料理用ハーブとしても優秀、ストレス性の不調軽減にも期待
フレンチを中心に料理用ハーブとして利用されることの多いタラゴン(エストラゴン)。植物としてはキク科に分類されており、日本で馴染み深いヨモギの近縁種でもあります。健康サポート用として利用されることはほとんどありませんが、エストラゴールなどの精油成分の働きかけから消化器系のサポートや心身の緊張を解す働きが期待されています。そのほか血行促進や女性特有の不調軽減などにも役立つと考えられていますし、甘めの香りを持つハーブでもありますのでブレンドティーを作る時に加えてみて下さい。
Contents
タラゴンとは
植物紹介:タラゴン/エストラゴン
料理用ハーブとして、特にフレンチ系料理がお好きな方にとっては馴染み深いタラゴン。何らかの薬効(健康メリット)を期待して利用すると言うよりは、料理の味を引き締める・引き立てるために使うことのほうが圧倒的に多いハーブではないでしょうか。エストラゴンというフランス語の呼び方も定着している通り、フランスでは「食通のハーブ」や「ハーブの王様」と呼ばれるほど愛されているハーブなのだとか。フレンチではサラダドレッシングなどにタラゴンビネガーをはじめ、ミックスハーブのフィーヌゼルブ・卵料理・バターソースなどの各種ソース類にと様々に使われていますね。
タラゴンはヨモギやマグワート(オウシュウヨモギ)などと同じく、キク科ヨモギ属に分類されるハーブです。ちなみに種子名のdracunculusはラテン語で“小さな竜”を意味する言葉で、現在のイタリア語もこれに似た「ドラゴンチェロ(Dragoncello)」と呼ばれています。フランス語のエストラゴン・英語のタラゴンという呼び名も同様に“小さな竜”が語源とされていますよ。料理の味をぐっと引き出してくれるハーブであることから「魔法の竜」なんて呼び方をされることもあるそう。タラゴンを細かく刻んでマヨネーズやドレッシングなど手持ちの調味料に加えるだけでも、いつもの調味料がグレードアップしますよ。
タラゴンにはフレンチタラゴンとロシアンタラゴンの二種類がありますが、一般的にハーブ・香辛料として利用してされている葉はフレンチタラゴンの方と言われています。フレンチタラゴンとは呼ばれていますが、実は原産地はロシア~西アジアにかけての地域。ロシアタラゴンもロシアではなくアメリカが原産で、フレンチタラゴンの1.5~2倍近くになります。ロシアタラゴンはタラゴンの特徴的な風味はほとんど無いため、サラダ野菜のような感覚で利用されています。ちなみに“メキシカンタラゴン”と呼ばれている植物もありますが、こちらはキク科でもマンジュギク属と別属。ただしタラゴンに似た甘い香りを持つため、タラゴンの代用品として料理に使われることもあります。
タラゴンは紀元前500年頃にはギリシアで薬草して栽培されており、医学の祖と称されるヒポクラテスも蛇や狂犬に噛まれた時の毒消し用として利用していたと言われています。そのほか葉を噛むことで口内・歯の痛みを和らげていたという話もありますから薬としては古くから利用されていたことがうかがえますが、タラゴンが料理に使われるハーブとなったのは中世以降のようです。タラゴンが広まったきっかけはムーア人がフランスに持ち込んだことという説が有力で、17世紀頃までには料理用ハーブ(スパイス)として家庭料理にも使われるようになりました。
現在タラゴンの主用途が香辛料もしくは香料ですが、古くは消化促進・口臭対策・痛み止め・不眠緩和まで様々なことに使われていたそうですよ。タラゴンの特徴であり魅力とされているのは、アニスのような甘さとセロリのような青臭さ・ほろ苦さを併せ持った複雑な風味。スパイスコーナーではドライハーブも販売されていますが、タラゴンは乾燥することで風味がほとんど消えてしまうとも言われています。このためタラゴンが好きな方の中には、出来るだけフレッシュハーブを使えるよう家庭で栽培しているという方もいらっしゃるようです。
基本データ
- 通称
- タラゴン(Tarragon)
- 別名
- フレンチタラゴン(French tarragon)、エストラゴン(Estragon)、龍艾(リュウガイ)
- 学名
- Artemisia dracunculus
- 科名/種類
- キク科ヨモギ属/多年草
- 花言葉
- 潔癖、不変の好奇心
- 誕生花
- 8月5日、11月20日
- 使用部位
- 葉、茎
- 代表成分
- 精油(エストラゴール、フェランドレン、オシメン、リモネン、α-ピネンなど)、β-カロテン、ビタミン類、ミネラル類
- 代表効果
- 鎮静、食欲増進、消化促進、鎮痙、殺菌・抗菌、消毒、ホルモン様、抗炎症
- こんな時に
- ストレス、不眠、食欲不振、消化不良、ストレス性の胃腸トラブル、血行不良、肩こり、腰痛、頭痛、冷え性、疲労回復、風邪予防、咳、PMS・月経トラブル、花粉症・アレルギー、歯痛、口臭、肥満予防
- おすすめ利用法
- 料理用ハーブ(香辛料)、ハーブティー、ハーブチンキ、浸出油、ハーバルバス、湿布、精油
- ハーブティーの味
- アニス様の甘さを持つハーバルな香り、飲むと少し苦み・刺激がある
- カフェインの有無
- ノンカフェイン
タラゴン/エストラゴンの成分と作用
タラゴンティーティーに期待される効果
健康維持のサポートに
リラックス・不眠緩和に
タラゴンはビタミンやミネラルを多く含む植物ですが、ハーブやスパイスとして利用されることがほとんどのためタラゴンに期待される働きの多くは精油成分によるものとなっています。精油成分はタラゴン独特の香気の元となっている成分でもあり、甘い香りの元であるエストラゴール(メチルカビコール/メチルチャビコールメチルエーテル)を筆頭にフェノール類が多く含まれています。タラゴンの代表成分とも言われるエストラゴールは抗ストレス作用や筋肉の緊張を和らげる働きが期待されており、強張った心身をリラックスさせたりストレスを軽減させてくれると考えられています。
タラゴンにはエストラゴール以外にも鎮静作用を持つ成分が多く含まれているため、寝付きを良くしたい時にも役立つと言われています。古くは13世紀にアラビアの医学者イブン・バイタールも睡眠導入に効果のある薬草として利用していたと伝えられていますし、フランスでは不眠に対する民間療法の一つとしてタラゴンティーが飲まれているそう。体の緊張が緩むことでも寝付きやすい状態を作る手助けをしてくれると考えられますから、リンデンやセロリリーフなどと組み合わせて取り入れてみても良さそうですね。
胃腸機能サポートに
タラゴンは消化器系への働きかけに優れたハーブと考えられており、食欲増進用としてのほか胃もたれ・吐き気・消化不良・腹部膨満感の緩和など様々な胃腸のトラブルに有効とされています。成分的にはエストラゴールに消化器系への刺激作用があるとされ、食欲を高める・消化を促す働きが期待されています。2011年にはマウスにタラゴン抽出物を投与したすることで満腹ホルモン“レプチン”が減少するというアメリカの研究が『Diabetes』に掲載されています。またアイルランドのコーク大学食品栄養学科による調査では、タラゴン他カロテノイドを含むハーブが消化器系の機能促進への働きかけを持つ可能性も示唆されています。
こうした働きだけではなく、リラックス効果からも胃腸機能の不調軽減に繋がると考えられます。ストレス性の食欲不振や消化不調・胃痛などの軽減をはじめ、筋肉の緊張を和らげることで胃腸の痙攣や痛みの軽減もサポートしてくれるでしょう。タラゴンはヨーロッパでは伝統的に食欲増進剤のような形でも用いられていますし、かつては寄生虫駆除にも利用されていました。伝統的な効果も多く謳われているため実際の作用についてはハッキリしない部分もありますが、ミントやバジル・ジンジャーなどと組み合わせると食欲不振・消化不良の緩和に効果が期待できます。
血行不良・冷え性緩和に
タラゴンに含まれているエストラゴールは、気持ちだけではなく筋肉の緊張を緩める働きが期待されている成分です。このため筋肉が緊張・硬直することで起こる肩こりや頭痛の軽減や、血行不良の改善にも有効と考えられています。デスクワークなどで長時間同じ姿勢でいることが多い方・体のこりを感じている方にも適しているでしょう。体を温める働きを持つという説もあり、冷え性の軽減にも利用されています。こうした働きは香りによるものなので、ホットで香りを楽しみながらタラゴンティーを飲んでみても良さそうですね。
疲労回復促進に
タラゴンは強壮や疲労回復にも役立つハーブとされており、中世頃には疲労回復に有効なハーブとして巡礼者達が靴の中に入れていたという逸話もあります。消化吸収サポートや血行促進から代謝の向上に繋がりますし、心身の緊張を解す働きも期待できますから、特にストレスによる精神的な疲労感がある時や、体力が落ちていると感じている時に適しているでしょう。ビタミンやミネラル補給から疲労回復に繋がるとする説もありますが、お茶として取り入れる場合は栄養補給ということは考えない方が確実です。
風邪予防のサポートにも期待
消化器系の働きを高めて栄養吸収を促すこと・血行を整えて体を温めてくれることなどから、タラゴンは疲労やストレスによる免疫力低下予防にも役立つと考えられています。精油成分には殺菌・抗菌・消毒作用が期待できるものも多く含まれていますから、タラゴンティーを飲む前に蒸気を吸い込むようにして喉に当てるとより効果的でしょう。またエストラゴールには鎮痙作用・フェランドレンには鎮咳作用があるとされていますので、喉の痛みや咳が出る時のケアとしても効果が期待できます。
そのほか期待される作用
女性領域での不調軽減に
アニスと似た香りと表現されるタラゴンの代表成分エストラゴール(メチルカビコール/メチルチャビコールメチルエーテル)は、アニスなどに含まれているアネトールの異性体です。アネトールと同様に女性ホルモンのエストロゲンに似た構造をしており、エストロゲンの分泌促進やホルモンバランスを整える働きが期待されています。このためタラゴンは無月経や月経不順・PMS(月経前症候群)など女性領域でのトラブル緩和に役立つ可能性があるハーブとしても利用されており、心身の緊張を緩めてくれる働きと合わせてPMSによる精神・肉体面の諸不調軽減にも取り入れられることがあります。
またエストラゴールには鎮静・鎮痙作用があることから、子宮収縮を和らげることで生理痛の緩和にも役立つと考えられます。血行を良くしたり体を温める働きから冷えによって悪化している生理痛、血行不良によるホルモンバランスの乱れ軽減にも効果が期待できます。月経不順やPMSにはチェストツリーやラズベリーリーフ、生理痛対策であればカモミールやカレンデュラなど不調に合わせてブレンドティーを作るのもおすすめです。
花粉症・喘息の緩和に
タラゴンの甘い香りの下であるエストラゴールには、抗炎症・抗アレルギー作用を持つ可能性も報告されています。エストラゴールには鎮痙作用も期待されていますし、タラゴンには鎮咳作用を持つとされるフェランドレンも含まれているため花粉症やアレルギー性鼻炎・喘息など呼吸器系アレルギー炎症の緩和にも役立つのではないかと注目されています。ただしエストラゴールは多量に使用すると毒性を持つことも指摘されていますから、精油を高濃度で常時拡散するような使用は避けましょう。
口腔ケア・口臭対策に
タラゴンは古代ギリシアの時代から口腔・葉の痛みを和らげために利用されてきたハーブでもあります。成分的に見てもオイゲノールが若干含まれていることから局所麻酔作用を持つと考えられており、葉を噛む・ハーブティーを飲むことで歯の痛み軽減に役立つと言われています。また精油成分には抗菌作用があることや、胃腸機能を整える働きが期待できることから口臭予防としてもタラゴンティーが飲まれています。
血糖値対策・肥満予防に
タラゴンは利尿作用や肝機能向上作用があると言われており、解毒(デトックス)に役立つハーブとしても利用されきました。デトックス効果については根拠が曖昧で“伝統的に信じられている効果である”とも言われていますが、近年資生堂さんから香りによる中性脂肪燃焼効果が発表されたこと・フロリダ州立大学からマウスを使った実験で血糖値降下作用が見られたという報告もなされていることなどから、糖尿病予防やダイエット効果が期待できるハーブとしても注目されつつあるようです。
お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果
コリ・筋肉痛のケアに
タラゴンに含まれるエストラゴール(メチルカビコール/メチルチャビコールメチルエーテル)は強い鎮静・鎮痙作用を持つとされる成分であり、血液循環を促す働きもあると考えられることからティーを湿布として使うことでより直接的に筋肉痛・リウマチ・神経性などの痛みの緩和に繋がると言われています。ただし皮膚に対して刺激になる可能性がありますので、事前にハーブティーの残りなどを活用してパッチテストを行って下さい。
ハーブバスに
温湿布として用いられることの多いタラゴンですが、濃い目に煮出したハーブティーを入浴剤として使うことも出来ます。この場合も筋肉痛などの痛みの緩和に役立つと考えられますし、入浴による直接的な“温め”も加わるので冷えによって悪化している関節痛や生理痛などの緩和にはより効果が期待できます。血行促進やリラックス効果から冷え対策や寝付きを良くすることにも繋がるでしょう。
精油を使うとより手軽にタラゴン風呂を楽しめますが、精油は刺激が強いため使用に注意が必要。肌が弱い方であればお湯にタラゴン精油を混ぜるのではなく、小皿に精油を垂らして入浴中に香りを嗅ぐ方法の方が良いでしょう。
タラゴン精油に期待される作用
浸出油の場合はそのまま利用することもできますが、精油をマッサージに利用する場合は必ず希釈して利用してください(協会によって精油希釈濃度の基準は異なりますが、肌に使用する場合は概ね1%以下が安全とされています)。タラゴン精油の場合は皮膚刺激が強いためスキンケアへの使用は控えたほうが無難です。精油の経口摂取は出来ません。
心への作用
タラゴンティーに期待される働きでもご紹介した鎮静作用は、エストラゴール(メチルカビコール/メチルチャビコールメチルエーテル)を筆頭とした精油成分の働きによるところが大きいと考えられています。このため植物そのものよりも精油成分が濃縮されているエッセンシャルオイルはより高い鎮静作用を持つと言われており、ストレス対策や心の強壮などにも効果が期待されています。また若干の刺激・高揚作用を持つとする説もあり、活力や前向きさを取り戻す手助けをしてくれる精油として無気力・無感動な時にも適していると言われています。
ただしエストラゴールは優れた作用を持つとされる一方で、マウスを使った実験で発癌性が報告されているため毒性のある成分として注意喚起もなされています。食品として通常量摂取する場合は問題ないとされていますが、精油の場合は過剰に使用してしまう恐れもあります。希釈して使う・長時間使用しないなど使用量に注意し、常用するのではなく“ここぞ”という時にだけ取り入れるようにしてみて下さい。
体への作用
基本的にはティーと同様に、消化器系・呼吸器系の不調緩和や女性領域での不調に有効とされています。こちらも同様に香辛料・ハーブティーとして利用するよりもエストラゴールを多く含むため、取扱には注意が必要です。しかしエストラゴール含有量から高い抗炎症・抗アレルギー作用が期待出来るとも言われ、短期間の使用であれば花粉症などのアレルギー軽減に役立つという声もあります。また女性ホルモンへの働きかけも強いと考えられますので、妊娠中や授乳中の方・ホルモン系の疾患がある方は利用を避けるようにしましょう。
タラゴン/エストラゴンの注意事項
- 妊娠中の方は使用を避けましょう。
- キク科植物にアレルギーのある方は使用に注意が必要です。
- 精油は刺激が強く毒性もあると考えられるため、使用濃度や頻度に注意しましょう。