桃の葉
健康茶と期待される効果効能紹介

肌荒れ・ニキビ・あせも対策に古くから利用されてきた

中国では不老長寿をもたらす・邪気を払うなどの神聖な力を持つ植物と考えられてきた桃。日本でも古くから厄払いなどに利用されていましたし、江戸時代頃には夏に「桃葉湯」に入る習慣もありました。葉を原料とした桃の葉茶はマグネシウムやカリウムなどのミネラル補給源として役立つと考えられていますし、近年自然派志向の化粧品原料としても肌荒れ・にきび・湿疹などに役立つ桃の葉が注目されていますよ。

画像:桃の葉(Peach Leaf)

 

桃の葉について

植物紹介:桃(モモ)

甘くてジューシーなフルーツとして人気の桃。可愛らしいピンク色や見た目から万国共通で「女性」をイメージする果物でもあります。英語でも古くはPeach=若く魅力的な娘という意味で使われていたそう。
桃の辺産地は中国、西北部の黄河上流の高山地帯と言われています。原産地である中国で桃は古くから仙木や仙果と呼ばれ、不老長寿をもたらす・邪気を払うなどの神聖な力を持つ植物と考えられてきました。漢方では葉・種子・果実と余すところ無く活用されており、「女性の美と健康をサポートする」植物として紹介されることもあります。

日本には縄文時代前期の遺跡から桃の種が出土しており、弥生時代後期には栽培種が伝わったと考えられています。古事記には伊耶那岐命(イザナギノミコト)が鬼女から逃れるため「桃の実」を投げる場面がありますし、もっと親しみのあるところでは桃から生まれた“桃太郎”も鬼を退治します。これらの物語からも桃=邪気払いになるという考え方が日本でも浸透していたことが伺えますね。

桃は3月3日のひな祭りにも欠かせない存在ですが、ひな祭りは体の穢れを祓うことで健康を祈る「上巳の節句」が始まりとされています。これが上巳の節句ではなく「桃の節句」と呼ばれるようになった理由は諸説ありますが、旧暦の3月3日頃に桃が咲いていたという時期的なもの、桃は邪気を祓う・多産を象徴する縁起の良い花だったからなどの信仰的なもの、桃の花の可憐さが女性のイメージと合っていたなどの説が考えられています。

雛人形と桃の花・菱餅・白酒などを飾って女の子の成長を祈る、現在のようなひな祭りの形が出来たのは江戸時代と考えられています。また同じく江戸時代、夏の土用に桃の葉をお風呂のお湯に入れた“桃湯(桃薬湯)”に入るという習慣も浸透したと考えられています。一時期は古い習慣として忘れられかけていたものの、自然志向の高まりなどから近年再び「桃の葉」が注目され、桃の葉エキスが入った化粧水・入浴剤・石鹸などが販売されています。

基本データ

通称
桃の葉(Peach Leaf)
別名
桃葉(トウヨウ) ※生薬名として花・蕾は白桃花(ハクトウカ)、種子は桃仁(トウニン)と呼ばれます。
学名
Amygdalus persica
Prunus persica
科名/種類
バラ科モモ属/落葉小高木
花言葉
気立てのよさ、愛の幸福、長命、天下無敵
誕生花
3月3日、4月12日
使用部位
葉部
代表成分
タンニン、ミネラル類、オレイン酸、エルムシン、(アミダグリン)
代表効果
解熱、利尿、整腸、循環器機能改善、鎮咳、去痰
こんな時に
むくみ、便秘、下痢、咳・気管支炎、肌荒れ・ニキビ・湿疹・あせも・日焼け肌のケア
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーバルバス、ハーブチンキ、浸出油、湿布、スチーム吸引、手作り化粧品
ハーブティーの味
干し草のような香りで微かに甘味を含む、味はやや苦味がある
カフェインの有無
ノンカフェイン

桃の葉の栄養・成分・期待できる効果

桃の葉茶

体の巡りを整える

血液循環を整える

桃の葉に含まれているマグネシウムは約300種類の酵素の働きを助けるミネラルで、ほとんど全ての生合成反応や代謝反応に関わっていると言われています。骨の弾性維持、神経伝達、ホルモン分泌などにも関係していますし、血管を弛緩させる働きから血圧を下げる・血液循環を正常に保つなどの役割もあります。

マグネシウムのほか、桃の葉には抗酸化作用を持つポリフェノールの一種タンニンも含まれています。タンニンの抗酸化作用でレステロールの酸化を防ぎ、血管をしなやかに保つこともスムーズな血流の保持に役立ってくれるでしょう。


むくみの予防・緩和

桃の葉にはマグネシウムやカリウムなどのミネラルが含まれています。カリウムは細胞の浸透圧を調整することでナトリウムと余分な水分の排泄を促す作用があることからむくみ改善に取り入れられている成分ですし、マグネシウムは代謝や血液・リンパ液の循環を助ける働きがあります。
ミネラルの中でも特にむくみの改善に必要とされるカリウムとマグネシウムを含むことから桃の葉茶は利尿作用がある・むくみの改善に役立つと考えられています。


便秘・下痢の緩和に

桃の葉茶には腸内で潤滑油として働くオレイン酸や、便に水を含ませることで硬さを調節するマグネシウム、腸を引き締めることで下痢を改善するタンニンが含まれています。これらの成分が複合して働くことで整腸作用があると考えられ、便秘と下痢両方の予防・緩和に効果が期待されています。


そのほか期待される作用

喉の不調に

桃の葉に含まれるタンニンによる殺菌・消炎・収斂作用から、喉を殺菌して炎症を抑える働きがあると考えられています。ちなみに「咳止めにレンコン汁」という民間療法が知られていますが、こちらもタンニンの働きによるものです。

タンニンを含むことから咳・気管支炎・気管支喘息・百日咳などの緩和に桃の葉茶は役立つと考えられています。殺菌作用がありますので喉のイガイガ感緩和にも効果が期待できるでしょう。喉の不調には甘草ビワ、痛みがあるときには粘膜保護作用のあるマーシュマロウなどとブレンドして利用することも出来ます。


美肌作りに

桃の葉というと入浴剤やローションなど外側から肌トラブルを緩和させる成分という印象が強いですが、飲用した場合でも美肌効果が期待できると考えられています。

桃の葉に含まれるタンニンにはメラニンを産生するヒト黒色腫メラノーマ細胞の増殖を抑制する働きが報告されており美白作用があると考えられています。またタンニンは肌・毛穴を引き締める働き(収斂作用)や、抗酸化作用があることから肌の老化防止にも働くと考えられています。
そのほかマグネシウムは肌のバリア機能を修復することで肌荒れを防ぐ働きがありますし、桃の葉に含まれている配糖体分解酵素混合物の「エムルシン」という成分は皮下脂肪や角質の分解促進作用があると考えられています。


桃の葉茶を自作する場合

桃の葉茶は夏頃の青青した葉を採取し、綺麗に洗った後陰干しすることで自作することも出来ます。ただし桃の種子・葉には青酸化合物のアミグダリンが含まれているため、自作した際に乾燥が不十分の場合は毒性を持ちますので注意が必要です。商品として販売されているものを買ったほうが安全性は高いでしょう。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

桃の葉風呂(桃葉湯)に

江戸時代頃、桃葉湯は夏の土用=最も暑い時期に行われる習慣がありました。これは厄払い的な意味のほか、夏場に多いあせもや湿疹の予防という実用的な意味も持っていたと考えられています。

成分的に見てもタンニンは消炎作用や新陳代謝活性化作用から皮膚炎症の改善に役立つほか、エムルシンによる肌の角質分解作用もありますので美肌効果が期待できると考えられています。そのため現代でも桃の葉はあせも対策を始め、肌荒れ・ニキビ・湿疹・日焼け肌の予防や回復促進、アトピー性皮膚炎の緩和など幅広い肌トラブルに利用されています。

入浴剤として利用する場合は桃の葉を布袋に入れ15分程度煮だした後、布袋ごと浴槽に入れる方法が主流です。お茶として浸出した後の茶殻を再利用しても良いでしょう。柿の葉などは生葉を利用することが出来ますが、桃の葉の場合はアミグダリンの関係がありますので十分に乾燥させた葉を利用してください。
桃の葉を煮出した汁はリンスのように利用するとフケ対策にも良いと言われています。


スキンケアに

入浴と同様にスキンケア原料として桃の葉を利用した場合も消炎作用や新陳代謝向上効果などがあると考えられています。肌荒れやニキビ・あせも・湿疹、日焼けでほてった肌のケアなど皮膚トラブル用として利用されるほか、保湿や抗酸化作用も期待できることから美肌ケア・アンチエイジング用など健やかな肌を守るためにも利用されています。

小さいお子さんや敏感肌の方の場合は桃の葉を煮だして濾したもの(桃の葉茶)を化粧水代わりに利用する方法もありますが、防腐剤を含まない分傷みやすいので作成当日に使い切るようにしてください。使用前にはパッチテストをきちんと行いましょう。

桃の葉の注意事項

  • 妊娠中の方・小さいお子さんは飲用を控えましょう。