コルツフット/フキタンポポ
ハーブティーと期待される効果効能紹介

古代ギリシアから呼吸器の不調に利用されてきたハーブ

コルツフットは和名をキクタンポポというキク科の植物。古代ギリシアやローマ時代から咳止め・喘息や気管支炎の緩和など呼吸器系の不調に良い薬草として用いられてきた歴史があり、学名Tussilagoも「咳を追い払うもの」という言葉が由来とされています。ハーブティーや咳止めシロップのほか、薬用煙草(ハーブタバコ)の原料としても利用されてきたことから煙草草(タバコソウ)という別名もありますよ。肝毒性が指摘されたことで使用が激減しましたが、現在では安全性の高い品種も開発されています。

画像:コルツフット(フキタンポポ)

 

コルツフットについて

植物紹介:コルツフット(フキタンポポ)

コルツフットは中国~ヨーロッパが原産と考えられるキク科のハーブです。蕗(フキ)に似た葉・タンポポのような花を持つことから、植物学者の牧野富太郎博士によって和名「フキタンポポ」と命名されました。ちなみに英名のコルツフット(coltsfoot=子馬の足)は葉の形が馬の蹄に似ていることから、漢名の款冬(カントウ)はまだ冬のうちに氷を割って生えてくることから名付けられたそうです。

古代ギリシアではコルツフットの葉を乾燥させて煎じたもの、今で言うドライハーブを使ったティーを咳止めや呼吸器疾患の薬として利用していたと伝えられています。1世紀にローマの大プリニウスが著した『博物誌』の中にもコルツフットの葉を燃やした煙を吸うと喘息・感冒・咳に良いということが記されています。また17世紀に活躍した医師・ハーバリストのニコラス・カルペッパーも利用法を記録に残しています。

ラテン語の学名“Tussilago”も「咳を追い払うもの」という意味があり、古代ギリシア・ローマ時代から利用していたヨーロッパはもちろんのこと、中国や北米でも鎮咳去痰作用のある薬草として利用されてきました。日本には明治中期頃に伝わり、主に園芸用・フクジュソウ(福寿草)に代わる正月向けの花として利用されています。

2000年以上と長い歴史を持つハーブですが、現代になって肝臓に毒性を及ぼすピロリジジンアルカロイド類を含んでいることが分かり、コルツフットの利用については賛否両論という状態になりました。使わないという方もいますが、お茶として規定量を短期間服用する程度であれば肝臓毒の心配はないとされており、毒性成分を持たないコルツフットも開発されています。直接食べたりはしないように注意してください。

基本データ

通称
コルツフット(Coltsfoot)
別名
フキタンポポ(蕗蒲公英)、煙草草(タバコソウ)、款冬(カントウ)、カウフォート、コルツフート
学名
Tussilago farfara
科名/種類
キク科フキタンポポ属/多年草
花言葉
公平な裁き
誕生花
2月4日、11月17日
使用部位
花、葉
代表成分
アルカロイド、フラボノイド類、サポニン、タンニン、精油、粘液質、ミネラル類、(ピロリジジンアルカロイド)
代表効果
鎮咳、去疾、健胃、粘膜保護・粘膜刺激緩和、鎮痙
こんな時に
咳・痰が絡む、気管支炎、喘息、咳を伴う風邪、胃痛、胸焼け、消化促進
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーブチンキ、スチーム吸引
ハーブティーの味
少し渋みを感じるが、クセは少なく飲みやすい
カフェインの有無
ノンカフェイン

コルツフットの栄養・成分・期待できる効果

コルツフットティー(フキタンポポ茶)

呼吸器系の不調へ

コルツフットは鎮咳・去疾作用が期待出来るハーブとして古くから咳や咳を伴う風邪、気管支炎、喘息などの緩和に、時には子ども用の咳止めシロップの原料として利用されてきたハーブです。煙草草という別名は喉に悪そうな印象ですが、これも葉部を気管支炎などの緩和に用いる「薬用煙草(ハーブタバコ)」の原料として用いていたことに由来する呼び名です。

現在も呼吸器系の不調を和らげるハーブティーとして用いられています。粘液質によって呼吸器官を保護してくれる働きもあるので、咳による喉や胸の痛みの緩和にも役立つと言われています。

肝臓へ悪影響を与える恐れがあることから長期服用はできませんし、大量の利用も避けたほうが良いハーブ(※詳細はコルツフット(フキタンポポ)の毒性についてをご覧下さい)のため、使いすぎを防ぐ・相乗効果を期待する意味でも、喉の痛みにはリコリスマーシュマロウ、咳にはレッドクローバーなどとブレンドして利用すると良いでしょう。


そのほか期待される作用

胃の働きを助ける

コルツフットには健胃作用があると考えられており、咳止め・喉の不調以外に食べ過ぎ・飲み過ぎたあとの胃もたれや胸焼け予防にも有効とされています。消化を助ける働きもありますので、消化不良にも良いでしょう。


風邪の初期症状ケアに

風邪の症状としての咳を改善する以外にも、コルツフットは免疫細胞を活性化する働きがあるとする説もあります。消化機能を助けるへの働きも期待できますから、咳以外の症状がある場合でも風邪の初期症状ケアとして役立ってくれるでしょう。また漢方では体を温める性質(温性)に分類されますが、余分な熱の排出や湿感バランスを整えるとも言われています。喉の不調の原因が風邪の場合などは、エキナセアタイムなどとブレンドして利用してみてください。


コルツフット(フキタンポポ)の毒性について

古くから喘息など呼吸器系の不調に用いられていたコルツフットですが、ピロリジジンアルカロイド(ツッシラギンやセンキルキン)という肝臓に害を与える成分が微量含まれてるため注意が必要です。国やハーバリストによっては使用禁止と考える方もいますが、毒性を持つ成分は微量のため少量の摂取では副作用はないと考えられており、茹でることで有毒物質が破壊されることも研究で示唆されています。

葉部の方が花よりもピロリジジンアルカロイドが少ないため、ドイツのコミッションE(薬用植物の効果・安全性の評価委員会)では1日ティースプーン3杯以下のコルツフット葉のお茶であれば咳止めに服用しても良いとされています。服用期間は長くても4週間以内と言われていますが、できれば2週間くらいでお休みするようにしましょう。

長期飲用・多量の使用は避けるべきハーブですが、一時的に咳などの炎症を抑える「頓服(とんぷく)」として利用する分には問題ないとされています。シングルで飲む場合でもティースプーン1杯(蒸らし10分程度)で浸出出来ますから、1日にそれを1~2杯飲む程度であればさほど心配は要りません。

またピロリジジンアルカロイドを含まない安全な種も確立されており、現在はその安全なフコルツフットが薬用(ハーブ医薬品)として利用されているようです。気になる方はピロリジジンアルカロイドフリーのものを選ぶようにしてください。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

肌への使用

コルツフットの生葉には殺菌・消炎作用があるとされ、古くは絞り汁を虫刺され・切り傷・腫れ物などの皮膚炎症に対する外用薬として利用していました。現在使用されることはほとんどありませんし、データも少ないので利用はオススメできません。

また化粧品原料として抽出される「フキタンポポエキス」は保湿効果が高く、収れん効果、消炎効果、皮膚機能活性効果があるとされています。肌を柔らかく保つ・キメを整える・肌荒れを防ぐなどの目的で配合されています。

コルツフットの注意事項

  • 肝臓に疾患のある方、キク科アレルギーの方は利用できません。
  • 妊娠中・授乳中の使用は避けましょう。
  • 毒性のある成分(ピロリジジンアルカロイド類)が含まれているため、長期飲用はできません。規定量・期間を守って利用してください。