ナツメグ
ハーブティー・精油と期待される効果効能紹介

消化器系の改善に、少量を香り付けに使うのがオススメ

西洋・東洋問わずに広く利用され、世界4大スパイスの1つに数えられるナツメグ。独特の甘い芳香とほろ苦さが特徴で、漢方では胃腸機能を整える生薬「肉荳蔲(ニクズク)」として利用されています。ナツメグは体を温める働きもありますので特に冷えに起因する胃腸の不調緩和に特に効果が期待できるほか、生理痛の緩和や寝付きを良くするなど目的でも利用されています。健康メリットが期待できるハーブにも数えられていますが、過剰摂取によって中毒症状を起こすため摂取量には注意が必要ですよ。

画像:ナツメグ/肉荳蔲

 

ナツメグについて

植物紹介:ナツメグ

ナツメグはニクズク科の常緑高木で、果肉と種子の間にある仮種皮部分をメース、種子の中に含まれる仁部分をナツメグと呼んでいます。ともに似た風味を持ちほぼ同じ用途で用いられますが、メースのほうがより繊細な香りで高級品とされています。
日本でナツメグといえばハンバーグに使う香辛料という印象が強く、肉の臭み消しとして利用がよく知られています。またその独特な甘い芳香からクッキーなどの焼き菓子やパンにも用いられています。ナツメグという名前は豆(Nut)+ ムスク(meg)、学名はMyristica(没薬のような)+fragrans(芳香)が由来です。

ナツメグは胡椒(ペッパー)、シナモンクローブとともに世界4大スパイスにも数えられる存在で、西洋・東洋問わずに広く使われているスパイスです。原産地であるインドネシア(モルッカ諸島)からいつ・どのように伝播したのかははっきりと分かっていませんが、インドの経典“ヴェーダ”に頭痛に良いと記載があること、古代エジプトの副葬品からもナツメグが発見されていることから、古い時代から交易品として利用されていたのではないかと考えられています。

はっきりと時期の分かる記録が見られるのは10世紀以降で、12世紀末頃にはヨーロッパへと伝播しました。大航海時代にはコショウやクローブとともに価格が高沸し、16世紀にはポルトガル、17世紀からはオランダ(東インド会社)によるナツメグ貿易独占が始まります。オランダは他国の栽培を防ぐために種子が発芽しないよう石灰に浸すなどの、独占状態の維持を徹底していたのだとか。

1770年にフランス人がナツメグの苗を盗み出し移植する・モルッカ諸島の支配権がイギリスに移るなどの時期がありましたが、1816年に再びオランダに支配権が戻りナツメグの制限が行われます。1864年にやっとナツメグの栽培が自由化され、現在のように広い地域で親しまれる香辛料となります。

基本データ

通称
ナツメグ(Nutmeg)
別名
肉荳蔲(ニクズク)、ナッツメッグ、ナットメグ、ミュスカード(muscade)
学名
Myristica fragrans
科名/種類
ニクズク科ニクズク属/常緑高木
果物言葉
眠りを起こす
誕生果
7月3日
使用部位
種子(仁)
代表成分
精油(α-ピネン、オイゲノール、ミリスチンなど)
代表効果
健胃、駆風、緩下、制吐、強心、催淫、刺激、殺菌、鎮けい、鎮痛、通経
こんな時に
消化不良、下痢、腹痛、食欲不振、吐き気、便秘、腹部膨満感、冷え性
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーバルバス、料理用ハーブ(香辛料)、精油
ハーブティーの味
甘さとスパイシーさを含む香り、味はやや苦味・刺激がある
カフェインの有無
ノンカフェイン

ナツメグの栄養・成分・期待できる効果

ナツメグティー

消化器系への働き

体を温める

ナツメグは体を温める働きにも優れているスパイスです。東洋医学でナツメグ(肉荳蔲)は温性に分類され、気の滞りを改善して胃腸を温める働きがあると考えられています。

冷え性の女性に適したスパイスとしてティー以外にカレーやココアなどのプラス食材としても利用されています。また体を温める・冷え性の改善としてナツメグを取り入れる場合は肉桂(シナモン)八角(スターアニス)陳皮(オレンジピール)とのブレンドがよく用いられています。


胃腸の調子を整える

お腹を温める事で冷えによる腹痛や下痢・嘔吐の改善に役立ちます。漢方でもナツメグ(肉荳蔲)は芳香性健胃薬として消化不良や下痢に利用されており、日本でも胃腸薬としてお馴染みの「太田胃散」にも配合されています。

また胃の働きを高めることで食欲増進、腸の働きを高めることで整腸・腸内ガスの抑制・便通の改善などにも効果が期待出来ます。お腹の調子を整えるのであればカルダモンジンジャーなどとブレンドすると良いでしょう。


そのほか期待される作用

寝付きを良くする

少量のナツメグは穏やかな催眠作用があると考えられており、寝付きを良くするのに役立つと言われています。ナツメグの香りはリラックス効果が期待できますし、体を温める働きも心地よい眠りへと導いてくれるでしょう。ホットミルクにハチミツとナツメグを加えて飲むと良いそうです。

月経不順の改善に

ナツメグには子宮を刺激する働きから通経作用があり、少量月経や月経不順の改善に効果が期待されています。逆に子宮の収縮を促すことで堕胎・分娩促進用としても用いられた歴史もあります。料理に少量加える程度であれば問題はないと言われていますが、妊娠中の使用は控えたほうが良いスパイスに分類されています。


※ナツメグの利用について

ナツメグは過剰摂取によって中毒症状を起こすため扱いに注意が必要なスパイスでもあります。成人で5mg以上の摂取は幻覚・めまい・吐き気などをはじめ最悪の場合は昏睡したり死に至る危険性もあります。

シングルで利用する場合は1カップに1/3個を入れて熱湯で浸出します。ハーブティー一杯の摂取やスパイスとして1振り加える程度であれば心配は要りませんが、ティーにする場合は使用量が増えがちなので、ブレンド時の香り付けとして少量混ぜたり、コーヒーや紅茶に軽く加える程度の使用がおすすめです。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

ハーブバスとして

ナツメグのティーや精油を入浴剤として利用すると体が温まり、寝つきが良くなるなどの働きが期待出来ます。冷え性の方や寒い時期にはジンジャーやクローブとブ合わせて利用するのもおすすめです。

精油を利用する場合は皮膚刺激がありますので少量(数滴)加える程度にしましょう。お風呂用として利用する場合もブレンド要員として、他のハーブ・精油に少し加える程度にしたほうが失敗しにくいです。


ナツメグ精油に期待される作用

精油の経口摂取(飲用など)は出来ません。またナツメグの精油は皮膚刺激が強いためマッサージやスキンケアなど皮膚へ直接付けることは控えたほうが無難です。

心への作用

スパイスとしてはスパイシーさに甘み混じった香ばしい香りを放つナツメグですが、精油の場合はよりシャープさやスパイシーさが強くなっています。精油の成分的にはサビネン、α-ピネン、β-ピネンなどのモノテルペン炭化水素類が大半を占め、刺激作用と鎮静作用を併せ持っていると考えられています。

神経系を刺激することで元気・やる気・活力を高める働きや、頭をシャッキリとクリアにする働きが期待出来ます。失神したときの気付け薬としても用いられることがあるそうです。加えて鎮静作用によって心を落ち着け気持ちを安定させてくれますから、ナツメグ精油は神経疲労や精神的な強さが欲しいときに適していると言われています。


体への作用

スパイス同様に消化器系への働きかけに優れています。食欲を高めたり消化を促進させるだけではなく、腹部膨満感や便秘の改善にも効果が期待出来ます。また血行を促進して体を温める作用もありますので、冷えによる腹痛などの胃腸トラブルや冷え性の改善、リウマチ・関節痛・筋肉痛などの緩和にも用いられています。

そのほかに月経促進作用があるとされており、血行改善作用や鎮痙作用と合わせて月経不順・生理痛の改善、不感症などの改善にも有効と考えられています。抗感染症・免疫力向上作用などもあると考えられており、風邪などのケアにも利用されることがあります。

ナツメグの注意事項

  • 食品として摂取する場合でも、一日の摂取量は3g以内にすると無難です。
  • 精油は妊娠中の方、お子様への利用は避けましょう。
  • 精油を大量・高濃度での使用すると中毒症状を起こす危険性があります。希釈濃度や使用時間には注意が必要です。