美肌作りにも注目される「ミネラルの宝庫」
ホーステールは日本で“スギナ”と呼ばれている、ツクシの栄養茎部分のこと。ユーラシア大陸各地の伝統医療・民間療法の中で古くから使用されてきたハーブでもあり、特に泌尿器系トラブルや止血用としてよく用いられていました。近年ではアンチエイジングや美容面での効果が注目されるシリカの補給源としても注目されています。シリカ以外にも「ミネラルの宝庫」と称されるようにカルシウムなどの補給にも役立ってくれるでしょう。骨粗鬆症予防やセルライト予防など女性の健康・美容をサポートしてくれる可能性もありそうです。
Contents
ホールテールとは
植物紹介:スギナ
ハーブティーの一つとして販売されているホーステール。ホールテールと呼ばれてしまうと馴染みのない植物のように感じますが、日本語で言うと「スギナ」。畑や公園・道端など、緑のあるところであれば日本中のいたるところで目にする細長い茎と節のある棒のような葉を持つ緑色の雑草ですね。別の名前で呼ばれますが、スギナは春の訪れを告げるツクシと同じ植物です。植物としてはスギナ(ホーステール)もツクシも同じくトクサ科トクサ属に分類される多年草で、学名はEquisetum arvense。属名のEquisetumはラテン語の“equus(馬)”と“saeta(剛毛)”を組み合わせたものが語源で、和名の杉菜(すぎな)はスギの樹形に似て見える+食用できる草本(菜)が由来とされています。
同じ植物なのに全く外見の異なるツクシとスギナ。これは雌雄差というわけではなく、胞子茎と栄養茎と役割が違う部位です。花も葉もない薄茶色のツクシ(胞子茎)が芽を出し成長した後、光合成を行うために茎と葉からなる緑色のスギナ(栄養茎)が生えてきます。地中で地下茎によってツクシとスギナは1つに繋がっており、役割に適した姿の部位がそれぞれ地上に顔を出しているというわけです。地上部は冬に枯れてしまいますが、地下茎は土の中で越冬するため多年草にカテゴライズされています。ちなみに、英名では和名のように胞子茎のツクシ・栄養茎のスギナと別の名前が付けられてはいないので、ツクシを指したい場合は「sporophyte of horsetail」のような表現で区分します。英名のホーステールは馬のしっぽに見立てての命名で、こちらはスギナではなくツクシの形状からの発想ではないかなと思ったりもしますが。
スギナ・つくしや日本に分布しているトクサ(木賊/砥草)などが含まれるトクサ科植物は、約6億~3億7500万年前の“古生代”に樹木として地球上に分布していた植物の仲間。トクサ目の中で唯一生き残ったのがトクサ科の15種で、恐竜のいた時代頃からあったのだとか。このためスギナは地球の歴史の中でも最も古くからある植物の1つとして「生きている化石」と称されることもあります。イチョウと同じような感覚ですね。人類が誕生した時には既に広範囲に分布しており、人は古くからスギナやツクシを食用もしくは薬用として用いてきたと考えられています。現在もツクシを食べているのは日本や韓国・ネイティブアメリカンなど一部ですが、食用しない国でもハーブ・生薬の一つとしてスギナは活用されています。古代中国ではスギナを乾燥させて煮詰めたものを薬として用いていたと伝えられていますし、古代ギリシャ・古代ローマでは外傷からの出血を抑えるための止血剤として活用されていました。
ローマ帝国時代以降のヨーロッパでもホールテールはハーブとして活用され、植物学者で”イギリスのハーブ療法の父”と呼ばれるニコラス・カルペパーも止血に活用したと伝えられています。ホールテールを原料としたハーブティーについても腎臓・肺・肝臓を強化する働きを持つ民間薬として使用されていたようですし、インド伝承医学アーユルヴェーダでも前立腺肥大や失禁・夜尿症の改善などに活用しています。しかし、家庭の薬として各地で親しまれてきた歴史がある一方で、スギナは完全に除去するのが難しい雑草としても悪名高い存在。根が深く完全除草が難しいことから日本では「地獄草」とも呼ばれています。特に農業関係の方にとっては厄介な植物ではあるのでしょうが、広島原爆投下後の大地に最初に生えたというエピソードもあり伝統的な薬草としての用途+生命力溢れるハーブとしてスピリチュアルな価値を見出す方もいらっしゃるそう。栄養豊富・抗アレルギー効果を持つ可能性があることでも注目されていますから、上手く活用して共存していきたいものですね。
基本データ
- 通称
- ホールテール(horsetail)
- 別名
- 杉菜(すぎな)、Common Horsetail(コモン・ホーステール)、field horsetail(フィールド・ホーステール)、問荊(モンケイ)
- 学名
- Equisetum arvense
- 科名/種類
- トクサ科トクサ属/常緑多年草
- 花言葉
- 向上心、努力、意外、驚き
- 誕生花
- 3月6日・3月12日
- 使用部位
- 地上部(葉・茎)
- 代表成分
- ミネラル類(シリカ、カルシウムなど)、フラボノイド類(ケルセチン、ケンペロール、ルテオリンなど)、アルカロイド類(パルストリン、ニコチン)、サポニン、タンニン、葉緑素、ビタミン類、フィトステロール
- 代表効果
- 鎮静、利尿、抗酸化、収れん、止血、、抗炎症、癒傷
- こんな時に
- 骨粗鬆症・関節疾患・リウマチ予防、イライラ、ストレス、排尿トラブル(膀胱炎・尿道炎・良性の前立腺肥大・尿失禁など)、アンチエイジング、肌のハリ向上、髪や爪の強化、むくみ・セルライト対策、生活習慣病予防
- おすすめ利用法
- ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ、浸出油、湿布、手作り化粧品
- お茶の味
- 緑茶のアクを強くしたような、干し草っぽい風味
- カフェインの有無
- ノンカフェイン
ホールテールの成分と作用
ホールテールティー/スギナ茶に期待される効果
健康維持のサポートに
ミネラル補給・骨粗鬆症予防
ホールテール(スギナ)はカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、亜鉛、ケイ素などのミネラル類を豊富に含むことから「ミネラルの宝庫」とも称されているハーブです。同グラムで比較した場合、カルシウム含有量はホウレンソウの155倍・リンとカリウムは5倍・マグネシウムは3倍という説もあるほど。優れたミネラル補給源として様々な健康メリットが期待されているホーステールですが、代表的なものの一つとして骨粗鬆症の予防に役立つ可能性があるということが挙げられます。
カルシウムは骨形成に必要なミネラルの一つで、不足すると骨がもろくなってしまう骨粗鬆症の発症リスクが高まります。ホールテールはこのカルシウムが豊富なことに加えて、シリカというミネラルが含まれている点も注目されています。シリカは骨を形づくる細胞壁に多く存在していることから骨密度との関わりが深いと考えられているほか、カルシウムの吸収を助ける働きを持つという説もあります。軟骨の生成や関節の働きなどにもシリカは関係していると考えられていることから、シリカとカルシウムを豊富に含むホールテールが役立つのではないかと考えられています。
骨粗しょう症の卵巣摘出ラットモデルを使用した実験でも、スギナ抽出物の投与によって骨粗鬆症の治療に使用される配合栄養混合物の効果がアップしたという報告があります。ホーステールティー単体で摂取してどの程度骨粗鬆症予防をサポートしてくれるかは定かではありませんが、食生活に気をつける中でプラスして取り入れてみても良いのではないでしょうか。キレート作用によってミネラル吸収を助けるクエン酸が含まれているローゼル、カルシウム吸収促進効果が期待できるビタミンCが含まれている緑茶などとのブレンドしてみるという手もありますよ。
ストレス対策としても
ホーステールに豊富に含まれているカルシウムは骨や歯を丈夫に保つだけではなく、神経の興奮や緊張・筋肉の収縮を抑える働きもあります。この働きからカルシウムはイライラや苛立ちを抑える「天然の精神安定剤」と称されることもあるミネラルです。神経系に対するカルシウムの働きは単体で大量に摂取すれば良いという訳ではなく、対になる形で神経機能のバランスを調節しているマグネシウムの存在も必要。ホーステールはカルシウムだけではなくマグネシウムも含まれていることから、ミネラル不足によるイライラなどの情緒不安定さの軽減・ストレス耐性の向上に役立つ可能性があると考えられます。
排尿関係のトラブルに
ホールテール(スギナ)はヨーロッパの伝統医療や民間療法の中で、腎臓・尿路関係の不調に対して利用されてきた歴史があります。これはホールテールに利尿作用があること、フラボノイドやタンニンなど抗菌・消毒作用を持つ成分が含まれていることが大きいそう。作用メカニズムについては断定されていませんが、2014年の『Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine』にはサイアザイド系利尿薬ヒドロクロロチアジドと同等の利尿作用を持ち、電解質に変化を引き起こしにくかったというブラジルで行われた研究報告も掲載されています。
そのほかにホーステールには腎臓機能を高めるという説もあり、合わせて膀胱炎や尿道炎などの尿路感染症、頻尿・失禁・夜尿症などの排尿トラブル、尿路結石や前立腺炎など様々な“尿”トラブルにヨーロッパで使用されてきました。インド伝統医療のアーユルヴェーダでも前立腺肥大や夜尿症のケアに使用することがあるのだとか。ちなみに男性の前立腺トラブルによる排尿トラブルの場合はソウパルメット(ノコギリヤシ)が取り入れられる機会が多いですが、前立腺以外の場合や女性の排尿トラブルにはホールテールの方が適しているという評もあります。
とは言えホールテールの有効性についての科学的証拠は不十分であることが指摘されています。尿路感染症や結石など明らかな異常を感じている場合は医療機関で適切な治療・投薬を受ける必要があります。ホーステールを取り入れるのは治療ではなく、再発予防のためのセルフケア程度にしておきましょう。粘膜保護作用のあるマーシュマロウやマロウブルーなどとブレンドしてみても良いかもしれません。
美容サポートにも期待
ケイ素(シリカ)補給によるアンチエイジング
海外セレブが取り入れていることなどから注目されているシリカ(二酸化ケイ素)は、毛髪・爪・歯・骨・関節・血管・細胞壁などあらゆる細胞に含まれているミネラルの一種。シリカは歯のエナメル質の強化、毛根に栄養を届けて艶とコシのある髪を作る、爪の強度や艶を保つことなどにも関係しています。しかし加齢などによってシリカが不足し、その箇所で組織退行や新しい組織の形成率が低下する=老化・劣化が起こると考えられています。このため適切な量のシリカを外側から補給することで、皮膚や髪などの老化を予防することに繋がるのではないかと注目されています。
ホールテール(スギナ)はホールテールはシリカを豊富に含むことが認められているハーブ。ビタミンEやフラボノイドなど抗酸化作用のある成分も含んでいますから、複合してアンチエイジング(老化予防)をサポートしてくれると考えられます。また、シリカにはコラーゲンの密度を高めることで筋肉老化を抑制する働きが期待できるという説も。このたホーステールは厄介な野草ではなく、体の内側と外側、両方の若々しさを保つために嬉しい栄養補給が出来るハーブとして評価されつつあるようですよ。
肌のハリ・潤いを維持する
シリカは細胞同士を繋げるためにも利用されており、肌のコラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸などを結びつける働きもあります。このためシリカを補給しコラーゲンなどの密度をアップさせることで、加齢によって起こる肌のハリや保水力低下の抑制に繋がると考えられています。シリカを含んでいるホールテールの摂取が美肌保持に役立つと期待されているのも、こうした働きによって肌の弾力性を保ってシワやたるみ予防に役立つと考えられているということが大きいでしょう。
また、シリカはコラーゲンを一緒に摂取することでコラーゲン合成率を高め、肌弾力アップを効果的にする働きがあることも報告されています。コラーゲンを含む食品と一緒にホールテールティー(スギナ茶)を摂取してみても良いかもしれません。コラーゲン生成に関わるビタミンCが豊富なローズヒップやクランベリーなどとの組み合わせも相乗効果が期待できそうですね。
デトックス・スタイル維持に
ホーステールは伝統的に排尿トラブルのケア・利尿薬のような感覚で使用されてきたハーブです。現在でも優れた利尿効果を持つ可能性を示唆した報告がなされていますし、シリカには血液循環をスムーズにしたりコラーゲン組織を強化して血管を丈夫に保つ働きがあると考えられています。利尿作用と血液循環の改善、両方からホーステールティーはむくみの改善・静脈瘤の予防に働きかけてくれるのではないかと期待されています。
シリカには重金属などの有害物質を排出させるという説があることから、デトックスに役立つハーブティーと紹介されることもありますよ。スペインではセルライト対策のサプリメントなどでホールテールを配合したものもあるようですし、むくみの改善+コラーゲンなどの強化によって小顔効果が期待できるハーブとしても注目する向きもあるようです。
そのほか期待される作用
生活習慣病予防に
ホールテールは抗酸化作用が期待できるフラボノイドなどを含むことから、血中脂質の酸化を抑え、アテローム性動脈硬化などの予防にも役立つと考えられます。ホーステールに含まれているフラボノイドには血中コレステロールや悪玉(LDL)コレステロールの低減作用が報告されているケルセチンなどもありますし、フィトステロールにも同様にLDLコレステロールの減少が期待されています。
そのほかホールテールに含まれているジカフェオイル酒石酸(dicaffeoyl tartaric acids)に血管弛緩作用が見られたことも報告されており、シリカの補給と合わせて高血圧や動脈硬化ほか心血管疾患の予防にも役立つ可能性があると考えられます。ケルセチンなどのフラボノイドには血糖値の上昇を抑える働きも期待できますから、生活習慣病が気になる方のサポートにも役立ってくれるかもしれません。スギナの近縁種Equisetum myriochaetumを2型糖尿病患者に投与した実験では、血糖降下作用を示したという報告もありますよ。
止血剤として
ホールテールの伝統的用途としては排尿トラブルのケア以外に、止血剤としての利用も挙げられます。こちらも有効性についての科学的証拠は不十分であることが指摘されていますが、収斂作用や止血作用を持つハーブとして女性の月経過多や不正出血のケア、鼻血などに対して使用されることがあるようです。ただし医薬品の発達した現代であればより効果と安全性のはっきりした製品の使用が主となっており、ホールテールの仕様は怪我の予防・回復促進という場合が多いようです。
お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果
スキンケアに
シリカ(二酸化ケイ素)は外側から利用することでも、肌の状態を整える手助けをしてくれると考えられています。期待される働きは肌を引き締める・肌のキメを整える・肌のハリを高める・保湿・肌の新陳代謝アップなど。ホーステール全体としてはフラボノイドやサポニンによる収斂作用や抗酸化作用も期待できることから、ホーステールエキス(スギナ抽出物)を配合しているスキンケア化粧品もあります。製品に利用されている抽出物と比較すると安定性・効果は劣ると考えられますが、ホーステールのチンキや浸出油を活用して手作りコスメを作るという方もいらっしゃるようです。抗炎症作用を持つ可能性があるとも言われていますが、皮膚刺激性については分かっていないので使用時にはきちんとパッチテストを行いましょう。
目の疲れ・まぶたのむくみにも
ホーステールは抗炎症作用や収斂作用が期待できることから、皮膚を引き締める働きがあるのではないかと期待されています。この作用からホーステール(ドライハーブ)を詰めたアイピローや、ハーブティーに浸したホットタオルを瞼に乗せていることで、目周りの筋肉の疲労・まぶたの腫れ・顔のむくみを軽減してくれるという説もあります。
爪・髪・歯のお手入れに
ホーステールに含まれているシリカは皮膚だけではなく、歯のエナメル質や爪の強化、髪の毛のハリやコシを保つなどの役割もあります。こちらについても外側から塗ることでもシリカの効果は得られると考えられており、髪のすすぎやハンドバスにホーステールティー(スギナ茶)を使用するという方もいらっしゃいます。ホーステールにはシリカ以外のミネラルも含まれているため合わせて髪の色艶が良くなったり、薄く割れやすい爪を丈夫にする働きが期待できるそう。髪のパサつきや爪の乾燥に良いという説もありますが、こうした働きについては有効性を示すような根拠はありません。そのほか歯茎の出血が気になる方が歯磨き粉のようにして使用することもあるようです。
傷や関節の痛み軽減にも
ホールテール(スギナ)は肌に塗ったり、ハーブティーなどを浸した湿布として利用することで出血を止めて傷の治りを促進する働きが期待されています。捻挫や打撲・関節炎・リウマチなどに対しても抗炎症作用によって痛みを抑えてくれるハーブとして、民間療法では湿布などに活用されています。ただし傷に直接塗布する場合は使用方法により雑菌が入ってしまう場合がありますので注意が必要です。
ホーステール(スギナ)の注意事項
- 妊娠中・授乳中・お子様への使用は避けましょう。
- スギナ・ツクシにアレルギーのある方、ニコチンに対する過敏症がある方は使用出来ません。
- 持病や疾患がある方・医薬品服用中の方は医師に相談しましょう。
- 大量摂取・長期間に渡る継続利用は避け、体調に以上を感じた場合は即座に摂取を中断してください。
参考元
- Horsetail – Herbal Encyclopedia
- Horsetail facts and health benefits
- Horsetail Uses, Benefits & Dosage