バレリアン
ハーブティーと期待される効果効能紹介

不眠やストレス対策として注目されるハーブ

ヨーロッパを中心に古くから利用されているバレリアン。ハーブとして利用されるのは根の部分で、硫黄系の臭気がありますが優れた鎮静作用・睡眠導入作用を持つと考えられています。古くは古代ギリシア・ローマ時代から利用されており、その働きから「神様の睡眠薬」などと称されることもあるのだとか。現代でもストレスやイライラなどの情緒不安定さや不眠の軽減に取り入れられている他、心因性の体調不良、生理痛など女性領域での不調軽減にも効果が期待されています。

画像:バレリアン

 

バレリアンについて

植物紹介:セイヨウカノコソウ

ストレス・不眠対策系のサプリメントやブレンドティーなどで見かける機会の増えているハーブの一つ、バレリアン。ハルシオンと同等の効果が見られかつ副作用が少ないという報告もあることから“神様の睡眠薬”と呼ばれたり、ストレスに起因する諸症状の軽減にも役立つとして“All heal(全てを癒やす)”などとも称されるハーブの一つです。日本でもストレス対策のお供として、21世紀に入った頃から注目度が高まっているそうですよ。

そんなバレリアンは和名をセイヨウカノコソウという、オミナエシ科カノコソウ属の植物。原産地は西ヨーロッパとされており、ヨーロッパを中心として使われてきた歴史あるハーブの一つでもあります。古代ギリシアやローマでは既にバレリアンは鎮静作用を持つハーブであることが認められ、現在で言う精神安定剤(向精神薬)や睡眠薬として取り入れられていたことが分かっています。バレリアン(Valerian)という呼び名やカノコソウ属の属名Valerianaも、ラテン語で強くある・健康になるなどを意味する「valēre」が語源であると言われていますよ。

ヒポクラテスもバレリアンの効能について言及しているそうですし、2世紀頃に活躍したギリシアの医学者ガレノスも不眠症の治療薬として処方していたと言われています。また中世期には悪臭とも言える独特の匂いが惚れ薬・催淫剤として役立つという説もあったのだとか。異性を惹きつけられるかはさておき、バレリアンの香りは猫ちゃんにとってマタタビのような働きを持つことも分かっています。個体差はありますが、うっとりと陶酔感に浸る子も少なくないそう。ヨーロッパでは「良いバレリアンを買いたかったら、近くに猫が集まっているハーブショップで」という見方もあるのだとか。

ともあれ、18世紀頃までには心因性の胃腸トラブルに対しての有効性などがヨーロッパの医療の中で認められ、バレリアンは薬としての地位を確立してきます。イギリスでは第二次世界大戦中に兵士の緊張・戦争精神症の治療に用いられていたという話もあります。こうした長い使用の歴史や、近代医療でも研究が進められ様々な作用を持つ可能性も報告さていることなどから、現在でもハーブ先進国であるドイツを筆頭に一部の国ではバレリアンが伝統的医薬品(THMPD)として承認されています。

日本には江戸時代後期にオランダを通じて薬として伝来したと言われており、明治(1886年)に発行された『第一改正日本薬局方』にも“カノコソウ(吉根草)”の基原植物として収録されています。西洋医学の推進に伴って政府はヨーロッパから種子も輸入し、各地で栽培も行なわれたのだとか。カノコソウの根は吉草根もしくは纈草根という生薬名で呼ばれており、鎮静作用や睡眠改善などの効能があるとされていますよ。第二次世界大戦前まではバレリアンも精神・神経疾患に用いる鎮静剤として用いられていましたが、現在は国産カノコソウ(鹿の子草/Valeriana fauriei)のみが収載されバレリアンは除外されています。

基本データ

通称
バレリアン(Valerian)
別名
セイヨウカノコソウ(西洋鹿子草)、コモンバレリアン(Common Valerian)、吉草(キッソウ)、纈草(ケッソウ)
学名
Valeriana officinalis
科名/種類
オミナエシ科カノコソウ属/多年草
花言葉
親切、親実の愛、適応力、気さく
誕生花
7月11日、8月14・16日
使用部位
根、根茎
代表成分
バレポトリエイト、バレラノン、精油(酢酸ボルニル、ボルネオール、イソ吉草酸など)、ミネラル類
代表効果
鎮静、精神安定、入眠促進、鎮痙、鎮痛、去痰、駆風、利尿
こんな時に
ストレス、精神不安、イライラ・ヒステリー、自律神経失調症、不安、不眠、胃痛、過敏性腸症候群、頭痛・偏頭痛、肩こり、月経前症候群(PMS)、更年期障害、生理痛
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーブチンキ
ハーブティーの味
鼻をつくような独特の臭気があり、苦味も強いので飲みにくい
カフェインの有無
ノンカフェイン

バレリアンの栄養・成分・期待できる効果

バレリアンティー

心のサポートに

ストレス対策に

バレリアンは古代ギリシア・ローマ時代から鎮静剤として気持ちを落ち着かせるために取り入れられてきたハーブと言われています。現在医学・科学的な分析からも硫黄のような臭気の元となるエステル類のバレポトリエイト(Valepotriates)やアルカロイドなどの複合作用によって、バレリアンは穏やかに興奮を鎮める働きを持つ可能性が高いことが認められています。

この鎮静作用は、バレリアンの成分がGABA受容体の相互作用を持つためと考えられています。そのほか脳内神経伝達物質であり神経を鎮める働きを持つGABA(ギャバ/ガンマアミノ酪酸)の代謝に作用し中枢神経に働きかけることで、GABAの働きを高めて精神状態を安定させたりリラックス状態へと導いてくれるという図式ですね。この働きからストレスで緊張しっぱなしの神経を鎮静させ、イライラ・神経過敏・自律神経失調などストレス性の様々な不調改善に効果が期待されています。


不眠対策・安眠サポートにも

バレリアンは2000年以上も昔、紀元前から不眠の改善や睡眠を整えるために利用されていたと伝えられるハーブ。現在でもドイツなど一部の国では睡眠の質を改善する働きを持つハーブとして、規格を満たしたものは不眠治療薬として用いられています。薬としてだけではなくホップやレモンバームなどと組み合わせて、お休み前のリラックスティーとしても広く使われているそうです。こうしたハーブ類は睡眠薬のように翌朝のだるさ・寝起きの悪さが出にくいこともメリットに数えられていますよ。

バレリアンが不眠を改善する(入眠までの時間を短くする・眠りの質を高める)仕組みについても未だはっきりとは解明されていません。有力な説としては、GABAの働きを高めることによって興奮し冴えてしまった神経を鎮めて筋肉の強張りを緩めることで、心身を睡眠に適した状態へと導くことが挙げられています。睡眠障害治療に対する有効性については客観的観測ではない・データが不十分であるなどの指摘もありますが、複数の臨床試験において睡眠改善に対する有効性も報告されています。

日本では薬としては認められていませんが、サプリメントなどではバレリアンが配合されたものが増えていますね。バレリアンは用量用法を守れば安全で継続的な効果が得られるという意見が多いものの、過剰摂取による副作用や長期服用による習慣性の報告もあります。日本では“食品”扱いのため摂取に規定はありませんが、過剰摂取は避けるようにしましょう。医薬品を服用中の方の利用・アルコールとの併用も避けて下さい。継続して飲む場合はパッションフラワーラベンダージャーマンカモミールなどの方が依存性の心配が低く、取り入れやすいでしょう。


不安軽減・リラックスに

バレリアンは抗不安作用・不安障害を和らげる働きも期待されています。上記でご紹介したようにバレリアンはGABAの働きを高めて中枢神経の興奮を鎮めることで、不安や緊張などを和らげると考えられています。心臓への血流をサポートする働きもあると言われていますし、GABAはナトリウム排出を促して血圧を調整する働きも報告されていることから、ストレス性の動悸や高血圧の軽減にも繋がると言われています。

2008年にスイスで行われた実験では、バレリアン抽出物を投与されたマウスに抗不安作用が認められたこと・副作用は認められなかったことが報告されています。抗不安薬として利用されているジアゼパムやアルプラゾラムと同等の作用を持つという報告もなされており、副作用の少なさと合わせて注目されています。不安や心因性の動悸などを感じる場合は、ホーソンベリーレモンバームなどと組み合わせて利用されているようです。


バレリアンの香りについて

バレリアンの有効成分とされるものは精油成分が多く含まれているものの、バレリアンの香りは芳香剤として愛されるような心地の良い香りではありません。その香りは硫黄臭・加齢臭・蒸れた靴の香りなどと表現されることもあり、悪評高いと言っても過言ではないほど。

しかし継続した緊張状態・ヒステリーなど精神が逆立っているような状態の時には、この臭気が無性に良い香りに感じるという説もあります。臭いと思っていたのに良い香りに感じるようになった場合は、慣れたのではなく神経が疲れ切っている可能性もあると考えられます。飲みにくいと言われているバレリアンティーですが。自分の精神状態のバロメーターの一つとして取り入れてみても良いかもしれません。


そのほか期待される作用

ストレス性の不調にも

バレリアンの持つ鎮静作用は動悸や高血圧以外のストレスに起因する様々な肉体的不調の軽減にも役立つと考えられています。特に神経・精神面からの影響を受けやすい胃腸の不調に対しての効果が期待されており、ストレス性の胃痛や胃炎・過敏性腸症候群などの軽減にも取り入れられています。メンタル面からサポートしてくれるだけではなく、筋肉の緊張を和らげることでもお腹や胃の痛みを軽減すると言われています。

またバレリアンは筋肉の緊張・強張りを和らげることから、肩こりや腰痛・頭痛などの痛みの軽減も期待されています。バレポトリエイトは抗痙攣作用を持つという説もあり、咳や気管支炎などを含めた痙攣性の諸症状軽減に良いとする見解もあるようです。


女性特有の不調に

バレリアンの鎮静作用は更年期障害やPMS(月経前症候群)など、ホルモンバランスの変化に伴って起こる自律神経の乱れ・精神的な不快症状の軽減にも効果が期待されています。GABAの働きを高めることで血圧を安定させる・バレポトリエイトによる鎮痙作用などから肉体面の症状軽減にも繋がる可能性がありますが、特にイライラしやすい・神経過敏気味になるなど精神的症状が出る方に適していると言われています。

加えてイランのイスラーム自由大学で2011年に行われた女子学生100人にプラセボ(偽薬)とバレリアン抽出物をランダムに投与した二重盲検無作為化プラセボ対照試験では、バレリアンを投与された女性の方が痛みの重症度が有意に減少したとの報告もなされています。この結果からバレリアンの持つ鎮痛・鎮痙などの働きが、生理痛の緩和・月経困難症の治療法として役立つのではないかと考えられています。


バレリアンティー飲み方について

バレリアンはバニラ様の甘い香りを放つ、小さくて可愛い白い花を付ける植物。しかしハーブとして利用されているのはバレリアンの“根”は花とは似つかない、腐敗臭や加齢臭などと表現される独特の悪臭があります。味も苦く薬っぽいので、そのままハーブティーとして飲むのは無理という方も少なくありません。

サプリメントなどを取り入れるという場合はさておき、ハーブティーとして飲む場合はシングルティーではなくブレンド用として利用されることがほとんどです。一日の摂取量はドライハーブで1.5g~3.0程度、ティーカップ1杯あたり小さじ1杯~2分の1杯の茶葉(乾燥した根)が目安と言われています。初めて飲む方・香りや苦みが気になる方・ブレンド用に利用する場合はそれよりも少なめにしましょう。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

肌への使用について

バレリアンもしくはバレリアンから抽出された精油は抗菌作用や抗炎症作用があると言われています。傷口や潰瘍・湿疹の局所的なケアに利用されることもありますが、刺激があり逆に炎症を起こす可能性もあります。専門家の指導がなく、自己判断での外用利用は控えたほうが無難でしょう。

バレリアンの注意事項

  • 妊娠中・授乳中の方、お子さんへの使用は避けましょう。
  • 睡眠薬をはじめとする医薬品類・アルコールとの併用は出来ません。
  • 肝機能疾患がある方、健康状態に不安のある方は利用を避けましょう。
  • 運転など集中力が必要な行動前の摂取は控えるようにして下さい。
  • 過剰摂取は頭痛、動悸、麻痺を起こす場合があります。また長期使用は常習癖がつく可能性も指摘されていますので、多量・長期間の使用は控えてください。サプリメントとして摂取する場合は販売者の定める用法・容量を守りましょう。