イエロードックルート
ハーブティーと期待される効果効能紹介

デトックスハーブとして注目されているが、使用には注意が必要

イエロードックは和名をナガバギシギシというタデ科植物で、原産地であるヨーロッパでは古くから食用・薬用に広く利用されてきたハーブです。アントラキノン類を含むことから肝臓機能向上や胆汁分泌のサポート・緩下作用による便通改善などの働きが期待され、デトックスハーブとして注目されています。ダイエットサポート系ブレンドなどにも用いられることがありますが、長期間の利用や過剰摂取により中毒症状を起こす危険性もあるので摂取量には注意が必要です。

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イエロードックについて

植物紹介:ナガバギシギシ

イエロードックはタデ科ギシギシ属に分類される、ヨーロッパが原産の多年草です。イエロードックという呼び名の由来については諸説ありますが、根は黄色く染料として使われていたためという説・肝機能を促すことから胆汁を貯めることに由来するという説などがあります。和名はナガバギシギシで、日本在来種のギシギシ(学名:Rumex japonicus)に比べて葉が細長い形状をしているという特徴から。ギシギシ以外にスイバ(学名:Rumex acetosa)や、同じくヨーロッパ原産のエゾノギシギシやアレチギシギシなども近縁種となります。日本には明治中期頃に入ってきたとされていますが、どれも現在は帰化しており各地の路端・荒れ地などに自生しています。ギシギシの仲間達は交雑しやすく、地上部を刈り取っても根があるとすぐ再生してしまうため難防除雑草として嫌われています。

そんな日本では厄介な外来種という扱いのイエロードック(ナガバギシギシ)ですが、原産地であるヨーロッパでは食材・薬用ハーブとして長い歴史を持つ植物でもあります。現在に至るまで葉も野菜感覚でサラダなどに使われていますし、古代には種子を挽いて小麦粉の様にして利用していたと言われています。別属ではありますがソバと同科植物ですから、小麦粉というよりは蕎麦粉に近いものだったのかもしれません。

薬用としても紀元前500年頃から用いられていたと考えられており、古代ギリシアでは毒素浄化や血液浄化剤としてや消化促進に有効なハーブとして用いられていました。そのほか貧血(鉄欠乏性貧血)の改善や強壮剤・緩下剤などとしても利用されていたようです。また根は収斂剤として有用であるということも古くから知られており、外用薬として止血・傷の手当などにも古くから用いられていたと言われています。後の17世紀にイギリスで活躍したハーバリスト、ニコラス・カルペパーも「イエロードックルートを酢で似たものを洗浄液として使うとかゆみの軽減になる」と述べているそうですよ。

そのほかヨーロッパではイエロードックの様々な民間伝承も残されています。根を人形に掘って服を着せて持ち歩き、それを煮た汁で体を洗う“惚れ薬”の様に相手を魅了できると考えられていたのだとか。中世ではこうした恋愛系の用途で用いられたハーブは多いですね。そのほか根を煮出したお茶をドアノブに付けたり店の前に撒くと客寄せになり多くのお金を引き寄せるなどという“金運・商売運”関係や、子宝に恵まれるなどの伝承もあったようです。

ちなみに日本在来種のギシギシの根は“羊蹄(ヨウテイ)”という生薬名で大黄の代用品として緩下剤に利用されていますし、民間両方の中では根を潰して皮膚疾患にも利用されることがあります。アメリカでも先住民たちが膿の排出などに用いていたと言われていますから、世界各地で似たような用途で用いられていた薬草と言えるかもしれません。現在でもイエロードックはヨーロッパを中心とした自然療法で取り入れられており“治療薬の英雄”とも称されているそう。ハーブティーも疲労回復やデトックス・便秘改善ほか様々な用途に利用されています。

日本でも最近は緩下作用や利尿作用が期待できることからデトックスハーブとして取り入れられるようになっていますが、アレルギー反応を起こす可能性があるため国によっては医師やハーバリストなどの監督下でのみ利用すべきハーブとしているところもあります。また何らかの病気・疾患がある方・腎臓結石などの病歴がある方の摂取も注意が必要とされています。日本では食品として扱われているため自己判断で好きなように摂取できますが、便秘改善やダイエットサポートに取り入れてみるとしても過剰摂取を避けるようにしましょう。

基本データ

通称
イエロードックルート(yellow dock root)
別名
Curly dock(カーリードック)、ナガバギシギシ(長葉羊蹄)、牛耳大黄(ギュウジダイオウ)
学名
Rumex crispus
科名/種類
タデ科ギシギシ属(スイバ属)/多年草
花言葉
 -
誕生花
 -
使用部位
代表成分
シュウ酸カルシウム、タンニン、アントラキノン配糖体(クリソファノール、エモジンなど)、ネポジン、ミネラル類
代表効果
胆汁分泌促進、強肝、解毒、緩下、利尿、抗菌、消化促進、抗コレステロール、抗炎症
こんな時に
肝機能サポート、デトックス、便秘、むくみ、消化不良、貧血予防、疲労回復、血行不良、冷え性、肥満予防、肌荒れ…外用:皮膚トラブル
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーブチンキ、浸出油、湿布
ハーブティーの味
土っぽさのある漢方薬のような香り、味は苦味の他にやや酸味がある
カフェインの有無
ノンカフェイン

イエロードックの栄養・成分・期待できる効果

イエロードックルートティー

解毒・浄化サポートに

肝機能・解毒力サポートに

イエロードックは19世紀頃に黄疸や肝臓の不調によく用いられていたハーブで、「胆汁(yellow)を貯蔵する(dock)」が名前の由来という説もあるほど。薬理作用などについては不明瞭な点も多いものの、アントラキノン配糖体に肝臓を刺激する作用があるのではないかと考えられています。イエロードックルートなどのハーブに含まれているアントラキノン類は過剰に摂取した場合には“毒”となる成分です。しかし少量であれば毒性はほぼ無く、適度な刺激物質として働くことで胆汁分泌・排出促進など肝機能向上効果が期待されています。

肝臓は体内の解毒を担っている器官でもあり、老廃物や有害物質などを分解・無毒化する働きもあります。肝臓の機能(解毒力)が低下してしまうと有害物質の蓄積に繋がり、倦怠感やホルモンバランスの乱れ・脂肪増加などの原因となる可能性もあります。このためイエロードックルートは肝臓の機能を高め解毒をスムーズに行う=血液を綺麗に保つ浄化作用を持つハーブとも考えられています。毒素排出・浄化作用が期待できることから関節炎や痛風の軽減に用いられるケースも有るようです。


便秘の改善に

イエロードックティーは伝統的に緩下剤・瀉下剤として用いられてきたハーブの一つです。これはイエロードックルートに含まれているアントラキノン配糖体という成分に、腸を刺激することで蠕動運動を促す働きがあるため。アントラキノン系成分は天然素材であればセンナやアロエ・大黄・ハブ茶などにも含まれており、刺激性下剤成分として市販の便秘薬にも利用されています。このためイエロードックも緩下作用を持つハーブとして、便秘の改善や腸内老廃物の排出に役立つと考えられています。胆汁分泌・排出をスムーズにすることからも、便の硬さを適度に保つなど便通改善に繋がるでしょう。お腹のハリ・ガス溜まりが気になる時に良いという説もあります。

イエロードックルートは天然成分ですし、お茶として飲む場合には1杯あたりのアントラキノン摂取量もさほど多くはならないため、緩下作用は穏やかであり急な腹痛などは起こしにくいとされています。ただし刺激・緩下作用が高いため体質や摂取量によっては腹痛や下痢の原因ともなるため注意が必要です。またアントラキニン系成分を含むアロエやセンナなどを長期間服用すると、腸粘膜の筋力低下・色素沈着による大腸メラノーシス(大腸黒皮症)を起こす可能性も指摘されています。これらの事から継続的な常飲は避け、摂取時も1日に1~2杯程度に留めるようにしてください。便秘時にも同様の成分を含むハーブとのブレンドは避け、バードック(ゴボウ)などを選ぶようにすると良いでしょう。


むくみ予防・軽減に

アントラキノンは肝臓だけではなく腎臓にも刺激作用を持ち、利尿作用をもたらすとも考えられています。余分な水分の排出を促すことに加え抗菌作用を保つ成分も含まれていることから、伝統的に膀胱や尿道のトラブルにも用いられてきたのだとか。肝臓・腎臓・膀胱などの働きを良くして、循環器の働きを全体的に整えるハーブとする見解もあります。ただしシュウ酸含有量が多いので腎臓結石・尿路結石になったことのある方は避けるようにしましょう。

ともあれ利尿作用が期待できることからイエロードックルートはむくみの改善にも有効とされていますし、間接的な働きとして浄化作用にによって血行が良くなること・肝機能古城から肝臓で合成され血管の浸透圧を保つ働きがあるアルブミンの不足が改善されることなどもむくみ改善に繋がると考えられています。継続利用・過剰摂取は厳禁なハーブですから、蕎麦茶ダンデライオンルートなどをベースにして、特にむくみや便秘が気になる時にイエロードックルートを加えるような飲み方が無難でしょう。


そのほか期待される作用

消化促進・疲労回復に

肝臓は小腸で吸収された糖や脂質を体内で使える形に変換して貯蔵する・エネルギーに変えるなど代謝に関わる機能も担っている器官。また肝臓から分泌される胆汁も解毒に関わるだけではなく、脂質の消化・吸収を促進する働きを担っています。このためイエロードックルートは肝臓の働きを良くすることで消化不良や胃もたれの軽減にも効果が期待されています。古代ギリシアで消化促進に取り入れられていたと言われるのもこの働きが大きいでしょう。そのほか胃の酸性度を抑え、胃酸過多などを軽減する働きも期待されています。

肝機能・消化吸収のサポートが期待できることから、イエロードックルートは滋養強壮にも良いハーブとされ、疲労回復や病後回復などにも役立つと考えられています。ミネラルでは鉄分が多く含まれているため、鉄不足・鉄欠乏性貧血による疲労感の軽減にも効果が期待できるでしょう。貧血気味の方であればネトルホーソンベリーと、消化器系の不調が気になる場合はジャーマンカモミールペパーミントなどと組み合わせても利用されています。


血行不良・肥満予防に

イエロードックルートは肝臓の解毒機能を高めることで、血液を綺麗にする働きがあると考えられています。アントラキノンにはコレステロール低減作用を持つという報告もなされていますし、胆汁はコレステロール(脂質)を原料としているため胆汁分泌が活発化することでコレステロールや中性脂肪の増加・蓄積予防にも繋がるでしょう。これらのことからイエロードックルートは血液や血管を綺麗に保つことで正常な血液循環をサポートする働きも期待されています。

また肝臓は摂取した栄養価の代謝にも関係していますから、胆汁分泌が促されることでエネルギー代謝の向上にも繋がると考えられています。緩下・利尿作用やデトックス(解毒力向上)と合わせて、肥満予防にも繋がるでしょう。エネルギー代謝が活発になれば燃焼によって熱も発生しますから、血流改善と合わせて冷え性の改善効果も期待できます。イエロードックルートは短期間な利用向きのハーブですから、ダイエット用として継続して利用したい場合は同様に肝機能サポートが期待できるターメリック(ウコン)の方が適していると考えられます。


生活習慣病病に

アントラキノン類などの働きからイエロードックルートコレステロール・中性脂肪の低減作用を持つと考えられています。イエロードックルートにはタンニンなどの抗酸化物質も含まれていることが認められているため、相乗して生活習慣病予防にも効果が期待されています。アントラキノンを含むため毎日続けて飲むタイプのお茶ではありませんが、コレステロール対策などにも繋がる可能性はあるでしょう。


その他

解毒機能向上や便通改善など老廃物の排出促進効果が期待できることから、イエロードックティーは肌荒れや吹き出物などの予防・改善にも役立つと考えられます。またどの成分の働きなのかは不明瞭ですが、月経不順の改善や生理痛軽減など女性領域の不調や、風邪・気管支炎・喘息など呼吸器系の不調に用いられることもあるようです。ヨーロッパでは「治療薬の英雄」とも呼ばれているそうですから、家庭薬・家庭に常備できる万能薬のような形で利用されていたのかもしれませんね。


イエロードックティーの飲み方について

イエロードックルートは緩下・瀉下作用を持つアントラキノン類を含むため、はじめから大量に飲んでしまうと腹痛や下痢の原因となることがあります。そのため飲み始めは1日1杯(250ml程度に対して、茶葉小さじ1杯)からが推奨されていますが、お腹が弱い方などであれば他のお茶とブレンドしてそれ以下の量になるように調節しましょう。お茶であれば多くとも1日3杯まで、サプリメントなどの健康食品として摂取する場合は販売社の指示する用法・容量を守りましょう。

イエロードックルートの使用に長い歴史のある欧米では、アレルギー反応を起こすハーブであること・多くの医薬品との相互作用が見られることなどが指摘されています。食品として通常量を摂取する場合には安全性が示唆されていますが、アントラキノンなどは摂取量によっては毒物となり、吐き気・嘔吐・疲労感・しびれ・ショック状態などの症状から最悪の場合死に至る危険性もありますから過剰摂取にならないよう注意しましょう。長期継続利用も低カリウム血症・中毒症状を起こす可能性が指摘されています。また加熱処理がきちんとなされていないイエロードックの使用は呼吸困難や心臓障害などを起こす危険性があるため、自作は避けたほうが良いでしょう。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

皮膚トラブルに

イエロードックルートは湿疹やかゆみなどの皮膚トラブルに湿布(パップ剤)としても利用されています。働きとしては抗菌作用の他に収斂・抗炎症作用もあるとされていますから、ニキビケアにも用いられています。かゆみ・かぶれ・膿・切り傷・火傷など様々な皮膚トラブルに有効とされているハーブですが、逆に皮膚炎症を起こす原因になってしまう場合もありますので皮膚に付ける場合は必ず事前にパッチテストを行うようにしましょう。

イエロードックルートの注意事項

  • 妊娠中・授乳中の方、お子さんは摂取できません。
  • 腎臓結石・尿路結石などの病歴がある方が使用に注意が必要です。
  • 持病がある方・医薬品を服用中の方は医師に確認の上利用して下さい。
  • タデ科植物・ブタクサアレルギーなどがある場合は注意が必要です。