【ワイルドストロベリー】
原料植物、ハーブティーに期待される効果効能

ヨーロッパで古くから親しまれてきたハーブティーの一つ

ワイルドストロベリーは私達が普段果物として食べているイチゴの仲間で、果実を食用とするほか、ヨーロッパでは葉を使ったハーブティーが古くから民間薬として利用されていました。現在でもフラボノイドやコーヒー酸・クロロゲン酸などを含むことから抗酸化サポートに役立つと考えられています。貧血予防や利尿作用・抗炎症作用なども期待されていますが、作用や有効性については未研究の部分が多いため注意が必要。

ワイルドストロベリーのイメージ画像

ワイルドストロベリーとは

植物紹介:エゾヘビイチゴ

普段私達が果物として食べているイチゴよりも、小粒で球に近い形の果実が特徴的なワイルドストロベリー。ワイルドストロベリーティーと呼ばれているのは基本的には乾燥させた葉を煮たしたもの。呼び名からは甘酸っぱいフルーティーなハーブティーを想像しますが、葉が原料ですのでグリーンな香りと爽やかな味がします。ヨーロッパでは民間医薬のような感覚で昔から飲まれてきたハーブティーの一つのようですが、十分に乾燥させないと毒性があるという見解もありますので自作する場合は注意しましょう。ビタミンやミネラルが含まれていることに加えて、抗酸化物質が豊富なことも報告されています。ちなみに果実は生食もできるほか、ジャムやソース・リキュールの原料などにも利用されています。

ワイルドストロベリーは直訳すると“野生イチゴ”もしくは“野いちご”となりますが、日本で“野いちご”と呼ばれているのはクサイチゴやモミジイチゴなどバラ科キイチゴ属の植物が主。果実の外見としてもラズベリー桑の実などに似た、小さなツブツブが集まったような形を連想される方が多いのではないでしょうか。しかし、ワイルドストロベリーは学名Fragaria vesca。果物としてお馴染みのイチゴと同じくバラ科オランダイチゴ属に分類される植物で、果実の見た目もイチゴに似ています。和名はヨーロッパクサイチゴもしくは北海道では帰化植物として自生していることからエゾヘビイチゴ。クサイチゴはキイチゴ属、ヘビイチゴはキジムシロ属なので、こちらの和名もまたややこしさに拍車を掛けているような印象ですよね。

北海道にも帰化しているように、ワイルドストロベリーは北半球に広く分布している植物。原産地については断定されていませんが、ヨーロッパ各地の遺跡からワイルドストロベリーの種の化石が発見されているため石器時代から人々はワイルドストロベリーの果実を食してきたと考えられています。中世ヨーロッパでは実を食べる以外に茎や根を民間医薬として利用していたことも分かっていますし、1300年代頃からヨーロッパではワイルドストロベリーを栽培するところも出始めたと推測されています。このことからワイルドストロベリーはオランダイチゴ属で初めて栽培化された種とも表現され、現在ポピュラーなオランダイチゴ(Fragaria × ananassa)の栽培が盛んになるまでの数百年間はヨーロッパでポピュラーな“イチゴ”だったと考えられています。

また、キリスト教でワイルドストロベリーは正義を象徴する植物として扱われたという説もありますし、ワイルドストロベリーはヨーロッパでは「幸運・幸せ(Lucky & Love)」、アメリカでは「奇跡(Miracle)」を運んでくるとも言われ、恋愛成就や素敵な出会いを象徴する植物としても愛されてきたのだとか。かつて日本でも「幸運を呼ぶワイルドストロベリー」としてTVで放送され入手困難になった時期がありました。ジンクスはさておき、鮮やかに赤い果実や白くて小さなお花も可愛らしいワイルドストロベリーは園芸植物としても人気の存在。英国王室御用達の陶磁器メーカーWedgwood(ウェッジウッド)のモチーフの一つとしても、世界中で愛されています。

基本データ

通称
ワイルドストロベリー(Wild Strawberry)
別名
蝦夷蛇苺(エゾヘビイチゴ)、ヨーロッパクサイチゴ、ウッドランドストロベリー(woodland strawberry)、アルパインストロベリー(Alpine strawberry)、ヨーロピアン・ストロベリー(European strawberry)など
学名
Fragaria vesca
科名/種類
バラ科オランダイチゴ属/多年草
花言葉
幸せな家庭、尊重と愛情、無邪気、敬慕と愛
誕生花
3月29日
使用部位
代表成分
タンニン(プロアントシアニジン)、フラボノイド(ケルセチン、ルチン)、フェノール酸類(サリチル酸、コーヒー酸、クロロゲン酸など)、ビタミンC、ミネラル類(鉄分、カルシウムなど)、ペクチン、精油
代表効果
強壮、抗酸化、収斂、消化管機能促進、利尿、抗炎症
こんな時に
貧血、血行不良、消化不良、下痢、腹部膨満感、高血圧、むくみ、尿素感染症予防、リウマチ、関節炎、肌荒れ
おすすめ利用法
食用、ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ、手作り化粧品
ハーブティーの味
乾燥した草のグリーンな香り、味はクセがなく番茶や緑茶に近い
カフェインの有無
ノンカフェイン

ワイルドストロベリーの成分と作用

ワイルドストロベリーリーフティーに期待される効果

栄養補給・健康維持に

栄養補給・貧血予防に

ワイルドストロベリーの葉には鉄分・カルシウム・ビタミンCなど、ミネラルとビタミン類が含まれている事が認められています。お茶として煮出した水分のみを飲む場合であれば鉄分は溶け出すものよりも茶葉部分に残る割合のほうが多くはなりますが、鉄分+鉄分の吸収を助けるビタミンCが含まれているワイルドストロベリーのお茶は貧血予防としてヨーロッパで飲まれてきたと伝えられています。また2009年『Phytomedicine』に掲載されたクロアチアの研究ではワイルドストロベリーリーフ抽出物に血管拡張作用が見られたことが報告されており、血流を整えることで血圧降下・血行不良の軽減に役立つのではないかという期待もあります。

日本人女性は鉄分が不足傾向にあることは長らく指摘されてきた問題で、数値上貧血には至らないものの鉄欠乏の方も入れると女性の約半分が鉄分不足(貧血・隠れ貧血)なのではないかという見解もあるほど。貯蔵鉄分が不足している段階でも貧血と同ような不調=免疫力低下・集中力低下・疲れやすい・無気力などの症状が起こることが分かっています。栄養の偏りが気になる方、貧血気味でなんとなく体調がパッとしないと感じている際には食事改善と合わせて補助的にワイルドストロベリーティーを取り入れてみても良いかもしれません。葉緑素を含み血行促進作用が期待できるネトルや、クエン酸の豊富なハイビスカスティーなどとブレンドしてみても楽しいですよ。


消化器系の健康サポートに

ワイルドストロベリーの葉は伝統的に下痢・消化不良・赤痢などのケアに用いられてきた歴史があります。ハーブティーとしてはほとんど使われませんが、昔は根・茎を煮出して下痢止めとして飲むこともあったのだとか。現在の研究でもワイルドストロベリーの葉にはタンニンが多く含まれていることが認められており、収斂作用によって下痢を緩和する働きが期待されています。そのほかに便の水分量を調節することで適度な固さに保つペクチン(水溶性食物繊維)も含まれているため、下痢・便秘両方の改善をサポートしてくれる可能性もあります。

また、タンニンには抗菌・抗真菌作用が認められていますし、消化器系を刺激することで機能を高める働きも期待されている成分。このためワイルドストロベリーリーフティーは腹部膨満感・吐き気・ストレス性の胃痛や胃痙攣など様々な胃腸の不快感を軽減する働きも期待されています。ただし摂取量や体質によってタンニンの摂取は消化器系に負担がかかりすぎ、不調を起こす原因となってしまう場合もあるので摂取量には注意が必要。タンニンには鉄分吸収を阻害することも報告されているので鉄分補給・貧血予防に役立つのかという疑問が残りますが、ワイルドストロベリーリーフティーの貧血改善効果などについては研究が行われていないため定かではありません。


抗酸化のサポートに

ワイルドストロベリーの葉はビタミン・ミネラル類だけではなく、ケルセチンやルチンなど抗酸化作用を持つフラボノイド類も含まれています。ビタミン類でもビタミンCが含まれていること、タンニンやコーヒー酸(カフェ酸)・クロロゲン酸などにも抗酸化作用が認められていることから、ワイルドストロベリーティーは内側からの抗酸化を助けてくれる可能性があると考えられます。ワイルドストロベリーの葉はラズベリーリーフオレガノよりも高い抗酸化活性を持つことを示唆した研究発表もあり、アンチエイジングティーとしても注目されているのだとか。

抗酸化作用によって悪玉(LDL)コレステロールの酸化を抑えることが出来ること、ケルセチンなどにはコレステロール低減作用が報告されていることから、高血圧や動脈硬化予防にも役立つ可能性があるでしょう。フリーラジカルによる害を抑制することは免疫機能の保持や疲労回復など様々なメリットが期待されているため、若々しさや健康維持のサポートに役立ってくれる可能性もありそうです。


むくみ・炎症軽減にも期待

ワイルドストロベリーの葉は利尿作用を持つハーブとしても使われてきました。作用秩序や有効性についての研究はほとんど行われていませんが、伝統的な効能からむくみの解消・腎臓機能のサポートに役立つ健康茶として民間療法の中で用いられています。成分的に見てもナトリウム排出を促すことで体の水分バランスを整えるカリウムが含まれていますし、カフェ酸にも利尿作用を持つ可能性が報告されていますから、何らかの形で水分代謝を整えてくれる可能性はあるかも知れません。

加えて利尿作用を持つ成分を含み、水分代謝を整える働きが期待出来ることから、ワイルドストロベリーは関節炎やリウマチなどの痛み・腫れを軽減する働きも期待されています。ケルセチンなどのフラボノイドには抗炎症作用が見られたという報告が多くなされていますし、2000年に『Neuroimmunomodulation』に掲載された研究ではカフェ酸が抗炎症化合物として有用である可能性を示唆しています。2014年に『Journal of Ethnopharmacology』に発表されたポルトガルの研究では、ワイルドストロベリーの葉の水性アルコール抽出物が一酸化窒素除去活性を示したことも報告されています。タンニンなどによる抗菌・抗真菌作用、利尿作用を持つことと合わせて尿道炎や膀胱炎などの尿路感染症の予防にも役立つのではないかと期待されています。

そのほか期待される作用

>美肌作りのサポートに

ワイルドストロベリーの葉はビタミンCやポリフェノールなど抗酸化作用のある成分を豊富に含むため、お肌・外見のアンチエイジングにも役立ってくれるでしょう。肌細胞がフリーラジカルによってダメージを受けるとるシワ・くすみ・たるみなどの肌老化を促進させることが指摘されていますから、抗酸化物質の補給によってこうした悪影響を抑える働きが期待できます。鉄分補給+血行促進からも、お肌に血液や酸素を行き渡らせてくすみを予防したり肌の新陳代謝を高めることに繋がる可能性があります。


そのほか

日本ではあまりポピュラーなハーブティーとは言えないワイルドストロベリーですが、ヨーロッパでは人気のあるハーブもしくは民間薬の一つとして親しまれています。使用されてきた歴史も古いため風邪のケアや回復促進、歯痛の緩和、月経トラブルの緩和、精神安定など様々なメリットが囁かれている存在。しかしワイルドストロベリーの葉についての研究数は少なく、伝統医学上の効能という以上のことは分からない部分が大半となっています。


飲みにくいハーブティーのブレンドにも…

ワイルドストロベリーティーは番茶のようなクセのない、日本人にとっては親しみのある風味です。このため飲みにくいハーブティーを薄めて飲みやすくするための「ブレンド要員」としても活躍してくれます。マロウブルーのように見た目の楽しさはありませんが、味がある程度ありますので風味を調整する目的であれば適しています。またミネラルが豊富なので栄養補給用として他のハーブティーとブレンドして不足を感じる栄養を補給できるようなドリンクを作ってみるのもオススメです。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

スキンケアに

ワイルドストロベリーはタンニンやビタミンCなど収斂作用のある成分を含む事から、脂性肌や毛穴の開き対策としてスキンケアにも使用されています。抗菌作用がありますからニキビ予防にも期待できるでしょう。そのほかサリチル酸という成分が含まれており角質層の柔軟化や殺菌効果を持つ、エラグ酸による美白・コラーゲン分解酵素の働きを抑制して肌の針を高める、などの見解もあります。

外用の場合も作用については分かっていない部分が大きいですが、抗酸化物質が豊富に含まれているという点から何らかの美肌補助効果・アンチエイジング効果を持つのではないかと期待されています。ただし、ワイルドストロベリーの葉から作ったハーブティーや希釈したチンキを利用する場合には、皮膚刺激を感じる場合もあります。必ず事前にパッチテストを行ってから利用するようにしましょう。

ワイルドストロベリーの注意事項

  • 妊娠中・授乳中の使用、小さいお子さんへの使用における安全性は断定されていません。
  • 慢性肝疾患のある方、消化器系に疾患のある方は使用を控えましょう。

参考元