アスピリンの語源とされる、鎮痛・解熱・消炎に優れたハーブ
消炎鎮痛剤「アスピリン」の元になった、サリチル酸を含むハーブとして知られるメドウスイート。エリザベス女王が愛したとも言われる甘い香りを持ち、頭痛や腰痛、関節炎やリウマチなど痛み・炎症の緩和に役立つハーブとして親しまれています。また胃腸粘膜の保護作用があると考えられており、近年はアスピリン(アセチルサリチル酸系消炎鎮痛剤)よりも胃を痛める心配が少ないハーブとして再注目されている存在でもあります。鎮痛・解熱としてものほか、むくみ軽減ダイエットのサポートに取り入れられることもありますよ。
メドウスイートについて
植物紹介:メドウスイート
メドウスイートはモンゴルが原産と考えられているバラ科の多年草。名前の由来は“草原(Meadow)”と“甘い香り(Sweet)”という言葉を合わせたものとする説、meadと呼ばれる蜂蜜酒の香り付けに用いられたためとする説があります。名前の通り、中央アジア~ヨーロッパの草原に群生し、アーモンドのような甘い芳香を持つことからジャムや焼き菓子などの香り付けにも用いられています。
原産はアジアですが、メドウスイートは古代ケルト人が信仰していたドルイド教において最も神聖とされる3つのハーブの1つに数えられていたのだとか。その甘い香りから愛と結び付けられることが多く花嫁のブーケなどにも使われていたのだとか。また甘い香りと言えば、イングランド王国の女王エリザベス1世もメドウスイートの香りが大好きだったと言われています。ヨーロッパでは古くから“ストローイングハーブ”と呼ばれる、防虫や殺菌のために床にハーブを撒く習慣がありましたが、エリザベス1世は寝室はもちろんトイレ・浴槽までメドウスイートの花で床を埋め尽くしたのだそう。
メドウスイートは鎮痛剤や解熱剤として利用されている「アスピリン」の元となったハーブとも呼ばれています。アスピリン誕生のきっかけとされる成分“サリシン”は1800年台初頭にホワイトウィロウの樹皮から分離されましたが、後の1860年台になるとメドウスイートから初めてサリチル酸が単離されます。 このサリチル酸は刺激が強く胃腸障害を起こすという難点がありましたが、1897年にはそれを改良した純度の高い“アセチルサリチル酸”の合成に成功しアスピリンが誕生します。
アスピリン(Aspirin)という名前はアセチルとサリチル酸の頭を組み合わせた合成語という説が有力ですが、メドウスイート古い属名“spiraea”に否定の“a”を付けたものという説もあるほど。
19世紀以降アスピリンを始めとした化学合成された医薬品が頻繁に用いられるようになり、ハーブの薬用利用は捨てれていきます。しかし純度を高め精製された薬品は効き目が強いものの、副作用があることも否定できません。近年は不定愁訴とも言われる病名のつかない不調を抱える方が増え、薬害・副作用の心配が少ないハーブを日頃のケアとして取り入れる方が増えてきています。
基本データ
- 通称
- メドウスイート(Meadowsweet)
- 別名
- 西洋夏雪草(セイヨウナツユキソウ)、クイ-ンオブザメドゥ(Queen of the meadow)
- 学名
- Filipendula ulmaria
- 科名/種類
- バラ科シモツケソウ属/多年草
- 花言葉
- 実らぬ恋、無益、いつかわかる価値
- 誕生花
- –
- 使用部位
- 葉、花
- 代表成分
- サリチル酸塩、ポリフェノール(フラボノイド、タンニンなど)、ビタミン類、精油
- 代表効果
- 鎮痛、解熱、発汗、利尿、殺菌、収斂、制酸、消化管保護、抗炎症、抗リウマチ
- こんな時に
- 頭痛・腹痛・筋肉痛、胃酸過多、逆流性食道炎・胸焼け、胃炎、消化性潰瘍、下痢、リウマチ、関節炎、膀胱炎、尿道炎、むくみ
- おすすめ利用法
- ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ、湿布、
料理用ハーブ(香辛料) - ハーブティーの味
- ヨモギに似た風味で、微かに甘さがあり親しみやすい
- カフェインの有無
- ノンカフェイン
メドウスイートの栄養・成分・期待できる効果
メドウスイートティー
“天然アスピリン”の働き
メドウスイートに含まれているサリチル酸は「アスピリンの元となる成分」と言われます。日本で馴染みのある例としてはバファリンAなどに配合されている消炎鎮痛成分がアスピリン(アセチルサリチル酸)です。
鎮痛・抗炎症剤として
医薬品として用いられるアセチルサリチル酸は、合成されたサリチル酸を無水酢酸でアセチル化して製造されていますが、天然のサリチル酸にも鎮痛・抗炎症作用などが認められています。
そのためメドウスイートは鎮痛・消炎作用に優れたハーブとされており、頭痛・腹痛・筋肉痛・生理痛などをはじめ、関節炎やリウマチの痛みなど様々な痛みの緩和に用いられています。関節痛やリウマチの緩和としてはキャッツクロー、ストレス性の痛みにはレモンバームなどとブレンドして利用すると良いでしょう。
解熱剤・風邪の症状に
サリチル酸には解熱作用がありますし、メドウスイートとして総合的に見ても血行を促進によって身体を温める働き・発汗作用があり解熱効果が高いと考えられています。特にホットでメドウスイートティーを飲むと熱の排出促進に役立ちます。
サリチル酸には消炎作用もありますので、解熱以外に風邪やインフルエンザに伴う諸症状の緩和にも有効と考えられています。
そのほか期待される作用
胃腸の調子を整える
メドウスイートには制酸作用があるため、胃酸の分泌を抑制して胸やけ・逆流性食道炎や胃炎、消化性潰瘍などの予防・緩和に役立ちます。古くから胃酸過多による胃の不快感や痛みに良いハーブとしても用いられています。
アスピリンの場合は常用すると胃の粘膜を荒らしますが、メドウスイートは消化管保護作用があるため過剰摂取をしなければ副作用(胃腸へのダメージ)の危険性は低いと言われています。
そのほか殺菌作用、タンニンによる収斂作用も持ちますので下痢止めや腸炎などの緩和にも有効とされていますし、腸内ガスによるお腹のハリ(腹部膨満感)の緩和にも良いと言われています。お腹の不調であればカモミールやメリッサ、胃酸過多・胃炎などの場合はマーシュマロウとブレンドして利用すると良いでしょう。
むくみ・尿路感染症に
メドウスイートには抗菌作用と利尿作用があるため、むくみの緩和や尿道炎・膀胱炎などの尿路感染症のケアにも役立ちます。
ダイエットのサポートに
利尿作用や発汗作用があることから、水分貯留などを改善しスタイル維持にも有効と考えられています。メドウスイート(花部)はハチミツやナッツに例えられる甘い香りが特徴ですからシェイプアップサポート・デトックス用にハーブティをブレンドする際に風味付けとして加えてみるのもオススメです。
お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果
関節痛などに湿布として
メドウスイートの浸剤やチンキに薄い布(ガーゼなど)を浸し、関節痛・神経痛・リウマチなどで痛みが起きている患部に湿布として直接当てることでも痛みの緩和に役立ってくれます。
ハーブバスとして
入浴による血行促進効果と合わせて、筋肉痛の回復促進や冷えによる腰痛・肩こり・腹痛などの痛み緩和効果が期待出来ます。また収斂作用や殺菌作用がありますから脂性肌・ニキビ予防にも役立ってくれると考えられます。
メドウスイートの注意事項
- アスピリン・サリチル酸にアレルギーのある方は使用を避けましょう。
- 医薬品を服用している方は使用を避けましょう。
- 幼児への使用は避けてください。妊娠中・授乳中の使用についても十分なデータがないため使用を控えたほうが無難です。