菊芋/エルサレムアーティチョーク
ハーブティーと期待される効果効能紹介

豊富なイヌリンが腸内フローラ改善や血糖値上昇抑制に役立つ

世界中の植物の中で最もイヌリンを多く含む、と称されることもある菊芋。水溶性食物繊維の一種であるイヌリンの働きから便秘や腸内フローラ改善、血糖値上昇抑制による糖尿病予防やダイエットなどに役立つ健康食材として注目されている存在です。また腸内フローラを整えることで免疫力改善や花粉症・アトピー性皮膚炎などのアレルギー緩和、肌トラブルの改善や基礎代謝向上などに対しても効果が期待されています。

画像:菊芋/エルサレムアーティチョーク

 

菊芋/エルサレムアーティチョークについて

植物紹介:菊芋

キクイモは英名で“エルサレム・アーティチョーク”と呼ばれていますが、イスラエルの都市エルサレムではなく北アメリカが原産です。アーティチョークと付きますが、アーティチョークがチョウセンアザミ属であるのに対してキクイモはヒマワリ属ですので近縁種というわけでもありません。

エルサレム・アーティチョークという呼び名が付けられたのは古い時代、イタリアでヒマワリに似た花と味がアーティチョークに似ている事から「ヒマワリのアーティチョーク(Girasole Articiocco/ジラソーレ・アルティチョッコ)」と呼ばれていたためとする説が有力です。このヒマワリを意味するGirasoleがJerusalemと混同され、いつの間にかJerusalem artichokeという呼び名が定着してしまったそう。ちなみに和名はもっとシンプルで、菊に似た黄色い花を付けること・芋(塊茎)が出来ることから“菊芋”と命名されています。

菊芋は北アメリカが原産で、ネイティブアメリカンのトピナンブ族が古くから食料として利用していたと伝えられています。1600年代にはヨーロッパ各地へと伝えられ、繁殖力が高いこともあり各地で農作物として栽培が行われるようになります。ヨーロッパから世界各国へと伝えられ、現在は南アメリカを始めヨーロッパ・アジア・オセアニアとかなり広範囲に分布しています。

日本にも江戸時代末期(1850~60年代)に伝来しましたが、芋類と比べて風味が劣るとされ冬場の保存食用・飼料用としての利用がメインでした。しかし食糧不足が深刻であった第二次世界大戦中になると「作付統制野菜」に指定され、飢えを凌ぐ貴重な食用として重宝されるようになります。ちなみに現在自生しているものは当時栽培されていたものが野生化したもので、繁殖力の高さから生態系を壊す可能性がある可能性も指摘されています。

戦後は一部地域で食用とされていた程度で、食卓で菊芋姿を見かけることはほとんどありませんでした。しかし近年菊芋のイヌリン含有量の高さが注目され、お茶・パウダー・サプリメントなど健康食品としての利用も増えています。イヌリンは水溶性食物繊維の一種で血糖値の上昇を穏やかにする事から、イヌリンを含む菊芋は「畑のインスリン」とも呼ばれ血糖値が気になる方・糖尿病の方のサポート食材としても注目されています。
また菊芋は芋類ではなくキク科植物であり、デンプンをほとんど含まず低カロリーな食材でもあります。イヌリンを豊富に含むことと合わせてダイエット食材としても注目されていますし、煮物や味噌漬けなどの和食からフライ・シチューなどの洋食まで幅広く利用できることもあり“食材”としての人気も高まっています。

基本データ

通称
菊芋(キクイモ)
別名
Jerusalem artichoke(エルサレム・アーティチョーク)、唐芋(カライモ)、八升芋(ハッショウイモ)、アメリカイモ、ブタイモ、サンチョーク
学名
Helianthus tuberosus
科名/種類
キク科ヒマワリ属/多年草
花言葉
陰徳、美徳、恵み、気取らぬ愛らしさ
誕生花
9月26日
使用部位
根部(塊茎)
代表成分
イヌリン(水溶性食物繊維)、ポリフェノール類、ミネラル類、ビタミン類
代表効果
血糖値上昇抑制、血圧降下、緩下、整腸、抗肥満、抗酸化、免疫力向上
こんな時に
血糖値が気になる方、生活習慣病予防(糖尿病・高血圧・動脈硬化など)、肥満予防、便秘、ダイエット、腸内フローラ改善、風邪予防、花粉症・アトピー性皮膚炎などのアレルギー緩和、肌荒
おすすめ利用法
食用、お茶(ハーブティー)
ハーブティーの味
香りは漢方薬や薬草系、味はジャガイモ似でややクセがある
カフェインの有無
ノンカフェイン

菊芋/エルサレムアーティチョークの栄養・成分・期待できる効果

菊芋茶

生活習慣病・肥満予防に

便通・腸内フローラ改善

菊芋の体表成分と言えるのがは水溶性食物繊維に分類される多糖類「イヌリン」含有量が高いということが挙げられます。含有量は生の菊芋で13~20%、乾燥菊芋であれば50~60%をイヌリンが占めることから“イヌリンの含有率が最も多い植物”とも言われています。

イヌリンは水分を含んでゲル化する性質があり、水溶性食物繊維に分類されています。この働きによって便の水分量を調節して便を柔らかく保つ=スムーズな排便を促す働きあります。加えてゲル化することで摂取した食物の移動速度をゆっくりにし腸の蠕動運動を促す働きも期待できるため、便秘の改善に役立ってくれるでしょう。

またイヌリンは腸内で分解されることで、難消化性オリゴ糖の一種「フラクトオリゴ糖」に変化します。フラクトオリゴ糖は腸内で善玉菌のエサとなってくれますから、善玉菌の活性化・増殖を促すことで腸内フローラのバランス改善にも役立つと考えられます。腸内フローラが改善されることからも便通改善効果が期待できます。


糖尿病予防に

糖尿病は血糖値を下げるホルモンであるインスリンが不足、もしくは正常に作用しないことによって起こります。インスリンは血液中のブドウ糖を細胞に届けたりエネルギーとして蓄積する働きを持つ燃料の分配役的な存在ですから、この働きが低下することで血糖値が高いまま・全身の細胞はエネルギー不足という状態に陥ります。

日本の糖尿病患者の9割以上を占める“Ⅱ型糖尿病”は遺伝的体質+脂質や糖質の摂り過ぎによってインスリンの産生に負担がかかり正常な分泌ができなくなる・細胞のインスリン抵抗性が増大(インスリン感受性が低下)することで血糖値のコントロールが出来なくなってしまうことで発症します。食生活・生活習慣の影響が強いことから生活習慣病の一つにも数えられていますね。

菊芋に含まれている水溶性食物繊維のイヌリンは水分を含んでゲル化することで胃から小腸までの食べ物の移動速度を緩慢にする働きがあります。消化器官内の移動速度が緩やかになることで、食後の急激な血糖値上昇が抑えられます。この働きからイヌリンはインスリンの負担を軽減し、糖尿病の発症を予防する働きが期待されています。血糖値が高めの方の予防対策としても役立ってくれますし、糖尿病の方の食事療法などにも取り入れられているようです。血糖値対策としては食前に菊芋茶を飲むようにすると効果的です。


肥満予防・ダイエットに

糖尿病の予防・軽減効果が期待されている菊芋は「低インスリンダイエット」をサポートする食材としても注目されています。インスリンは血中のブドウ糖をエネルギーとして各細胞に送り込む働きがありますが、糖が過剰で余ってしまう場合は余剰分を脂肪細胞へ蓄積します。この繰り返しによって脂肪細胞が肥大化し肥満となります。インスリンは血糖値急激に上がれば多く分泌されますから、血糖値上昇を緩やかにすることで糖が脂肪として蓄積されるのを防ぐことに繋がると考えられています。

加えてイヌリンは腸内でフラクトオリゴ糖に分解され善玉菌を増殖させる働きから、腸内フローラの状態が良くなることで基礎代謝向上にも役立つと考えられます。またゲル化したイヌリンは余分な糖・脂質などの吸収を阻害する働きがありますし、善玉菌が増えることでも余分な栄養を吸収しなくなる=太りにくい体質になるとする説もあります。もちろん便通の改善によってウエストサイズの減少や、老廃物の排出によるデトックス効果なども期待できます。

これらのことから菊芋はダイエットをサポートする食材・お茶としても支持されています。肥満予防であれば杜仲茶緑茶、むくみが気になる場合はドクダミゴボウ茶などと組み合わせて飲むのもオススメです。


生活習慣病予防に

イヌリンの血糖値上昇抑制作用による糖尿病予防だけではなく、菊芋は他の生活習慣病予防に対しても役立つのではないかと考えられています。イヌリンには血圧降下作用があることが認められていますし、菊芋にはカリウムなどのミネラルも含まれていますので相乗して高血圧予防効果が期待できます。そのほかポリフェノールなど抗酸化物質も含まれていますので、活性酸素と脂質が結合することで起こるドロドロ血液や血管劣化などを防ぎ、動脈硬化などの予防にも役立つと考えられています。


そのほか期待される作用

免疫力向上・アレルギー改善に

菊芋に多く含まれているイヌリンは腸内でフラクトオリゴ糖に変化し、腸内の善玉菌を増やす働きがあります。腸管に体の中で最も重要で最も大きな免疫器官(腸管免疫)があり、人体の全免疫システム全体の70%を腸が占めていると言われています。腸内フローラのバランスを良く保つことで免疫力向上・維持に繋がりますから、菊芋茶は風邪をひきやすい方やインフルエンザ予防としても効果が期待されています。

免疫力を高めるというと花粉症やアトピー性皮膚炎など免疫過剰によって起こるアレルギー性疾患が悪化するのでは、と思う方もいるかもしれません。しかし免疫の働きの中には“入ってきたものの有害・無害の判定”というものも含まれていますから、腸内の免疫システムの活動向上(正常化)はアレルギーの改善や軽減にも繋がると考えられています。このため菊芋茶はアトピー性皮膚炎や花粉症などに悩む方にも役立つとされています。


肌荒れ対策・美肌作りに

水溶性食物繊維(イヌリン)を豊富に含み便秘や腸内フローラ改善役立つ菊芋茶は、肌の状態を整えるという点からも注目されています。便秘が改善することで老廃物から発生する有毒物質が減り、血液が綺麗になることで肌のくすみやニキビ・吹き出物・肌荒れの改善が期待できるでしょう。また腸内善玉菌は食べ物などを分解して栄養素の吸収を助けたり、有益なビタミン類を体内で合成してくれる働きもあります。

菊芋自体はセレンや亜鉛などミネラル・ポリフェノールなど抗酸化や新陳代謝に関わる成分や、皮膚の健康維持に欠かせないビタミンB群なども含まれています。イヌリンによる腸内フローラ改善効果と合わせて拳王的な肌の維持や肌荒れ予防・改善に役立つとされています。高い抗酸化作用が期待できるオリーブリーフなどのお茶とブレンドしたり、栄養成分を余すところ無く利用したい場合にはパウダータイプを利用して明日葉大麦若葉粉末と混ぜあわせるなどすると良いでしょう。

菊芋茶の作り方(自作方法)

全国的見て菊芋はスーパーなどですぐに買える食材というわけではありません。流通時期も限られているため自身で栽培したり、栽培農家さんからのお取り寄せという形で購入される方が多いかと思います。菊芋自体はある程度保存が効きますが、菊芋に含まれるイヌリンは菊芋に含まれている酵素によって分解され減少してしまうのでなるべく早く食べる・乾燥加工した方が良いと言われています。

お茶として飲むだけであれば商品化されているお茶やパウダー(菊芋粉末)を購入したほうがコスパ的にも労力的にも良いかと思いますが、買った・採れた菊芋が余ってしまっている場合などはお茶にしてしまった方がイヌリンを豊富に摂取できるでしょう。カリウムなど熱に弱い栄養素は減少してしまう可能性が高いですが、加熱することでポリフェノールが増加するという報告もあります。

菊芋茶の作り方
  1. 菊芋をよく洗い、皮を剥きます。
  2. 薄くスライスしたあと小さめの短冊形に切ります。
  3. 広げて水分がある程度抜けるまで天日干し(2~3日)。
  4. フライパンで低温でパリパリになるまで炒めます。
  5. 粗熱を取った後、細かく砕きます。

フライパンの焙煎火力や時間はお好みに合わせて調節してください。


菊芋茶の入れ方

市販されている菊芋茶であればお湯を注いで蒸らすだけで浸出出来るものもありますが、自作菊芋茶の場合はだしパックなどに詰めて5~10分程度煮出して飲んでください。出がらしはかき揚げなどに混ぜたり、濃い目に味をつけて炒めてフリカケにするなどすると再利用できます。

菊芋はイヌリンが豊富なことが知られていますが、不溶性食物繊維をはじめ水に溶けにくい栄養成分も含まれていますので出がらしも利用すると栄養を余すところ無く摂取できるでしょう。焙煎後の菊芋を粉末化して粉茶感覚で利用することも出来ます。菊芋茶の味が苦手な方は粉末にして青汁などに混ぜて飲むと飲みやすいかもしれません。

菊芋/エルサレムアーティチョークの注意事項

    お茶として通常量を摂取する場合は特に問題はないとされています。

  • 体質により一時的にお腹が張ったり、便が緩くなる可能性があります。使い始めは少量ずつ利用するようにすると良いでしょう。