働きがあると考えられてきたため。加えて粘液質(多糖類)が喉などの粘膜を保護してくれる可能性があること、フラボノイドなど抗炎症作用を持つ成分が含まれていることから咳や喉の痛み、気管支炎の軽減に良いとする見解もあります。


むくみ対策・美容サポートに

リンデンウッドよりも作用は弱いと考えられていますが、リンデンフラワーも血流や水分代謝を整える働きが期待できることから循環不良・むくみの軽減に役立つ可能性が期待されています。抗酸化作用を持つ成分を有していることが報告されたことと合わせて、リラックス兼美容サポートととして取り入れる方もいらっしゃいます。

味はほとんどありませんが、香りが非常に良いハーブティーでもありますのでお手持ちの紅茶やハーブティーにフレーバー感覚でブレンド感覚でプラスしやすいのもメリットと言えますね。またフラボノイド(ビタミンP)はビタミンCの吸収・活性をサポートしてくれる成分でもありますから、ローズヒップティーハイビスカスティー(ローゼルティー)などとブレンドすることでビタミンCを効果的に吸収利用できるでしょう。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

スキンケアに

リンデンフラワーは皮膚の乾燥やかゆみに良いハーブとして、ヨーロッパの民間療法では外用薬もしくはローションのような形で使用されてきました。現在でも粘液質などの働きから肌に潤いを閉じ込めて柔らかく保つ働きが、タンニンの収斂作用から毛穴を引き締めたり皮脂バランスを整える働きが期待されています。ハーブティーや浸出液を化粧水のように利用する他、フェイシャルスチームにしたり、粉末状にすり潰してお湯を少し加えて練ったものもをパックにするなど活用方法も様々。

そのほかに抗酸化物質を含むことからお肌のアンチエイジングに取り入れられたり、フラボノイドなどが抗炎症作用を持つとして肌や頭皮のかゆみ軽減に使用されることもあるようです。有効性や刺激性については十分なデータがないため不明点も多いですが、保湿用としてやナチュラルなヘアトニックとして使ってみても良いかもしれませんね。ただしリンデンの花に対してアレルギーを持つ方がいることも指摘されていますし、炎症を悪化させてしまう可能性もあります。ハーブを取り入れる場合は基本的に自己責任となりますから、まずは皮膚が厚く健康な部位でパッチテストをしてから使用しましょう。

入浴剤として

甘くフローラルな香りのリンデンフラワーはバスハーブとしても使われることの多い存在。スキンケアと同じく保湿効果や収斂作用による皮膚の引き締め効果が期待できますし、優しい香りを楽しむことで心身の緊張を和らげてリラックス効果にも繋がります。就寝前にエルダーフラワーのお風呂に入ると、寝付きを良くしてくれる可能性もあるでしょう。

リンデン・フラワーの注意事項

  • 妊娠中や授乳中の安全性については十分なデータがありません。念のために使用を控えるようにすると良いでしょう。
  • 持病・服用中の薬がある場合には医師に確認の上で使用して下さい。
  • 一日の摂取上限目安は3杯程以内にしましょう。

参考元